第八話:魂の意義
上空で旋回していたユランに、俺は稲妻となって突進する!
この空間には砂鉄が無いようだし。
この手はあまり好ましくないが・・・!
速攻で決めさせてもらう!
『我が疾風の剣よ!銀雷によりその身を弾丸と化せ!
<疾風纏いし四源の雷砲!>』
俺はぶん投げたアリアティルをプラズマ加速!
アリアティルは銀の流星となって、ユランの心臓を貫く。
「―――――グギャアァァァ!」
―――あと2体!
『我が魔法銀の剣よ!銀雷によりその身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!
<銀雷纏いし四源の雷砲!>』
今度はアウロラをぶん投げて、プラズマ加速!
アウロラはやはり銀の流星となて、ユランの頭を貫いた!
「―――――ガァァァァ!?」
――――こいつら、さっきのやつより弱い!
―――あと一体!
『――――いくぞ!<サンダーボルト!>』
俺の手から銀の雷が飛び出し、ユランの右翼を直撃した。
「――――グガァァァァッ!」
が、怒らせた以上の効果は無い。
でも、こちらに意識を集中させれば十分。
ユランはこちらに近づき、武器を失った俺を爪で引き裂こうと―――
「其は見えざる力!鉄を引き付ける力!<マグネティション!>」
超強力な磁力で切っ先を引っ張られ、戻ってきた<アリアティル>がその胴体を貫通。
俺は磁力を巧みに操り、俺の手元に戻ってきた<アリアティル>を掴み取った。
そして俺は激痛に苦しむユランの苦痛を終わらせるべく、剣を振り下ろした。
『アル、大丈夫です?』
エリシアの念話が聞こえた。
『・・・ダメージは受けてないけど、大技を使い過ぎた。魔力がキツイ』
そう、そろそろ限界だった。
俺は、そろそろ下に降りようと―――
『アル、上です!』
エリシアの悲鳴が聞こえた。
『<雷鳴剣!>』
俺は、咄嗟にアリアティルを稲妻に変換。
上に放った。
が、ソレの拳を押し返せず、吹き飛ばされた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
私は、アルが次々とユランを屠っていくのを見た。
アルのサーマルブラストは、武器がなくなるという致命的なデメリットがあるが、
威力は目を見張るものがある。
3匹目に接近されてしまった時はどうなるかと思ったが、
磁力で呼び戻して攻撃したのは本当にすごいと思った。
おそらく、手をはなしても魔力を絶やさず、位置を完璧に把握していたのだろう。
『アル、大丈夫です?』
大丈夫なのは分かっていたが、一応聞く。
『・・・ダメージは受けてないけど、大技を使い過ぎた。魔力がキツイ』
アルはそう言うが、私にはまだ余裕があるように見えた。
と、周囲を警戒するアルの斜め上から、ソレが降ってくるのが見えた。
そんな――――!?
『アル、上です!』
アルは咄嗟に雷と化した剣で迎撃するが、ソレの拳に吹き飛ばされてしまった。
アルは錐揉みしながら、私から離れた方に墜落する。
私はすぐに駆け寄ろうとするが、私とアルの間にソレが着地する。
―――――――ドガァァァン!
爆音と共に、地面に巨大なクレータができる。
ソレは巨大な岩の体をしていた。
「・・・ゴーレム」
私は、その名を呟いた。
ゴーレムは術者によって強さが変わる。
あんなに強力な結界で守られた迷宮だ。さぞ強いだろう。
5メートルもの威容を誇り、AAAランクを思わせる。
だが、今は相手をするつもりは無い!
「此処を、通してもらいます!」
―――――――――――――――――――――――――
俺は、意識が朦朧としていた。
左腕が動かなかった。
足に力が入らなかった。
肋骨にヒビでも入ってるかもな。
アリアティルは弾き飛ばされて近くに無い。
エリシアが叫ぶのが聞こえた気がした。
全身が痛い。動きたくない。
―――俺は一体何をしに来たんだ?
―――助けに来たんじゃないのか?
―――そう、だったな。なのにこんな様か。
―――あきらめるのか?
―――動けないんだよ。
―――動けないのではなく、動かないのだろう。
―――・・・俺は、なんでこの世界にいるんだ?
―――お前は、何も分からなくとも、守ると決めたのではなかったのか?
俺は、エリシアがゴーレムをかわしてこちらに来ようとし、
弾き飛ばされ、突風に吹かれたゴミのように地面を転がるのを見た。
――――エリシア!?
――――いいのか?あの娘、死ぬぞ。
――――いいわけないだろぉぉぉ―――ッ!
俺は、必死になって立とうとするが、立てない。右腕がかろうじて動くだけだ。
体を持ち上げることすらままならない。
――――お前は、他人の為に命を捨てて助けようと思うか?
――――思わない。
――――そうか・・・
―――――命を捨ててでも誰かを救えるっていうのはすごい立派だ。
でも、それで悲しむ人もいる。
だから!
―――――だから、俺は、今度こそ、全てを救ってみせるって決めたんだ!
――――ふふっ、そうか。ならば手を伸ばせ!
その手に、その心に値するだけの力を持て!
そしてお前の魂の意義を証明してみせろ!
俺は手を伸ばし、<アウロラ>の柄を掴んだ。
いつかの声を聞いた。
『―――えっとね、アウロラっていう曙の女神様がいたんですよ?』
――――――――――――――――――――――――――――
私は、悔しかった。
私はアルに命を助けてもらったから。
アルが大好きだったから。
私には力があったから。
なのに、アルにユランが迫るのに耐えられなくて、
必要以上の魔力を込めて術を撃って、力のほとんどを使い果たした自分が憎かった。
そのせいで本来の力を解放することもできず、私はここに倒れている。
まるでゴミのよう。
仲間に追われ、命の恩人に何も返せずに死ぬ私なんてそんなものかもしれない。
でも、私が死んでしまったら次はアルの番だ。
そんなの絶対に認められなかった。
自分の命を犠牲にしてでもアルを助けたかった。
―――アルと、もっといっしょにいたかったな。
禁術を使おうと私は覚悟を決め――――
銀の閃光が閃き、魔力の暴風が切り裂かれた。
私は、不思議な確信を持って倒れたまま顔を上げた。
巨大で強大なゴーレム、その向こうに、緑と赤の不思議な光のベールが瞬くのが。
その中心に立つ、銀の雷を身に纏う魔術師が。
最早、瞳だけでなく髪まで銀に輝く、その大好きな少年が確かに見えた。
―――次回予告―――
♪~ドゥンドゥンドゥ~ドゥドゥンドドゥ~ドゥン
『――――邪魔を、するなぁぁ―――ッ!』
「・・・どんなギミックだよ!」
「アル・・・ごめんなさい・・・めいわくかけて」
『私は、風の精霊シルフィードです。』
『・・・そこ、どけよ。お前なんかに用はないんだ』
『アウロラ?どっかで聞いた名前のような気もするけどなぁ』
「お前が欲しい」
次回!銀雷の魔術師第九話:曙の剣