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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第四章:三国魔法学校交流戦編・チーム戦
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第十話:黒き狂戦士





俺は、ギニアスが暴走し、凄まじい速度で駆け出し、

異様な黒い輝きを放つ<エレボス>でエリシアに切り掛かるのを見た。


エリシアは<月詠>で防ぐが、まるでトラックに轢かれたかのように、

弾き飛ばされ、地面を転がる。


俺も駆け出し、エリシアを助けに向かうが―――――





―――――間に合わない!



エリシアは骨が折れてしまったのか、剣を構えられない。

治癒魔法の光が輝くが、

ギニアスが異様な速度で追撃をかける。




エリシアに防ぐ手立てはない。




――――死ぬ?エリシアが?



俺は、言いようのない恐怖に襲われ、しかし間に合わない。


「<サンダーボルト!>」




雷撃を放つが、ギニアスは一瞬速度を緩めただけで、止まらない――――




「<メールシュトローム!>」

「<スターライト・ゼロ!>」

「盟約の下に顕現せよ!<シリウス!>」




碧の斬撃がギニアスの前の地面を切り裂き、

その突進が止まる。


凄まじい冷気の光線が放たれ、ギニアスは後方に跳んで避ける。


そして、フィリアの精霊、シリウスが咆哮する。

『<スターブラスター!>』



すさまじい光線がシリウスの口から放たれ、

ギニアスが剣で防ぐが、じりじりと後ろに押しやられる。


『――――――ガァァァァァッ!』



しかし、ギニアスが咆哮し、光線を吹き飛ばした。

が、俺はエリシアに駆け寄ることができた。


「―――――エリシアッ!<リヴァイブ!>」


「・・・・アル、ありがとうございます」


俺は、エリシアの体を支えつつ、

すぐさま<リヴァイブ>で治癒するが、

エリシアは攻撃が直撃したわけではないのに魔力損傷が激しい。

・・・今のギニアスの攻撃が直撃すれば、治癒できないかもしれない。



「ギニアス!目を覚ませ!」


ノエルがエルフの身体能力をフルに生かし、ギニアスに切り掛かる。

しかし、その異様なパワーで弾き飛ばされる。



『<エターナル・フロストティア>』


その髪と瞳を金色に輝かせつつ、

ローラが魔力すら凍るような冷気の弾丸を放つ。

しかし、それもギニアスは<エレボス>で防ぐ。



『<ハウリング・スター!>』


鋼鉄をも砕きそうな咆哮が、いつの間にかギニアスの上を飛ぶシリウスから放たれる。

が、ギニアスは黒い魔力の幕を張り、防ぐ。

周囲の地面がひび割れるが、ギニアスにダメージはなさそうだ。




『グアァァァ!<黒曜・村雨!>』



ギニアスが一回転し、全方位に雨の如き黒き斬撃が放たれる。

俺は、エリシアを守るべく、<天照>と<アウロラ>に魔力を込める。


『二刀よ、旋風となりて敵を退けろ!<旋風風車!>』


『<メールシュトローム!>』


『<アストライオス>、リミッター解除』


「シリウス!」

『任せろ!<シューティング・ブラスター!>』



いつの間にかシェリアとミリアを回収したノエルが碧い斬撃で押されつつも防ぐ。

ローラの<アストライオス>が恒星のように煌き、接近する黒い斬撃をすべて消し飛ばす。

シリウスから放たれる光は、黒い斬撃と衝突し、爆発する。

俺の前の高速回転する<天照>と<アウロラ>も、斬撃を防ぎきった。



大会管理の先生たちも、遅まきながら動き出した。

だが、あのギニアスを止められるのか?

