第四話:守るべきもの
『――――どうして助けたんですか』
いつか聞いた声だ・・・誰だったか思い出せない。
――コンコン
「おにいちゃーん、おきてる~?」
リリーの声。
そう、もう朝だった
「おきてるぞー」
俺は起きてるアピール。
「はいっていい?」
いや、本当は寝てるので、リリーに入って来られると困る。
「だめ」
だから拒否。
「どうして?」
リリーは慣れてるので、理由を聞いてきた。
「眠い。寝させて。」
しょうがなく、俺は正直に答えた。
――ガチャ。タッタッタッ
「えいっ!」
リリーが俺の布団をはがしにかかる!
「甘いっ!信頼と安心の布団ディフェンス!」
ギリギリ間に合った。
「むぅ、おにいちゃん!あさごはんは?」
布団を引っ張りつつ、リリーは聞く。
「食べる!けどあと5分だけっ!」
朝ごはんも大事だが惰眠も大事!
「じゃあ、5ふんたったらおきてくれる?」
リリーに聞かれる。
「・・・むりかも」
つい、正直に答える。
リリーが布団をつかみなおす。
こうして今日も、俺は戦う。
「おにいちゃん、きょうのリリーはひとあじちがうわ!」
「ほう、ならばその違いとやら、見せてみろ!」
俺が、その言葉の真偽!見極めてやろう!
「ひっさつ!<ろーりんぐ・ふとんはぎ!>えいーーーっ!」
――いつも単調に引っ張って来ていたリリーがひねりを加えている!
「さらにできるようになったな!リリー! だがまだだなっ!」
俺は必死に耐える!
「くぅっ、おにいちゃんのまもりがくずせない!」
なおも諦めないリリー!
「これでも喰らえ!対リリー決戦魔法!」
俺は奥の手を出す!
「いたずら好きの風の妖精、汝を笑わせ、我も笑う!<シルフ・トリック!>」
「きゃっ、あはははははっ」
リリーは悶絶している。
これが俺の新技!いたずら好きのシルフをイメージ。壮絶なくすぐり攻撃である!
え、弱そう?リリーにケガさせる訳にはいかないし、これでいいんだ!
それにたかがくすぐりと侮るなかれ。本気でやれば笑い死ぬレベルまでいける。
「みずのまにょり・・・あはははははっ」
しかも詠唱妨害。集中できない。
詠唱ができないのは致命的だ!
詠唱を長くすればするほど術の威力は上がる。
まあ、あんまり長くても魔力が枯渇するだけなのだが。
――5分後
「ああうあうあ~」
リリーは床にのびている。
リリーに勝った!
「む、この魔力は・・・」
俺は魔力を感知。
「アルー?リリー?」
兄さんが あらわれた!
「来たね・・・兄さん。」
俺はシリアスに語りかける。
「り、リリーーーー!」
リリーに駆け寄る兄さん。
「リックおにいちゃん、アルおにいちゃんを・・・おこしてあさごはんに・・・ガクッ」
リリーはそう言って目を閉じた。
「そんな・・・アル、どうして・・・どうしてリリーを!」
兄さんが俺の真意を問う。
「俺は・・・眠かった・・・あと5分、もう5分・・・」
「くそっ、今、俺がお前の目を覚まさしてやるっ!」
兄さんが魔力を集める!
「紅蓮の炎よ!布団の中を暖めろ!<ファイヤ!>」
布団の中が温かく――!ん、なんの問題が?
兄さんがニヤリと笑った。
「あついっ!」
俺は布団ごと飛び上がった。
布団の中が暑すぎる!しかし外は寒い!
この程度で・・・!
俺も魔力を集め、とっさに思いついた術を発動!
「安らぎを運ぶ風、布団の温度を適温に!<エア・コンディショナー!>」
「今だ!いくぜ、本家・リック爆弾!」
この瞬間を待っていた!とばかりに、兄さんが必殺技を発動!
嘘だろっ!?体重、パワー共にリリーを大きく上回るリックが跳ぶ!
防がねば!
俺は魔力をあつめ――
「風の防壁、我を害するものを防げ!<エアシールド!>」
「風よ!防壁を崩せ!<そうくると思ったぜ的・アンチ・エアシールド!>」
兄さんに読まれていた!?
――ッ!?
――なら!
「主を守る守護の風!<エアバッグ!>」
とっさに思いついたのがそれだった。
防御できて、ただの壁じゃなくて、安全なもの。壁じゃなければアンチシールドは効かない。
――ボウン!
「――ぐはぁッ!」
兄さんが吹き飛び、俺は勝利した。
エアバッグって凶器にもなるよね。
「勝利とて虚しい・・・」
とっさ使ったたけど、<エア・コンディショナー>に<エアバッグ>・・・
前世にあったはものはイメージしやすいから使いやすいのだ・・・ん、エアコン?
「むぅ・・・」
俺はなんか閃いた。
「安らぎを運ぶ風、この部屋を適温に!<エア・コンディショナー!>」
「おお、あったかい」
便利だった。魔力をかなりつかうけども。
部屋が温かくなったので、布団から出る。
何の為に戦ってたんだっけ、俺・・・
「えっと、ごめんね。二人とも。」
とりあえず、俺は謝った。
「おにいちゃん・・・あしたはまけません」
「アル、今日は、お前の勝ちだ」
・・・明日が怖いな。
で、そのあと朝ごはんを食べてると・・・
ん?そういえば昨日・・・そう、昨日はグレーフェンリルと戦ったんじゃ?
なんで俺寝てたんだ?
父さんに聞いてみると。
「ああ、アルがすごい魔法を撃ったあと倒れてしまったから、とりあえずベッドに運んでおいた」
なんと、申し訳ないことをした。
「ごめんなさい、父さん・・・」
やっぱり謝っておく。
「いや、アルのおかげでグレーフェンリルを倒せたんだぞ?よくやったな、アル」
と、ほめてくれる父さん。
「そうだぞ、アル。すごかったぜーお前の魔法!兄さんも負けられん!」
燃える兄さん。
「おにいちゃんかっこよかった!」
さっきなんとか許してもらったリリーもほめてくれた。
「お母さんも見たかったな・・・」
そして、仲間はずれの母さんであった。
―――ご飯を食べ終わった俺は、自分の部屋で悩んでいた。
「むぅ、フェンリルに出会っても余裕で勝てるようになりたいな」
この世界にはフェンリルや魔狼だけでなく、ゴブリンやらオーガ、果てはドラゴンまでいるというのだから、何が起きても大丈夫なようにせねば。
優しい家族を守れるようになりたい。
転生したからか、全般的に俺の能力は高いが――
とりあえず空をとべるようにはなりたいと思う。
描写追加しました。