第三話:疾風と爆炎の宴
「―――始め!」
学園長の合図で俺たちの戦いは始まった。
俺は風を巻き起こし、ガルシアは炎を巻き起こす。
―――先手必勝!
俺は<シルフィード>に魔力を集めた。
「いくぞシルフ!この勝負、俺たちがもらう!」
『ご主人様、サクっとやっちゃいましょう♪』
「風よ逆巻け!巻き起これ烈風!<テンペスト!>」
俺の前に竜巻が出現し、突き進む!
「燃えろ<レグルス!>風など焼き尽くしてしまえ!」
そういいつつ、ガルシアも魔法を発動。
「いでよ爆炎!全てを焼き尽くせ!<ヴォルカディア!>」
ガルシアの手から爆炎が生まれ、竜巻と衝突。
―――ズガァァン!
砂煙が舞い上がり、収まると、俺の姿は校庭には無かった。
「んな!?」
『ガルシア、上だ!』
そう、俺は上空で魔力を集めていた。
「天をも切り裂く白き雷よ!我が手に集え!<サンダーボルト!>」
「くっ、盟約によりて結ばれし―――」
ガルシアも咄嗟に何かを発動する―――!
――――ドガァァァァン!
校庭に激しい落雷。またしても砂煙が舞い・・・
「うはぁ~、そんなのアリかよ?」
俺は思わず呟いた。
「いきなり奥の手を使うハメになるとは・・・」
ガルシアが呟く。
その隣には・・・
『ふむ、噂どおりだな。申し訳ないが全力で行かせて頂く』
実体化したレグルスがいた。
巨大な獅子の形をした炎のようだ。
大きい。普通乗用車サイズはある。
・・・どうしたもんかな?
レグルスは炎の壁を展開してるので、突破は難しい。
『ご主人様、私も出ましょうか?』
「シルフ、どうやって出るんだ?仕組みが分からん」
『そうですね・・・ご主人様ならいけます、勘でどうぞ♪』
おい、なんて適当な・・・
が、戦闘中であり、議論してる暇はない。
こっちになんかレーザーみたいなのがバシバシ飛んで来るのだ。
まぁ、魔力を風変換しつつ、召還魔法でも使えばいけるだろう。
「我と契約せし風の精霊よ!我が魔力を糧に顕現せよ!」
一瞬白い閃光が視界を塞ぎ―――
―――シルフィードが実体化した。
もはや半透明ではなく、髪は明るい緑。
肌は白く、薄緑のワンピースを着ている。
なんか、俺と同い年か少し幼いくらいに見える。
「まぁ、さすがご主人様、完全に実体化させるなんて人間とは思えないですね♪」
褒めてるんだか貶めてるんだか分からないが、シルフはご機嫌のようだ。
というか、魔声じゃなく、地声だな。
風がしゃべったら・・・こんな感じなのかな・・・
・・・はっ!?戦闘中だった!
シルフは魔力を大爆発させてノリノリである。
「ふふっ、この風・・・この肌触りこそ戦場ですね♪」
「シルフ、戦闘中なんだが・・・」
「はっ!?すみません、実体化なんてもう久しくしてなかったですから・・・」
若干申し訳なさそうなシルフ。
むぅ、そんなこと言われると怒りにくい。
「<サンダーボルト!>」
とりあえず、レーザーを迎撃しつつ・・・
「シルフ、レグルスと戦って勝てるか?」
「ふっ、私を誰だと思っているのだ?」
声だけはカッコよくいったシルフだが・・・顔が笑っている!
「・・・はぁ、んじゃ頼んだぞ、シルフ!<サンダーブラスト!>」
とりあえずお手並み拝見。向こうはデカイのを一発溜めてるようだ。
「はい、ご主人様♪ シルフィード、いっきま~す♪」
気の抜けたセリフとは裏腹に、その体に莫大な魔力が集まる。
で、向こうの術が完成。
『万物を燃やし尽くす我が爆炎よ!ここに顕現せよ!<ブレイズ・ブラスター!>』
直径20メートルはありそうな極太ビームが発射される!
え~、嘘だろ~とか思いつつ現実逃避したくなった。
シルフに任せてるので迎撃の準備とかしてない。
と、シルフも魔法を発動
『其は風の旋律――ここに顕現し全てをなぎ払え!<テンペスティア!>』
正直信じられなかった。
こんな短い詠唱で?
