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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第三章:三国魔法学校交流戦編・個人戦
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第六話:馬鹿は治癒魔法でも治せない

俺たち、個人戦に出るラルハイト校の生徒は、学園長に集められていた。

A~Dブロックのどれかによって、大分時間が違うために、

どのブロックかは発表されるが、誰と戦うかは直前発表という面倒なシステムのせいだ。

なんでも、対策が練りにくいように、とのこと。

ならブロックも直前に発表しろよって感じだが、

お目当ての選手の時間がしりたい貴族に、昔ねじ込まれたらしい。

やれやれだ。



「第一回戦の相手がケイネスだと!?」

俺は思わず叫んでしまった。


「ああ、そうだ。何かあったのか?」

不思議そうな学園長に事情を説明。


「・・・ちっ、グノーシアめ、なんて馬鹿息子だ。私があとで圧力をかけておく!」

が、学園長!かっこいいよ!


・・・ん?共和国議長に圧力?何者だよ!?


「学園長先生・・・おねがいします」

エリシアがなんか憔悴してた。

・・・まさか、ケイネスに絡まれたのか?



「・・・悪い奴じゃないのかもしれんが、面倒すぎる!

 というかエリシア、奴に遭ったのか?」(これは誤字ではありません)



「・・・私のほうが相応しいんだとか、よく分からなかったです・・・」

・・・奴の相手は疲れるよな。




「ちっ、悪いなエリシア・・・あの程度じゃ止まらなかったか・・・」


「おい、アルネア。お前ケイネスとやらに何かしたのか?」

学園長が不穏な響きを聞きつけたのか、聞いてきた。



「まぁ、エリシアに相手がいるということにすれば止まるかなー、と。」


「・・・まさか、大丈夫だと思うが、押し付けてないよな?」

学園長、俺はそんなに無責任じゃないですよ・・・



「無難に俺が相手ということに」


「え!?」

エリシアが驚いて顔を上げた。




「いや、少しはマシになるかと思ったから、エリシアは俺のということにしてしまった。

 悪いな。全く効果なかったみたいだ。」

いやー。怒られるかな?

エリシアが真っ赤だ。

怒ってるんじゃなく、恥ずかしがってることを祈っておこう。




「・・・アル、せきにんとってください」


「おう、任せとけ!必ず勝って諦めさせてみせる!」




「・・・ぐすっ」


「アルネア、お前馬鹿か?」

学園長に呆れた目で見られた。

黙って聞いてたリリーも呆れ顔だ。


何ゆえ!?ちゃんと責任とって勝つってば。

・・・完全には治癒させてないしな。

待てよ、そんだけ金持ちなら専属治癒術士とかいそうだな。




「・・まぁいい。アルネア、時間だ、そろそろ行け」


「了解です。んじゃ、エリシア、行ってくる」


「アル・・・勝ってください」


「お兄ちゃん、叩きのめしてあげなさい!」



「おう!」






「さーて、始まりました三国同盟、魔法学校交流大会!

 実況・解説は、共和国立・エディメア校3年のリーザス・グレイサスです!」




コロシアムに魔法で拡声した実況が響く。



―――わぁぁぁぁっ



・・・観客はノリノリだ。

はぁ、気が重い。


「さぁぁて!Aブロック初戦を飾りますは―――――――

 共和国の貴公子!ケイネェェェス!グノォーーーシア!」



「「「ケイネス様――――!」」」


すごい歓声だな。

ま、うらやましくも無いが。



「対するは、実力未知数!皇国筆頭十二貴族の次男にして、

 ラルハイト校最強とも言われる白き雷!

 アルネアーーーー!フォーーーラスブルグ!」




「「「「アルーーーー頑張れーーーー!」」」」


・・・みんなが声援をくれた。

・・・すごく嬉しかった。



「さぁーーーて!?両選手、なにかコメントはありますか!?」

実況者はそういって、俺たちに拡声魔法をかける。


―――!?なんて面倒なことを!?

案の定、ケイネスが口を開く。



「アルネア殿、確かに私が間違っていた。この交流戦で貴公に勝てばいいのだ!

 私が勝って、エリシアさんは私が貰う!」




「「「け、ケイネス様―――!?」」」

観客の悲鳴がハンパじゃない。



「・・・いい加減にその口を閉じろ・・・エリシアの相手はエリシアが決める!

 しつこいんだよ、お前は!」




「・・・確かにそうだ。だが、私の恋は止められんのだ!」




「おおっと!?まさかの色恋沙汰だぁぁぁ!?