と、真っ先に駆けつけた学園長が、なにかを拾い、俺のほうを向いた。


「アルネア、コイツを使え!」


学園長が槍投げオリンピックに出られそうな完璧なフォームで何かをぶん投げた。

柄をこちらに向けて飛んできたそれは、<アイテール>だった。

俺は、なんとかキャッチ。



ついで投げられた<シルフィード>は、重くて届かなかったので、

<マグネティション>で引き寄せる。

俺は、学園長に、軽く手をあげて感謝の意を表しつつ、ギニアスに向き直る。



ギニアスにノエルとローラが同時に切り掛かり、弾き飛ばされ、

その隙を埋めるべく、シリウスとフィリアが光弾を放つ。



・・・遠くから射出しても、おそらく効果はない。

ギニアスに接近し、<アイテール>をぶち込む。

鞘に例の細工をしてあるから、接近し、鍔迫り合いになれば確実に当たるはず。

・・・二回通じるかは謎だが、暴走して覚えてないことを祈る。

というか、はやく止めないとギニアスの体がもたない。


「シルフ」


『・・・無理です』

何を聞かれるか分かってたらしい。

すぐに否定される。



「ギニアスを止めるには、ユニゾンしかないと思うんだけど?」


『引き込まれます。いくらご主人様でも無茶です!共倒れになるのがオチです!』


いつになく必死なシルフに止められるが、他に方法がない。

ギニアスに接近するだけならまだしも、鍔迫り合いは普通には無理だ。


ノエルやローラやフィリアが無茶をしてもギニアスの動きは全く止められそうにない。

学園長がギニアスに切り掛かるが、弾き飛ばされる。



「――――アル、だめです!」


エリシアが必死な表情で俺の腕を掴むが、止まるわけにはいかない。

俺もギニアスの暴走に若干責任を感じないでもないし・・・

悪い奴じゃないしな。

というか、俺は困ってる人は可能なら助ける主義だ。



「――――放て!」


十数人の先生から魔法が放たれ、ギニアスを無力化しようとするが――――




『<奈落!>』


ギニアスの体が闇に包まれ、すべて吸収しつくした。

そして、吸収した魔力が集められ――――


『<黒曜・迅烈!>』



先生たちが放った魔法を更に強化し、

無数の黒い斬撃として、周囲に放った。


全員が一斉に弾き飛ばされ、ギニアスが咆哮する。



『グガァァァァァァァ!』



俺は、エリシアの頭をそっと撫でた。


「悪い、ちょっと助けてくる。必ず無傷で帰るから。待っててくれ」


「―――私も!」

エリシアが身を乗り出すが、俺は、そっと押し戻す。



「駄目だ。エリシアは腕がいかれてるんだ。エリシアがいると集中できない」


「そんな!そんなの・・・」



「・・・怖かったんだよ。エリシアが死ぬんじゃないかって」


「・・・ア・・ル?」




「夏休みに一緒に海にでも行ってやるから、大人しくしててくれ。必ず帰ってくるさ」


俺は、エリシアの手をとり、騎士っぽく口付けし、

エリシアをそっと引き離し、<シルフィード>に手を置いた。


「盟約の精霊よ!生命の根源たるマナの力をもって、我に力を!<精霊憑依ユニゾン!>」


『――――ご主人様っ!』


シルフが悲痛な叫びを上げるが、きっと大丈夫。

俺は、荒れ狂うマナの激流と戦う。




俺の体の魔力が爆発的に増加。

ギニアスが周囲に放つ荒れ狂うマナに引きずられ、

俺のマナも暴れ、全身が焼け付くように痛い。


暴走すれば楽になる。

が、それでは共倒れだ。

俺は、気力を、魂を振り絞り、疾風の如く駆け出した。



『ご主人様は馬鹿です!こうなったら速攻で決めるしかありません!』


『了解、悪いなシルフ』


『そう思うなら止めてください!<ハリケーン・ミグラトリィ!>』


俺の体が竜巻に覆われ、一気に加速。

こちらに気づいたギニアスが魔力を爆発させる。


『<黒鬼夜行!>』


黒い鬼たちが無数に現れ、草原を埋め尽くさんばかりに次々増える。


「――――ちぃっ!?」


俺は、前に現れた3体の鬼を立て続けに<天照>で切り裂き、

左手の<シルフィード>に魔力を集める。


しかし、鬼は無限かと思えるほどに出てくる。

互いに邪魔し合って機能していないのがせめてもの救いか。


『<ルインズ・ハリケーン!>』


シルフの放つ破滅の風が次々黒鬼を塵にする。

ギニアスがこちらをみてニヤリと不敵に笑い、突っ込んでくる。


『ご主人様!』


『<白夜月雷!>』


俺は、剣を引き絞り、放つ。

狙い通り、鍔迫り合いに―――――



『<黒曜・村雨!>』

『―――ッ!?<サーマルブラスト!>』


<シルフィード>を腹に叩き込んで動きを止めようとするが、

ギニアスも黒い斬撃を放つ。



――――しまった!




