第五話:共和国の貴公子
・・・ちょっと次回予告と変わってます。
微妙に。でもたいした違いじゃないのでお気になさらず。
もう次回予告を修正して証拠隠滅も完璧です♪
さて、あれからは特に何も無く、無事に共和国の首都・ディグリスに到着した。
予定通り、大会の始まる3日前だ。
とりあえず、風呂にはいりたい・・・
魔法で清潔にしてるが、やっぱり風呂は大事だろ!
さて、ディグリスも皇都と外見はあまり変わらなかった。
まぁ、同時期に作られたらしいし、気候も文化もあまり変わらないらしいしな。
レンガ造りの建物が立ち並び、交流戦前だからなのか、若干賑やかだ。
選手が宿泊する宿は、国ごとに分けてあるらしく、
俺たちの宿には皇国の人間しかいなかった。
が、かなり立派で、最早、豪邸だ。
どれか一つでも交流戦に参加する生徒は全員一人部屋だ。豪華だ。
風呂も大浴場があった。
当然、ベットもフカフカだ!(これが最重要)
交流戦を観戦できるのは、三国どれかの国籍を持つ人間・・・
まぁ、ある程度の身分がないといけないのだが、学校の生徒はいっぱい来る。
3国それぞれにある、生徒300人の王立、国立、皇立の魔法学校から計900人。
で、他の小規模な三国内の魔法学校からも、少しの参加者と、たくさんの観戦者がいるらしい。
今回の大会での優勝候補は、
光の皇女こと、フィリア・ラルハイトや、
オーランドの神童こと、ギニアス・オーランド。
白い雷こと、俺とか。(本気だと銀色なのは、あまり流出してなかった)
エディメアの貴公子こと、ケイネス・グノーシアとか。
他にも、色々いた。
あ、兄さんも優勝候補だ。最近会ってないな・・・
フィリアは皇女であるため、あまりにも有名だ。
皇国最強と謳われる精霊<シリウス>。
そして希少な<光>属性。
そして本人の美しさ。
現在15歳。
オーランドの神童は、なんだか色々情報が錯綜しているが、属性は不明。
一人で盗賊団を壊滅させたとか、迷宮をクリアして精霊と契約したとか、
大量発生して街に押し寄せた魔物の群れをなぎ払ったとか言われる。
まぁ、信憑性の高い情報が足りない。
現在15歳。
俺は・・・色々暴れまわったから。
空を飛んで皇国内を冒険した時に、キラービーの群れを空から焼いたり。
オーガを倒して攫われた女の子を助けたり、
闘技場を荒らしまわったり、あと、不良に絡まれた子を助けたり、
あ~、フェンリルと戦ったなんて噂もある。事実だが。
現在15歳。
エディメアの貴公子は・・・
なんでも、大陸一の美形だとか、女誑しだとか、
すばらしく優しいとか、騎士の鏡だとか、男の敵とか言われる。
共和国議長の嫡男らしいが、情報が多過ぎて分からなかった。
・・・とりあえず、あんまり遭遇したくない。
現在18歳。三年生だ。
え~と、何の話だっけ?
三国魔法学校は、全て同じようなシステムで構成されている。
細かいカリキュラムは違うが、人数とかまで一緒だ。
そんなわけで、三国校から、各学年5人×3学年×3国の45人、個人戦に参加。
で、その他の学校から、計19人参加し、計64人。
一回戦で32人に減って、2回戦で16、3回戦で8、4回戦で4、5回戦で2人、
つまり、計6戦である。
あ、ちなみに学年は関係ない。
1トーナメントだけだ。
まぁ、優勝候補を見ても分かるように、年齢より才能が大事なのだ。
で、全部で4つのブロックに分けられており、
今日は各ブロックの優勝者を決め、明日で準決勝。
明後日に決勝戦をするらしい。
まぁ、要するに今日は4回勝てばいい。
ちなみに、俺はAブロック、エリシアがBブロック、フィリアがC,ローラがDだ。
そして、貴公子がAブロック、神童がDブロックだ。
で、兄さんもDブロック。
Aブロックには、王国の隠し刀とか呼ばれる、謎の生徒もいるらしい。
なんでも、常にフードで顔を隠しているらしい。
しかも、異常な強さらしい。
抽選らしいが、Aブロックきつくないか!?
・・・どうなるかなぁ。
さて、準備に追われて3日はあっという間に過ぎ、今日は個人戦の日だ。
この3日間の夜は流石にエリシアも来なかった。
助かったぜ・・・
さて、本日の俺の服装だが、
とりあえず制服を着る。
で、例の箱に入っていた、黒い服は部屋に置いておく。
指輪は・・・・
全部ミスリル製みたいなのだが、宝石が一つずつ嵌っていて、
その色が、赤、青、黄、緑となっている。
・・・なんか意味がありそうだが、色々思いつきすぎてよく分からない。
まぁ、とりあえず放っておこう。
で、合宿の時の黒いコートを羽織った。
腰に<アウロラ>と<シルフィード>を装着!
