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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
帝国侵攻編 Ⅱ
145/155

第七話:予想できることとできないこと。

なんかこう、血みどろの戦いに疲れたというかですね……。

色々と無理矢理急展開な打ち切りルートですが、とりあえず帝国編終わらせてからもっと私に適したレベルで埋め合わせをしますので見逃してください……。



 どこか緊張している、レジスタンスの面々。

 それもそのはず、皇帝暗殺作戦が成功すれば皇帝の独裁といっても過言ではない帝国を崩すのも夢ではない。しかも皇国・共和国・王国の三国同盟と帝国は再び戦闘状態にある。皇帝がいなくなれば少なからず帝国軍に影響が広がり、戦局は一気に傾くだろう。


 で、気休め程度ながら一応皇国の筆頭貴族の俺が皇女様フィリアに『皇帝はいなくなったし、賠償だけで勘弁してあげてくれないか?』と頼むと約束した。

 まー、正直俺が言ってどうなるもんでもないと思うんだが。


 なんか知らないが、帝国軍では<紅蓮の悪魔>―――父さんがかなり有名人らしく、その息子ならあるいは。ということになってるらしい。

 なんか、トラウマものの暴れっぷりだったらしい。




 まぁそんなわけで、作戦決行予定時刻……深夜までみんな緊張したまま待機している予定だったのだが、レジスタンスのメンバーの一人が息を切らせながら駆け込んできた。




「―――た、大変だ! 黒尽くめの男が一人で城の正門を破壊して城内に侵入! 大騒ぎになってるぞ!」



「なんだと!?」

「そんな馬鹿な!?」




 城の正門が魔法防御の付与された特別な品であることを知っているレジスタンスの面々の驚きは凄まじかった。

 俺たちの反応はそこまでのものではなかったが。



「……アル、夜出るならもうお風呂入ったほうがいい。一緒に入ろう?」

「いやいやいや、そもそも作戦中止じゃないのか? 警備も厳しくなるだろうし」



 とりあえず風呂に入るのは回答を避けておく。

 ローラは頬を膨らませて不満そうだったが。



「……毎度のことだけど、これってすごく恥ずかしいよ?」

「なら自重してくれ! もっと平和なときで二人っきりなら喜んで入るから!」



「……平和になったら、一緒に風呂に入ろう。っていうと死亡フラグみたい」

「むしろそう言う事で逆フラグを狙うか。俺、この戦いが終わったらエリシアとローラとフィリアと結婚するんだ……」



「……それは修羅場でヤンデレでデッドエンドみたい」

「えー、ちなみに誰がヤンデレ?」



「……私?」

「全く想像できないな」



「……そのうちアルを独占したくなるかも」

「刺すならエリシアとかフィリアじゃなくて俺にしてくれよ?」



「……それより、たまには独占させてあげるって言ってほしかった」

「たまには独占させてあげるよ」



「……約束?」

「ああ、約束だ……ってまたフラグだな」



 という感じで和やかな空気(?)だったのだが(周囲からは空気読めよ的な目で見られてたが気にしない)、そこでアウロラが口を開いた(比喩的表現だが)。



『アルネア、悪いが頼みがある』

「とりあえず、援護に行けって言うなら断るぞ。俺が要請されたのは皇帝の暗殺であって、サイラスの援護じゃない」


「……アルが女の人―――女神だけど――の頼みを断った…!?」




 俺がバッサリ切り捨てると、何故かローラに驚かれた。

 なんというか、すごく理不尽な何かを感じる。



『……無論、タダとは言わない。サイラスの援護に可能な限り早く出てくれるのならば報酬を先払いにする』


「なに……?」




 報酬というのは、エリシアの治療―――といっても完全に治るわけではないらしいが、かなり体調が良くなるのはアウロラが保障している。

 俺は即座に飛びつこうかと思ったのだが、流石に怪し過ぎる。



「おい、アウロラ。いくらなんでも怪し過ぎるぞ。なんでそこまでサイラスに固執する? 少しくらい説明してくれてもいいんじゃないか?」


「……むしろアルが最初にそれを聞かなかったのがビックリ」




 ローラに呆れたように呟かれたが、仕方ないだろエリシアを治療するって言うんだし。アウロラはエリシアを治療した実績があったし。

 数秒間返答がなかったのだが、辛抱強く待っているとアウロラは疲れたような声で言った。




『……以前の契約者に頼まれたのだよ。<サイラスを頼む>と』




 ……要するに、それを律儀に守ってると?

