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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第三章:三国魔法学校交流戦編・個人戦
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第八話:碧の斬撃


ノエルは大人びた顔―――

正直、絶世の美女だ―――

白い肌に、輝くような金髪に、透き通った碧の瞳。

だが、最も目を引くのは、露わになった、その長い耳だった。




「お前は―――エルフなのか!?」


「そうですね。失望しましたか?」

ノエルは、自嘲するように、薄く笑った。




「・・・?何の事だ、驚いただけだが?」


「・・・異種族には排他的なのが人間だと聞きましたが?」


なるほど。

確かに、自分たちよりはるかに強力な個体能力をもつ異種族を恐れる人間も多い。

でも、俺の周りってあんな感じだしなぁ・・・



「そうなのか?俺は人間が嫌われてるのかと思ってたが」


「なるほど、そういう見方もあります。どちらが先だったのでしょうね?」



人間が自分より強力な異種族に怖れを抱いたのが先か、

それとも、脆弱な人間が見下されたのが先か・・・?




「う~ん、深遠なテーマだな。だけど、君を見てると人間の方が悪かったかな?」


「貴方を見ていると、こちらの方に非がある気がいたしますが?」




「あ、これはどうも」


「いえいえ」





「・・・あれ、俺たち何してたんだっけ?」


「ああ、試合でしたね。それでは、

改めて名乗りましょう。私は碧のエルフ族、ノエル・リーヴェルシア!」



む、これって名乗り返さないといけないんじゃないか?

どう名乗ったものかな?何者かってさっき聞かれたし・・・


「俺は、本当の親を知らない。だが俺は、皇国十二家の、アルネア・フォーラスブルグだ!」




「・・・すみません、失礼なことを聞きました」

ノエルは若干気まずそう。


「いや、気にしなくていいよ。父さんも母さんもすごいいい人だし」




「そうですか?それじゃあいきますよ?」


「オッケー!」

なんだか気の抜けた問答だが、ノエルの魔力は尋常ではない。

確かに人間なんて目じゃないだろうな。


「貴方は確かに強い。しかし!

私の精霊剣<エウノミア>についてこられますか?」


「買い被られても困るんだが・・・全力は尽くす!」




――――ノエルの魔力が一気に高まり、瞳の碧がいっそう輝く。



もう、出し惜しみはできないな。



―――魔力、全開!



「――――銀の瞳!?」

ノエルが驚いた声をあげる。

お、アタックチャーンス!

この距離なら剣で――――



『いくぞ、<疾風剣!>』


俺が振りぬいた<シルフィード>から風の刃―――

以前にビックボアに弾かれたヤツだが、シルフと契約したことで、

刃が大きくなり、威力も上がり、速度も上昇している。



ノエルが<エウノミア>で切り上げ、上に逸らすが、隙が大きくなる。

ここだ――――!


『<疾風迅雷!>』


俺は、一気に距離を詰めて、風と雷の双剣を、猛烈な勢いで左右から振り下ろす。





――――が、ノエルはすばらしい動きで体勢を整え、受け止めて――――




――――ガキィィン!




――――バチバチバチッ!



「――――くぅぅっ!?」


「――――うぉぉぉぉっ!」




俺は、渾身の魔力で電撃を流し、魔力装甲を透過してダメージを与える。

が、ノエルも流石の魔力操作で、ダメージを最小限に抑え――――




「――――せぃっ!」



「――――ちぃっ!」




その凄まじい筋力で、俺は宙に浮いたまま後方に弾きとばされ――――


ノエルがその碧い剣を振りかぶる。


「今度は私の番です!<ソニック・レイン!>」


「―――――んなっ!?」



ノエルが振った<エウノミア>から、雨の如く無数の碧い斬撃が放たれる―――!

一つ一つが細い針のようになり、無数にあるそれらの迎撃は至難の技――――!



「くそっ、<風車!>」


俺は、空中で回転切りを放ち、連動するカマイタチで迎撃し――――







――――キキキキィィィン!