ついでにこないだの短剣、<アイテール>も腰に装着。
<アイテール>は、古代語で柄に銘があったため判明。
ミスリル製で、魔力を流すと、光って――――
空気がキレイになる。
いや、ホントに。
おいしいよ?なんか、疲れがとれる。
なんかもう、空気が輝いて見える。
攻撃力はたぶん無い。試してないが・・・
まぁ、状態異常回復ができそう。
同じく試してないが・・・
よし、そろそろ行くかーー!
―――コンコン
「どうぞー」
ノックしたのは、リリーとエリシアだった。
「お、お兄ちゃんが起きてる!?」
「アル、おはようございます」
「ああ、おはよう・・・リリーは俺をなんだと思ってるんだ」
「起きれないお兄ちゃん?」
「アルが自分で起きたのはこれで4回目くらいでしょうか・・・」
・・・あれ?そんなに少なかったっけ?
・・・あれ?否定できない・・・
「よし、リリー、エリシア行くぞ!」
「はーい」
「逃げましたね」
で、会場のコロシアムに到着。
唐突だが、ホントにコロシアムとしか言いようが無い。
写真で見たのそのまんまだ。
円形で、でかい。
コロシアムの周りには、既にたくさんの生徒と、なんか金持ちそうな人たちがいた。
で、なんか大量の女の子に囲まれてる、
金髪で背が高くて、無駄に美形で、無駄に金持ちそうな青年がいた。
げ、目が合った。
何故かこっちに歩いてくる。
で、俺たちの前に来て、無駄に優雅に一礼した。
「どうも初めまして・・・私はケイネス・グノーシアと申します。
銀雷のアルネア殿とお見受けしました。以後お見知りおきを」
・・・どうやら、情報通にはバレてたらしい。
「・・・ああ、アルネア・フォーラスブルグだ。よろしく、ケイネス殿?」
「・・・貴公は何か隠していますね。不思議な魔力だ」
貴公ってなんだよ!と思ったが、俺も貴族の端くれ、この程度では動じぬ!
「そうですか?ケイネス殿こそ、凄まじい魔力ですね。驚きました」
そう、このケイネスとかいう男、巧く隠してるが、洒落にならない魔力だ。
フィリアより量だけなら上かもしれん。
そして、あの背中の金の大剣・・・おそらく精霊剣だ。
「ほう、この魔力に気づきますか。噂通りですね」
ケイネスはそう言って優雅に笑い、俺の隣を見た。
で、一瞬硬直し・・・
「こ、これは・・・なんと美しい!私の妻になって下さい!」
・・・はい?思わず全員硬直。
ケイネスはエリシアの手を取って、手に口付けを――――
―――バキッ
―――ドガッ、ガスッ
――――ズシャァァァ
凄まじい勢いでケイネスがぶっ飛んだ。
軽く10メートルほど。
ドラゴンなので、咄嗟にやるとこうなるだろ。
まぁ、手加減する暇も無かったといったところか。
待てよ・・・魔力が相当こもってたし・・・本気の一撃か!?
下手すると死にそうな一撃だが、ケイネスは咄嗟に後ろに飛んで勢いを殺し―――
たりはしてなかった。
痙攣してる。
正直、死ぬな、コレ。
「「「け、ケイネス様!?」」」
取り巻きの女の子が慌てるが、治療使いはいないっぽい。
・・・はぁ、仕方ない。
俺は歩いてケイネスに近づきつつ、魔力を集めた。
「あ~、すみません、治癒使いで~す。通してくださ~い」
俺は人ごみを掻き分けて・・・
「あ、貴方の連れの方がやったのでしょう!?」
金髪美女が食って掛かってきた。
「・・・別にいいけど、アレ、致命傷だよ?死ぬよ?」
俺は、ケイネスの方を指差した。
「そ、そんな!?ケイネス様はこの程度では!?」
「・・・あの子一般人じゃないし。ドラゴンの蹴りを受身なしでモロに喰らった感じだな」
冗談めかして言ってるが、事実100%だ。
「そ、そんな!?死んでしまいますわ!?何をモタモタしてるんですの!?」
「だから、魔力集めてるでしょうが。あと、そこどいて」
ようやく金髪美女がどく。
ケイネスは泡吹いて倒れてた。
衝撃映像だな。
「傷を癒したまえ聖なる光よ~!<ヒール>」
適当に破裂してそうな臓器を治癒。
うわぁ、エリシアの本気による魔力ダメージがデカイな・・・
骨とかは、その気があれば、リヴァイブですぐ治せるが、
魔力によって受けたダメージは治癒しにくい。
体にダメージを与えた魔力が体に残留するために、治癒が阻害されるためだ。
まぁ、治癒が最強じゃない最も大きな理由だな。
というか、挨拶で手にキスするヤツ初めて見たよ。
あ、未遂か。
・・・普通に逮捕でいいと思うんだが。
よし、帰ったら父さんに圧力かけてもらって、皇国では禁止にしてもらおう。
むぅ、キツイな。治らん。
『リリー、ヘルプお願いー』
俺は念話で救援を頼む。
『お兄ちゃん、エリーがすごく怖がってるから近づくの無理。頑張って』
・・・コイツ、治さなきゃダメか?
