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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第三章:三国魔法学校交流戦編・個人戦
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第七話:顔を隠した魔術士


さて、ケイネスの憑依暴走という、壮絶な幕開けとなった交流戦だが、

それは、ただの始まりに過ぎなかった。

観客も、選手も、大会を管理する先生も思った。

今年の一年生は半端じゃない。



俺が優勝候補だったケイネスを撃破したことに加え、

同じAブロックで、実は一年生だった謎のフードの魔術士も全試合圧勝。


Bブロックでは、エリシアが圧倒的な魔力とスピードで無双。

(エリシアの例の翼は半端じゃなかった。マジで3倍速いかもしれない)


Cブロックでは、フィリアと<シリウス>が常識外の魔力で無双。

(もう魔力が回復したらしい。恐ろしい精霊剣だ)


Dブロックでは、ローラと神童が無双してるらしい。

(他の試合は見れないのだ。まぁ、他の人に色々聞くのは可能だが)




俺はもう3回戦まで勝利し、次はブロックの決勝だ。

相手は、謎のフード魔術士。





で、今、俺の控え室には客人が来ていた。

まぁ、控え室といっても、イスと机があるくらいなのだが。


「よう、アル。ちょっとデカくなったんじゃないか!?」


「兄さん!兄さんは更に筋肉が増えたね・・・」

そう、リック兄さんが来ていた。

服の上からでも、『俺、鍛えてるゼ?』な感じだ。

だが!兄さんは意外とハンサム!モテモテだったりするのだ!

優しいし、気配りできるし、面白いし。(色々な意味で)



「ふっ、そうか?まぁ、鍛えてるからな。で、何故アルはひょろいんだ?」


「・・・いや、体質?俺だって見かけよりパワーはあるぞ!」




「ははっ、たしかに昔からそうだったな!ところで・・・」


「・・・?どうしたの、兄さん?」




「俺、負けちまったぜ」


「んな・・・!?」


リック兄さんは、こんな人だが・・・こんな人だが・・・こんな人だけど強いのに!?

精霊剣<ハマル>の魔力量に加え、卓越した兄さんの魔力制御。

火を使う魔法に関しては、同学年最強と謳われ、

さらにその筋肉は、「ヤツは脳まで筋肉に違いない」と尊敬されるほどなのに!?




「相手は、例の神童だ。見たことのない属性だった。」


に、兄さんが真面目な顔で話すなんて!?

これは驚天動地の重要案件だ・・・!



「見たこともない属性!?<氷>とかじゃなく?」


「ああ、違う。が、心当たりはある。おそらく<闇>だ」



<闇>属性・・・<光>の対となる属性か。




「そんなに・・・強かったの?」


「ああ。ヤツの術は速度は無いが、防ぐのも貫くのも至難の技だ」




確かに恐ろしい。だが――――


「ありがとう、兄さん。でもどうしてわざわざ?」




俺がそう聞くと、兄さんは呆れた顔で溜息をついた。


「はぁ・・・、最近会ってねぇから会いに来たんだよ!

 アル、お前は鈍過ぎる!俺以上だっ!そのうち女の子を泣かせるぞ!」


「そ、そんな!?兄さんより鈍いなんて・・・」




「うぉっ!?言いやがったな!?」


「だって兄さん、告白されるまで気づかなかったなんてザラだろ!?」




「お前の場合、告白されたことにすら気づいてないんじゃないのか!?」


「んな!?毎週告白される兄さん流の嫌味か!?」




「あれは4月だけだ!というか、アル!お前リリーとエリシアにちゃんと言ったのか!?」


「え?ああ、父さんと母さんに引き取ってもらった事なら言ったけど?」




「そうか、ならいい。で、リリーはなんか言ってなかったのか?」


「へ、なんか伝言?届いてないけど」




「・・・そうか。リリーもエリシアも大変だな。」


「・・・兄さん、ハッキリ言わないと伝わらないこともあるんだよ?」




「・・・言えないこともあるんだよ!ええぃ、まあいい。頑張れよ、アル!」




そういって兄さんは去っていった。

・・・なんか分からないが、そろそろ試合だ。準備しよう。

俺は、剣を腰につけ、試合を待った。







「さぁぁぁて!Aブロックもいよいよ大詰め!

 これに勝ったほうが、明日の個人戦準決勝に進出だぁぁぁ!」




「「「わぁぁぁぁぁ!」」」





「そしてここまで勝ち上がった選手をご紹介しよう!

 まずは、白い雷使いと評判でしたが、第1戦では銀の雷で会場を驚かせました!

 2戦目、3戦目では確かに白い雷でしたが・・・さて、あれは見間違いだったのか、

 それとも・・・!?

 投げる剣は流星と化し、砂鉄を自在に操る、風の精霊使い!

 銀雷の魔術士・・・!アルネア――ッ、フォ――ラスブルグゥ――ッ!」




俺は、名前を呼ばれて入場した。どうでもいいが、格闘技の試合みたいだな。

そして、大歓声に包まれた。



「「「わぁぁぁぁぁぁ!」」」


「お兄ちゃーーーん!頑張れーーー!」

「アルーーー頑張れーーー!」

「アルさーーーん、頑張ってください!」

「アル、負けんなよ!」



リリーにジョン、エリスに兄さんの声が確かに聞こえた。

聞こえた方に軽く手を振っておく。

俺が手を振ったときに黄色い歓声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。





「さぁぁぁて、対するはフードを被った王国出身の生徒!

 フードを被った謎の人物!

