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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
序章:この世界で
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第三話:銀雷の魔術師


フォーラフブルグ家。

この世界での俺の家である。

あんな父さんだけど(気さく、優しい、親馬鹿、新婚みたいetc・・・)

一応、十二貴族とかいう、皇国でも皇を除けば最高に偉い貴族らしい。

でもまあ、貴族には見えないけど、間違いなく良い人ではあるな。



で、そんなフォーラスブルグ領の東端に、オル村はある。

ウチの領土は皇国の東端。その東端なので、皇国最東端の村である。

なので、村から少し東に行けばティルグリム山脈がある。

えーと、あのラーベルグ防衛戦の竜が住んでたっていう山脈である。

・・・まだ生きてたりするのかな?



話が逸れた・・・ウチの屋敷は領土の東寄りに建ってるので、村まで馬車で30分くらいで着いた。

推定午前10時。3時くらいになったら帰るらしい。

えーと、今回の目的は領土の視察らしい。

父さん曰く、「村の子と遊んでおいで」とのこと。



さて、村に着いた。

思ったより立派な村である。

家が1,2,3,4,5,6,7,8,9・・・


いっぱいあった。

仕方なかったんだ・・・多いんだもの!


とりあえず父さんが村長さんの屋敷で話てる間に村に子どもと遊ぶことに。




「よーし、それじゃあ、かけっこで勝負だ!」

と、村の子ども達のリーダー格であるジョンは突然言った。


「よし、受けてたつぜ!負けないよ、兄さん!」

俺は受けてたつ!


「えっ、俺もか!?」

驚く兄さんだが、兄さんはノリがいい。


「ふははははっ!いいだろう。アル、この兄にかけっこで勝とうなど・・・10年早い!」

やはりのってきたか。



「ルールは簡単。ケガをさせたら反則負け。他は何でもOK。

 あそこの目印付の木に先についた人がトップだ!」

と、ジョン。


「ジョン、兄さん、負けないよ!」

俺は準備万端。


「ほぉ、なんでもいいのか・・・」

なんかつぶやく兄さん。


「おにいちゃん、がんばれ~!」

リリーは応援している。参加しない。


そして村の少年Aの合図で死闘は始まる。コースは直線150M(俺主観)


「いちについて、よーい・・・・・・ドン!」



――始まる瞬間、俺は失策を悟った。

魔力を感知したのだ。



「大地よ、壁となれ!<ストーンウォール!>」


「紅蓮の炎よ!貫け<ブレイズアロー!>」


ジョンの<土>魔術に、兄さんの<炎>魔術。




――ズガアアアァン!


――地面から突然壁が現れ行く手をふさぐ!


――バシュウゥゥン!


――紅蓮の矢が兄さんの前の壁を一瞬で溶かす!




いまから詠唱してたら出遅れる!

俺は一瞬、逡巡し―。



――なら!


俺は全力で壁にダッシュ!

膝を曲げ、全力で――跳ぶ!


「うおりゃぁぁ――ッ!」

そしてそのまま、ゴツゴツした壁に手をかけて一気に登ろうと――


――あれ?


今まで、転生してから全力でジャンプしたことがなかった。

稽古も、まだ本当に全力でやったことはない。


というか、いままで一番全力だったのが、朝の布団防衛戦・・・

そんなわけで、いま気づいた。



(体が、軽い――!)


俺の体は2Mもの(俺主観)壁を軽々飛び越えて、前の二人に追いついた!



「うわっ!?魔法か!?」

驚くジョン。無理もない。俺もビックリだ。


「おっ、さすがアルだな!」

・・・兄さんが驚く姿が思いつかないな。


「おにいちゃんすごーい!」

ありがとう、リリー!


「まだ、勝負はこれからだ!今度は俺もいくぜ!」

俺は今度こそ魔術を使うべく、魔力を集めようとし、

そして、気づいた。前方の地面に魔力が集まっている。


――これは!


