第七話:家族
「エリシア、ウチに来ない?」
俺は、エリシアを助けたいと思った。
「えっ!?」
エリシアは何故か顔を真っ赤にして慌てている。
「そ、その、いいんですか?」
「もちろん!エリシアは悪い人・・・じゃなくて竜じゃないし、困った時は助け合いだよ」
「・・・ありがとう、アルネアさん。よろしくおねがいします」
ぺこりと頭を下げるエリシア。
う~ん・・・
「エリシア、歳いくつ?」
俺は、年齢を聞いてみる。
女性に年齢を尋ねるのはご法度だが、年上に敬語を使われるのは何か嫌だし、
年下なら6歳未満なので平気だろう。
「えっと、6歳です」
エリシアが答える。
たしかに見た目6歳くらいだと思ったが、若いというか幼いのに礼儀がしっかりしてるな!
「よし、俺も6歳だから、お互い敬語はなし!アルってよんで!」
同い年に敬語で話されると、なんか変だしね。
「は、はい。じゃなくて、うん?」
エリシアは戸惑っている。
「あー、そのへんは好きでいいや」
まあ、仕方ないな。
「えと、じゃあ。アル、よろしくです?」
「うん、よろしく!」
――さて、そうと決まったら帰ろう。
「あ、そうだ。エリシア、飛行魔法使える?」
一応聞いてみる。ダメなら・・・俺が運ぶか。
「飛行魔法なら使えます。でも変身したほうが速いですよ?」
お、さすがドラゴン。エリシアも使えるらしい。
「いや、一応見られても大丈夫なようにね」
ドラゴンを見られたらまずいだろ!
「あ、そうですね。でも、飛行魔法って相当難しくて、
使える人はほとんどいないって聞いたんですけど・・・」
なんかすごいものを見る目で俺を見てくるエリシア。
回復魔法といい、なんといい、信じがたいのだろう。
「え、そうなの?」
でも、飛行魔法が難しいのは初耳である。
確かに覚えるのは大変だったが。
「はい、でもたしかにドラゴンより全然いいですね」
納得したようにうなずくエリシア。
「・・・よし、行こうか」
「はい!」
「お空を自由に飛べたらいいな♪<ウィング!>」
「わたしに天を翔ける翼を!<ウィング!>」
――バシュッ
――バシュッ
さあ、帰ろう。俺はどこかで聞いたような呪文で飛ぶ。
エリシアは真面目な呪文だ。
――およそ40分後(俺主観)
「よし、エリシア、着いたよ。ここが俺の家」
俺は、家を空から見下ろしつつ、エリシアに言う。
「お、おっきいですね。その、アルは貴族なんです?」
ああ、デカイ家だよな。俺も空から最初に見たとき驚いた。
「ん~?たぶん一応」
俺って貴族なんだよなぁ・・・
「見えないです・・・」
エリシア容赦ない!?
「・・・ぐはっ!」
俺は大ダメージだよ・・・
「あ、そうじゃなくて、貴族の人に良いイメージがなかったんです」
慌てて修正するエリシア。
「あー、なるほど。俺の家族はこんな感じだから大丈夫」
うん、こんな感じだよな?
「そうなんですか~」
エリシアはなんか想像してるっぽい
「よし、まあ一応エリシアがドラゴンってことも説明して大丈夫だろう!」
うん、大丈夫だろ!
「ほ、ほんとですか?」
信じられない!といった感じのエリシア。
「兄さんは論外だな。いい意味で。父さんは・・・シリアスモードじゃなきゃ平気。
リリーは・・・なんだ?やな予感がするが・・・。母さんはエリシアなら平気だな。」
「・・・いい意味で論外ってなんです?」
エリシアは何を想像したのか、びみょ~な表情だ。
「会えば分かる!」
兄さんはあんなだし。
そんなわけで、とりあえず兄さんを味方につける。
「おーい、兄さ~ん!」
俺は、部屋にいた兄さんに話しかける。
兄さんは部屋で筋トレをしていた。さすが兄さんだ!
「ふんっ・・・!アル、どうかしたのか?ふんっ・・・!」
腹筋しつつ、兄さんが聞いてくる。
俺は、一気に畳み掛ける!
「実は虐待されてたドラゴンの女の子を拾ってきたんだ!
名前はエリシア、人間に変身できる!」
「な、なんだと・・・!?」
なにやら怒りに震えるみたいな兄さん。
「えっと、アル、大丈夫なの?ほんとに?」
心配そうなエリシア。
「虐待なんてゆるせない!どこの誰だ!?」
兄さんは腹筋をやめてジャンプ!
華麗に着地しつつ怒った!
エリシアは、ドラゴンとか、人間に変身はスルーなの!?って、顔をしている。
「大丈夫だよ兄さん!俺が片付けておいたから!エリシアをウチで保護するのに賛成してくれるよね!」
「おお!もちろんさ!」
――おめでとう!リックがパーティに入ったぞ!
とりあえず、こっそりエリシアに話しかける。
「兄さんは良い人だから。いい意味で論外だったでしょ?」
「う、うん。そうかもです」
エリシアは、コメントがおもいつかないです。って顔だ。
万全を期すべく、母さんの部屋へ。
――コンコン
「お母さ~ん、いる?」
俺は、扉をノックしつつ聞く。
「アル?どうかしたの?はいっていいわよ」
母さんの声がした。
とりあえず3人で部屋に入る。
エリシアを見て若干驚いたらしい母さん。
「あら?そちらの可愛い子はどうしたの?」
「は、はじめまして。エリシアです」
若干緊張しつつ、エリシアは丁寧に頭を下げた。
それを見て、母さんは微笑む。
母さんは可愛い子は大好きだ。
「あら、丁寧にどうも。アルとリックの母のクリスです。よろしくね」
「はい、よろしくおねがいします」
もっかい頭を下げるエリシア。
――今だ!俺は一気に畳み掛ける!
「お母さん、実はエリシアはドラゴンなんだけど、大きなドラゴンにいじめられて、死に掛けてたんだ!
それで僕がケガを直してあげたんだけど、エリシアには行く場所がないんだ!
ウチで引き取ってあげてほしいんだ!」
「それは大変、うちで良かったら、いつまでもいていいわ!」
――母さんの許可を手に入れた!
「あ、ありがとうございます」
また頭を下げるエリシア。
「母さん、父さんの説得に行くんだけど、来てくれない・・・?」
俺は母さんを勧誘した。
「もちろん手伝うわ!」
――母さんが仲間になった!
「あなた、エリシアちゃんをひきとってあげたいの・・・」
母さんが上目遣いに父さんに頼む。
「わかった。オッケー!」
(――はやっ!?)
母さんの魅力に負けたのではなく、きちんと考えてると信じたい。
まあ、なにはともあれ・・・
「よかったな、エリシア」
「うん、アル、ありがとう」
エリシアは嬉しそうだった。
これにて一件落着!
だと思ってた。
問題は次の日の朝。
「う~ん、アルが起きてこないわね・・・そうだ、エリシアちゃん、起こしてきてくれる?」
「はい、わかりました」
「えっ、わたしもおにいちゃんおこすっ」
「じゃあ、二人で起こしてきてくれる?アルはなかなか起きないから」
「・・・・・」
「・・・・・」
――タダダダダッ
――ダダダダダッ
「アルっ、あさですっ起きて下さい!」
「おにいちゃん!おきて~~~!」
「・・・・あと5分だけ」
若干修正しました