「――――がはっ!?」



俺のカマイタチは全て貫通され、しかし流石に剣は貫通されなかったので、

咄嗟に剣の軌道を修正して致命傷は避けたが、

俺の右足が二箇所、左足が一箇所、わき腹を一箇所貫かれた。



――――ズサァァァ



なんとか軟着陸すると、間髪いれずに――――



『――――ご主人様!』

シルフの焦った声が聞こえる。

ノエルが俺の隙を見逃さずに切り込んできたのだ。


「――――<マグネティション!>」


俺は、砂鉄を集め、壁を作る。



「甘いですよ!<メイルシュトローム!>」



ノエルが剣を一閃させ、その軌跡をなぞるように碧い斬撃が現れる。

その碧い斬撃は、まるで砂鉄の壁など存在しないかのように、切り裂く。



『ご主人様!あれは<シルフィード>の耐久では防げません!破壊されます!』


「――――んな!?<ウイング!>」




咄嗟に俺は上空に飛び上がって回避。

碧い斬撃は、そのまま壁に向かって行き―――――





―――――ドガァァァァン!




コロシアムの壁は、先生たちが張った魔力壁でガードされていたにも関わらず、

壁が一部抉り取られた。


「・・・・嘘だろおい。」

俺は思わず嘆息した。勝てるのかよ?



