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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第三章:三国魔法学校交流戦編・個人戦
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第十二話:王国の神童

朝だ。

・・・今日は決勝戦か。

俺は、起き上がろうと・・・

何故かエリシアも一緒に寝ていた。


と、エリシアは目を開けて、若干疲れた顔でこちらを見た。


「・・・アル、体調はどうです?」


言われてみると、完全に回復して・・・

というか、前より体調がいいんだが。


「ああ、すごくいいよ。ありがとな」

言いつつ、エリシアの頭を撫でる。

むぅ、髪がサラサラで気持ちいい。



「・・・もともと私のせいですし・・・あと、ちょっとアルのマナをブーストさせました」


「・・・ブースト?」




「体内のマナ量を増やしたので、魔力、治癒力、筋力も上昇しているはずです」


「・・・途方も無く便利な気がするんだが・・・多用しないのはやっぱり訳があるのか?」




「そうですね。(ほんとは私のマナを譲渡しただけですし・・・)」


「そっか。じゃあ、俺はそろそろ行かないと・・・って、着替えてない」


早く着替えないと時間がまずい気がするのだが・・・



「私は疲れたので寝ます」

エリシアはそういって、目を閉じた。

ほんとに寝てるんだろうな・・・?



俺は、風呂場・・・という名の浴槽しかない部屋でわざわざ着替えた。

この世界の人間は大なり小なり魔法は使えるので、お湯はどうとでもなる。


が、問題発生。

・・・俺のいつもの黒いコートが、昨日の試合で消し炭になっていた。

むぅ、けっこう長い付き合いだったんだが・・・



――――コンコン


と、風呂場のドアがノックされた。



「アル?もう着替えましたか?」


「・・・もう寝たんじゃなかったのか?」




「そのつもりだったんですが、大事なことを忘れてました」


「・・・?」


エリシアが扉を開けて入ってきた。

なにやら、黒い布を持っていた。


「・・・なにそれ?」


「・・・弁償です」

エリシアはそれだけ言って去っていった。


と、言うことは・・・


その布を広げると、案の定コートだった。

基本黒だが、よ~く見ると左胸のところに銀で何か刺繍が入ってる。


(・・・ドラゴンかな?)


超ミニマムサイズで銀の竜の刺繍が入っていた。

しかも何か魔法がかかってるっぽい。

巧く隠蔽してあるが、洒落にならない魔力が編みこんである。


(・・・どこで買ったんだよ、こんな高そうなもの)


この軽くて丈夫そうな黒い布地が何で出来てるのか、

知識の無い俺には全く分からないのだが、シルクっぽい肌触り?


というか、やたら精巧な銀の刺繍が高そうな感じをかもし出している。

まぁ、俺にはオシャレのセンスがないのでよく分からないのだが。

なんとなく騎士団の旗印とかになりそうな感じだ。



とりあえず、制服の上に羽織る。

軽かった。

丈もぴったりだし、ちゃんと地味だ。

俺は地味なほうがいいから。

まぁ、多少のアクセントはあったほうがいいと思うが。



で、腰に剣をいつもどおり装備。

武器は装備しないと意味ないよ!





ちょっとベットの方を見ると、エリシアが枕に抱きついて寝てた。

寝てると、いつもより幼く見えるんだよなぁ・・・



俺は、起こさないように、静かに部屋をでて、会場に向かった。





…………




「……そういえば、決勝戦の相手は誰だ?」

「あーーっ! こんなところにいたの、お兄ちゃん!」



 と、選手控え室付近でリリーが走ってきた。



「あんまり走るなよ。というか、ここ入っていいのか?」

「むぅ、急に試合は何も見えないし、急に終わって倒れるし、部屋に行っても返事がないし鍵がかかってるしで心配してたのに……!」



「……まぁ、なんだ。ごめん」

「分かればいいんだよ。……ところでお兄ちゃん、フィリアが負けちゃったの知ってる?」



「……は?」




 あのフィリアが?

 学校でエリシアと戦ってるのを見たくらいだが、相当強いと思ってたのに。



「……リリー、それじゃあ俺の相手は?」

「王国の神童ことギニアス・オーランド。っと、そろそろマズイかな。頑張ってね、お兄ちゃん!」




 フィリアに勝つほどの相手……。

 どうやら、決勝戦も厳しい戦いになりそうだった。





――――――――――――――――――――






「さぁぁて!個人戦もいよいよ大詰め!決勝戦だぁぁぁぁぁ!」



「「「「 ワァァァァァァァァッ! 」」」」



会場に、三国の魔法学校の生徒たちの歓声が轟き、

俺は、一応身だしなみを再確認。


『ご主人様、頑張ってくださいね♪』


「こんなときでもシルフは緊張しないのか?」



『召還されなければ戦わないですし、傍観者です♪』


「・・・今回は決闘じゃなく、ただの試合だから召還するかもしれないぞ?

それでも緊張しないのか?」



『ワクワクしてますよっ♪』


・・・実は戦闘狂だったりするのか?





