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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
帝国侵攻編 Ⅱ
144/155

第六話:真紅の狂宴

……どうしてこうなった。

やっぱり戦闘は苦手だと痛感しつつ、ガンガン進みます。



「―――さぁ、お祭りを始めましょうか」



 戦場に降り立った、炎を纏った真紅の巨鳥―――朱雀。

 その背で笑う、真紅の髪に漆黒の鎧のまだ十代前半かと思われる少女。

 相手が少女といえどアルベルクも学園長も一切の油断なく剣を構え、魔力を高める。



「朱雀―――そうか、新しい使い手が現れたか」

「ふむ、今回はこちらは精霊なし。少々キツイかもしれないな」




 そう、アルベルクも学園長も以前の戦いで朱雀と戦った―――というより、その時の使い手は倒している。が、その時使った精霊剣を今は持っていない。

 だが、相手はまだ少女。全力を尽くせば勝てる可能性は十分にある。

 そう思っていた。




「―――ふふふ…っ! みんな、燃えちゃえ~~ッ!」


「―――っ!? レティナ!」

「―――頼むッ!」




 少女と朱雀が莫大な魔力を集め、太陽の如く輝く。

 危険を察知したアルベルクが防御するべく魔力を集めて剣を両手で構え、速度と手数には圧倒的なものがあるものの威力は低い学園長がその後ろに隠れる。



 そして次の瞬間。

 朱雀はダイナマイトもかくやという大爆発を起こし、周囲の兵士をも巻き込んで吹き飛ばし、焼き尽くし、粉砕する。


 アルベルクも爆発を起こして相殺しようとしたものの、威力のケタが違った。

 数十メートルも吹き飛ばされ、しかし人間とは思えない動きで空中で姿勢を制御し、地面を削りつつなんとか着地しつつ急停止。

 学園長も陰に隠れて威力が薄れたこともあってなんとか耐える。




 そして、二人が見たのは凄まじい惨状だった。




「くっ、なんてことを……」

「……落ち着けアルベルク、これは好都合だ」




 二人は敵陣に突撃し、明らかに皇国兵より突出していた。

 よって、周囲は帝国兵ばかり―――つまり、爆発に巻き込まれたほとんどは帝国兵である。が、それでも気分のいいものでは決してない。


 爆発によって半径50メートルほどのクレーターができており、帝国の魔術師もなんとか防ごうとしたのか地面があまり抉られていない場所もあったものの、クレーターの周囲には黒コゲになった帝国兵が何十人……何百人と横たわっている。


 そして、クレーターの中心には無傷の朱雀と使い手。

 少女は、狂ったように泣きながら笑っていた。




「―――もう、誰も私を馬鹿になんてしない……させない…! これが私の力よ!」




 その少女は茫洋とした眼差しでアルベルクと学園長の方を見ているようで、その実何も見てはいない。それを感じ取った二人は顔をしかめ、唇を噛み締めた。



「……錯乱魔法か」

「……早く楽にしてやるより他にないだろう。変な気を起こすなよ、アルベルク」



 少女の様子はどう見てもおかしい。

 そもそも、あんな少女が戦場に出るのはおかしいのだ。

 戦力として使い物になるように、手加減などしないように。恐らく帝国側の誰かが錯乱魔法をかけている。



 そして、アルベルクと学園長を敵と認識したことで、錯乱している朱雀の少女は虐殺マシーンと化す。




「――――<紅蓮時雨>! <爆炎衝波>! <イグナブレイザー>!」




 狂気の少女から溶岩の雨、大爆発、溶岩のレーザーが立て続けに放たれ、アルベルクと学園長は再び防御するものの、そのあまりの威力に大気中の魔力だけでは防ぎきれず、自らの魔力も剣に注ぎ込み、後ろに下がりつつもなんとか耐える。




「―――ぐおっ、三連続だと!?」

「化け物か…!?」




 しかも恐ろしいことに、少女は近くにいる人間を無差別に襲っている。

 アルベルクと学園長が一番近くにいるために一番攻撃が飛んでくるが、完全に全方位に攻撃をバラ撒いている。


 ここは一旦下がれば、少女は帝国側が止めるか処分するだろう。

 そうでなくとも、そのうち魔力切れを起こす。

 ここは一旦下がるのが得策だ。それは間違いなかった。




 しかし、アルベルクは下がらない。

 飛んでくる魔法の威力に押されて後ずさりはしても、剣で魔法を打ち落とし、ひたすらに魔法を撃ち続ける少女を見据えている。

 学園長はその背中に隠れて魔力を温存しつつ言った。



「おい、アルベルク。まさかとは思うが、あれを助ける気か?」

「そのまさかだな」




 魔法による錯乱の人間を止める方法は主に4つ。

 1つ目、殺すこと。2つ目、気絶させること。3つ目、魔力を直結させて(キスとか)魔力を正すこと。4つ目は術者が解除することだが、この解除というのがクセもので、術者が対象に直接触る必要がある。



 帝国が4つ目を実行してくれれば早いのだが、並みの術者があの少女に近づけるとは思えない。しかも暴れている場所が帝国軍の真っ只中となれば、諦めて少女を処分していまう可能性が高かった。