コイツ的には悪気は無いんだろうが・・・・
いや、むしろそれが大問題だ。
でも、議長の息子かー。
というか、エリシアが殺人犯になっちまうよ・・・
仕方ないか。
「大変そうだな、手伝おうか?」
と、なんか黒髪の青年が俺の横に立っていた。
「頼む、助かる。」
俺はありがたく手伝ってもらうことに。
「聖なる光!傷を癒せ!<ヒール!>」
青年の手が白く輝き、傷を癒す。
が・・・
「これは・・・なにがあったんだ!?」
慌てる青年。
そう、到底街中で負う傷じゃない。
ビッグボアの突進がクリティカルヒットって感じだ。
「あー。乙女の怒りを買った」
あんまり説明したくなかったので端的に。
「・・・本当に?」
青年に疑わしい目で見られた。
「本当。手に接吻しようとした。で、蹴られて、受身失敗。」
「・・・はぁ、エディメアの貴公子は女性に手を出したことは無いと聞いていたんだが・・・」
青年は、悪い噂は本当だったのか・・・失望した。とか言ってる。
「え、どんな話だったんだ?俺の方だと、女性にモテモテで、
なんども結婚話がでるが、目にかなう女性がいないとか聞いたんだが」
そう、俺はそう聞いたのだ。
さっき言わなかったのは、確信が無かったから。
だって、何百人と側室がいるとかいう噂もあるんだぞ?
「ああ、ボクが聞いた話でもそうだった。
そして、共和国の学校でも一番の成績だと聞いたんだが・・・」
青年は、絶望したーって感じだ。
気が合うかもしれん・・・
「ああ、でも強そうではあったぞ。今はこんなだが」
泡吹いて白目むいてるケイネスを指差す俺。
「へぇ・・・!それは良かった。ちょっと楽しみにしてたんだ」
はぁ、ダメージが大き過ぎてきついなぁ・・・
そろそろ救護隊とか来るだろうし。
仕方ない。
「閉じろ黄泉の門。いいから起きろ馬鹿野郎。<リヴァイブ>」
相当にやる気ない詠唱でリヴァイブ発動。
が、ちゃんと効いた。ケイネスが目を開けた。
「ぐ、ぐぅ・・・一体何が・・・」
苦しそうに体を起こしつつケイネスは言った。
「け、ケイネス様!」
さっきの金髪美女が抱きつく。
が、
「イルシア、離してくれ。私は運命の女性に出会ったのだ・・・!」
イルシアと呼ばれた女性が硬直。
ちっ、まだ懲りてなかったのか・・・
『リリー、早急にエリシアを移動させてくれ』
『大丈夫!こんなこともあろうかと、既に控え室だよ!』
『よし、グッジョブ!』
『わ~い♪』
「あの人は何処に・・・!?」
ケイネスはきょろきょろしてる。
・・・どうするか。
よし!
「ケイネス殿、あの人には既に相手がおりますが?」
とりあえず、これで収まるだろう。
「なん・・・だと!?・・・いや、この私ほど相応しい相手などいない!」
なんてうざい!?
「アルネア殿・・・相手は誰なのですか・・・!」
いやだー!コイツ嫌だー!
前に学園長にも似たようなこと思ったけど、
全然違う!学園長は立派な先生だけど、コイツうざい!
くっ、どうするかな・・・
コイツのことだから、倒して証明とか言いそうだ。
迷惑極まりない。
・・・・真面目そうだから暗殺とかはするまいが、うざそうだ。
他人に迷惑はかけられないということは・・・
「俺。」
「・・・」
ケイネスが凍った。
で、ニヤリと笑った。
「そうか・・・では決闘を申し込む!」
「だが断る!大事な交流戦の前に何言ってやがる。馬鹿か。馬鹿だろ。馬鹿だな!
三国友好の大事な大会の前に、人の恋路を邪魔して決闘を申し込む!?
ドラゴンに蹴られて地獄に落ちろ!
そんなんで議長の息子だと!?自覚が足りん!
貴様の行為は親の顔に泥を塗ってるに等しい!
そんなヤツがあの子の相手に相応しい訳ないだろうが!一回転生してやり直せ!」
有無を言わさぬマシンガントークで硬直した貴公子をほったらかしにして、
俺はコロシアム内の控え室へ向かった。
――次回予告!――
♪~~チャララッ、チャラララ~~
「第一回戦の相手がケイネスだと!?」
「アル・・・勝ってください」
「お兄ちゃん、叩きのめしてあげなさい!」
「アルネア殿、確かに私が間違っていた。この交流戦で貴公に勝てばいいのだ!」
「・・・いい加減にその口を閉じろ!」
「エリシアさんは私が貰う!」
「紺碧の空に瞬け!貫け銀雷!」
次回、銀雷の魔術士・第6話:『馬鹿は治癒魔法でも治せない』