 ということは、妙な目的があるってことは無いか。

 (シルフ情報によると、高位の精霊は嘘を吐けないらしいので)




「……そうか。わかった、引き受ける――けど、エリシアの治療は先払いな」



『ああ、私は会話できる程度の力だけ残して予備の魔力も全て出す。……頼むぞ』

「了解」




 腰に差していた精霊剣<アウロラ>から眩いオーロラが放たれたかと思うと、一直線に東―――皇国のほうに飛んでいった。

 俺は用意しておいた荷物をもう一度確認し、エリシアにもらったコートを着込んでから<シルフィード>でシルフと遠距離会話を試みる。

 エリシア心配だし。気になるし。




「シルフ、聞こえるか?」

『……ご主人様? 何だかアウロラの魔力が飛んできたんですけど……終わったんですか?』



「あー、いや。ちょっと事情が変わって先払いになった。エリシアの様子は?」

『起きたんですけど……あ』




『……アル?』



 シルフの声が途切れ、聞こえたのは聞き間違えようのない声。

 すごく眠そうだったけれど、俺が出る直前の時のような弱々しさがない。

 内心で安堵しつつ、俺はエリシアに問いかけた。



「エリシア、大丈夫か? 元気か?」

『……ねむい、です。アルは……どこにいるんです?』



 どこか拗ねたような声。

 まぁ無理ないかと思いつつも、帝国にいると正直に答えたらマズイ事になるのではということに気がついた。

 しかも、エリシアは嘘をついたら分かるらしいし……。



「……あー、ちょっとどうしても外せない用事があって……」

『……アル…?』



 拗ねた声から心細そうな声にレベルアップした!

 俺はなんと言うべきか悩み、気まずい沈黙。

 冷や汗を流しつつなんとか話題を逸らすのを試みる。




「と、とにかく、お土産の希望はあるか? 食べたいものとか!」

『………アル。あいたい、です』



 そう言ったエリシアの声は今にも泣いてしまいそうで。

 滅多に聞かないエリシアの切実な願いに『今すぐ帰る!』と答えそうになり、でもそれはできないわけで。そんな嘘を吐かれたと分かってしまったら、エリシアはもっと悲しむだろう。



 しばらく泣きそうなエリシアと慌てる俺の間に微妙な空気が流れたのだが、目が覚めたら落ち着いてきたのか、エリシアの機嫌が少し改善された気がしたので、俺はそろそろ会話を終わりにしようと思い、どうやって切り出すか考える。




