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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
おまけ
150/155

外食とか手料理とか

最近全く更新してないですね!


というわけで2時間くらいでサックリ書いてみました。

……その、あれです。キャラの言動とかおかしかったらごめんなさい…。あとスランプなのであんまりご期待なさらずに……。








「…………ふぅ」




 額から流れ落ちてくる汗を拭って、フィリアは模擬戦用の剣を鞘に納めて一息ついた。

 ラルハイト魔法学校ことラルハイト魔術騎士学園は、普段は呼びにくいのでラルハイト校とか、単純に皇立魔法学校とか、魔法学園とか色々な呼び方があるのだが、とりあえず本来は魔法も使える魔術騎士の育成を目的としており、単純に魔法だけを学ぶそこらへんの魔法学校とは一線を画している。



 そして皇女であるフィリアはトップクラスの成績を取ることを期待されており、未だに学年1位を取れた試しはないが、概ね学年で5位、男女別で3位には必ず入っている。



 ちなみに1位は大概アルかローラであり、フィリアは高確率で2位。で、3位はアルとローラで負けたほうが入ることが多く、4位はエリシアで固定されている。



 しかしここで重要なのが、暗記系の歴史学や地理学においてはフィリアが圧倒的に勝っていることだ。では何故負けるのか。当然、そこは剣術や体力系だ。


 残念ながら流石のフィリアも精霊の助けなしで竜族やらエルフやらと張り合うのは無理であり、しかしこれ以上勉強系の点数を上げるのは至難の技。けれどテストで勝ちたいなら体力を……でもアルがムキムキの女性をどう思うの? という疑問もあったりで、色々と苦労しているのである。





「………フィリア、だいぶ良くなった」

「ありがとうござます、ローラ。……でもその、無口キャラってまだ続けるんですか」




 剣術の授業の自由時間訓練に付き合ってくれていたローラも剣を収めつつ褒めてくれて、フィリアも微笑みつつお礼を言った。……がしかし、最近ローラも普通に会話できるようになってきたのだから、学校でもそうすればいいのに。と思って聞いてみたのだが、ローラは肩を竦めただけだった。




「……これくらいでちょうどいい。面倒だし」

「め、面倒ですか……?」




 立場上、挨拶と笑顔を欠かすことが出来ない……というより営業スマイルが基本装備になってしまっているフィリアはちょっと面食らった。それに気づいたローラは少しだけ申し訳なさそうな顔になりつつ弁明する。




「……私は、いつものメンバーで満足してるから。それに、私が今更笑顔で話し出したりしたら気味が悪いし、勘違いされても困るし」


「なるほど……そうですね」




 いきなりローラに笑顔を向けられたら、そこらへんの男子なら一瞬で陥落しそうな気がする。フィリアはエルフの美貌をちょっと羨ましく思い、ローラに苦笑された。




「フィリアがいきなり冷たくなったら、新たに女王様キャラへの道が……」

「え、ええ……っ!?」




 女王様キャラって何!?

 フィリアが動揺するのをひとしきり満喫したローラが「つまり、フィリアも可愛いよねってこと」と言ってお茶を濁すまでフィリアは謎の「女王様キャラ」とは何か考え、それでも結局答えは出なかった。





 放課後。フィリアは基本的に体育系の授業に出ないエリシア(強すぎるからということだが、実際のところは別の理由)を除いたローラ、リリーの三人で居残り練習をして、それから何か買って帰ろうかという話になっていた。


 で、皇都の大通りで甘いクレープを食べながら最近暇そうなエリシアのことを考えた。




「エリーも大変ですよね、栄養バランスがどうのこうのって、アルがすごい心配してましたし」



 本当はエリシアにもクレープを買ってあげたかったのだが、最近やけに甘いものを食べたがるエリシアが一度食べすぎでお腹を壊して以来、必要以上に食べ過ぎないようにアルが睨みをきかせているのであんまり勝手なことはしないほうがいいだろう。

