第三話:市場
さて、皇国の南端にある街、ティルメアに着いた。
3日目だ。
で、とりあえず馬車は御者さんと学校側に任せる。
宿の場所の説明だけ聞いた。
「よっしゃー街だー!」
俺は歓声を上げつつ、レッツゴー!
「お買い物です!」
エリシアもノリノリである。
「お兄ちゃん!?どこいくの!?」
「市場さ!」
「あ、私もいきます!」
「お兄ちゃん、私も!」
どうやらエリシアとリリーも来る模様。
さて、何買おうかなー!
俺の事前調査によると、今日は市場でバザーがある!
バザーでしか買えないモノがあるんだぁぁぁぁッ!
「あ、ギルドいくんだった」
「え、お兄ちゃん!?何で!?」
「あ、アル、リリーに話してなかったです」
で、軽く説明しつつギルドへ。
あ、こないだの商人さんたちと、なんかギルドの制服の爺さんが話してる。
と、商人の中の、フードの女の子がこっちに気づいた。
「あ!先日はありがとうございました!」
ふむ、どうやら向こうの方が速かったらしい。
ま、こっちは大所帯だしな。
「おう、どういたしまして!」
と、ギルドの爺さんがこっちを見て驚いた。
「ふむ・・・まさか本当にキミがあの盗賊団を倒したのかね・・・?」
信じられん。といった感じだな。
「まぁ、一応これでもラルハイト魔法学校の生徒なものでして」
「なるほど・・・そうか、交流戦じゃったな」
「まぁ、そんなとこです」
「・・・あの盗賊団のリーダーは魔法も使うことで恐れられておったのじゃが・・・」
「ああ、不意打ちでサクっと」
「そうか・・・わしはギルド・ラルハイト南部支部長のオルディアじゃ。
まあ、気軽に爺さんとでも呼んでくれ」
「俺はアルネア・フォーラスブルグです。まぁ、気軽に呼んでください。」
「うむ、わかった。ところで、何か用かね?」
「あ~、7人の商人で盗賊撃退の信憑性に不安を覚えたので、
問題が無いか見に来ました」
「ふむ、問題ないぞい。現に盗賊は捕まっておった。その事実だけで十分じゃ。」
「それはよかった。よし、エリシア、リリー、行くか~!」
「む、もう行くのか?」
「まぁ、市場に用があるので」
「ふむ、魔法学校に通っておるといったな?」
「ええ、まあ」
「そうか、では、魔法具を売っておる緑のテントに行って、
爺さんからの紹介。山を上に、空を下に。と伝えてくれ。」
そう言って、爺さんはニヤリと笑った。
俺もつられて笑う。
「爺さん、ありがとな」
「くっくっく、用があったら、また来るといい」
そうして、俺たちは今度こそ市場へ。
「お兄ちゃん、行ってみるの?」
「おうともさ!」
「あ、アル。緑色、ありました」
で、緑のテントに行くと、魔法具が割りと安く―――1割引くらいで売られていた。
ふむ、確かにホンモノっぽい。魔力で分かる。
店長はお爺さんだ。すごい髭。
「あ~、すみません。爺さんからの紹介。山を上に、空を下に。」
そう言うと、髭爺さんはニヤリと笑った。
「ほぅ、確かに面白いのぉ。不思議な魔力じゃ」
「・・・お爺さんも、魔法使いみたいだね」
「まあの。というか、連れの嬢ちゃんは何者じゃ?」
「ん~?俺の妹だよ。天才なんだ」
「・・・似とらんが?まあいい。ちょっと待っとれ」
髭爺さんは、どこかへ歩いていき、すぐ戻ってきた。
「これじゃ」
爺さんがそう言って差し出したのは、謎の箱。
鍵穴が無く、開けられそうな隙間も無い。
大きさは小さなトランクくらいか?
なんだか魔力みたいなので覆われている。
「・・・なにこれ?」
俺は思わず呟く。
「・・・これを開けられないか試して欲しい。
持って行って一人でやってくれて構わん。
わしらには開けられんかった。その中のものはやる。
そのかわり、何が入ってたか教えてもらいたいんじゃ。」
髭爺さんは、急に真面目な顔で言った。
悪い条件じゃない。でも・・・
「爺さん、これはどこで手に入れたんだ?」
「昔な、迷宮で見つけたんじゃ。だが、誰にも開けられんかった。
お主も開けられんかったら・・・まぁ、返してくれればありがたいのぅ」
「はぁ、俺が返さなかったらどうするんだよ」
「ふん、わしもあの爺の眼力は信用しておるのでな」
「・・・・わかったよ。やるだけやってみる」
「うむ、当然じゃが金はいらん。・・・頑張ってくれ」
俺は、箱を受け取り、エリシアとリリーを見た。
「どうする?俺はちょっと街の外に出るけど」
「私も手伝います!」
「お兄ちゃん、私も!」
俺たちは、街から離れた山の中に来た。
おそらく、あの爺さん達は、昔は相当な手だれだったはずだ。
迷宮で拾ったというのもそうだが、雰囲気が独特なのだ。
ただ者ではない感じ。だろうか?