黒い斬撃が俺に直撃した。

激痛に襲われるが、コートがなんとか防ぎ、真っ二つになるのは免れる。


しかし、あまりの衝撃に受身も取れず、背中から地面に叩きつけられる。

ギニアスは腹に<シルフィード>が突き刺さるが、かまわず突っ込んでくる。

その剣が振り上げられ―――――



『浄化せよ!<アイテール・サーマルブラスト!>』


構わずに切り掛かりそうだったギニアスは、

しかし攻撃を止め、避けた。

おそらく、<シルフィード>との違いを認識している。


――――やはり、動きを止めないと駄目なのか!?



俺は、何とか体勢を立て直し――――


いつの間にか、黒鬼に包囲されていた。


『<黒鬼砲!>』


ギニアスが剣を俺に向け、一斉に黒鬼からレーザーが放たれた。


『<ストームディフェンサー!>』

『<風車!>』




―――――ドガァァァァン!




シルフが竜巻の壁を張り、

俺がカマイタチを放って、なんとか食い止め、

しかし、ギニアスが楽しそうに笑い、周囲の黒鬼が黒い光を放ちだす。



―――――まさか!?



『<バニッシュ・ジェノサイド!>』




―――――――――――ドガガガガガガガガァァァァン!







ギニアスの声と共に、無数の黒鬼が一斉に爆発した。






俺は、咄嗟に上空に飛び上がり、

しかし、逃れきれずに空高く吹き飛ばされた。


『ご主人様!大丈夫ですか!?』


『・・・なんとか』


全身が痛い。

精霊憑依のタイムリミットも近いかもしれない。


『<ウィング!>』


魔法で滞空し、下を見ると、凄まじい惨状だった。

煙でよく見えないが、あちこちにクレーターができている。



『――――魔力反応一つ、来ます!』


『―――――くっ!?』



いつの間にか<シルフィード>を引き抜いたらしいギニアスが物凄い勢いで追撃してくる。

<アイテール>を回収してないのに!