 あの貴公子が!信じられません!では、両選手、構え!」


実況が、横からせっつかれて構えの指示をようやく出した。

俺は、<アウロラ>と<シルフィード>を抜く。


ケイネスは精霊剣の大剣を両手で構えた。

一気に魔力の熱が発生する。



――――<火>系統か!

確かに、コイツ無駄に暑苦しいしな。



「――――――試合、開始!」



―――――魔力、全開!


『我と契約せし風の精霊よ!我が魔力を糧に顕現せよ!』


「我が麗しの運命の女神よ!我が魔力によりて顕現せよ!」




『<シルフィード!>』


「<アトロポス!>」




『シルフ!』

『はい、サクっといっちゃいましょう♪』



「いくぞアトロポス!絶対に勝つ!」

『ふふっ、すべては運命しだいですから。勝てないかもしれないですよ?』



・・・お互いに雰囲気ぶち壊しそうな精霊だった。

が、絶対に負けられないので、消耗は考えない。


シルフィードは完全に実体化し、アトロポスは8割程度。

アポトロスは黒髪に碧眼の美女だった。

・・・シルフィードは迷宮から開放されてから殆ど日数が経ってないため、

魔力の絶対量が少なく、完全に実体化していても、勝てるかは分からない。




『引き付けるは不可視の力!<マグネティション!>』


「紅蓮よ、大地を赤く染めよ!<ヴォルケイティア!>」



俺は砂鉄を集め、

ケイネスが手を振り、一気にケイネスの前から溶岩の波が飛び出す!


『<ストーム・ディフェンサー>、発動です。駆け込みはおやめください♪』



暴風の壁が溶岩を弾く!

俺は砂鉄を上空に集め――――


『集いし鋼鉄の欠片よ!銀雷により弾丸と化せ!<四源の雷砲(サーマルブラスト)!>』



銀の隕石と化して襲い掛かる!


『灼熱の運命より、汝、逃れえぬ。消滅せよ!<ヴァニッシュフレア!>』

アトロポスの手から凄まじい熱の塊が飛び出し、一瞬で砂鉄を溶かす!



その間に、ケイネスが突っ込んで来た。


「はぁぁぁっ!我が剣を受けろ!<スマッシュ・ブレイク!>」


ケイネスが剣技を発動し、高速で突っ込んでくる

俺は、<アウロラ>で迎え撃った。


『雷剣!<スタンブレイカー!>』





――――ガキィィン!



「―――――ぐぅぅっ!」

「―――――ぐぁぁっ!」



俺は、凄まじい衝撃に顔をゆがめ、

ケイネスは剣の電流に身を焼かれた。


一瞬で離れたが、今のは有効打だったはずだ。

が、ケイネスが再び打ちかかってくる


「うおおっ、<ディスティア・スラッシュ!>」


「風巻け烈風!<風車!>」



ケイネスの剣が凄まじい輝きを放つが、遅い!

俺は、その場で回転切りを放ち、それと同期してカマイタチが放たれる。





―――――ガガガガガキィィィン!



咄嗟に大剣を盾にしたケイネスが弾き飛ばされ、

およそ50メートル吹っ飛び、

ステージ端の壁に激突する。





「――――がはっ!」

シルフが上空で相手の精霊を抑えてくれている。好機!




『天空の神の怒りをその身に受けよ―――!』

『我が剣よ!銀雷によりその身を弾丸と化せぇ―――ッ!』



『<サンダーブラスター!>』

『<銀雷纏いし四源の雷砲アウロラ・サーマルブラスト!>』



俺の左手から雷のレーザーが飛び出し、

<アウロラ>が流星と化して襲い掛かる!







―――――ズガァァァァン!




ケイネスは煙に埋もれて見えない!


「おおっと!?なんということだ!?もう決着か!?」

実況者はそう言うが・・・まだだ!





『我が風の盟約の剣よ!銀雷によりて、天翔ける雷となり――――』


『虚空を切り裂け!< 疾風を司る四源の雷砲シルフィード・サーマルブラスト!>』




『――――ケイネスッ!』

アトロポスの悲鳴が聞こえた。





――――――ズガァァァン!




シルフの猛攻を防がず、左腕を犠牲にしたアポトロスが割って入った。


――――くそっ!?やりにくい!