俺とシルフの周りだけ無風地帯だが、すさまじい魔力の竜巻が発生し、
生徒が慌てて避難していく。
そして、魔力の炎を消し飛ばし、レグルスをも吹き飛ばし、ガルシアを弾き出した。
「――――勝者、アルネア・フォーラスブルグ!」
で、こんなときでも動じない学園長の号令で試合終了。
「なぁ、シルフ、強過ぎじゃないか?」
地上に戻りつつ、いまだ実体化中のシルフに話しかける。
「ふふっ、ご主人様との相性がいいのかもしれませんね♪」
シルフによると、相性で強さが全然違うとのこと。
「アルは渡しません!」
地上に戻ると、エリシアが駆け寄ってきて開口一番。
「大丈夫ですよ、私がご主人様のものってだけですから♪」
楽しそうなシルフ。
「ううっ・・・」
何かを苦慮するエリシア。
「・・・なんか知らんが、仲良くな?」
と、追加が来た。
「アル、さすがですね」
フィリアがにっこり笑いながら立っていた。
「ああ、フィリアの試合はいつごろ?」
「もうちょっと先ですね。うまく勝ち進めたらエリシアさんとあたって、
もし勝てたら準決勝でアルと戦えます」
う~ん、エリシア対フィリア・・・どうなるのやら。
そのあと、ガルシアと軽く話した。
「俺は精進が足りない・・・だがいつか必ず勝つ!」
「おう、受けて立つぜ!」
で、その後は悠々試合観戦。
で、ジョン、リリー共に難なく勝利し、
エリシアも一瞬で勝った。
フィリアも一瞬で勝った。
一番気になったのはローラである。
ローラの相手は大柄な男子生徒だった。
試合が始まると、ローラは凄まじい勢いで走りこんだのだ。
相手の男子生徒は慌てて火の弾で弾幕を張ったのだが・・・
「―――遅いわ。<ミラージュ>」
ローラはなにも持っていないように見える手を素早く動かし、すべて消滅させ、
相手の鳩尾に蹴りを入れて勝った。
なんとなく魔力が手に集まってるのは見えるのだが、よく分からない。
で、俺はエリシア、リリー、ジョン、フィリアと一緒だったので見解をうかがう。
「なぁ、ローラがなにしてるか分かるか?」
「わからないです。でも魔力は手に集中してますよね?」
「お兄ちゃんでもわからないの?」
「アル、僕はパスで」
「アル、私はアルの意見をうかがいたいです」
む、フィリアに聞き返されてしまった。
「俺かぁ?んじゃ、魔力で剣を作ってる?」
「―――正解。」
うしろからローラの声がした。
「うおっ!?ビックリするだろ!?」
心拍数急上昇だよ!
「ごめんなさい。でも、どうしてわかったの?」
相変わらずポーカーフェイス・・・いや、少し驚いてる気がする。
「ん~?接近戦といえば剣だろ?」
わざわざ近づいてから迎撃するのだから、射程は短いのだろう。
「・・・そうね」
若干苦笑いされてる気がする。
その後、みんな順調に勝ちあがった。
ジョン以外。
ドンマイ、ジョン!相手が悪かった。
ジョンはエリシアに焼かれたのだ。
で、色々あって準々決勝だ。
俺の相手は、ゲイル・アイゼンシュタットとかいう十二家。
エリシアVSフィリア。
リリーVSエリス。
ローラVSカイゼル・イースティアとかいう十二家だ。
ローラ以外、全員十二家or皇族だ。
―――次回予告―――
♪~チャラッ、チャ~ラララ~ラ~!
ついに、エリシアとフィリアの譲れない戦いが始まる・・・
「エリシアさん、負けません!」
「・・・すみませんが、本気でいきます」
「全てを無に帰す白き焔よ!」
「切り裂け閃光の刃!」
「いやー、エリシアもフィリアもすごいやる気だな~」
「お兄ちゃん・・・誰のせいだと思ってるの・・・」
「鈍いよね」
「鈍いですね」
「我が盟約の精霊よこの地に顕現せよ!」
「我が鏡面の魂よ!此処に具現し従え!」
「天をも切り裂く白き雷よ、我が手に集え!」
フィリアの実力とは!?エリシアに秘策はあるのか!?
The majician of silver thunder.
Next Episode:「A bolt from the blue.」
ちなみに次回のタイトルは『晴天の霹靂』です。