俺は、<天照>と<アウロラ>で迎え撃つ。


互いの剣が交錯し、俺の筋肉が悲鳴をあげる。

ギニアスの力が強過ぎ、俺は大きく弾き飛ばされる。




『ガァァァ!<三日月!>』

『くっ、<疾風迅雷!>』


ギニアスが黒い斬撃を放ち、それを俺は剣で切り上げ、

激突の反動を利用して、急降下。

しかし、見切られ、ギニアスの剣が俺を襲う。



「――――ぐっ!?」


凄まじい激痛が俺の脇腹を襲い、コートが少し切り裂かれる。

傷口から流れ込む黒い魔力が毒のように俺の体内の魔力を掻き乱し、

コントロールを失った俺は、一直線に地面に落下する。




『<黒雨!>』


ギニアスの剣が振り下ろされ、

黒い雨が俺を追撃する。


俺は、魔法で防ごうとするが、魔力が練れない。


<天照>と<アウロラ>を掲げ、せめて頭と心臓を守る。






「――――――がはっ・・・」




俺は、全身を貫かれ、地面に落ちた。

ギニアスは止めを刺すべく、剣を再び振り下ろす。



『黒き闇の槍よ・・・貫け!<グングニル!>』



ギニアスの手から、凄まじい速度で黒い槍が放たれる。

しかし、俺にはスローモーションで見えた。

このままだと心臓を貫かれる。

だが、指一本動かせない。





「――――アルっ!」




背中に焔の翼を出し、風を切り裂いてエリシアが<グングニル>を迎撃する。


「<白夜!>」



エリシアの両腕と二刀が白い雷となって空を切り裂き、

<グングニル>と激突し、爆発した。


「――――エリシアっ!?」




どうやら<グングニル>は迎撃すると爆発し、周囲に黒い斬撃を撒き散らすようだ。

エリシアは全身を打ち抜かれ、弾き飛ばされつつも空中で体勢を整える。



しかし、ギニアスは再びその剣を振り下ろす。


『グガァァァァ!<グングニル・インフィニティア!>』



その背後に無数の<グングニル>が生み出され、

次々と放たれる。


「――――っ!<サモン・ドッペル!>」


『<ディライト・ブラスター!>』


エリシアの前に白竜が召還され、その口から白い熱線が放たれる。

<グングニル>が次々爆散し、上空が黒い霧に包まれる。



その霧に感覚を惑わされ、

一瞬ギニアスをエリシアは見失い、


そして、ギニアスは凄まじい早業で、白竜の胸に剣を突き刺した。


剣などでは貫通できないはずの鱗を容易く貫かれ、白竜が消滅する。



「――――ア・・・ル」




エリシアが胸を押さえて落下し、鈍い音と共に俺の近くの地面に落ちた。

薄く光っていた<天照>の光が急速に弱まる。

エリシアは胸を押さえて口から血を流し、どんどん顔が青くなる。




俺の頭がスパークし、魔力が爆発する。





――――嘘だ・・・認めない・・・絶対に・・・





――――既に起きた事柄は変更できない。後で悔やんでも遅い。





――――・・・なんのための力だ。俺は何をしているっ!

    こんなところに寝そべって・・・俺は・・・!





――――なぜそんなにあの女に拘る?





――――俺は・・・エリシアともっと一緒にいたかったんだよ・・・!





――――そうか。ならば。私と契約しろ。私は創造と知性の精霊、アウロラ。

    対価はお前へのある程度の協力。代償として、私の目的の為にも協力してもらう。





――――エリシアを助けられるか?





――――どうだろうな?私は確信のないことは言わない。

    どうする?なかなかの悪条件だと思うが?





――――・・・わかった。頼む。





―――――ふふっ、いいだろう。ならばあの娘、私の名にかけて助けてみせよう。






『我は創造と知性の精霊、アウロラ。この者と盟約を交わす!』







暗雲を切り裂いて極光が煌き、俺は、再び立ち上がった。




『・・・創造を司る精霊の名の下に命じる!』


『生命の根源たる光よ!彼の者の器を再び創造し、魂を癒せ!』


『<ソウル・リジェネイション!>』




エリシアの体が極光に包まれ、見かけ上の傷は一気に治癒する。


『アウロラ、治せるのか・・・!?』


『ふむ、完全に死んでるな。

やれやれ、せっかく復活したというのにもう一度冬眠するハメになりそうだ』


『・・・つまり?』


『あの上空の黒いのを排除し、治療に専念する必要がある。魂はしばらく維持できる。

 お前がむしろ死ぬと思うが、ユニゾンなら――――』



精霊憑依ユニゾン!』


『やれやれ、知らんぞ?』


『ぶっ!?馬鹿ですかご主人様!本気で死にます!』



シルフが止めようとするが、無論俺は止まらない。

アウロラのマナが流れ込み、全身が灼熱するが、絶対に諦めない。




俺は、極光を纏って大地を蹴り、弾丸の如く舞い上がった。




待ち構えていたギニアスが術を放つ。


『<グングニル・インフィニティア!>』



と、俺の脳内にアウロラの声が響く。


『魔力が足りん。全部避けて温存しろ!』


『だ、駄目です!死にます!死んじゃいますっ!』


『悪いシルフ。エリシアが助けられないと意味無いんだ』


『なら、私の予備の魔力で―――!』


『残念だが、既に計算に入れてある』


『そ、そんな―――!?』


『いいか、使うのは<サーマルブラスト>一発のみ。

 接近したら私があの小僧を拘束する。その時に叩き込め』


『・・・ギニアスはどうなる?』


『・・・あの娘とどっちか選べ。どちらにせよ小僧は助からないと思うが』


『・・・わかった』


『可能な限り避け、最低限を剣で受け流せ。爆発するが、致命傷は防いでやる!』


『了解!』




俺は、無数に飛来する<グングニル>を避け、一気に加速する。

右に左に、ジグザグに飛んで、

<グングニル>を放ち続けるギニアスに狙いを定めさせない。


避けられないものを<アウロラ>で弾き、

時計回りに回転して爆発する衝撃を受け流し、


体勢を立て直しつつ、

もはや光が消えかかる<天照>と、

眩い極光を放つ<アウロラ>を構える。


『か、数が多過ぎます!』


『ふむ、想定外だな』


『洒落にならねぇぞ!』


『む?いい剣だな。シンクロ効果とは。

それにマナを流せ!あの娘を引き止めるのに役立つ!』


『む、無茶です!飛行を維持できなくなります!』


『・・・悪い、シルフ。頼む』


『―――――もう、知りませんよ!』



俺は一気にマナを流し込み、<天照>が淡い光を放つ。

しかし、俺の飛行速度が一気に落ち、<グングニル>が、俺にかすった。


爆発し、一気に吹き飛ばされ、そこに次々<グングニル>が迫る。


『ふむ、無茶だったな』


『ご、ご主人様!』



「―――――くっ!?」





――――避けられない!








