第五話:想い
俺は保健室にいた。
エリシアが目覚めなかった為だ。
<リヴァイブ>は、傷は治せるが、魔力は回復しない。
魔力が枯渇すると、意識を失ったり、ふらついたりする。
あまりに酷い場合は、死に至る場合もある。
一応、魔力を回復させる方法もあるにはあるが、普通使わない。
しばらく休めば治るからだ。
フィリアの傷は浅く、ほとんどダメージは無かった。
今は、どこか外の風をあびに行った。
保健室の先生はどこかへ行った。
だから、今は俺とエリシアしかいない。
「・・・・エリシア」
声をかけるが反応が無い。
俺は、少し苦しそうなエリシアの頭を、そっと撫でた。
「んぅ~・・・アルぅ~」
・・・あれ、なんか深刻な空気じゃなかったっけ!?
エリシアの寝言で空気が和んだ・・・
・・・なんかむかついた。
人がこんなに心配してたというのに!
よし、なんか悪戯してやる・・・覚悟しろエリシア!
・・・どうしたものか?
エリシアは何故か幸せそうな寝顔を晒している。
・・・あれ、そういえば二人きり?
これって・・・
はっ!?俺は今何を考えていた!?
落ち着け~俺は紳士だ~アイム・ジェントルマ~ン!
よしよし、パ~フェクトにジェントルマ~ン!
落ち着いた!
・・・よし、耳に息を吹きかけてみよう!(何故そうなった!?)
ふぅ~
息を吹きかけると、エリシアのからだが若干震えた。
「ひゃふんっ・・・アルぅ、らめぇ~・・・」
・・・エリシア、何の夢をみてるんだ?
と、なんかエリシアが小声で呟く。
「アル~・・・わたし・・・・」
気になったので顔を近づけて聞き取ろうと―――
エリシアがいきなり目を開けた。
至近距離で目が合った。
俺は、寝言を聞き取ろうと体を乗り出していた。
この体勢だと、覆いかぶさっているように見えなくもない・・・
あれ?やばくね?
・・・互いに無言で見つめ合う。
エリシアの顔が段々赤くなってく。
「・・・アル、状況を説明して下さい・・・」
「オーライ!」
よくわかんないテンションで返答。
「アル、どうして・・・その・・・あんな姿勢だったんです?」
真っ赤なエリシアに尋問される。
・・・どう答えるべきか?
いいや!正直に言っちゃえ!
「・・・寝言を聞き取ろうとしてました」
途端、エリシアが硬直した。
「ア・・・ル、私、何か・・・言ってましたか?」
「いや、聞き取る前に起きた」
一応事実だ。半分ほど。
「そ、そうですか・・・よかった・・・」
かなりほっとした様子。
よし、助かった。
あ、そうだ。
話を逸らすのにいい話題があった。
「エリシア、なんで俺の術が使えたんだよ?」
「あ、それはアルが昔私に使った隠蔽電流をコピーして、
そこからアルの真似で発展させたんです」
そういえば、受けた術を習得できるんだっけか・・・
「くっ、なんか悔しい・・・」
「でも、アルより溜めが長いですし、磁力みたいなのは無理ですよ?」
―――コンコン。
「はい?」
ドアがノックされ、エリシアが返事をする。
学園長が入ってきた。
「ああ、大丈夫そうだな」
「はい、大丈夫です」
エリシアは軽く頷いて答えた。。
「・・・さて、エリシア、準決勝だが、どうする?」
「・・・もう魔力も使い果たしましたし、これじゃあアルに気を使わせるだけです・・・
フィリアさんはどうですか?」
「残念だが、無理そうだな。仕方ない。アルネア、不戦勝だ。
もうすぐ決勝だ、遅れるなよ。」
そう言って、学園長は背を向け、出て行った。
・・・また二人きりになってしまった。
と、エリシアが真っ直ぐに俺を見た。
「アル、すぐに来てくれて、嬉しかったです」
恥ずかしそうに微笑みながら、エリシアは言った。
「ん、ああ。・・・エリシアは無茶しすぎだぞ」
「アル・・・(もはや驚異的な鈍さですっ!)」
なんか小声で聞こえた気がする。
「エリシア、ハッキリ言ってくれないとわからんぞ?」
「もう、ハッキリ言っても伝わらない気がしてきました・・・
きっと斜め方向に勘違いされます・・・」
「なんか知らんが酷い言われようだな・・・
あ、やばい、そろそろ行かないと。」
「むぅ~~、じゃあアル、目を瞑ってください。」
「え、何ゆえ?」
「・・・目を瞑ってください」
なんだかすごい真剣なエリシアに押されて目を瞑った。
「いいと言う前に目を開けると目潰しが来ます」
「なんだと!?」
仕方なく目を瞑って大人しくしていると・・・
甘い香りがして、唇になにか、すごく柔らかいものが―――
「エ、エリシア?」
「アル、もういいです。絶対、勝ってくださいね」
目を開けると、恥ずかしそうなエリシアの顔が目の前にあった。
俺は、若干放心状態で校庭へ向かった。
「・・・アル、だいすきです」
アルが去った後、エリシアはそっと呟いた。
―――次回予告―――
♪~~チャラッ、チャ~ララララ~~
「これより、決勝戦を開始する!」
「・・・シルフ、さっきの見てた?いや、聞いてた?」
『頑張ってください、ご主人様♪』
「―――そっちも、何か隠してる」
「――――んな!?」
「これが私の全力――――!」
「<―――ミラージュ>」
「その身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!」
次回、銀雷の魔術師、第六話:黄昏の決勝戦
なんだか話が変な方向に来てしまった・・・
見切り発車恐るべし。
もはや、何が起こるか筆者にも予測不能です。