第六話:黄昏の決勝戦
俺は、校庭に向かっていた。
もうすぐ決勝戦だ。
エリシアとフィリアは棄権・・・
「ん?シルフ、精霊って実体化中にやられるとどうなるんだ?」
『はい、ご主人様。消滅させられますと、溜めていた魔力が全て消滅します。
魔力の溜まり方は精霊によって異なります。
私は風から魔力を得ますが、他の精霊は熱や空気中の水分など様々です♪』
へ~、そうなんだ・・・って、あれ・・・!?
「・・・シルフ、さっきの見てた?いや、聞いてた?」
『・・・?呼ばれた時か、実体化している時以外は寝ていますが・・・
あ、あと魔力が活性化したら起きますが・・・なにかありましたか?』
おっと、あぶないな
「いや、たいした事じゃないんだが、エリシアとフィリアは棄権したんだ」
『あ、ということは決勝戦ですね、頑張ってください、ご主人様♪』
「おう!」
と、シルフが剣の中に戻ったようで、気配が消える。
と、ついさっきのことを思い出す。
『―――アル、目を瞑って下さい』
・・・柔らかかったな。
・・・はっ!?
これから決勝戦だぞ!?何を考えてる俺!?
あれ・・・そういえば・・・
『きっと斜め方向に勘違いされます・・・』
・・・言ってたな。え、今の俺の思考が斜め勘違い?
実は単なるお礼?
いや、んなわけないだろ!?
あれは・・・あれ?キスだよな?
目を瞑ってはいたが・・・多分?
・・・前世で一度キスしたことがあるが、あの時も目を瞑ってたから分からん!
んぁ~~~・・・・
「―――――次、決勝戦はアルネア・フォーラスブルグ対、ローラ・フィリスタイン!
両生徒は指定位置につけ!」
・・・試合が始まってしまった。
そうだ、絶対勝つように言われてたっけ・・・
俺は位置につき、ローラと向かい合った。
ローラは、今までは持っていなかった、金の柄の長剣を持っていた。
「ローラ、よろしくな」
「――本気、みせて」
「ああ、手を抜く気はないぞ?」
「――でも、本気でもない。女の子相手だと本気はムリなの?」
「む、確かにやりにくいな」
「・・・そう・・・じゃあ、本気になってもらえるように、がんばる」
「――――構え!」
学園長の声が校庭に響き、観戦する生徒の前にバリヤが張られる。
ローラがその剣を抜き―――
その黄金の刀身が露わになる。
<シリウス>は魔力がまるで閃光のようだったが、
それは魔力が見えない人間には見えない光だった。
だが、その剣は、確かに光っていた。
単なる太陽の反射ではない。
今はもう、日が沈みかけている。
まるで、星のように光っていた。
「これが私の魔法剣<アストライオス>――――」
俺は、<アウロラ>と、<シルフィード>を抜いた。
『おはようございます、ご主人様♪』
「なぁ、シルフ、別の呼び方は無理なの?」
『え~・・・このほうがなんだかしっくり来ませんか?』
「はぁ~~・・・」
俺は、重い溜息をつく。
と、ローラがポーカーフェイスから、真剣な表情になり――――
「これが私の全力――――!」
ローラの魔力が一瞬にして膨れ上がる――――!
「――――んな!?」
魔力が一気に膨れ上がったローラの瞳は、
いつもの緑ではなく、金に輝いていた。
「―――そっちも、何か隠してる」
今度はいつものポーカーフェイスで指摘するローラ。
なんで見破られてるんだ?俺ってそんなに分かりやすいか?
・・・仕方ない!
――――魔力、全開!
俺の瞳が銀に輝き、魔力が一気に増加する。
「シルフ!ローラが何か召還するまでは待機!
移動補助と、可能なら風で援護頼む!」
『了解です!』
「―――――試合、開始!」
試合開始と同時に、お互い一気に距離を詰めつつ、魔力を練る。
『銀の雷!虚空を切り裂け!<サンダーボルト!>』
『金の氷!全てを氷結させよ!<ブリザード!>』
俺の手から銀の雷が、ローラの手から金の氷弾が飛び出す―――
―――<氷>属性!
――――ズガァァァン!
校庭の中心で激しく激突し、周囲に氷と電撃を撒き散らす。
が、俺は気にせず突っ込む。
たとえ実体化してなくとも、この程度はシルフが防いでくれる!
砂煙を割って飛び込むと、向こう側からローラも金の剣を掲げて飛び込んでいた。
俺は、<アウロラ>と<シルフィード>で切り掛かり――――
『<―――ミラージュ>』
ローラが右手の<アストライオス>と、左手で迎撃する。
――――ガキィィン!
やはり、見えない刃―――おそらく魔力の氷でできている―――
が、あるようだ。
鍔迫り合いになる。
俺は力で押し込もうとするが、
ローラもどこにそんな力があるのかという力で押しとどめる。
――――なら!
『<サンダーブレード!>』
『<フリーズブレード!>』
俺の雷と、ローラの氷が、互いに侵食せんと押し合う。
「―――やるな、ローラ!」
「―――このくらいなら、普通。」
「――――せぃっ!」
「――――はぁっ!」
同時に鍔迫り合いを解き、距離をとる。
一気に攻める!