『<スターライト・ゼロ>』

『<シューティング・スター!>』

『<メイルシュトローム!>』

『<ハマル!>』

『<アトロポス!>』

『<蝉時雨!>』




黄金の氷弾、流星の弾丸、碧の斬撃、獄炎の精霊、運命の精霊、無数の衝撃波が、

一斉に俺の後ろから放たれ、<グングニル>を次々迎撃する。


思わず後ろを振り返ると、

実体化し、空を駆けるシリウスの背中にへばりつき、

ローラ、フィリア、ノエル、兄さん、学園長に、ケイネスまで来ていた。



「・・・アル、急いで」

「私たちが援護します!」

「悪いが、ギニアスを頼む」

「アル、こいつを受け取れ!」


兄さんが<アイテール>を俺に投げ渡す。

しかも、<アイテール>に魔力が込めてあり、俺の魔力が少し回復する。



「・・・まったく、無駄にイケメンだよ、兄さん!」

俺は、<アイテール>を鞘にしまいつつ、言った。

これがあれば――――!



「いいかアルネア!お前ならやれる、突っ込め!」

「さっさと片付けてエリシアさんを助けにいけ!」


「了解!」




俺は、アウロラにほとんど魔力を渡し、からっぽだったが、

胸が熱くなるとともに、どこからともなく力が沸いてくる気がした。



『グガァァァァァァァッ!』


咆哮するギニアスに向かい、俺はすべての力を振り絞って飛ぶ。



「―――――ギニアス!目を覚ませ!」



次々爆発する<グングニル>の爆風を、

俺は極光と共に切り裂き、肉薄する。



<天照>と<アウロラ>がギニアスの双剣と激突する。


『<オーロラ・バインド!>』


「―――――グガァァァァ!」


ギニアスをオーロラが拘束する。

引きちぎろうともがくが、逃がさない!

俺は、鞘の<アイテール>に渾身の魔力を込める――――!


『すべてを浄化する根源たる光の剣!

 四源と根源の力をもって、彼の者を浄化せよ!<アイテール・サーマルブラスト!>』



凄まじい轟音と共に、

鞘から<アイテール>が銀の閃光となり、極光を纏って射出され、

ギニアスの腹に直撃、一気に暴走したギニアスのマナを浄化する。


「―――――グガァァァぁぁぁぁぁ・・・・」



ギニアスの暴走が止まり、落下。

シリウスが受け止めるのを視界の端で確認しつつ、

俺は、全力で急降下する。


『アウロラっ!間に合うか!?』


『・・・微妙だな』


『ご主人様、風で加速させます!』


『くそっ、<サンダーミグラトリィ!>』



俺は、地上で瞬く<月詠>の銀の光に向け、銀の雷となって突進する。


エリシアの横に、俺は足を犠牲にしつつ、無理やり着地する。


『アウロラ!』


『よし、まだ間に合う!キスしろ!』


「・・・は?」


思わず聞き返す。

はい?kiss?


なにゆえ!?


『マナを直結させて治癒する!竜族の秘術でもある由緒正しい方法だ!急げ、死ぬぞ!』



俺は、真っ白な頭のまま、エリシアにキスした。


『<ソウル・リジェネイション!>』


俺とエリシアのマナが溶け合い、灼熱し、

極光に包まれたエリシアの体が、一瞬銀色に輝いた。



そのまま、どれだけ時間がたっただろうか。

一瞬にも思えるし、永遠にも思える。



エリシアがうっすら目を開け、そして目の前の俺の顔を見て硬直する。

たちまち顔が真っ赤になる。


「――――ア、アル・・・!?」


その恥ずかしそうなエリシアがどうしようもなく愛しくて、

俺はエリシアを抱きしめ、

そして、俺は、そのまま血を吐いて気を失った。







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