「……できるだけ早く用事を片付けて、すぐ帰るから。待っててくれ」

『アル、私も目が覚めてきたんですけど……どうして帝国にいるんです?』



「―――んなっ!?」

『それに気配が変です。……ローラの魔力が混じってるのはいいんですけど、それ以外にもなんだか……』



「と、とりあえず明日には帰るから大人しく待ってるように!」

『―――アル…っ!?』




 慌てて通信を切断。

 俺は大きく息を吐きつつ椅子に座って呟いた。




「はぁ、危なかった……」



 すると、ローラが微妙な表情で俺の隣の椅子に座って言った。



「……アル、エリーが落ち込んでるのが目に浮かぶ」



「むぐっ……。いや、でも他にどうしようもなくないか?」

「……素直に話すとか」



「それだとエリシアが心配してこっちに無理矢理来そうじゃないか?」

「……どっちにしてもエリーは待てないと思う。アルを心配しながら飛んでくるか、半泣きで飛んでくるかの違い」




 さすがにそれはない……と言えないところが恐ろしい。



「でもさ、一応『大人しく待っとけ』って言っといたぞ?」

「……アルは逆の立場だったらどうするの?」



「そりゃぁ……無視して取っ捕まえるな」

「……うん、そういうこと」




 ……やばいじゃん。

 とはいっても、エリシアがいかに高速飛行が可能でもこっちに来るのには1時間は最低でもかかるだろう(と思いたい)。さすがに音速は超えないと思うし。


 こうなったらサクっと皇帝を倒したほうがいいな。

 というか、アウロラの要請を受諾したからサイラスを援護に行かないといけないんだけど。残念ながらレジスタンスの作戦開始を待つ時間もない。



 俺はサイラスが突破したらしい正門の場所と城内の見取り図をもう一度確認してから、出発するべく立ち上がりつつローラに言った。



「ローラはどうする―――」

「……置いてくって言ったら氷漬けにする」




 愚問だったらしい。

 ローラは置いてあった魔法剣<アストライオス>を背中に担ぎ、俺達は拠点を飛び出して一気に城を目指すのだった。ちなみにサティナに報告するのは面倒だったのでパス。







………………





 帝都の中は、城が攻撃されているとは思えないほど静かだった。

 街の人々は特に逃げたりする様子も無く、むしろ何かを期待するような表情の人も多かった。レジスタンスの襲撃だと思ってるのかもな。


 まぁ、一部の警備兵とかが城に慌てて駆け戻ろうとしていたりしたのだが、ローラに容赦なく氷漬けにされていく。



 そんなこんなで正門の近くに来ると、なくなった門の跡地に既に帝国兵が防御陣を作っていた。

 しかし、強敵である魔族はサイラスが相手をしているのかいなかったので、俺とローラは一気に突撃。




「<サンダーボルト>!」

「<ブリザード>」



 俺の放った黒い雷が敵の魔術師の張った魔法障壁を一瞬でブチ抜き、吹き飛ばす。

 さらにローラによって残った敵兵も全て氷漬け。

 あまりのあっけなさに驚きつつ、俺とローラはそのまま城内に侵入するのだった。



 この城は元々戦闘を想定して作られてはおらず、強力な魔法防御を施した城壁が最終防衛ラインらしい。城に入りさえすれば玉座はそこまで遠くはない―――。








――――――――――――――――――――――――





 城の中には死体が散乱していたものの、思った以上に兵の数が少ない。

 そういえば、レジスタンスが旧王家とつながりのある信頼できる兵士に今日の襲撃について一応教えてあるってサティナが言ってたか。



 そして、サイラスと皇帝はすぐに見つかった。

 なにせ魔力量が圧倒的である。

 どこかで感じたことのある魔力のような気がしたのだが、玉座の間に入るとすぐにその謎は解けた。


 なにやら不気味かつ巨大な全身甲冑を纏って同じく巨大な玉座に座る、威風堂々ラスボス感全開の皇帝とある程度の距離をとって睨み合うサイラスの体が、漆黒の鱗に覆われて更に漆黒の翼を広げていたのである。いつかのミリアと同じ、竜族がある程度力を解放した姿である。

 つまるところ、サイラスは竜族で、しかも黒竜で、しかも前に一度会ったというか戦ったことのあるヤツだった。



「……魔族の長よ、我が妻の命を奪った代償、その命で支払ってもらうぞ!」



 そしてサイラス―――いや、グリディアから放たれる圧倒的な魔力。

 それに対する皇帝は、全身甲冑の顔の部分を開くと―――ゆっくり這い出してきた。




「なんだかわからないけど、かえりうちにしてやるんだからー!」



 10歳未満くらいのピンク色の髪をした、少女……というか幼女だった。






アル 「ただの幼女じゃん……」

ローラ「……これはある意味ピンチかも。契約違反的な意味で」


アル 「次回、『俺はまだあと2回変身を残している!』(嘘予告)」

ローラ「……次回は未定なので騙されないでね?」



見た目とは裏腹に圧倒的実力の皇帝。

グリディアでさえも圧倒される力の前に、アルとローラに打つ手はあるのか――?

という感じになる予定です。幼女相手でも戦います。

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