「さぁぁて、まずはラルハイト魔法学校より、

 銀雷の魔術士、アルネア・フォーラスブルグ!」




俺は、その声とともに、フィールドに出る。

大歓声の会場を見渡す。

応援する仲間たちの姿が見えた。



「対するは、オーランド魔法学校より、

 王国の神童、ギニアス・オーランド!」




その声と共に、反対側から現れたのは――――

ケイネスの治療を手伝ってくれた、黒髪の青年だった。



「やぁ、キミが噂のアルネア殿とは」


「そっちこそ噂の神童とは思わなかったよ」




「・・・その呼び方はあまり好きじゃないんだ。

 ギニアスと呼んでくれないかな?」


「じゃ、俺はアルで頼むよ、ギニアス」




「オーケー、アル。いい勝負をしよう」


ギニアスは爽やかに微笑んだ。




「構え!」


審判の合図で、俺は<アウロラ>と<シルフィード>を抜いた。

ギニアスは黒い双剣を引き抜く。


その剣の周囲の光が飲み込まれるかのような、圧倒的魔力。


「・・・精霊剣か」


「そうだね。そしてキミの剣も二本とも・・・違う剣を二本使っているのか」




「ギニアスのは元から二本だったのか?」


「ああ、ボクが手に入れた時からそうだね」





「――――試合、開始!」




ローラや兄さんに勝つほどとなると、尋常ではない。

最初から全力でいく!


―――魔力、全開!




ギニアスがその剣を振り上げ――――




「唸れ、エレボス!<三日月!>」


ギニアスの剣から、黒い三日月形の衝撃波が二つ放たれる――――



―――――速い!?



一般的な衝撃波よりも、速く、大きい!


『<サンダーボルト!>』



俺の手から、銀の雷が放たれ、黒い三日月と激突する。



――――バシュッ




「―――――んな!?」



雷が闇に飲み込まれ、衝撃波が更に大きくなる。

吸収された!?




俺は、咄嗟に<アウロラ>と<シルフィード>を交差させてガードし――――





―――――――キィィィィン!





<アウロラ>と黒い三日月が反発し、三日月は空高く飛んでいった。

・・・いままでに無い感覚だった。



「これで、この攻撃を凌いだのはキミと、キミの学校の銀髪の女の子の二人だね。

 はぁ、いままでは防がれたことは無かったのになぁ」


「・・・こんなとんでもない攻撃は初めて見たよ。

 まさか術を吸収するとは思わなかった」




『ご主人様、アレは術ではなく、魔力を吸収しています。

 <シルフィード>を<アイテール>に換えてください。

 私が身包み剥がされてしまいます♪』



「・・・それは洒落にならないな」


俺は、左手の武器を<アイテール>に変更。

光線剣よろしく、魔力の刃が現れる。



それを見て、ギニアスが呆れたように言う。

「一体キミは幾つ精霊剣を持ってるんだい?」




「いや、コレに精霊はいないぞ?ただの謎の剣だ」


「・・・そんな意味不明なギミックがあるのに?」




「え~、男の浪漫だろ?」


「・・・そんなよく分からない武器と戦うボクの気持ちにもなってよ」



まぁ、たしかにこの魔力ブレードを受け止められるのかは、

はなはだ疑問だ。



「まぁいいだろ?いくぞギニアス!」


「いいだろう、来い!」




こんどはこちらから行く!

俺は、<アウロラ>を大地に突き刺した。



『大地を駆けろ、銀の雷!<アース・サンダーボルト!>』


『漆黒の雨よ!<五月雨!>』



<アウロラ>から銀の雷が放たれ、地面を割りつつ、ギニアスに襲い掛かる。

同時に、ギニアスの双剣から黒い雨のような衝撃波が放たれる。



(――――ノエルのと同じか!?)



エルフであるノエルより、術の発動速度も、術自体の速度も遅いが、

こちらには魔力吸収という、やっかい極まりない能力がある。



二つの術は、交錯せず、互いに素通りする。



咄嗟に双剣で迎え撃とうとした俺だが、あることに気づいた。

<アウロラ>にも魔力吸収能力があるから、お互いに反発するのは分かる。

だが、<アイテール>の刀身の拡張部分は魔力じゃないのか?


もし魔力なら、吸収される・・・!

が、もう余裕がなかった。


俺は、二本の剣に魔力を集めた。



『<旋風風車!>』



俺は、風魔法を使って<アウロラ>、<アイテール>を俺の前で扇風機よろしく

超高速回転させ、傘代わりに――――――!






―――――バチバチバチッ!




「―――――げっ!?」




なんとか黒い雨を凌いだが、<アイテール>が、めちゃくちゃバチバチいってた。

慌てて拾うが、刃は拡張したままだ。

どうやら、なんらかのプロテクトがかかっているか、魔力じゃないようだ。

ギニアスもそれに気づいたらしい。

ギニアスは、剣を引っこ抜きつつ、言った。


「はぁ、キミはほんとに色々持ってるね」


どうやら地面に剣を刺して雷を受け止めさせたようだ。




「3つだけだぞ?」



ギニアスは、一瞬、何か悩んだ顔をし、

次の瞬間、その魔力が膨れ上がった。



「・・・・仕方ない!なら、コレはどうかな!?

 出でよ、地下の暗黒を司りし者よ!その力の一部を此処に!<エレボス!>」



ギニアスの精霊剣が更に輝き、

黒ずくめの鎧を着た、黒髪、黒目の威風堂々たる男が召還された。

その体に濃密な闇を纏い、黒い大剣を持っている。




『フフフッ、我が名はエレボス。貴様の実力、見せてもらおうか』



その男は、心底楽しそうに微笑んだ。





次回、『暗黒の精霊』

金曜夜八時より配信予定です~

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