第七話:爆炎な兄
さて、三国魔法学校交流戦・チーム戦は、
分かってはいたが、一部のチームが強過ぎた。
俺のチームは全員一年とは思えない、
自分で言うのはアレだが、天才集団である。
そして、ギニアスのチームも酷い。
ギニアス自身、傍流らしいが王家の人間で魔力が高く、
さらにエルフのノエル、
個人戦のギニアス戦で棄権した少女、ミリア・ヴェルツェニカ、
そして、直系の王族、シェリア・オーランド。
ミリアの実力は未知数。
シェリアは、ローラに個人戦で敗れており、ローラ曰く、そこそこ。
・・・まったく未知数だ。
まぁ、とりあえず俺たちは二回戦、三回戦、四回戦で圧勝。
準決勝なのだが・・・
「・・・兄さんか」
俺は、思わず溜息をついた。
兄さんはあんなんだが、めちゃくちゃ強い。
そして、兄さんのチームはラルハイトの三年生最強チームである。
確か、兄さんと、獣人の女の人と、天才女剣士と、魔法少女だった気がする。
いや、年上に少女って・・・って俺も思うが、それ以外に言いようがない。
なにはともあれ、ケイネスより手ごわいと俺はにらんでいる。
・・・まぁ、もうすぐに戦うから、今更どうにかできるものでもない。
最後の作戦会議だ。
「よし、エリシアは獣人の人、ローラはでかい剣の人、フィリアはローブの人を頼む!」
「了解です」
「・・・わかった」
「はい、任せてください」
俺たちは、軽く頷きあい、所定の位置へ歩き出した。
「両チーム、構え!」
審判の声と共に、一斉に武器が抜かれ、構えられる。
俺は、<アウロラ>と<シルフィード>を抜いた。
兄さんが<ハマル>を抜きつつ、こちらを見てニヤリと笑った。
俺もニヤリと返しておく。
「試合、開始!」
俺は、またしても一気に突っ込む。
向こうからも、リック兄さんが突っ込んでくる。
一騎打ちだ。
「兄さん、今日こそ勝たせてもらうよ!」
「いいだろう、来いっ、アル!」
一気に距離を詰め、互いの剣が魔力に包まれた。
俺は、両腕を後ろに引き絞り、二刀が白銀の光に包まれ、
兄さんは、精霊剣<ハマル>を振りかぶり、紅蓮の光に包まれた。
「<白夜!>」
「<紅蓮剣!>」
――――ガキィィン!
お互いに後ろに弾かれ、同時に着地、
再び突っ込む。
「<疾風迅雷!>」
「<火炎演舞!>」
接近しながら、
俺の二刀が空を切り裂き、雷と真空波が放たれる。
兄さんの剣が舞うように動き、炎の刃が次々放たれる。
―――――ドゴォォォン!
爆炎を切り裂き、再び俺と兄さんは激突し、
鍔迫り合いになった。
「アル、俺に筋肉で勝てると思ったかぁぁぁっ!?」
「兄さん、戦いは筋肉じゃなく、剣技だよ・・・!」
俺は、兄さんの力を巧みに受け流し、
兄さんはすさまじい力で押し切ろうとする。
「<雷鳴剣!>」
「<爆熱剣!>」
俺の剣を高圧電流が流れ、
兄さんの剣からすさまじい熱が放たれる。
「――――あちちちちっ!?」
「――――うがががっが!?」
お互い、咄嗟に魔力装甲を強化してダメージを軽減したが、
辛いものは辛い。
互いに後ろに跳び、距離をとる。
周囲の戦況を確認すると、
エリシアとローラは若干押しているが、フィリアは押され気味だ。
ほぼ拮抗してると言っていい。
「さすがアルだな。俺たち先輩なんだが」
兄さんはとても楽しそうだった。
「いや、筋肉なら兄さんには敵わないよ?」
「言ってくれるじゃないか。だがアル、これならどうだ?」
兄さんの魔力が集い、
<ハマル>が紅蓮の焔に包まれる。
「<精霊憑依!>」
兄さんの魔力が一気に膨れ上がり、
一気に周囲の熱が上昇する。
「・・・いくぞシルフ、<精霊憑依!>」
『ユニゾン入りました~♪』
シルフのマナが俺に流れ込み、一気に俺の魔力が上昇。
風を身に纏い、体が一気に軽くなる。
「ふっ、俺の魂が、筋肉が、熱く唸りを上げるぜ・・・!」
「むしろ暑いんだけど。というかその性格でよくモテるね」
「アル、いつまでそんなに余裕でいられるか見せてみろ・・・!」
「兄さんこそ、そんなテンションがいつまでもつかな・・・!」
「<白夜月雷!>」
「<爆熱紅蓮!>」
―――――ガキィィン!
