第九話:曙の剣
俺は手を伸ばし、<アウロラ>の柄を掴んだ。
俺は、いつかの声を聞いた。
『―――えっとね、アウロラっていう曙の女神様がいたんですよ?』
『アウロラ?どっかで聞いた名前のような気もするけどなぁ』
『オーロラの語源になった女神様です!』
俺の体は満身創痍。でも、
――――エリシアは必ず助けてみせる!
まるで俺の意思に答えるかのように、<アウロラ>が眩い銀の閃光を放つ。
<アウロラ>と俺を包むかのように、オーロラが発生する。
5メートルものゴーレムの威容が、異常を感知したのか振り返る。
――――体が、軽い。
――――今、お前を邪魔するものはあのゴーレム以外は無い。
――――そうだな。
俺は、地面を思い切り蹴って、ゴーレムに突っ込んだ。
ゴーレムは、どう考えてもありえない速度で迎撃体制をとる。
俺は、走りながら、<アウロラ>を振りかぶった。
――――ガキィィィン!
ゴーレムの左拳と、<アウロラ>が激突。
すさまじい音を立てて、ゴーレムの拳が弾き返される。
「其は見えざる力!鉄を引き付ける力!<マグネティション!>」
俺は、左後方に感知した<アリアティル>に向けて術を発動。
ゴーレムが人間なら不可能な挙動で、今度は右拳で殴りつけてくる。
人間の形をしてるくせに、人間には不可能な挙動をするのはやっかいだ。
俺は、左手で掴んだ<アリアティル>で迎撃、押し戻されつつも、防ぎきった。
『唸れ!<ダブル・ソニック!>』
二本の剣から、銀の真空波が二つ飛び出し、ゴーレムの足場を崩す。
が、なんとゴーレムが空中に浮くのを見た。
ゴーレムは構わずそのまま殴りつけてきた。
――――カキィィン!
『・・・そこ、どけよ。お前なんかに用はないんだ』
ゴーレムは言葉が分かるのか分からないのか、
まるで怒ったかのように、両拳を振り下ろした。
俺は、バックステップでかわし、ゴーレムの腕に飛び乗り、走る。
ゴーレムは腕を振り回して俺を落とそうとするが、
俺は思い切りジャンプしてゴーレムの頭を踏み台にして、飛び越えた。
が、ゴーレムは腕を180度回転させて攻撃してくる。
しかし俺はそれを<アウロラ>で防ぎつつ、その吹き飛ばされた勢いを利用。
エリシアのところにたどり着いた。
「大丈夫か、エリシア」
「アル・・・ごめんなさい・・・めいわくかけて」
エリシアは、酷い怪我だった。
このままでは長くは無い。
「馬鹿、お互い様だろ」
俺はそういって、魔力を集める。
が、ゴーレムがこちらに向かってくる。
『――――邪魔を、するなぁぁ―――ッ!』
俺は激昂し、<アリアティル>を構えた。
『――傷つきし者を癒す聖なる力――』
『――創世の雷光よ、我が剣に集え――』
ゴーレムが拳を振り下ろす。
『――汝、未だ輪廻転生の刻にあらず――』
『――其は知性と創造を司る光―――!』
その拳を、俺は、<アウロラ>で受け止めた。
『――汝、未だ冥府の門を叩く刻にあらず――』
『我が剣よ!銀雷によりその身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!』
ゴーレムが力をこめ、それを受け止める俺の立つ地面がひび割れた。
が、かまわず詠唱続行。
『――蘇りて、その天寿を全うせよ――!』
『<創世の極光・四源の雷砲!>』
<アリアティル>が、銀と極光の弾丸と化し、ゴーレムの体に突き刺さる。
『―――<リヴァイブ!>』
エリシアの傷は、すぐに完治した。
しかし、ダメージが大き過ぎたのか、気絶しているようだった。
でも、これで命の心配は無い。
俺は、<アリアティル>が突き刺さってなお、動くゴーレムに向き直った。
どうやら、こいつはまだ戦うらしい。
エリシアを助け、先ほどと違って、俺の前方にはゴーレムしかいない。
この位置なら、エリシアを巻き込む心配をせずに術を使える。