感じた。地面が陥没する。雷では対処不可。なら――!




「崩れる大地は侵入を拒む!<グランドクラック!>」


「紅蓮の業火は大地をも溶かし固める!<ブレイズフレア!>」


「風が我が身を支え、風が我を運ぶ!我は空翔る一陣の風!<ウィング!>」




――大地が崩れる。



炎が大地を溶かし、崩れるのを阻止しようと――



「ぅあちっちちちち!?」


地面がドロドロ・・・というか溶岩になっていた。

たしかに溶けてるし、固まろうとしてるけど、渡れる温度では絶対ない。

兄さんが渡ろうとして悲鳴をあげている。


そして看破していた俺は<ウィング>で空に舞い上がり――




突風が吹いた。



「うああああっーーーー!?」

俺は焦るが、どうにもならない。


『風が我が身を運ぶ』の下りは要らない模様。突風に運ばれた。




――ドカーン



「ぐはっ」

俺は左に生えてた木に激突した。


ゴールの木ではない。




結局、コースが走行不能だったので、引き分けになった。



「さすがですね、リーベルク様、アルネア様」

と、ジョン




「いや、ジョンもかなりの腕だな!あと、俺はリックと呼んでくれ!」

元気な兄さん。


「いやー、ジョンの術にはビックリしたよ!俺はアルで!」

ま、<土>使いはウチにはいないからなぁ。



「リックさんも、アルさんも全然余裕ありそうですけど・・・」

なんか微妙な表情のジョン。


「おにいちゃん、そらとんでたよねっ!」

リリーは楽しそうだ。


とりあえず即席呪文はよろしくない事は分かった。

空を飛ぶのは難しそうだなぁ・・・


あ、ジョンは村長さんの息子で、俺と同じ5歳(嘘だろ!?)である。

え、俺は転生者だし?まさかジョンもなのか・・・?いやでも・・・


「う~~ん」


「おにいちゃん、わたしもとびたい~」

リリーにねだられてしまった!


リリーが万一ケガでもしたら大変だ!

絶対に安全な呪文を考えねば!



「むぅ、じゃあリリー、完成したら教えるよ」

とりあえず、そう言うしかない俺であった。


「わーい!」

まあ、リリーが嬉しそうだからいいか。


さて、そんなこんなで村長の家でご飯・・・(和食。おいしい)をいただいていると・・・



「たいへんだ!村長!」

村人が駆け込んできた。


曰く、村の東、ティルグリム側から魔狼の群れが接近しているとのこと。

数、とても多い。

でもまあ、向こうにとって不運なことに、こちらには父さん(紅蓮の悪魔)がいる。

ん?なんかへんな気配がする。


村の東出口へ急行すると、魔狼と村人が戦っていた。

そして戦っていた村人の中の肉体派です!な感じの人が、こっちに気づいた。


「村長!それに領主様!よくぞ来てくださいました!」

と、肉体派の人は魔狼を丸太で吹き飛ばしつつ言った。


「カイト!大丈夫か!?今助けるぞ!」

そう言うと村長が魔力を集める!肉体派村人はカイトというらしい。



「よし、あとは私たちが引き受ける!村長の術に乗じて下がってくれ!まとめて焼く!」

どうやら父さんは魔法で焼く模様。




『大地の鉄壁、我が仲間を守護し、我らが敵を退けよ!<グランドウォール!>』

村長の魔法が発動。


「グルルル・・・」

「ウガァ・・・!」


魔狼たちが村人たちから離され、村人は全員退避する――


その時――





二回りも巨大な魔狼が現れた。



魔狼とは、魔法を使う狼という意味をもつ。

実際は、大きな力を持つ個体しか使えないのだが、この固体は相当強力そうだった。




俺は息を吐き、意識を集中――


――魔力を感じる。



とりあえずジョン、リリー、兄さん、村長、父さん、大魔狼(仮)

の魔力を大まかに数値にする。戦力把握は戦いの基本さ!