『引き寄せる不可視の力!<マグネティション!>』
『万物を凍てつかせる氷結の結界を此処に!<コキュートス!>』
俺が砂鉄を集めるが、ローラの周囲の空気が一斉に冷気に侵食される
『ご主人様!』
シルフが俺を風で後方に運び、俺は冷気に対抗すべく、魔力を練る。
『我が風の盟約の剣よ!銀雷によりて、天翔ける雷となり――――』
『虚空を切り裂け!< 疾風を司る四源の雷砲!>』
ありったけの魔力を込めた<シルフィード>が、風と銀雷を纏い、輝く。
が、ローラも黙って見ていない。
『絶対たる氷結を、此処に―――何者も動けぬ零下の境地――――』
『凍てつく世界―――<――絶対零度!>』
<シルフィード>が流星と化して襲い掛かり、<コキュートス>を吹き飛ばすが―――
ローラの剣から金に輝く絶対零度のレーザーが放たれ、激突する。
――――ガキィィィィィィン!
<サーマルブラスト>と<アブソリュート・ゼロ>は互いに一歩も譲らず、
破壊を撒き散らす。
俺は、ついでに砂鉄も飛ばすが、防御は破れない。
校庭の地面がひび割れ、温度がみるみる下がる。
俺の<マグネティション>で磁場が乱れ、
さらに、プラズマが発生した校庭にオーロラが現れた。
「―――きれい。」
思わずと言った風に呟くローラ。
「・・・やっぱり、初めて見たのか?」
俺は、つい気になって、聞いた。
「―――ホンモノを見たのは。」
「そうか・・・――――ローラ、次が俺の最高の一撃だ」
「―――わかった」
俺とローラの魔力が更に膨れ上がり、ローラの髪が金色に輝く。
『――創世の雷光よ、我が剣に集え――』
『――其は知性と創造を司る光―――!』
『聖なる銀よ!銀雷と極光によりてその身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!』
『――星空を司る黄金の剣よ―――』
『――星海の無慈悲な氷結を此処に―――』
『絶対零度において―――唯一輝くは星の光!その力を示せ――――!』
『<創世の極光・四源の雷砲!>』
『<絶対零度の星光!>』
俺は放った<アウロラ>をプラズマ加速!
銀とオーロラの弾丸となって突進する。
同時にローラも<アストライオス>に、
空気だけでなく、魔力すらも凍らせるかのような冷気を纏い、迎え撃つ。
―――――――激突した<サーマルブラスト>と、<スターライト・ゼロ>は
凄まじい爆発を引き起こした。
俺は<アウロラ>と<シルフィード>を投げて攻撃していたが、
ローラは手に持っていた。
必然的に、ローラの方が爆発から近くなり――――
「――――勝者、アルネア・フォーラスブルグ!」
爆発が収まると、ローラは数メートル吹き飛ばされ、
<アストライオス>が地面に転がっていた。
「おい、大丈夫か!?」
俺は、慌てて駆け寄り、ローラを抱き起こした。
「―――だいじょうぶ。ちょっと吹き飛ばされただけだから」
というローラだが、俺は肘が擦れて傷になっていた。
「聖なる光よ、此処に!<ヒール!>」
流石に擦り傷にリヴァイブはアレなので、ヒールで治す。
「ありがとう。」
ローラはにっこりと微笑んだ。
「おう。まぁ、俺のせいだが・・・」
「ううん、勝負だもの」
「おいお前たち、静かにしろ!表彰式を始めるぞ!」
この交流戦は、3位決定戦を行わず、1位に準決勝で負けた生徒が3位となり、
2位に準決勝で負けた生徒が4位となる。
まぁ、特に景品とかあるわけでもないしな。
学園長が騒ぐ生徒を静めつつ、こっちに歩いてきた。
「アルネア、ローラ、すばらしい戦いだった!
が、お前たち、強過ぎじゃないのか?」
若干呆れ顔で言われた。なんだよ、頑張ったのに。
「まぁいい、これでお前たちは個人戦に参加決定な」
「げ、忘れてた!?」
「・・・あ。」
「・・・お前たち・・・はぁ。」
その後、俺とローラは表彰され、その日の授業は終わった。
俺は、一人校舎を歩いていた。
ある部屋の前で足を止め、扉を叩いた。
「――――はい?」
俺は、扉を開け、中に入った。
「エリシア、大丈夫か?」
その部屋―――、保健室に入ると、開いた窓から風が吹き込み、
エリシアの髪が風にたなびいた。
「はい、大丈夫です。・・・アル、ありがとうございます」
「・・・心配するのは当然だろ?」
「家族だから。ですか・・・?」
「あ、ああ」
「むぅ~・・・先生、もう帰ってもいいですか?」
「はい。大丈夫ですよ。アルネア君、エリシアちゃんが可哀想ですよ?」
「はい!?」
なんか保健室の先生に名前を知られた上、なんか言われた。
「せ、先生!?」
エリシアが真っ赤になって慌てる。むぅ、可愛い。
「・・・エリシア、帰るか」
「・・・はい」
――次回予告――
Episode:Zero
『必ず、帰ってくる』
『そんなに・・・手ごわい相手なんですか?』
「・・・ありがとう」
「ヘィ!タクシー!」
「よし、今日の次回予告はこんなのでどうだろう?」
「お兄ちゃん・・・・何してるの!?」
「アル、これは詐欺です。特に前三つが。」
「え~・・・だめ?」