『乱れ飛ぶ雷の矢!<ガトリング・サンダーアロー!>』


俺の手から計48発の雷の矢が放たれ、砂煙を切り裂き、爆発させる。





「な、なんという猛攻だぁぁ!?貴公子は無事なのか!?」



『其は風の旋律――ここに顕現し全てをなぎ払え!<テンペスティア!>』

シルフが駄目押しで竜巻を叩き込む。





――――が、




『―――精霊憑依(ユニゾン)




ケイネスがいた場所から金と赤の光が放たれ、

竜巻を弾き飛ばした。




――――ッ!?


ケイネスが凄まじい速度で突っ込んでくる!?


俺は、咄嗟に<アイテール>で迎撃する――――。




――――ガキィィン!キィィン!カァァン!



凄まじい勢いで連続攻撃を放つケイネス。

魔力装甲が凄まじい光を放つ――――。




――――ダメだ!?コレじゃあ攻撃が通らない!?


いくらなんでもおかしい!力と魔力が強過ぎる!

それに・・・斬撃が単調すぎる!?



『ご主人様!その人と精霊は暴走しています!』


『暴走だと!?』


『体のダメージを無視して憑依し続けます!死ぬまで止まりません!』



――――馬鹿野郎!?くそっ、なんて危ないことしやがる!



『止める方法は!?』


『気絶させるか、契約具の破壊、もしくは浄化です!』



こんな剣を破壊するのは無理だ!

つまり気絶!くそっ、無茶振りだ!


『こっちも憑依するか!?』


『ダメです!マナの暴走に巻き込まれます!』



――――――ガキィィィン!




凄まじい一撃が襲い、なんとか防ぐが、骨が折れそうだ!

シルフが詠唱を始める。

俺は、無詠唱マグネティションで<シルフィード>を引き寄せ―――




――――ギィィィィィン!



――――やはり貫けない!?



背後から当てるが、効かない。





『グガァァァ!』



――――ドガッ



「がはっ!?」





――――ズガァァァン!



俺は、ケイネスの蹴りで弾き飛ばされ、咄嗟に後ろに跳んだが、壁にあたった。

ケイネスが追い討ちをかけようと―――――



『破滅の風!<イリフィーディア!>』





詠唱していたシルフの術が発動。

上空から超高密度圧縮をかけられた風の砲弾がケイネスに――――









―――――ドガァァァァァァァン!






客席の前に張られたバリアが歪むほどの衝撃が発生した。





――――だが、



『グガァアァァ!』



ケイネスはまだ立っていた。



『そんな!?このままでは・・・!』


――――くそっ!



俺は、あることを思い出した。


――――空気がキレイになる。状態異常回復ができそうだな。





――――くそっ!一か八かだ!



俺は、<アイテール>に魔力を込める!


『紺碧の空に瞬け銀光!貫け銀雷!清浄なる大気の輝きによりて、邪悪を祓え!

                  <アイティール・サーマルブラスト!>』





雷を流すと、<アイテール>は一気に刀身が魔力―――――


いや、マナで包まれ、さらにそのマナが拡張することで光線剣のようになる!


刀身は伸びていないが、マナがダメージを与えるため、これなら長い刀身と同じ―――。



「うぉぉぉぉっ!」





<アイテール>は銀の閃光となってケイネスに突き進む。





―――――ガキィィィン!






『グガァァアァァ!』



『そんな!?受け止めるのですか!?』



ケイネスは、なんと魔力を纏った手で受け止めていた。




『だが・・・想定内だ!』

俺は、<アイテール>の能力を信じた。



『あの剣!まさかマナを浄化している!?』



ケイネスを包む、荒れ狂うマナが収まっていく。






『グアァァァ――――あぁぁぁ――――』






そして、完全にマナは浄化され、ケイネスは倒れ、

役目を果たした<アイテール>はそのまま落下した。

はぁ、疲れた。




「な、なんという戦いだぁぁぁぁッ!激闘を制したのは、アルネア・フォーラスブルグだ!」






『ご主人様、流石です、かっこよかったです♪』


「おう、危なかったけどな・・・」

俺は、魔力をおさめつつ言った。


『はい、どうぞ♪』


「お、ありがと」

シルフが剣を3本回収してくれた。



ケイネスは治療部隊に運ばれていった。

どうやら、介入寸前だったらしく、共和国の騎士団の姿が見えた。





精霊憑依の暴走か・・・








――次回予告!――


♪~~チャララッ、チャラララ~~



「・・・フードの中ってどうなってるんだろうな?」

「お兄ちゃんだし、中は可愛い女の子じゃないの?」

「アル・・・」

「私は―――――」

「お前は――――!?」

『あらあら♪』

「うわぁ・・・やばいかも?」



銀雷の魔術士、第七話:『顔を隠した魔術士』



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