 エリシアが直接アルに頼めば買ってもらえるみたいだし。




「……ふふっ。こないだエリーが掃除しようとしてアルに怒られてた」

「おにーちゃんも意外と過保護というか、心配性なところもあるよねー」

「でも実際、安静にしていた方がいいと思うのですけど……」




 基本的に妊婦さんは大人しくしておくのがこの世界の常識。エリシアは「安定期です!」と言って掃除洗濯料理をしようとして数日前はアルが珍しく怒っていた。




「うーん、ストレスが溜まるとよくないんだけど……お兄ちゃん分かってるのかなぁ?」

「……せっかくの前世知識も持ってなかったら意味ないということ。というかエリーも何も知らないのに一票」

「ぜんせちしき、ですか?」




 なにやら神妙な顔のローラとそれに頷くリリーの間では確実に何かしら通じ合っているようなのだが、フィリアが聞くと二人して愛想笑いをした。



「むぅっ、私だけ仲間はずれなんですか…?」



 ちょっとムッとして言ったつもりだったのだが、ローラとリリーは「いいもの見た!」と言わんばかりに笑顔になった。



「あ、フィリアその顔可愛い!」

「……アル、いい仕事する」


「あ、アルは関係ないと思うんですが…っ!?」





「「大丈夫だいじょうぶ、分かってるから!」」

「何がですかっ!?」




 何故か完璧にハモらせて言った二人に冷や汗を流しながら叫ぶフィリアだが、実際のところアルに「フィリアの拗ね方って可愛いよな」と言われたあたりから拗ねて見せる頻度は上がったような気がするからあんまり間違ってないというかなんというか……。




 とか賑やかに歩いていたのだが、突然ローラが歩みを止めて路地に隠れ、フィリアはリリーと顔を見合わせつつ後に続く。




「ねぇローラ、どうしたの?」

「……あれ」




 言われ、ローラが指差した方を見ると、とっても見慣れた顔の人物がそれなりに見たことのある人とか知らない人と一緒に歩いていた。



「その……あれってやっぱり?」

「――――お兄ちゃんだね、どう見ても」

「……男7人、女7人。合コンと見た」




 同じクラスで盛り上げ・爆死役のカイルや、その他チャラい男衆に混じってなんか遠い目をしたアルが歩いている。そして、一瞬だけこっちに目をやると首を横に数回振って「誤解だ」とジェスチャーしてきた。




「……リリー、フィリア。あそこの容疑者から「誤解だ」とのメッセージが届いてるけど」

「その……カイルさんに適当に言いくるめられたんじゃ……」

「――――おにーちゃん許すまじ! よ~し、レッツ尾行♪」




 「絶対尾行したいだけですよね!?」というフィリアの心の中のツッコミにはローラが「もちろん!」とサムズアップで応じ、リリーはスキップしながら集団の後ろについて歩き出した。







――――――――――――――――――――――――――――





 それは、授業が終わってすぐのことだった。



「―――――アル、皆で飯食いに行こうぜ!」




 お祭り男であるカイルが、数人の男を引き連れてそう誘いに来たのである。

 がしかし、いくらお金に余裕があるとはいえエリシアが晩飯を作って待っているのに……いや、そういえば今日は晩飯を作るのは禁止したんだっけ。



 最近どうにもエリシアはボーッとしている時間が増えていて、この前なんか何度も指を間違って切っていた(すぐ再生するが)。

 あとは噴きこぼしたり、キャベツを剥きすぎたり、鍋を爆発させたり、量を多く作りすぎたり………不味い料理は作ってないが、実際は何度も失敗しているけど俺に気づかれないようにしているだけだと見ている。



 で、このままだと大怪我しそうだということで料理は当分禁止。俺が作って置いておいたものを魔法で温めれば食べられるように用意してあるし、温めなくても平気なものも置いてあるし、学食もすぐ近くだし……。




「いやでも、エリシアをほったらかしにするのはなぁ……」




 どうにも部屋に戻ったときのエリシアの嬉しそうな顔を思うと、寄り道して帰るというのはあんまり好ましくない。それに今日は女子だけ剣術の授業があったハズで、エリシアは一人で早退して部屋で何かしていると思われる。うん、気になる。



 けれども同時に俺がクラスの男衆に溶け込めてないのも事実であり、俺が断ったと知ったらエリシアは複雑な顔をするに違いない(嬉しさと申し訳なさ半々)。

 すると実情を知らないカイルは至極嬉しそうに言った。




「―――それじゃ、アルの知り合いを呼んでくれていいぜ!」




 おいおい、むしろそれが目当てか? そう言いたくなるくらいカイルの顔に期待とかが滲み出ていた。別にエリシアを盗るとかいうつもりはないのだろうが、確かにエリシアとかフィリアとかローラとかリリーとかは華がある。いるだけでもなんか見ごたえはあるだろう。……もしかするとリリー目当てとか? 


