第六話:運命の貴公子
さて、遂にチーム戦が始まった。
俺のチームは、リーダーが俺。
メンバーはエリシア、ローラ、フィリアだ。
チーム名は「ラルハイト一年選抜」だ。
フィリアの面子のためにも、あまり変なのはまずいだろうと。
いま、会場の草原で円陣を組み、試合開始を待っているところだ。
会場の範囲は、野球ドーム2個ぶんくらい。広い。
対戦相手は、「共和国の貴公子と守護者」
・・・おい。
この名前のせいで、チームが死んでいる。
相手チームは、ケイネスと、いつぞやの金髪美女と、
金髪マッチョ二人だ。
「よし、速攻でケイネスを落とすぞ」
「はい、アル。<月詠>はどうしますか?」
「温存で」
<天照>と<月詠>は、秘密兵器だ。
というか、あの剣は勝手に魔力をマナに変換する機能を持ち、
あの紋様は異常に目立つので、温存すべきだ。
「・・・アル、私はどうすればいいの?」
「ローラは、雑魚の撹乱を頼む。凍り付かせといてくれ」
「・・・わかった」
ローラは神妙に頷いた。
味方だと頼りになるな。
「私はどうすればいいでしょうか?」
「フィリアはケイネスの隙をついてくれ」
「はい、わかりました!」
フィリアの<光>属性は速度が速い。
ケイネスの隙を突くのには最適だろう。
「アル、私はどうすればいいです?」
「エリシアは上空から爆撃で」
「・・・わかりました」
「あ、スカート大丈夫?」
「はい、下にズボンをはいてます」
「両チーム、構え!」
審判の合図で、一斉に剣を抜く両チーム。
俺は、<アウロラ>と<シルフィード>を抜いた。
「試合、開始!」
俺は、魔力装甲を展開しつつ、一気にケイネスを葬るべく、駆け出した。
エリシアが飛び上がり、フィリアは俺の右斜め後ろにつき、ローラは左後ろ。
そして、相手は4人同時に同じ術を発動した。
「「「「紅蓮よ、大地を赤く染めよ!<ヴォルケイティア!>」」」」
合唱だ。
ある程度のチームワークが必要だが、4人でやれば、6人分くらいの出力になる。
溶岩がすさまじい勢いでこちらに迫ってきた。
だが、こちらの個人能力の高さをなめてもらっては困る。
「<サンダーボルト!>」
「<ブリザード>」
「<レイ!>」
俺から白い雷、ローラから白い氷、フィリアから白い閃光が放たれた。
・・・え、なにこれ?みんな白魔力なのか?
―――――ドガァァァン!
「大地を穿て!<メテオ!>」
俺たちが何とか溶岩の流れを凌いだところで、
上空のエリシアが術を発動。
怒涛の勢いで隕石が20個ほど降ってきた。
「いでよ、盟約の精霊!<アトロポス!>」
『また戦うことになるとは。これも運命でしょうか?』
『汝ら滅びる運命なり。<ディスティニー・アロー!>』
アトロポスが召還され、すさまじい数の赤い矢が現れ、
次々上空に放たれる。
隕石はどんどん消滅していく。
「召還!<シルフィード!>」
『<ルインズ・ハリケーン!>』
シルフは空気を読んで、即、術を発動。
破滅の風が矢を次々消滅させる。
そして俺は、ケイネスを射程に捉えた。
俺は、<アウロラ>を<アルザス>に持ち替え、魔力を流す。
――――魔力開放!
「<サーマルブラスト!>」
―――――バギャァァァァン!
すさまじい勢いで<アルザス>と、<シルフィード>が射出された。
予期していたのか、
デカい金髪二人がタワーシールドに魔力装甲を張って間に入った。
――――ガイィィィン!
「ぐぁぁあぁっ!?」
「がはっ!?」
想定外の威力だったのか、二人とも5メートルほど吹き飛んだ。
俺は、<アウロラ>と<アイテール>を引き抜き、
走りつつ、腕を後ろに引き絞り、魔力を溜める。
二刀が銀の閃光を放った。
『<白夜!>』
「<ディバイン・スラッシュ!>」
ケイネスがその大剣で、迎え撃つ。
―――――ドギャァァァン!