互いに凄まじい勢いで突っ込み、交錯した。
精霊憑依で強化された身体能力を生かし、
俺と兄さんは次々と斬撃をはなち、受け流す。
互いに一歩も譲らず、お互いにダメージを積み重ねる。
―――――――――――――――――――――――
私は、<エルディル>を引き抜き、
アルに頼まれたとおり、獣人の女の人に突っ込む。
どうやら、向こうも真っ向勝負を挑んでくるようだ。
リック兄さんならそうだと思いましたけど。
獣人の女の人は、猫のような耳と尻尾をしていた。
長い剣を構えつつ、突っ込んできた。
「あたしはナタリア、いざ尋常に勝負!」
獣人の人改め、ナタリアが剣に魔力を流す。
「エリシア・フォーラスブルグ、受けて立ちます!」
私も魔力を流し、<エルディル>が白い光を放った。
私は、走りつつ、剣を下段に構え、剣技を発動する。
「<疾風迅雷!>」
ナタリアは、その剣を獣人のパワーで一気に振り下ろす。
「<岩石砕!>」
まさしく疾風の如く振り上げられた<エルディル>と、
岩をも砕かん剣が激突する。
―――――ガキィィィン!
「馬鹿な!?力で負けるなんて!?」
圧倒的に人間にパワーで勝るナタリアは、
しかし後方に弾き飛ばされ、驚愕した。
勝てる。
私は確信した。
しかし、アルが負けたら負けだ。
速攻で決めて、援護にいく。
邪魔しちゃいけない気もするけど、
アルがケガしてから後悔しても遅いのだ。
・・・前みたいにアルを過信して傷つけるわけにはいかない。
全力を開放した私の瞳が薄く白い光を放った。
「<燕月!>」
右に構えた<エルディル>が唸りを上げ、ナタリアを襲う。
「――――くっ!?」
ナタリアは後ろに跳んで躱したが、
私も同時に距離をつめ、<エルディル>を両手で掴み、
渾身の力で今度は左から右に振りぬいた。
――――バギャァァァァン!
「―――――グッ!?」
ナタリアの剣がへし折れ、遥か彼方に吹き飛んだ。
「―――――はぁぁぁっ!」
私は、若干手加減しつつ、ナタリアを蹴り飛ばした。
ナタリアはそれでも5メートルほど吹き飛び、倒れた。
アルの方を見ると、互いに精霊を憑依させたアルとリックが、
凄まじい速さで剣を交えていた。
対戦相手を氷像にしたローラが、私に軽く頷き、
フィリアの援護にいくのが見えた。
――――――――――――――――――――――――――
「――――――うおおおおぉぉぉぉっ!<業炎剣・衝弦!>」
「――――――うおおおおぉぉぉぉっ!<白夜月雷!>」
兄さんの剣が凄まじい勢いで横なぎに放たれ、
俺はその剣腹に剣をぶちあて、防ぐ。
―――――バギャァァァン!
が、兄さんはその筋力にものをいわせて突っ込んできた。
<アウロラ>が浅く兄さんの左腕を切り裂くが、止まらない。
その剣を振り上げ――――
「<爆砕流!>」
「―――くっ、<疾風迅雷!>」
――――ガギャァァァン!
「――――――ぐっ!」
俺は弾き飛ばされ、体勢が崩れる。
「うおおおおっ!」
兄さんはその隙を逃さず、一気に距離を詰め――――
「―――――――させません!」
「――――うおっ!?」
―――――バギャァァン!
突如エリシアが横からとび蹴りを放ち、
兄さんは剣の腹で受けるが、凄まじい勢いで吹き飛ばされた。
「<ガトリング・サンダーブラスト!>」
エリシアの手から怒涛の勢いで雷撃が放たれ、
兄さんが慌てて剣を盾にする。
「おい、エリシア!?」
「勝負とは無情なものです!」
兄さんが慌てるが、エリシアは容赦なく次々と雷撃を放つ。
「ごめん兄さん、やっぱり勝敗って大事だよね」
俺も手に魔力を集めた。
「振り下ろすは雷神の一撃!<トールハンマー!>」
「―――――<ヴォルカニック・スラッシュ!>」
兄さんが剣を振り上げ、雷撃と雷神の一撃を弾き飛ばす。
「フフフ、甘いぞアル!その程度でこの俺は――――!」
リック兄さんが気炎をあげ――――
「・・・暑いわ。<ブリザード>」
背後に音もなく現れたローラが一瞬で兄さんを氷像にした。
どうやら、苦戦していたはずのフィリアも勝ち、こっちの援護にきたようだ。
・・・
えー・・・。
あっけない最期だった。
「試合終了!」
次回、『黒銀の決勝戦』