『――創世の雷光よ、我が剣に集え――』
ゴーレムは焦ったのか、右拳を発射した。ロケットパンチだ。
「・・・どんなギミックだよ!」
俺はそう呟きつつ、<アウロラ>を振り上げ、
ロケットパンチは空高く舞い上がり、星になった。
『――其は知性と創造を司る光―――』
ゴーレムが目から熱線を放ってきた。
しかし<アウロラ>の纏うオーロラが、その魔力を吸収、消滅させる。
『我が剣よ!銀雷によりその身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!』
『<創世の極光・四源の雷砲!>』
<アウロラ>が、先ほどの<アリアティル>が直撃したことで、ひび割れていた
ゴーレムの胴体に直撃。粉々に粉砕した。
そして、ゴーレムは塵となって風に流されて消え、
<アウロラ>と<アリアティル>は、ゴーレムがいた場所に落ちた。
俺は、光が収まりだした<アウロラ>と、<アリアティル>を拾った。
「・・・アル?」
エリシアが、いつの間にか起き上がっていた。
「エリシア!大丈夫か!?」
俺は、エリシアに駆け寄り、一応、体を支えた。
「アルが治してくれたんですから、大丈夫ですよ?」
エリシアは顔を赤くしつつ、答えた。
と、<アウロラ>の光が完全に消えた。
「―――――んな!?」
光が消えた途端に、体の力が抜けた。
「アル!?」
エリシアが逆に俺を支える。
「・・・だめだ、痛みは無いけど力が入らない」
俺は、とりあえず痛みは無い事をエリシアに伝え―――。
♪~~パンパラッパッパッパッパ~~~!
いきなりファンファーレが聞こえた。
「はぁ?」
「え?」
思わず唖然とする俺とエリシア。
と、唐突に、黄緑色で半透明な、髪の長い女性が空中に現れた。
『風の迷宮、クリアおめでとうございます!』
「・・・はい?」
俺は思わず聞き返した。
『あ、ひょっとして、迷宮攻略したのは初めてですか?』
その女の人?にまた質問で返された。
「ええ、まあ」
『そうですか!私は、風の精霊シルフィードです。よろしくお願いします♪』
「あ、ああ、よろしく。俺はアルネア・・・アルだ」
「エリシアです・・・よろしくおねがいします」
すっかりペースを乱されつつ、俺とエリシアは答えた。
『迷宮攻略の特典として、何か好きなものを差し上げます!一人一つです!
これでも色々もってるんですよ?何がいいですか?』
と、言うシルフィードに、俺はある話を思い出した。
『―――迷宮を攻略すると、そこの精霊と契約できるらしい』
(え~と、つまりここで頼めば契約できるんだな!)
『それでは、何かご希望はありますか?』
「お前が欲しい」
俺は特に何も考えずに言った。
「ア、アル!?」
何故か慌てふためくエリシア。
『そ、そんな!?でも、私・・・!?』
そして真っ赤になるシルフィード。
あれ、俺なんかミスったかな?
・・・あれ?なんか物凄い事言ってないか、俺!?
『わ、分かりました・・・では、エリシアさんは何がよろしいですか?』
しかも承諾されてしまった!?
「え、えっと、じゃあ、空を飛ぶときに便利なものとかは?」
『はい、それなら・・・』
シルフィードはどこからともなく、
エメラルド色の指輪を取り出した。
『これは、風の加護の指輪です。これをつけて魔力を流すと、
背中から羽が生えます♪」
「え、羽ですか?」
思わず聞き返すエリシア。
『はい♪使いこなせれば通常の3倍の速度で飛べます!
何でしたら、赤色にして角もサービスで・・・』
「い、いえ。それで、そのままでいいです!」
『そうですか・・・残念です。では、どうぞ!』
エリシアは指輪を受け取って右手の人差し指にはめた。
で、ためしに羽をだしてパタパタやってる。
多分、今回飛べなくて苦労したからだろう。
というか、人間に変身してる時は羽がないから不便だったのかな?
