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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第二部
153/155

第2話:愛すべき親馬鹿たち

すみません、メインストーリーにまだ入れませんでした…。

次回から本気だす……といいなぁ。

 さて、無事に子どもが生まれてから3日が経過した深夜。俺とエリシアは赤ん坊を寝せたベビーベッド(魔法使って3分で作った)をいつもの俺の部屋のベッドの隣に置いて、夜泣きが終わったので寝なおすところだった。 



 が、俺とエリシアの疲労は割と限界だった。


 夜泣きとか、夜泣きとか、生後2日で飛行魔法をマスターして家中をビュンビュン飛び回われたりとか、上級魔法ぶっぱなされる度に阻止したりとか、母乳だけで満足せずに魔力をあげることになったりとか。


 さすが竜族というべきなのか魔力を食べれば生きていけるようで、俺もエリシアも運動する気力が出ないくらいには吸われ尽くした。いや、ミルクもあげてるんだよ?

 エリシアは若干やつれた顔で泣きそうだし。




「……アル、ごめんなさい。……私が、ちいさいばっかりに…っ」

「……落ち着けエリシア、それはきっと関係ない。ほら、アリアの寝顔を見ろ。幸せそうだろ?」




 赤ん坊―――アリアは今のエリシアそっくりの銀髪に俺と同じ緑の瞳で、やっぱり寝ているときのエリシアそっくりの緩みきった顔で熟睡している。ただ、エリシアに言わせると俺そっくりらしいが。


 ちなみに名前はエリシアが決めた。「名前の由来はヒミツです!」とか言われたのでかる~く『話し合い』をしたところによると、単純に俺とエリシアの名前を合わせただけということらしい。……今思うと、ずいぶん無駄な体力を使ったものだ。



 エリシアは疲れきった顔ながらアリアを見ると少し微笑み、腕を伸ばしてそっと頬を撫でた。





「……かわいい、です」

「……そうだな。俺も協力するし、明日も頑張ろうな。―――というか、下着替えるのと魔力あげるくらいなら俺でもできるし、本当に疲れたら交代で熟睡できる別の部屋に行ってもいいからな?」




 やっぱり満足に眠れないのは体に相当な負担がかかるだろう。エリシアは体が小さいだけあって、不安になる。こっちの世界じゃ割と普通だけど、前世だったら俺ロリ○ンだと思われるレベル―――。


 とか考えてると、エリシアがローラそっくりのジト目で睨んできた。



「………アル」

「―――な、なんだ?」



「………前世でも、イロイロしたと思うんです」

「―――ぐっ!? ま、待て。ホラ、ほぼ歳の差はなかったじゃん!」




 というか心でも読んでるのか!?

