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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第四章:三国魔法学校交流戦編・チーム戦
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第三話:己を写す水晶



さて、洞窟を見つけて、自分以外に周囲に人がいなかったら、どうすべきだろう?


もちろん、探検さっ!



俺は、<アウロラ>を拾ってから、洞窟の奥・・・

どっちが奥だ?

なんか通路の壁を突き破ったようだ。

右か左に行ける。

通路は天井の高さ2メートルほど。

幅は3メートルほどだろうか?

壁が魔力を纏った石でできてるらしく、薄く光っている。


ちょっと気になって調べたが、脆かった。

むぅ、光る剣とかいいと思ったんだが。


一応、背負って来ていたリュックに少し入れておく。



え~と、左から魔力が流れてきてるな。

・・・魔法鉱床は魔力を出すって本で読んだが、

もしかすると魔獣の可能性もあるんだよな。



<キメラワーム>とか出たらやだなぁ・・・


<キメラワーム>はS級モンスターで、小さくても100メートル以上の巨体。

好戦的で、いきなり地面の下から襲ってくるとのこと。

しかも、魔力装甲はビッグボアの比ではないらしい。



鉱山などによく生息し、出現すると鉱山は即閉鎖されるらしい。

もしかすると、この洞窟もそういう類かもしれないと思った。




歩き続けて30分ほど経っただろうか?

大きな広間のような場所に出た。



・・・俺の想像は大きく裏切られた。





『貴様、何故我が眠りを妨げるか・・・!』


洞窟に、年を取り、しかし凄まじい威厳を感じさせる魔声が轟いた。



広間には、巨大なドラゴンがうずくまっていたのだ。


ドラゴンの色は深紅。


大きい。少なくとも全長50メートル以上ありそうだ。



「・・・申し訳ない。探し物をしていたら迷い込んでしまったのです」

怒らせるべきではない。

俺はとにかく謝罪の意を表し、頭を下げた。



『・・・何を探していたのだ?』


「この貰ったコートに助けられたので、これに見合うだけの剣でも作り、

お礼に贈ろうかと思い、剣の材料を探してました」




『コートだと?たかがそれだけのために、

この<ディグリス>の眠りを妨げたと?