 ここまでの試合は全て魔法を使わず、剣だけで倒してしまったまさかの剣士!

 魔法は使わないのか使えないのか? 

 ノエルゥゥゥ――――、アルヴェリシア――――ッ!」



反対側から、体格も隠すフード付きローブを被った、小柄な人物が入場。

再び歓声が轟いた。

・・・名前的に女の子なのか?





「さぁて!このフードの魔術士の本気が遂に見られるのか!?両選手、構え!」




俺は、<アウロラ>と<シルフィード>を抜き放ち、構えた。

今初めて聞いたが、剣だけで勝ち上がるなど並大抵ではない。

というか、普通の剣なら無理だ。


俺は、フードの少女?ノエルが青い長剣を抜くのを見て、直感が正しかったのを悟った。

剣の周りに魔力を纏っている。



――――精霊剣!


魔力の感じから、恐らくは水系統の属性!




「―――――試合、開始っ!」




試合開始の合図を聞き、俺は目を疑った。

ノエルが地面を蹴り、凄まじい勢いで突っ込んでくる!

凄まじい魔力装甲を纏っている。

彼女は剣を振り上げ――――





――――――ガキィィィン!



―――ズサァァァ




凄まじい威力の剣に、俺の腕がしびれ、後ろに吹き飛ばされる。




――――これは、エリシアと同じレベルのパワー!


人間の斬撃の威力とは思えない!

考えられるのは三つ。

魔力を体に流すことで身体能力を強化する達人か、

身体能力を強化する特殊な魔術の使い手、

もしくは・・・人間ではない。




ノエルは、その斬撃を防いだ俺に驚いて攻撃の手を休めたりはしてくれなかった。

再び地面を蹴り、その長剣で突きを放ってくる――――!



―――――ガキィィン!



俺は、<アウロラ>で突きを振り払い、<シルフィード>で横なぎに斬撃を放つ。


が、ノエルは華麗に後ろに跳んで、難なく回避した。



「うわぁ・・・やばいかも?なんて身体能力だよ・・・」


『ご主人様、巧く撹乱されてます。人間かどうかは不明です』

先ほどから黙っていたシルフだが、どうやら調べてくれていたらしい。

まったく気が利くやつだよ。


「そうか、シルフ、風であのフードをなんとか出来ないのか?」


『あらあら、お顔が気になるのですか♪』



「・・・すごく語弊のある言い方だな。隠すのに意味があると思うだけだ・・・っと!?」


再びノエルが突っ込んでくる。

が、今度は、高く掲げた剣が輝き――――



『<グランドスマッシュ!>』



「くっ!?<疾風迅雷!>」



ノエルの長剣が青い光と共に、ありえない勢いで振り下ろされる!

俺も剣技を発動し、二本の剣を同時に左下から右上に超高速で振り上げ、迎撃―――






―――――ガキャァッァン!





俺は、ノエルの剣の腹を超高速で打ち抜き、俺から見て右に逸らさせることに成功。


・・・ノエルの剣があたった地面がひび割れ、大変な感じになっている。




「あぶな!?死ぬぞ!」


俺は袈裟切りに剣を振り下ろして反撃しつつ、思わず文句を言った。


『・・・これくらいなら防ぐと思いました』



ノエルは、再び後ろに跳んでかわしつつ、言った。

・・・鈴が鳴るような声だった。

まぁ、魔声だけど、魔声と地声って、何故か似るんだよ?





「お褒めにあずかり光栄だが、君は強過ぎないか?」


『貴方もでしょう。全く本気に感じられないですし』



・・・確かにそうだが、俺って一応、実力は隠してるつもりなんだぞ?




「剣の威力がおかしい上に、本気じゃない君には言われたくないんだが・・・」


そう、ノエルは全く本気じゃない。

ひしひしと伝わってくる。


『そうでしょうか?その剣を防ぐ貴方も底が知れませんが?』




「受け流してるだけさ。腕がしびれて痛いんだぞ?」


『冗談を言う余裕まであるではないですか。それにその精霊剣・・・何者です?』



ノエルは、恐らく<シルフィード>を見て言った。

まぁ、確かにシルフはなんだか不思議な雰囲気を纏っている。

が、俺もわかんないので説明しようがない。



「・・・シルフは自称、風の精霊だよ」


『まぁ、自称って付くと急に怪しい存在感ですね♪』

シルフは楽しそうに言った。



『・・・そのシルフさんもそうですが、貴方は何者なのですか?』


「俺か?・・・・そうだな、ただのアルネア・フォーラスブルグだよ」




『・・・ふふっ、そういえば私が先に名乗るべきでしたでしょうか。

 私は―――――』




そう言って、ノエルはフードを取った。


「お前は―――――!?」




ノエルは大人びた顔―――

正直、絶世の美女だ―――

白い肌に、輝くような金髪に、透き通った碧の瞳。

だが、最も目を引くのは、露わになった、その長い耳だった。







――次回予告!――


♪~~チャララッ、チャラララ~~


「改めて名乗りましょう、私は碧のエルフ族、ノエル・アルヴェリシア!」

「・・・本当の親は知らない。だが、俺は、皇国十二家の、アルネア・フォーラスブルグだ!」

「貴方は確かに強い。ですが!私の剣についてこられますか!?」

「くそっ、シルフ!」

『私も、本気でいきましょうか♪』

「出でよ、我が盟約の精霊!」

「碧き斬撃は全てを切り裂く――――!」

「その身を銀雷と化し、貫け――――!」



次回、銀雷の魔術士、第八話『碧の斬撃』




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