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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第三章:三国魔法学校交流戦編・個人戦
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第九話:決別の夜

俺は、ノエルに勝利し、Aブロックで優勝した。

Bブロックの優勝者はエリシア。

Cブロックはフィリア。

Dブロックは神童こと、ギニアス・オーランドがローラに勝った。





「そっか、ローラ、ケガとかは大丈夫か?」


俺は、夕方、宿の庭でローラに会った。


「・・・うん、平気。アルも、戦うことがあったら気をつけて」




「ああ、大丈夫だよ。俺は強いぞ?」


「ふふっ、そうね」

ほんのり笑ったローラは、とても可愛かった。




「なぁ、ローラ。笑ってたほうが可愛いよ」


「・・・そう?」




「そうそう」


「・・・がんばってみる」




「自然に笑えるのがいいんだけどな・・・でも、笑いに慣れるのも大切か・・・」


「・・・あ、リリーに呼ばれてたんだった」




「あ、そうなのか?じゃ、またな」


「うん、またね」


そう言うと、ローラはぎこちなく笑って扉の方へ去っていった。






「アルはやさしいですよね」


「そうか?エリシアの方が優しい気がするけど」


俺は、いつの間にか右に立っていたエリシアに振り返りつつ言った。

と、何故かエリシアは、本来の白髪に赤瞳だった。



「アルは自分の評価が低いです」


「・・・そうか?まぁ、過大評価はしないことにしてるが」


エリシアは、すごく難しそうな顔をしている。

むぅ、せっかくの可愛い顔が・・・



「へい、スマーイル!笑った方が可愛いぞ!」

そういいつつ、エリシアのほっぺを軽く引っ張る。

・・・やばい、やみつきになるかもしれん。


「・・・あふ~、いはひへふ~」


エリシアが何か言ったが、聞き取れない。

仕方ない、離すか。



「・・・・アル、痛いです」


「・・・ごめん」

調子に乗り過ぎた・・・




「とにかく、アルは自分を過小評価です。・・・その、アルはかっこいいんですよ?」



エリシアは、顔を赤くしつつも、俺と目をあわせて言った。




「・・・こんな性格でもか?」


「そうです。むしろアルは楽しいと思います」




「そっか」


俺は、適当にごまかそうと思ったが、エリシアの瞳は、俺の目をとらえて離してさない。

透き通った瞳は、何もかも見通すような気がした。



「アル、何を隠してるんです?」


エリシアが一歩、俺に詰め寄る。俺は、思わず一歩下がった。



「え、まさかエリシアのお菓子を盗み食いしたのがバレた?」




「そんなのとっくに知ってます」


「・・・まじで?」




「・・・アルは、自分がすごく弱くてどうしようもないと思ってないです?」

エリシアが更に一歩詰め寄る。俺は一歩下がるが、背中が壁にあたった。




「・・・実際、俺は何もできてないからな」



俺は、あの時、自分の命を犠牲にしなければ、彼女を守れなかったし、

あの後どうなったのか知りもしない。

知りたいと思ってすらいないんだ。


俺は、そんな情けないヤツなんだよ。



「アルは・・・アルは二回も私を助けてくれました」


「一回目はまぐれだし、二回目は俺が無茶したのがそもそもの原因だよ。

 それに、どっちもエリシアは酷い目にあってる」





「・・・やっぱり、そういうふうに思ってたんですね」

エリシアは悲しそうに目を伏せた。



「・・・何かを守れない力に意味があるとは思えないんだ」



「アルは、強いです。今、私は生きています。

 私は、アルに守ってもらいました。

 確かに、今ここにある事実です。

 それでも、自分を認められないんですか・・・?」



エリシアが更に一歩前に出て、俺の顔を至近距離で見上げた。




「・・・ごめんな」


俺は、肯定も否定も出来なかった。




そんな俺に、エリシアは決然とした表情で――――





『・・・アルネア・フォーラスブルグ。

 故郷を失った身ですが、私は貴方に決闘を申し込みます。

 私は白の竜族皇女、エルシフィア・ハイラルディア・・・

 私の魂とこの全てを懸けて戦うことをここに盟約いたします』



そう言って、エリシアは俺にそっとキスした。




「・・・エリ・・・シア?」




『決闘において手を抜くような事は、私の魂に対する侮辱です。

 アルネア・フォーラスブルグ、私が勝ったら私は貴方の前から去ります』


『自分すら救えぬ人間などに、他人が救えるなどというのは、単なる幻想です。

 それを私が証明します。今の貴方に私は倒せません』

 

『・・・きっとこれが最期です。今までありがとう。さようなら、アル』




エリシアは、その白い焔でできたような翼を広げ、一瞬で飛び去った。





「――――エリシア!?」



俺には、何も出来なかった。







俺は、間違えたのだろうか?


また?


エリシアは本気だ。


俺に、勝てるのか?


負けてまた失うのか?


もう何も失いたくなかった。


俺は、自分の為じゃなく、誰かの為だけに力が欲しいと、この世界で思った。






俺は、逃げてたのかな?


大切なものほど、失うのは怖いから。


きっと、前世のアイツもすごく悲しんだから。




今度こそ、全て守る力が欲しいと願った。


でもそれは、俺にその力が無いと知っていたから願ったんだ。


誰かが死んで悲しむのも、悲しませるのも、もう嫌だったんだ。





「ちくしょう、何で、俺は・・・」


俺の目から、透明な雫が一粒落ちた。



次回、銀雷の魔術士、第十話『決闘』

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