 それだけのために我が聖域に足を踏み入れたと?』


ドラゴンの体から、魔力が溢れ出し、一気に空気が張り詰める。

確実に怒っている。だが、それはこちらとて同じこと。



「・・・たかがそれだけだと?コイツはただのコートじゃない。訂正してもらおうか」


俺は、魔力を開放し、<アウロラ>と<アイテール>を抜いた。

ドラゴンのすさまじいプレッシャーを押し返し、銀の瞳で睨み返す。




『・・・銀の瞳だと?面白い。どのようなコートだか興味がわいたぞ・・・!』


<ディグリス>が魔力を放つと、それに反応して周囲の鉱石が輝き、

広間が明るい光に包まれた。







『―――――馬鹿な!?』


「なんじゃこりゃ!?」



ディグリスと俺は、思わず驚きの声を上げた。

竜の刺繍がある以外無地だった俺の黒いコートは、

一面、銀の幾何学模様に包まれ、竜の刺繍も銀に煌いていた。


正直、洒落にならない魔力量だ。

サーマルブラストでも一撃では貫けない気がする。



『―――封魂術式に月竜の紋章だと!?貴様、どこでそれを手に入れた!?』


・・・ディグリスの慌てぶりは半端じゃない。

素直に答えたほうがいい気もするが、エリシアは追放された身である。

どうすべきか・・・


俺は一瞬考え、言った。



「・・・名も無き竜から貰った」



昨日、エリシアに、なぜ最初に会ったときに名前が無いと言ったのか聞き、

竜族では、追放の際に名前を剥奪されると聞いた。


だが、決闘を挑む際には名前を名乗らなくてはならない。

仕方ないので、さっくり規則を破ったらしい。

確か本名は・・・・エルシフィアだっけな?奇遇にもエリシアに似てる。



まぁ、これならエリシアだと特定できまいと思ったのだが――――



『――――まさか、エルシフィア様か!?』



・・・速攻バレた。


「・・・まぁ、そうだけど」

仕方ないので、俺は開き直ることにした。

様付けだし、意外と平気かもしれん。



『・・・エルシフィア様はグリディアのヤツに殺されてしまったと聞いたが?』



「・・・俺が助けたけど?」



『・・・確かにその紋章はエルシフィア様のものだが・・・お前は人間か?』


あ、貴様からお前にクラスアップ?した。


「・・・そうだが?」



『・・・人間とは思えん奇妙な魔力だが・・・

なるほど、確かにそのコートの返礼ならば普通の品物では釣り合うまい。

失礼なことを言ったな。すまぬ』



・・・急に謝られると怖いんだが。


「いや、こちらこそ眠りを妨げて申し訳ない」




『・・・我としたことが、エルシフィア様の魔力に気づかず、

 侮辱するような言葉を吐いてしまうとは・・・』



「・・・あの子と、どういう関係だったんですか?」


俺は、その言葉に様々な思いを感じ、思わず聞いていた。




『我は、エルシフィア様のご両親に仕えておった。

 エルフィア様が追放され、お二人がお亡くなりになる日までな。

 我にとっては、孫のような存在であった』



「・・・何故、追放されたんです?」




『・・・グリディアのヤツが竜族をその力で牛耳っておるのは知っているか?』


「・・・予想はしていましたが、詳しいことは知りません」




『エルシフィア様は、始祖竜様の力を引き継いで生まれ、

成長すれば間違いなく竜族最強であった。

だが、グリディアはそれをよしとせず、エルシフィア様を自分のものにしようと考えた』



『しかし、エルシフィア様とご両親はそれを拒否し、

グリディアはエルシフィア様の追放を賭けてご両親に決闘を挑んだ。

エルシフィア様はまだ決闘が受けられる年齢ではなかったのでな』



『竜同士の決闘以外の殺し合いはご法度だが、追放された竜は別だ。

・・・自分のものにならないのなら、殺してしまおうと考えたのだ』



『結果、お二人は殺され、エルシフィア様は行方知れず。

この件でグリディアに逆らおうとする者はいなくなってしまった。私も含めてな』





予想通りといえばそうだが、実際に聞くと何とも言えない気分になった。



『我はエルシフィア様に会うわけにはいかぬが、

 エルシフィア様をよろしく頼む・・・』



「・・・ああ」

きっと、追放された竜には会えないという掟があるのだろう。

竜は掟と盟約を至高とする。破るわけにはいかないのだ。




『そうか、ならば右奥の部屋に保存してあるルーンクリスタルを持っていけ。

 そのコートがあれば蓋が開くだろう』



「・・・ルーンクリスタル?」




『・・・知らんのか?竜族においてもっとも尊い宝石であり、

 絶対に壊れることはない。希少すぎるために、皇族の儀式にくらいしか使われんが』


「なるほど・・・でもそれって加工できないんじゃ?」




『初めて魔力を流された時に、その者の想像によって武器が創造される。

 同じものを二本作って片方を相手に贈るのだ』


「なるほど、もう片方は?」




『・・・自分で使え』


「ほう、何でですか?」




『貴様、馬鹿か?』


「なんで!?」

竜のお爺さんにまで馬鹿にされた!?




『我は、エルシフィア様をよろしく頼むといったのだが?』


「え、はい。頼まれました」




『・・・そのコートの紋様と刺繍の意味は知っておるか?』


「知らないです」




『はぁ、先が思いやられるな・・・エルシフィア様の手を握ったことはあるか?』


「え!?まぁ、ありますが・・・」




『・・・そうか、ならいい。クリスタルを取ってこい』


「・・・?」

俺は、わけが分からないまま、右奥に歩いて行き、

通路を少し歩くと、扉があった。

とてつもなく頑丈そうだが、ディグリスの魔力が閃き、勝手に開いた。


中はかなり広い部屋だった。体育館のようだ。

そこには、いくつもとてつもなく頑丈そうな箱がおいてあった。

箱は一つ一つが大きく、棺桶のようだ。

が、ほぼすべて空だ。

一番奥の、一番端に唯一蓋の閉まった箱があった。



その蓋には、古代語で『エルシフィア』と刻んであった。

・・・もともとエリシア用?


ディグリスから離れてから、黒い無地に戻っていたコートが一瞬煌き、蓋が勝手に開いた。


「・・・なにこの超技術」


正直、科学技術よりすごそうなんだが・・・


箱の中には、でかい水晶がふたつ入っていた。

・・・これがただの水晶でも凄まじい値がつきそうだ。


が、持ち上げると軽い。

見た目、数十キロはありそうなんだが。


と、どうするべきか悩んでいると、魔声が聞こえた。


『聞こえるか?少年よ』


お、少年にまでクラスアップ!


『はい。今蓋が開いたところです』




『そうか、ではどのような武器にするかは決まったか?』


『なんとなくは』




『そうか。お前の心に応じた形になるが、何も考えなかった場合、

我が知る最悪の事例では、針になったり棍棒になったりしている。

それが最後のクリスタルだ。気をつけろよ』


それは酷いな・・・針って、どうやって戦うんだよ。



『了解です』


『では、頑張れよ』




俺は、二つの水晶に手を置き、渾身の魔力を流し込んだ。





―――――リィィィィィン





鈴が鳴るような音が響き、銀の閃光が閃いた。



現れたのは、銀の刀だった。

白銀色で、半透明だ。

手にジャストフィットし、魔力の伝導率が異様に良い。


二本のうち一本は、若干握りが小さい。

こっちがエリシア用ってことなのか?

だから手を握ったことがあるか聞かれたのだろうか。


あと、鞘もあり、こちらは白色で、半透明ではなかった。


・・・どんな便利水晶だよ。


魔力で俺の望んだ姿になってるということか?





なにはともあれ、俺はディグリスのところに戻った。


「ありがとうございました。無事に完成しました」


俺は、ディグリスに頭を下げた。

なんだかんだでけっこう助けてもらったし。



『もともとソレはエルシフィア様のための物だ。気にするな。

 迷惑をかけたな。

 ・・・エルシフィア様に、幸せになってくれと伝えてくれないか?』


「分かりました」




『それと、勝手に銘がつくはずだが、何となっている?』



「・・・<天照アマテラス>」




二本の刀の銘は、両方とも<天照>だった。






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