第七話:誰が為に
連載開始から明日で一週間・・・
読んで下さった方、本当にありがとうございます。
50万PVを記念して本日3度目の投下です!
さて、俺とエリシアは、結界の中に入り、そして驚いた。
「これは・・・どうみても」
「これって、まさか!?」
微妙な気分になる俺と、驚くエリシア。
結界の中に入ると、急に開けた場所に出た。
下は短い草・・・芝生のようになっており、けっこう広い。
ところどころに木の実のなっている木が生えている。
そして、小さな湖があり、そのすぐそばに―――
「迷宮かな?」
「迷宮ですね」
あきらかに迷宮入り口な建物が建っていた。
と、迷宮近くの木に、人間らしき魔力を一人分感知。
警戒しつつ近づくと・・・
「あれ、カイル?」
そう、そこにいたのは、同じクラスで、となりのカイルだった。
「あ、アル!お前も迷い込んだのか!?」
木にもたれかかってたカイルは、飛び上がりつつ質問してきた。
「いや、俺とエリシアは結界を破って入ってきた」
と、俺が言うと、カイルは驚きつつ言った。
「うそっ!?みんなで攻撃しても破れなかったのに!?」
と言ったカイルに、エリシアが怪訝そうに聞いた。
「みんな?あなた以外はいないようですけど?」
「・・・!そうだ!すぐに先生に知らせないと!」
慌てふためくカイル。
なんとか俺たちが聞きだした情報をまとめると、こうだ。
突如現れたワイバーンの攻撃から6人パーティで逃げ回っていた。
すると、熱線で結界に穴が開くのが見えた。
とっさに入ってしまった。
すると出れなくなった。
緊急脱出も使えない。
パーティのほかの5人のメンバーは、ガルシアとかの上位貴族で、
必死に止めるカイルに、「誰か来たら一応知らせとけ、俺達が此処を攻略する」
と言って迷宮に入ってしまったらしい。
また、入ってどれだけ時間がたったか分からない。
俺は、エリシアと顔を見合わせた。
すると、エリシアは、「わかってます」と言わんばかりに苦笑いした。
「カイル、俺が結界を破るから、結界のすぐ外に発信機の魔法玉を置いて、
緊急離脱の魔法玉を発動して、なんとか学園長に知らせてくれ。
たぶん、ワイバーンには学園長なら気づいてる。すぐに会えるハズだ」
俺は、そういって結界を再び破るべく、結界の端へ歩きだす。
この結界は何度でも再生するみたいだし。
「・・・アルはどうすんだよ!?」
カイルがすこし怒ったように言った。
「俺は迷宮に入って先に捜索する。事態は一刻を争う」
俺は、エリシアが適当に木の実や水を補給してるのを確認しつつ、
<アウロラ>を抜き放った。
「無茶だ!この迷宮は多分ものすごい難度だぞ!?こんな結界があるんだ!
どうしてそこまで・・・あいつらと特別仲がいい訳じゃないんだろ!?」
「カイル、俺は、俺が助けたいから行く。これは俺の為だよ」
俺はそう答えて、結界を切り裂いた。
「・・・アル、お前馬鹿だよ。絶対死ぬんじゃねぇぞ!」
そう言って拳を突き出すカイルに、俺も拳を合わせ、カイルは結界の外に出た。
俺は、迷宮の入り口で準備を終えて待ってるエリシアの所へ急いだ。
「アル、カッコよかった」
木の実と水の入った2つの袋を手渡しつつ、エリシアは言った。
「・・・いつもカッコイイつもりなんだけどなぁ。」
そう言って俺たちは迷宮に足を踏み入れた。
迷宮の中に入った俺は思った。
うわぁ、ダンジョンだよ。
岩で作られた床、壁、天井。
魔力でほのかに白緑色に光っている。
意外と明るいというか、蛍光灯くらいの明るさはある。
で、――――。
「一本道だな」
「一本道です」
そう、一本道だった。
しかもすぐ扉がある。
恐る恐る、その扉を開けると・・・
一瞬の閃光が閃き、俺たちは何故か草原にいた。
「・・・はぁ!?」
「アル、ワープドアです」
エリシアはあんまり動じない。
いや、ドアを通ったらいきなり別の場所だぜ!?
驚くだろ。普通。
まあいいや。
「どこだここ?」
俺は、とりあえず一番の懸念事項についての意見をエリシアに求めた。
つまり、迷宮の外か中か。
あたりは一面草原で、すこし進むと森があるようだ。
すごく広い。端とかは見えない。
「・・・たぶん迷宮の中です。あんまり遠くまで魔力探知が効きません」
「うん、確かに。それにしても・・・・」
俺は周囲のすさまじい魔力の流れを感じつつ、エリシアと顔を見合わせた。
「はい、すごい風魔力です。これじゃあ飛べないです」
エリシアは「変身するわけにもいかないですし・・・」って小声でいいつつ悩む。
そう、空が飛べず探知もできないなら、探すのに有効な手段が無い。
さてどうしたものかと悩んでいると、
接近する魔力を感知。
―――近い!
俺は気配を感じた右の方を向き・・・
「――――え・・・」
「――――おっきいです」
極大の緑ワイバーンらしき生き物がいた。
「―――グガァァァッ!」
ワイバーン?は急降下しつつ、爪で俺とエリシアを狙う!
――まずい!防がないと!