ジョンを10とするとリリーは18。村長は20。兄さん40。父さん60。大魔狼250?。

自分はよくわかんないのでパス。これは・・・


・・・魔力だけじゃ勝負は決まらないけど、大魔狼(仮)やばいね。


「そんな・・・こいつは一体!?」


と、村長



「ほう・・・」


珍しく真面目なので、誰かと思うが父さんだ。




「兄さん、アレ、強いね」

俺は兄さんの意見を聞いてみたくなった。


「ん、そうだな。だが、俺もアルも父さんもいるんだぜ」

兄さんがニヤリと笑う

いつもどおりだなぁ・・・

強いのは分かってるみたいだし、俺を不安にさせないようにしてくれてるのだろう。



「リック、全力で焼くぞ。アル、隙を見てアレを。リリー、おにいちゃんの応援な」


父さんもニヤリと笑う。




「おにいちゃん、おとうさん、がんばって~!」


リリーはこんな時でも可愛かった。怖くないのだろうか?ま、父さんいるしね。



父さんが腰に差した剣を抜き、炎のような魔力が戦場に吹き荒れる――!



「いくぞ、<ハマル>よ!」

父さんは言った。


『ふむ、久々の戦か、ほぅ、グレーフェンリルか。なかなかだな』


「うおっ!?アル、父さん!なんか声がするぞ!」

驚いたような兄さん。貴重だ!?


吹き荒れる烈火の如き魔力の奔流。父さんの魔力が4倍以上になる!

兄さんが謎の声に慌ててるが、俺には余裕がなかった。



「これが、精霊・・・?」

俺は思わずつぶやいた。

そう、よく考えたら、十二貴族の父さんは精霊剣を持っている。




『アルベルク、お前の息子たちか。ほぅ、面白いな。』

どうやらこの声が、父さんの精霊、<ハマル>のようだ。


「おい、ハマル、戦いが先だぞ」

咎めるような父さん。


大魔狼――改めグレーフェンリルは突如膨れ上がった父さんの、<ハマル>の魔力に警戒。

距離をはかっているようだ。好機!今のうちに詠唱を――



『おろかな人間ども・・・そして<獄炎の精霊>か』


(グレーフェンリルがしゃべった!?)



「アル、リック。魔獣は強力な固体だと、意思の疎通ができる。住処に帰ってはもらえないかな!」

父さんは落ち着いている。



『ふん、断る。あの山にこれ以上いられないのでな。仲間の食料もたりぬ。力無きものが去るのが世界の定め』

フェンリルはどこか悲しそうに言う。



「そうか、残念だ」

父さんも若干悲しそう。


(・・・父さん、いつもこんなならカッコイイのに)

俺は思わず思ってしまった。



――フェンリルが魔力を集めだし、戦いが始まる




「<ハマル>!リック!一斉射撃だ!アル、時間差!」

父さんが指示を飛ばす!



――意識を集中!<ハマル>の魔力が濃すぎてグレーフェンリルの魔法が感知しにくい。


――空気、圧縮、風魔力――!





「『冥府の業火は全てを焼き尽くす!敵を!罪を!汝を!眠れ、我に敵対せし者よ!

  この炎、受けること叶わず!避けること叶わず!汝、生きること叶わず!

                    <インフェルノ―――ッ!!>』」



「燃やせ、滅ぼせ!烈火の炎よ!<ヴォルケイノ!>』



『大いなる風の力よ、集え!我に仇なすものどもを切り裂き、灰燼に帰せ!

 虚空と烈風によりて、全てを退けよ!<オルトテンペスト・ディストラクション!>』






――炎と風が激突し、音が消え、目の前が真っ白になった。



――ドゴォォォォン!



(――相殺した!今だ!)