「<ガトリング・レイ!>」
「<アブソリュート・ゼロ>」
「<エンシェント・フレア!>」
俺の白夜を受けきれずに後方に弾き飛ばされ、
さらに電撃の追加ダメージを受けたケイネスを、
その瞬間を狙っていたフィリア、ローラ、エリシアの一斉射撃が狙う。
「「イラプション!」」
「オルト・マグナブラスト!」
大男二人が合唱で溶岩を手から放ち、
先ほどから詠唱していた金髪美女が巨大な溶岩ビームを放つ。
「――――<精霊憑依!>」
―――――ドギャァァァン!
爆発を切り裂き、焔の障壁を纏ったケイネスが俺に突っ込んできた。
「悪いが、勝たせてもらう!」
ケイネスはニヤリと笑った。
俺は、不吉な予感を感じ、一気に魔力を剣に込めた。
「<ディスティニー・ブレイカー!>」
『<白夜月雷!>』
ケイネスの剣が眩い金の光を放ち、すさまじい勢いで振り下ろされた。
俺は、<白夜>の強化版、<白夜月雷>で迎え撃つ。
――――――バギャァァァァン!
「――――――くっ!?」
「―――――まだまだ!」
俺は、大きく後ろに弾かれ、体勢が崩れる。
そこにケイネスが一気に突っ込んで――――
「「<疾風迅雷!>」」
―――――バギャァァン!
上空からケイネスの後ろに回りこんだエリシアと、
俺が同時に<疾風迅雷>を放ち、ケイネスは横に跳びつつ、剣の腹で受けた。
形勢を逆転し、俺とエリシアは一気に攻勢にでる。
「「<白夜!>」」
再び同時に剣技を発動。
ケイネスも剣を構え、対抗する。
「<ディバイドスラッシュ!>」
―――――ガキィィィン!
再び、ケイネスが後方に弾き飛ばされた。
「<ミラージュ>」
「――――くっ!?」
突如ケイネスの後方にローラが現れ、一閃。
ケイネスの左腕に一撃を加え、鮮血が舞った。
「<サンダーボルト!>」
俺の手から銀の雷撃が放たれ、ケイネスは防ぎきれずに、一瞬動きが鈍る。
「<白夜!>」
さらに再びエリシアが<白夜>で追い討ちをかける。
―――――ガキィィン!
「――――ぐぅぅ!」
ケイネスが再び弾かれ、しかし距離をとって体勢を整えようと――――
「<アブソリュート・ゼロ>」
「――――<フェイト・ブレイカー!>」
ローラの絶対零度の光線を、ケイネスの剣がすさまじい輝きを放ち、吹き飛ばす。
「・・・奥の手だったんだが、仕方ないな」
ケイネスはどこか楽しそうに言った。
ケイネスの仲間の大男二人は氷付き、救助され、退場。
金髪美女はフィリアがどんどん追い込んでいる。
3対1だが、精霊憑依は馬鹿にできない。
こっちもすればいいのだが、4連戦なので、避けたい。
と、ローラの瞳が金に輝いた。
一気にその魔力が増える。
『――星空を司る黄金の剣よ―――』
ローラの<アストライオス>が眩い光を放つ。
ケイネスも危険を察知し、ローラに向き直る。
俺は、一瞬エリシアと目を合わせ、一気に突っ込んだ。
「「<白夜月雷!>」」
「――――くっ!?」
三つの剣が白銀の閃光となり、ケイネスを狙う。
――――ガキィィィン!
『――星海の無慈悲な氷結を此処に―――』
ケイネスが10メートルほども吹き飛び、俺とエリシアはさらに追撃。
「「<サーマルブラスト!>」」
三本の剣がケイネスに向かって飛び、
ケイネスは、吹き飛ばされつつ、迎え撃った。
「<フェイト・ブレイカァァァッ!>」
『絶対零度において―――唯一輝くは星の光!その力を示せ――――!』
―――――ガキィィィン!
ケイネスが更に吹き飛び、正直オーバーキルな感じがしたのだが・・・
『<絶対零度の星光!>』
ローラがすさまじい冷気を纏った<アストライオス>を一振りし、
草原が一瞬で凍り付いた。
ケイネスごと。
もうケイネスのライフは0だよ・・・
「試合終了!勝者、ラルハイト一年選抜チーム!」
『危なくなったら介入するつもりでしたが、不要でしたね♪』
「いや、手伝ってくれよ・・・」