―――よっし、本気でいくか!
―――魔力、全開!
「シルフ!」
『はい、お呼びですか、ご主人様♪』
俺は、<アウロラ>と<シルフィード>を抜く。
「シルフ、この箱を開けたい」
『はい?あら、魔力プロテクトですか・・・力ずくですね♪』
「おう。というわけで・・・我と契約せし風の精霊よ!我が魔力を糧に顕現せよ!」
銀の閃光が閃き、シルフィードが実体化する。
「んで、シルフ、これって開けられる?」
『え~と、・・・ううん?なんですか、コレ。魔力じゃなくてマナで構成されてますね』
「・・・つまり?」
『無理です♪』
思わずがっくり肩を落としてしまった。
「アル、どんまいです!」
「お兄ちゃん、いつかいいことあるよ!」
「ええぃ、シルフ!憑依は!?」
『憑依ですか?危ないですよ♪』
なぜ楽しそうに言うか。
「なんで?」
『魔力容量を突破しますと、体が粉砕する恐れがあります。
あ、でもエリシアさんがいるのですぐ回復できますね。痛いですけど♪』
「よし、GO!」
「あ、アル!?ダメです!断固却下です!」
「そ、そうだよお兄ちゃん!無理なら仕方ないよ!」
「いや、爺さんの夢を無下にはできん!俺はやる!こいシルフ!」
『了解です♪』
「アルの馬鹿・・・」
「お兄ちゃんはもう病気だね・・・」
んで、シルフと軽く呪文を考えて、実行。
『大いなる風の精霊の力を此処に!』
『我は盟約を結びし者!』
『生命の根源たるマナの加護によりて、我に風の力を!』
『<精霊憑依!>』
シルフのマナが俺の体に流れ込み――――
俺の魔力が爆発的に上昇した。
『まぁ、さすがご主人様ですね♪余裕じゃないですか♪』
『つまり、成功ってことでいいのか?』
『はい、でもあまり長くは持ちません。ざっと30秒でしょうか?』
『短っ!?』
『はい、はやく開けましょう♪』
『・・・ああ』
『――天をも切り裂く銀の雷――』
『――死を告げる轟音、聞くこと叶わず――』
『――汝を葬る雷、見ることも叶わない――』
『――其は天空の理。我が手に導かれ、裁きをもたらす――』
『――――<サンダーボルト!>』
――――――ドガァァァァァン!
通常より明らかに威力が高い<サンダーボルト>によって、
箱を覆っていたマナが消滅。
箱はそれでも残っていたが、帯電している。
『ミッションコンプリートですね♪』
『よし、中身確認だ!』
精霊憑依のまま移動し、驚く、めちゃくちゃスピードがあがってた。
「アル・・・流石です!」
「お兄ちゃんが凄すぎるよ・・・!」
とりあえず、箱を開ける。
『オープン・ザ・プライス♪』
シルフ、番組違う。
『・・・コレは!?』
『あら?』
「なんです・・・?」
「えっ、見せて!?」
箱の中には、銀の短剣と、黒い服、そして4つの指輪が入っていた。
短剣はミスリル製で、服は軽くて丈夫な謎の素材。
指輪には何か魔法がかかっているようだったが、よく分からなかった。
まぁ、呪いではなさそう。
もっとしっかり確認したかったのだが・・・
『ピンポーン!タイムアップです♪』
「ぐはっ」
「アル!?」
「お兄ちゃん!?」
俺は倒れた。
―――次回予告!―――
「う、うごけん・・・」
「アル、大丈夫です?」
「お兄ちゃん、私に任せて!」
「―――アル、大丈夫?」
「私もアルを看病いたします!」
銀雷の魔術士、次回、『看病は戦いだ!』
「・・・なぁ、何と戦うんだ?」
「お兄ちゃん、敵は仲間内にあるんだよ!」
「アルにご飯を食べさせるのは私です!」
「ええぃ!自分で食える!」
・・・おかしいな?ファンタジー・バトル物だったはず・・・
次の次の話から、交流戦を開始します。
始まってしまうと、当分日常っぽいのができないので、
投売りしてみました。