 とか考えてると、カイルが身を乗り出しつつ懇願してきた。



「な、いいだろ!? 今日だけ、今日だけだからさ!」

「………うー、エリシアに話つけたら」




 頼まれるとなんか断れない。悪癖だ。

 で、カイルはとっても嬉しそうにガッツポーズ。



「そうこなくっちゃ! じゃ、6時に校門前に集合な!」

「あ、エリシアは絶対来れない……って、聞いてないし」




 カイルはウキウキと去っていった。なんだよ、これでエリシアに「行っちゃイヤです…」とか言われたらどうすればいいんだ俺は。まぁ、そうしたらエリシア優先だが。悪く思うなよ、カイル。






………………





 というわけで自室に戻った俺は、なにやら粘土工作に夢中になっていたエリシアに嬉しそうに出迎えられ、自信作らしい<10分の1スケール『アル』>をひとしきり紹介された。




「アルの顔はなかなか大変でしたけど、がんばったんです……!」

「……そ、そんなにイケメンじゃないと思うんだけどなぁ……?」



「あと、その、ちゃんと細部まで完全再現です……っ!」

「どこまで再現してるんだよ!? 脱がすな! ふ、服着せろ、服!」




 無駄に服まで作ってあり(ちゃんと布で)、エリシアが脱がせたのが一瞬見えたがほんとに全部完全再現されてそうで怖い。いや、2……3割り増しくらいで美化されてる感は否めないのだが。一体いつから作ってたんだ。




「……そんなのよりエリシアの完全再現が欲しいな、俺は」

「………残念ですけど、自分は見えないのできゃっかです!」




 うん、残念。とか思ってると、何故か俺のフィギュアの近くに人形サイズの女物の服と小さなリボンが転がっているのに気づいてしまった。




「……おい、エリシア」

「――――っ! し、してないです! アルが着てくれたら可愛いのにとか思って作り始めたわけじゃ決してないです!」




 あ、うん。自白ありがとう。

 まさかそんな理由で作り始めたとは……じゃあ俺もエリシアの粘土人形でも作って仕返ししてやろうかなーとか思いつつ、代わりに例の話を切り出した。






「……そういえば、カイルたちに食事に誘われちまったんだけど……」

「………アル、それって誰がいるんです?」




 む? てっきりすぐに「いい」か「ダメ」か回答があると思ったので少々拍子抜け。俺はカイルと一緒にいた面子の顔を思い出し……。




「え、えーと……ワトソン? じゃなくてジョンソンだっけ? いや、グレミーとかそんな名前だったような……4人くらいいたような……」




 少なくとも、あの場所にいたのは男4人だった。

 俺が必死に名前を思い出そうとしている間、エリシアは「……てっきり女の人と行くから聞いたのかと思いました」と呟いていたのだが俺の耳には届かず。



 エリシアがちょっと恥かしそうに呟くまで俺は必死に名前を思い出そうとしていた。




「その、アル? 男の人と食べに行くなら全然だいじょうぶですよ…? でも、その、たまには私といっしょに食べてほしいですけど……」




 ちょっとだけ、本当にちょっとだけ「たまにでいいのか?」とか意地悪してみたくなったりしたが、それは自重する。

 俺は感謝の気持ちを込めてエリシアを優しく抱きしめ、それからエリシアの晩御飯を用意して6時ギリギリに校門につくように部屋を出た。





 で、校門で「実は合コンだったんだ。テヘッ!」とカイルにやられて大いに脱力。帰ってやろうとしたのだが、「アルも来るよ!」とか言って女子生徒を誘ったらしく帰るに帰れない。



 更には大通りに出たところで何故かリリー・フィリア・ローラの三人組に出くわしてしまい、状況は最悪である。……どっちにせよ帰ったらエリシアには謝るつもりだったが。まぁ、ローラは楽しんでるみたいだから気にしなくていいし、フィリアも「ご愁傷様です…」といった感じの目でこっちを見ていたので多分平気。


 リリー? リリーは彼女じゃなくて妹だし俺が合コン行こうととやかく言われる筋合いは無い……よな? ……いや、前世だと妹に色々と理由つけて怒られたけど。







 というわけで、ちょっとオシャレな居酒屋的な場所において、近くの席にフィリア・ローラ・リリーが座った状態で合コンという戦いが始まろうとしていた。

 迂闊なことを言ったりしたりしてエリシアに告げ口されると………何が起こるのやら全く予想できない。そんな命が懸かっているかもしれない戦いだった。









シルフ 「―――クワッ! オマケはお休みです♪」

エリシア「……くわっ、って必要なんです?」


シルフ 「何でオマケがないか聞きたそうですね……?」

エリシア「そんなことより、私もクレープ……」



シルフ 「ふっ、眠いからです! おやすみなさい!」

エリシア「……くれーぷ…」





先日絵をいただきましたー。ありがとうございます!

準備できましたら載せさせていただきます!



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