 とか考えてから、俺は完全に自爆したことを悟った。

 エリシアは半泣きで拗ねるという器用な感情表現をしつつ、俺の頬を軽く抓ってきた。





「今だって歳の差はないと思います…っ!」

「……あれだ! 俺は年下に見えるくらい可愛いエリシアが大好きだよ!」




 今の気が立ったエリシア相手じゃ無理かなーと思いつつダメ元で言ってみると、エリシアはいつも以上に急速に顔を赤くして、布団を被ってしまった。




「あ、あれ…? エリシア?」




 予想外の反応に困惑していると、布団の中から少しくぐもった、そして僅かに震えているような気がするエリシアの声が聞こえた。



「その、アル……?」

「……なんだ?」



「………私の、こと……まだ、『かわいい』って思ってくれますか…?」

「……へ? いや、可愛いに決まってるだろ?」




 唐突かつイマイチ意味の分からない質問にとりあえず素直に答えてみると、ガバッと布団が跳ね除けられ、エリシアが泣きながら胸に飛び込んできた。




「……うぅ…っ、アル……だいすきです…っ!」

「……とりあえず俺も大好きだから落ち着け。アリア起きるから!」




 とりあえずエリシアの背中をさすって落ち着かせようと試みるが、疲労が極限に達していたのかエリシアの目にみるみる涙が浮かんでいく。





「………ぐすっ、アルぅ……すてないでください…っ。うぅぅぅっ」

「おぎゃぁぁぁぁっ!」

「ちょっ!? エリシア、落ち着け! お前まで―――」



 アリアの夜泣きが再び始まり、エリシアは顔をくしゃりと歪めて――――。



「うぐっ、うわぁぁぁぁぁん……っ」

「おぎゃぁぁぁぁっ!」

「――――ガチ泣き!? こ、これはどっちから対処すれば…っ!?」




 その時俺は、何かの報いを受けた気がした。










………………………………







「まさか、前世知識にこれほど苦しめられる日が来るとは……」




 俺はベッドの隅に腰掛けてアリアを抱き、非常に深い溜息を吐いた。

 左手は人差し指をアリアにおしゃぶり代わりに咥えられ(魔力吸い取られ)、右手の人差し指もエリシアに咥えられてる(やっぱり魔力吸い取られ)。


 というわけでエリシアの錯乱とアリアの夜泣きは同時に魔力で宥めるという力技でなんとかして、今は二人とも眠っている。ちなみになんとか寝る前のエリシアから情報を引き出したところによると、次のような感じになる。




「けん……っ、たっ…きが、おかあさ、でっ、アルももっと……もっとおんなのひと…っ!」


「……え? ケン○ッキーにお母さんが行ったら俺がもっと女の人になる? やばい、ケン○ッキーを爆破してなんとしても阻止しないと……!」




「ぐす…っ、アル、クリスマスのご飯はチキンにしますか……?」

「エリシアの手料理ならなんでもいいけど、強いて言うならチキンも食べたいかな?」




「………わたし…アルの……チキン…も………くぅ…(寝落ち)」

「―――んな!? 待て、臆病者チキンって言ったのか!? 寝るな! 起きろエリシア!」






 よっぽど疲れているようで、さっぱり会話が通じなかったのである。

 ……というのは冗談で、わざと話を逸らしたのでアレだが、最初にエリシアが言ったのを通訳するとこうなる。




『そろそろ倦怠期が来る頃であり、アルはお母さんの私よりもっと女らしい女の人がいいだろう』



 ………とりあえず、明日の朝一にエリシアに土下座で謝っておこうと思う。 

 なんか他にもエリシアが色々と叫んでたのも総合すると、前世のテレビだか雑誌だかで聞いたことのあった倦怠期の男の浮気とか、妊娠したら用済みとか、そういう無駄に黒い単語が若干気になっていて、その上で俺がアリアを可愛がってたら捨てられた気がした、らしい。なにその余計な前世知識! というかエリシアも俺と同じこと考えてたのな!



 普段のエリシアならここまで騒がなかったのだろうが、妊娠・出産・子育てで精神的に疲弊したエリシアには耐えられなかったらしい。……ホントごめん。






「………というか、ローラとフィリアにも色々苦労させてるんだよな……」




 ここまで来て心変わりをする気は無いけれど、自分の無責任さを思い知らされたというか……。




「いや、俺まで暗い気分になっても仕方ない…よな。よし! ここは何か前世知識から参考になりそうなハーレム物でも……」





 というわけで久々に前世の知識を掘り起こしに掛かった俺は、あることに気づいた。




「………あ…れ? 複数人とラブラブなハーレムものなんて、俺は知らないぞ…?」




 恋愛モノの主人公だって、同時に複数人攻略とかしないよねー♪

 ………あれ、おかしいな?