「飛行魔法とは・・・さすがですね。」


ノエルがこちらを見上げつつ言った。

ちなみに、コロシアムの上空は、ある程度いくとバリヤで塞がれているので、

高高度から一方的な攻撃等はできない。




「・・・シルフ、あいつと戦って勝てるか?」


『微妙ですね。あちらも精霊がいるようですし』




「・・・頼まれてくれるか?」


『ふふっ、もちろんです。私も、本気でいきましょうか♪』




『奏でるは疾風の唄、顕現せよ風の精霊!<シルフィード!>』



俺は、常以上に魔力を込めてシルフィードを召還。

それと同時に、ノエルも召還を開始していた。



『出でよ、我が盟約の精霊!秩序を司る者よ!<エウノミア!>』




俺の前に、シルフィードが実体化し、

ノエルの前に、水色の髪、青い花を手にした女神が実体化する。




「・・・貴方は本当に底が知れないですね。精霊を完全に実体化させるなんて・・・」


「いや、ノエルも完全に実体化させてるだろ?」


「・・・そうですね。失礼な事を・・・なんとおわびしてよいか・・・」


「あ、いやいや。そんなに気にしなくても!」


「・・・そうですか?ありがとうございます」




・・・なんか空気が独特だよな。

エルフの特性なのかノエルの性格なのか・・・



まぁ、無詠唱リヴァイブで治癒してる俺としては大いに助かる。

大分傷も塞がった。・・・すさまじい魔力攻撃だったので、痛みが酷いが。



『ふふっ、ラッキーですね♪』


「そうだなー」




「・・・はっ!?私たちは試合中ではなかったでしょうか?」


「おお~!そうだったな~!」


『白々しいですね♪』





「それでは、エウノミア、行きますよ!」

ノエルが一気に駆け出して距離を詰めようと―――――



『ノエル?争いはダメですよ?』

エウノミアに窘められて、こけた。



――――ズサァァァ



見事なヘッドスライディング。

まぁ、その気持ちは分かる。


・・・なんか、深刻な試合のはずだったんだけどなー。




と、ノエルが立ち上がり、砂を払ってから気を取り直して説得にむかう。


「・・・エウノミア、これは争いではなく、互いの力を競い合うものなのです」


『競い合っても何物も生まれません。競い合うより愛し合うべきです』




「・・・友好のための試合なのですが?」


『ダメです。戦いは秩序を守る為にするべきです。却下します』



そう言ってエウノミアは消えた。



「・・・」


ノエルの背中が悲しそうだった。

精霊って、気難しいんだな・・・

俺は、シルフっていいやつだと再確認した。



「ノエル、俺が悪かった!一対一でやろう、正々堂々と!」


「・・・私は自分が情けなくて涙が出そうなのですが」


『まぁまぁ、一対一のほうが案外いいかもしれませんよ?』



「・・・わかりました。ですがこの恩はいつか返させていただきます」


「・・・まぁ、いいけど」


『それではご主人様、頑張ってください♪』

シルフはにっこり笑って消えた。



よし、こう、気を取り直していこう。




「え~、ゴホン。いくぞノエル!こいつを受けきれるか――――!?」



「―――――私の斬撃に切り裂けぬ物などありません!」





俺は、さっきの<マグネティション>で集めてあった砂鉄を再び引き寄せる。

ノエルは、圧倒的な魔力をその剣に込める。



『その身を銀雷と化し、貫け――――!<微細なる四源の雷砲マニュートネス・サーマルブラスト>!』


『碧き斬撃は全てを切り裂く――――!<メイルシュトローム!>』




俺は、目も眩むばかりの銀の流星群を生み出して攻撃し、

ノエルは左から右へ凄まじい勢いで剣を振り、碧い斬撃を生み出す。







―――――ギギギギギギィィィィィン!





碧い斬撃は銀の流星をも容易く切り裂いた。




―――――だが、俺の狙いはそこじゃない。




「―――――そんな!?」



俺は、銀の流星群で、視覚と魔力の探知を狂わせ、一気に急降下してから、

地上すれすれを飛び、ノエルに肉薄していた。


『うおぉぉぉぉ!<疾風迅雷!>』


『――――まだです!』




読みが甘かった。


メイルシュトロームの意味は渦巻き。

ノエルは体勢を崩しつつも、振りぬいた剣の勢いそのままに回転し、

俺の<風車>と同じように、碧い斬撃が全方位に放たれ――――










―――――キィィィン!








「・・・そんな・・・」


「・・・あぶね」



俺の<シルフィード>がノエルの首に突きつけられ、

碧い斬撃は辛うじて<アウロラ>が受け止めていた。

右腕の骨が折れたかもしれん・・・

ノエルの体勢が崩れてなかったら、真っ二つにされてたな。




「―――――試合終了!勝者、アルネア・フォーラスブルグ!」



シルフは、<シルフィード>だと破壊されるとは言ったが、

別に<アウロラ>がダメとは言ってない。

一か八か、ミスリル製に賭けてみた。

まぁ、一回転して攻撃してくるのは完全に予想外で、死に物狂いだったが。



「・・・私の負けですね。剣ごと斬るつもりだったのですが・・・」


ノエルは、信じられないといった風情だ。

おそらく、今まで切れなかった物などなかったのだろう。


「あ~、これミスリル製らしいから」


「ミ、ミスリル!?」



エルフのノエルすら驚くとは。

この世界だとミスリルってレアなのかな?

いや、人間が持ってるからか?



「まぁ、ノエル。いい勝負だった。またいつか勝負しような」


「・・・アルネアさん、チーム戦も軍団戦もありますよ」




「・・・あ」


「次は負けませんよ」




「なら、次こそは武器の性能じゃなく、技で勝ってやる!」


「なら私は今度こそ、その剣ごと切り裂いてみせます」




「ふふっ、楽しみにしてるよ!じゃあなノエル!」


「ええ、ではまた」







アルネアが去った後、ノエルは一人、呟いた。


「ただのミスリルなら、あの斬撃を防げるはずがない・・・あの剣は一体・・・?」













「よーし、ノエルに勝ったぞー!」

「お兄ちゃん、随分あっけなくなかった?」

「リリー、最後が武器だよりだったから、そう見えるだけです。すごい戦いだったんですよ?」


「武器だより言うな!おっと、次回予告しないと!」





――次回予告!――


♪~~チャララッ、チャラララ~~


「・・・はぁ、エリシアと戦うことになるとは」

「アル、本気でいきます―――」

「<スタンブレイク!>」

「手を抜いてるんじゃなく、やりにくいんだよ!」

「アルなら防ぐって信じてますから、容赦なんてしません!」

「「白き雷よ、虚空を切り裂け!<サンダーボルト!>」」



次回、銀雷の魔術士第九話『焔翼と銀雷』?


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