「――空を切り裂く天の雷よ――我が手に集え!<サンダーボルト!>」




――フェンリルに詠唱する時間はなかった。

しかし、フェンリルの体表に魔力が集まるのが見え――



――ズガァァン!



煙がすごい。





『やるな、人間』

煙の中から、フェンリルの姿が現れる。




(――サンダーボルトが当たって、ほぼ無傷!?)



『ほぅ、魔力装甲か。やっかいだな?アルベルク』

全然そう思ってるように聞こえない<ハマル>。



「アルの電撃が効かないなんてなぁ・・・父さん、どうする?」

若干いやそうな兄さん。



「そうだな。直接<ハマル>で切り裂くしかないか」

父さんは<ハマル>を構えなおす。



「父さん、だいじょうぶなの?」

思わず俺は心配になった。

グレーフェンリルはものすごく強そうである。




「なぁに、お前たちの父さんだぞ?ただの魔狼は任せた!」


――そう言って父さんがグレーフェンリルに突っ込む!



――こちらの戦力は、俺、兄さん、父さん&精霊ハマル。

――敵はグレーフェンリルと、魔狼が12頭。



「アル、右は任せろ!左のは任せる!」

兄さんは的確だ。



「オーケー、兄さん!」



――魔力を集める!



――魔狼6頭が、俺に向かってくる!



(――慌てるな。接近されたら不利だけど、魔力量は勝ってる!)



「乱れ飛ぶ雷の矢!<ガトリング・サンダーアロー!>」




――ドガガガガガガガ!


「――キャウゥゥン!?」



――<ガトリング・サンダーアロー>――

とりあえず、接近させずに魔狼を殲滅する意図でとっさに作った雷魔法。

1秒に5発ほどの速さで雷の矢を撃ちまくる!

一発の威力は<サンダーボール>1.5個分。(俺主観)

消費魔力量が多い。サンダーボルトと同じくらい。

ちなみに、持続時間は約3秒で、計15発放たれる。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――




――グレーフェンリルに向かって走りこみ、<ハマル>で斬りつける!




――フェンリルは躱して爪で切り裂く!




――後ろに跳んでかわし、魔力を集める!




「<ソニック・ブレード!>」



『<ソニック・クロー!>』



互いに放った真空波が激突、相殺する。



――互いに相殺された技の余波をかいくぐり、斬りつける!




「燃えろ、<ハマル!>」

私は<ハマル>に魔力を流し、業炎を生み出す。


『小癪な、<風よ!>』

フェンリルは爪に風を纏わせる。


――燃え盛る<ハマル>


――風の爪が迎撃する



―――――――――――――――――――――――――――――――――――




(―――よし、魔狼殲滅!兄さんも大丈夫そう。父さんに加勢する!)



――炎が閃き、風が切り裂く。



(――――でも、とうてい割り込める状況じゃない・・・)



――なら、離れたところを仕留める。



俺は魔力を手に集めようとして――



――違和感を感じた。











――俺の体の奥に、膨大な魔力があることに、気づいた。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――






――フェンリルの爪を<ハマル>で防いだ瞬間、膨大な魔力を突如感知した。





「――ッ!?<ハマル!>」


私は<ハマル>を魔力で爆発させ、距離をとる。



『――なんだ、これは!?』

フェンリルが焦ったように言う――



「フェンリルじゃない、まさか――!?」

私には心当たりがあった。


『アルベルク、あの少年は何者だ?』

<ハマル>が珍しく驚く。






――膨大な魔力の中心、アルネアの眼は、いつもの緑ではなく、銀に輝いていた。







『――天をも切り裂く銀の雷――』



『――死を告げる轟音、聞くこと叶わず――』



『――汝を葬る雷、見ることも叶わない――』



『――其は天空の理。我が手に導かれ、裁きをもたらす――』



『――――<サンダーボルト>』







―――世界が銀の閃光に包まれた。



このような作品を読んで下さった方、どうもありがとうございます。


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