『え、えっと、それでは・・・私と契約できそうなアイテムはありますか?』
顔が赤いまま聞いてくるシルフィード。
「ん、剣じゃなくてもいいの?」
俺は気になったので聞いてみた。が、ご存知の通り、俺には剣しかないが。
『はい、私が聞いたもっとも地味なのですと髪飾り。
もっとも過激なのですと・・・直接体に・・・はぅ!?』
なにを考えたか、また赤くなるシルフィード。
「アル・・・せっかくカッコよかったのに」
エリシアにものすごく悲しそうな目で見られた。
というか若干泣きそうだ。
「・・・この<アリアティル>は?」
とりあえずこの空気を払拭すべく、俺は剣を出す。
『あ、風の魔法剣ですね!すごくいいです♪』
と、シルフィードの体が光って消え、
<アリアティル>改め、精霊剣<シルフィード>が誕生した。
剣が纏う魔力がケタ違いに跳ね上がり、なにもしなくとも風を纏う。
『それでは、これからよろしくお願いしますね♪』
シルフィードが なかまになった!
「あ、そういえばこの迷宮に先に入ったヤツら知らない?」
本来の目的を思い出し、シルフィードに聞いてみた。
『あ、じつはここって普通の迷宮と違って仮想空間なんですが』
「はぁ!?」
「え!?」
『あ、やっぱりご存知無かったですね。
私を含めた、この国の四大精霊の迷宮は仮想空間となっておりまして、
中で死んでしまっても、何の心配もなく、外に出されるだけなのですが・・・
先ほどいらした5名の方は全く戦わずに隠れていらっしゃるのでどうしようかと・・・』
「・・・じゃあ、俺の怒りは無意味?」
「・・・私の想いを返してください!」
『いえ、無意味じゃないですよ!?一度失敗された方は再挑戦できません』
・・・なんだろう、このやるせない感じ。
まあ、助けに来た相手が無事でよかったというべきか・・・
「あ、そういえば学園長はどうなったんだ?」
「あ、そういえば来ないですね」
俺とエリシアは顔を見合わせた。
『あ、この迷宮は最大7人パーティでの攻略なんです・・・』
なんとなく申し訳なさそうなシルフィード。
まあ、数百人単位で来たら大変だろうからな・・・
「あれ?迷宮は全力・速攻で攻略されるって聞いたぞ?」
思わずシルフィードに聞いてみた。
『えっと、それは通常の迷宮ですね。仮想空間ではなく、ホンモノの魔物がいますので、
仮想空間よりも大量に配備でき、大人数にも対応しています』
「じゃあ、なんでこの迷宮は仮想空間にしたんだ?」
『・・・私たち四大精霊は、自分と契約するのに相応しい方を見つけたかったのです。
でも、あまり難易度を上げてしまうと被害が凄そうですし・・・
それに数の力で攻略されてはどんな方と契約するか分かりません。
ですが、仮想空間ならどんな無茶な難易度でもオッケー♪
それなら危なくないから殺人難易度に♪
でもたくさん人が来て面倒だったから全力で隠蔽結界♪
破れた人にだけ挑戦してもらえばいいよね♪』
「・・・おいコラ」
「キャラ変わってます」
とりあえず俺たちは、すこし休んでから貴族パーティを回収。
そして脱出した。
俺たち7人が、例のワープドアから出ると、学園長が絶対零度の笑顔でお出迎え♪
「何か言うことはあるか?」
学園長は俺をぶん殴りつつ言った。
殴りつつだぞ!弁明させる気ない!
「実は仮想空間だったので命の危険はありませんでした!」
でも、弁明はしておく。
「む、仮想空間!?まさか失われた四大精霊の迷宮か!?」
おお、学園長がこんなに驚くとは。
よし、今のうちに逃げよう。
と、そ~っと歩き出した俺は首根っこを掴まれた。
「アルネア、貴様そんな危険な場所に無断で行くとはいい度胸だ・・・!」
や、やばい!?学園長が噴火寸前だ!
「いえ、だから危険じゃないですって!」
「・・・四大精霊の迷宮は、失敗しても死なないことから大量に挑戦者が出たが、
失敗するとしばらく起き上がるのもままならないダメージを受けると聞いたが?」
「え、俺は聞いてないですよ!?」
『ごめんなさい、ご主人様♪ 確かに失敗すると起き上がれません♪』
と、シルフィードが魔声で言った。
「え、マジ?」
というか、ご主人様じゃなく別の呼び方を希望する!
「ふっふっふ・・・その風魔力、どうやらシルフィードと契約したようだな。
その力は認めよう。だが、独断行動は騎士には厳禁!
貴様らは残りの合宿期間、私が徹底的にその心を叩きなおしてやる!」
楽しそうに笑う学園長に、俺たちは恐怖した。
第一章の本編完結です!
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました!
次の話は例のコーナーです。