 というか、こんな弱りきったエリシアを放置するのはどう考えても最低である。

 それこそローラとフィリアにガチで説教されそう。





「………よし。とりあえず、朝になってから考えよう」





 俺は逃げた。





……………………








 というわけで朝。





「……おかぁーさん?」

「……! アル、アル、聞きましたかっ!? はい、お母さんです…!」



「くっ。ほら、お父さんだぞー?」

「……おっとーさん!」



「おとーさんですー?」

「おとーさんー?」

「……おとーさん!」




「――――エリシア!」

「――――アルっ!」




 二人でひしっと抱き合い、喜びを分かち合ってから1歳児サイズになったアリアの頭を撫でてやり、嬉しそうなアリアについ頬が緩む。


 というわけで、俺が寝落ちして気がついたらアリアが成長してました。

 さすが竜族、なんでもアリなのか……。とか戦慄したのもつかの間、少し言葉を喋れるようになったアリアに言葉を教えるのにエリシアと二人で夢中になっていた。




「これは、お洋服ですよー?」

「ぉよーく!」


「靴下だぞー」

「くつつた!」



「……エリシア」

「……アル」




「「ウチの子天才だな(です)!!」」




 もう、親馬鹿でいいや。

 きっと自分が見てる側だったら「うわぁ……」と思うんだろうが、それでも構わないと思った。






………………………





「――――ほーら、お爺ちゃんでちゅよー…!」

「おじぃー?」


「お姉さんですよー」

「おねーしゃん!」




「って、お母さん!? お姉ちゃんポジションは私のなのにっ!?」

「ふっ、私はまだお婆ちゃんなんて呼ばせないわっ!」



「な、なら私はここで念願のお姉様ポジションを手に入れるもん!」

「……リリー、流石私の娘ね!」



「お兄様だぞー?」

「おにぃー?」





「………なんというか、皆大概だな!」



 というわけで、朝の食卓で一躍人気者になったアリアに皆で寄って集って好きな呼び方を覚えさせようとしていた。

 顔芸でアリアを楽しませている父さんといい、意地でもお婆ちゃんとは呼ばせたくないらしい母さんといい、地味にハッスルしてるリリーといいリック兄さんといい、さっきは少しはしゃぎすぎたかな? とか思った俺が馬鹿みたいである。




「……ぐすっ、アル…ぅ、私たちのアリアが……っ」




 アリアを取り返しに突撃したエリシアは、あえなく身長差の壁によって撃退され、半泣きで俺に抱きついてきた。




「………まぁ、落ち着けエリシア。こんなときのために……アリアー! ご飯だぞー!」

「……! ごはんっ!」





 先ほど教えておいた『ご飯』と呼びかけると、アリアは輝くような笑みを浮かべて銀の翼を広げ、危なげない飛行でエリシアの胸に飛び込んだ。


 当然のように追撃してくる一同だが、エリシアは輝くような笑みを浮かべて容赦なく結界魔法を発動した。



「―――――アル、だいすきですっ! 《リミット・ホライズン》!」




 半透明の銀の膜が俺とエリシア、そしてアリアを囲むように出現し、エリシアは満足げにアリアにお手製の離乳食を与え始めた。




「ちょっ!? お爺ちゃんにもっと孫の顔を見せておくれー!」

「まだ『お姉様』って言ってもらってないのにっ!」




 父さんとリリーはまだ諦めてないようだったが、母さんは微笑みながらルリの世話に戻り、リック兄さんも満足げに食事に戻った。まぁエリシアの領域結界を突破するのは俺でもかなり面倒なので(精神攻撃と篭絡を除く)、父さんとリリーもすぐ諦めるだろう。




「というか、俺もご飯食べさせていいか?」

「もちろんです!」




 ここで断られたら夫婦喧嘩が勃発したかもね。

 というわけで、俺とエリシアは仲良く二人でアリアに朝ごはんを食べさせたのだった。






 しかし食事が終わって少ししたとき、それは来た。

 突如として、窓からメイドが―――シルフが飛び込んできたのだ。




「――――大変です、大変ですよご主人様っ!」




 俺には珍しくシルフが焦っているように見え、すやすや眠っているアリアを抱きかかえたエリシアが何か言いたそうなのを手で制して聞き返した。





「……何かあったのか?」


「それが、大変なんです! なんでも、フィリアさんが行方不明になったとかで―――!」







「………は?」


















次回予告――と見せかけてオマケ!


ローラ「……こんばんは。今日の『ドキドキ・お便りのコーナ♪』です」

リリー「く、暗いっ!? ローラ、もっと明るくお願いっ!」



ローラ「……みんな、こんにちはっ! お便りのコーナーだよっ!」

リリー「よぅしっ、パーフェクト!」

アル 「アホかぁぁぁっ! オマケだから何でもしていいと思うな!」



リリー「えー、お兄ちゃんのケチ!」

ローラ「……とりあえずお便り読む?」

アル 「ああ、そうだな。もうあと10分しかないから急いで頼む」

 


リリー「……むぅっ。じゃあハイ、ローラこれ読んで」

ローラ「……『エリシアさん、おめでとうございます。次はローラの子どもでしょうか?』とのことです」



リリー「はいお兄ちゃん、ご回答どうぞ!」

アル 「ちょっ!? 選出に悪意を感じるんだけど!?」



リリー「はい、後6分! 回答どうぞっ!」

アル 「………そ、そういうのはその場の流れというかだなぁ! え、えーと……んなもん答えられるかぁぁぁっ!」



ローラ「……アル。私、可愛い男の子がほしい」

アル 「待て、可愛い男の子って無茶だから! ああもう、時間切れだよ! はい、終わりっ! 次回、『フィリアとお仕事』(予定)! お楽しみに! 後ケン○ッキーは爆破しません!」

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