――術は間に合わない。
――なら剣技!
俺は一瞬で判断し、<アウロラ>と<アリアティル>を抜き、魔力を流し・・・
エリシアに抱きついて剣技を発動。
「―――ふぇっ!?」
「風巻け烈風!<風車!>」
俺を中心に、いつもより強力なカマイタチが発生。
これならエリシアも巻き込まれない。
別に抱きつく目的じゃないぞ、防御向きの剣技なんだ!
あと、
「やっぱり、風が強化されるのか!」
この迷宮は風強化の特性があるようだ!
なんとかワイバーン?の攻撃を凌ぐ。
ワイバーン?は急上昇して俺の攻撃をかわし、一旦離れていく。
どうやらヒット&アウェイ戦法のようだ。
これなら逃げることはできるが、人探しは厳しい。
というかワイバーンにしてはでか過ぎる。
「アル、あれはワイバーンよりドラゴンに近い『ユラン』です」
と、俺の腕の中からエリシアの声が・・・
「っと、悪い悪い。」
俺は慌ててエリシアを解放。
「いいです、分かってますから」
エリシアは不機嫌そうに言った。
「ユランって言うと・・・」
「AAランクですね」
エリシアが俺の聞きたいことを察知して答えてくれる。
もうワイバ・・・ユランが戻ってくる。旋回するのが見える。
「意思の疎通は?」
「さっきからやってますけど、無理です」
「分かった。俺が時間を稼ぐ!」
「アル、ケガしたら約束を守ってもらいますよ」
「エリシアこそ覚悟しとけ!」『其は疾風の賛歌――!』
「アル、無理しないでくださいね――」『白き竜と聖なる焔の古の盟約――!』
ユランの口に莫大な魔力が集まる。
到底防げないことを悟った俺は―――
―――魔力開放! 二重詠唱!
『疾風が全てを切り裂き奏でる歌!<ハーケン・プレーズ!>』
『我が手に集え、銀の雷よ!敵を滅ぼせ!<サンダー・ブラスト!>』
『我は汝を守り、汝は我が敵を滅ぼす――――!』
『其は開闢の焔!万物を作り変える始祖の焔―!』
二重詠唱とは、魔声を応用した高等テクニックである。
魔声は、声帯などを使ってないので、
その気になれば、同時に二つ以上のことを話せるのだ。難しいが。
エリシアも二重詠唱を発動。
俺の手から銀雷のレーザーと、銀の竜巻が飛び出し、
ユランの口から放たれた熱線と激突する―――!
――――ドガァァァン!
『今こそ盟約を果たす時!汝が誓いを此処に示せ――!』
『我と汝が敵を滅ぼす焔を此処に顕現せよ―――――!』
竜巻は消えたが、レーザはユランに突き進む。
――――カキィィィン!
が、案の定、魔力装甲に弾かれてしまった。
―――ユランの勢いは収まらず、突っ込んで来る!
ユランの口にまたしても魔力が集う!
『始祖の業焔!<アンセスティア・プロメティス!>』
―――エリシアの前に巨大な白い熱の塊が現れた。
俺は、あまりの熱量に、目がくらんだ
どうやらエリシアは二重詠唱ではなく、複合魔術
を使ったらしい。二つの詠唱を同時に行い、一つの術を発動する。
すさまじい魔力を使うが、威力はとんでもない。
とっさに全力で魔力装甲を張ったユランに始祖の業焔が激突し――――。
―――――――――世界が白い閃光に包まれ、音が消えた。
閃光が収まると、ユランは真っ黒に炭化し、動く気配はなかった。
と、エリシアの体がふらついて――
「エリシア!?」
俺は、慌ててエリシアの軽い体を支える。
「・・・私が無理しないのは約束してないですよ?」
「・・・馬鹿、大丈夫か?」
「大丈夫で――アル、後ろ!」
とっさに俺は地面に倒れこむようにしてエリシアをかばい―――
「―――ぐはっ」
「アル!?大丈夫です!?」
「問題ない!浅くかすっただけだ!」
俺は、すばやくユランが倒れていた場所を確認、確かに死んでいる。
が、上空にはもう一匹のユラン・・・
突如後方から滑空攻撃をしてきた爪があたったのだ。
「くそっ、2匹いるのか倒すたびに出てくるのか・・・」
俺はすばやく立ち上がりつつ呟いた。
と、さらに2体のユランを確認。
まったく、嫌になるな。
もっといるかもしれん。
「アル・・・どうするんです?」
エリシアが憔悴しつつ不安そうな顔で聞いてきた。
「約束は守るさ、絶対やられたりしない。だから、待っててくれ、エリシア」
「我が体は稲妻!空を裂き風よりも早く進む!<サンダー・ミグラトリィ!>」
俺は、稲妻となって、強風の中を翔け上がった。
雷なら、こんな風など無意味だ!
―――次回予告―――
♪~ドゥンドゥンドゥ~ドゥドゥンドドゥ~ドゥン
『――――いいのか?あの娘、死ぬぞ』
「銀雷によりその身を弾丸と化せぇぇ―――ッ!」
「此処を、通してもらいます!」
『お前は、他人の為に命を捨てて助けようと思うか?』
「アル、上ですっ!」
『いいわけないだろぉぉぉ―――ッ!』
「俺は――――」
次回、銀雷の魔術師第八話:魂の意義