 2つ目の気絶も同様。魔力の直結は論外だ。キスできる(しかも魔力を正すのに十秒はかかる)くらいなら気絶させたほうが早いだろう。



 というわけで、どうやって気絶させるか考えるアルベルクだが、完全に呆れきった学園長に溜息をつかれた。




「お前は本当に変わらないな……クリスに言ったらどうなることか」

「……それは勘弁してほしいな」



 そう言いつつも、アルベルクは止めるつもりは全く無い。



「やっぱり俺は、泣いてる子どもを見過ごせるほどオトナにはなれないな」

「口調が昔に戻ってるぞ、アルベルク。……やれやれ、なんだかんだ言いつつも付き合う私もまだまだか」




 そう、少女は狂ったように笑い、魔法を撒き散らし、帝国兵を虐殺していると言ってもいい状況だったが、確かに涙を流していた。

 そんなのを見過ごしたら寝覚めが悪すぎる。




「―――本気で行かせてもらうぞ! フォーラスブルグ秘伝……<バーサーク・ソウル>…ッ!」


「―――真なる虚空よ、我が道となれ……! <ゼロ・プレッシャー>…ッ!」





 アルベルクが一気に魔力を解放し、筋肉が一気に膨張する。

 上着を突き破って現れるのは鍛え抜かれた胸筋、腹筋、そして上腕二頭筋……!

 込められた魔力によって赤く変色し、筋肉が波打つその姿はまさに狂戦士。


 負けじと学園長も上半身裸――には勿論ならず、凄まじい魔力を込めた剣が目にも留まらぬ速さで空中に大きな正方形を描く。

 そして現れるのは、『真空のような概念で生み出された魔法の通路』。

 魔法や空気、水などの侵入を許さないが人体が入っても息ができないだけという魔法空間。それが朱雀目掛けて一直線に構成される。




 学園長より上位の存在である朱雀を消滅させることはできないものの、真空っぽい空間では燃えるものがなく、炎が一瞬で消滅する。

 朱雀の力ならば一瞬でこの空間を破壊できる。


 が、その一瞬だけでアルベルクには十分だ。




「ウオォォォォォォ……ッ!」




 獣のような雄叫びを上げ、筋力・持久力・瞬発力、ついでに不審者度と変態レベルもマックスになったアルベルクが疾走する(真空っぽい何かなので本人以外には雄叫びは聞こえてないが)。


 一瞬で朱雀の前に移動し、凄まじい脚力で地面を陥没させつつ跳躍。

 しかし、少女の首筋に手刀を叩きつけるその瞬間。

 同時に朱雀が魔力の光に包まれ、大爆発を起こした。









――――――――――――――――――――――




 それより少し前、帝国の首都・グランディールに聳え立つ巨城、グレイディア。

 その黒に金の装飾を施した見上げるほど巨大な城門に漆黒の男が歩いてくる。

 黒髪黒目、漆黒のマントを纏ったその男は、黙って門の前に立つ。


 門の横に立っていた二人の門番うちの一人が、何も言わずに門を見据える男に胡散臭げな表情で話しかける。



「訪問者か。名を名乗り、用件を言え」



 すると、その男はほんのわずかに微笑みつつ答えた。



「そうだな、私はサイラス……新たな魔族の長とやらを滅しに来た」




 皇帝が魔族であるという事実は公表などされておらず、門番は怪訝そうな表情を浮かべる。が、サイラスは言い切ると同時に城壁に向けて右手を掲げ、呟く。



「―――滅せよ。<イーヴィル・フレア>」




 瞬間、巨大な門は掛けられていた防御魔法ごと一瞬で消滅。

 呆然としている門番を無視してサイラスは城に足を踏み入れる。

 が、どこからともなく黒マントの魔族たちが現れたかと思うとサイラスを取り囲む。


 魔族たちは無言でそれぞれの魔法剣を構え、魔力を高める。

 しかしサイラスは、大したことでもなさそうに呟いた。



「……雑魚に用は無いが、邪魔をするのならば滅しよう」



 瞬間、魔族たちのうち4人が一斉にサイラスの直近に走りこみ、抜刀しつつサイラスを切り刻む―――かと思われたのだが、何もない虚空を切り裂くだけで、サイラスの姿は幻のように掻き消える。そして―――。




「がぁっ!?」

「うぐぁっ!?」

「馬鹿な、なぜ気配がない!?」




 走りこんだ4人は一瞬のうちに急所を切り裂かれ、絶命。

 しかしサイラスの姿は捉えられず、一人、また一人と倒れていく。



「――――くそっ! <ブレイズ・ディストラクション>!」



 当たらなければ全て吹き飛ばすまでと、魔族の一人が大爆発を起こす。

 仲間の魔族たちも爆発に巻き込まれ、なんとか防ぐがそれでもサイラスの姿はない。



「……い、一体どこに―――」



 そう言っている間にも魔族は次々と倒れ、ただガムシャラに魔法を放ち、剣を振るうが手応えは全く無い。

 そして全ての魔族が片付くと、『影の中から』サイラスが現れる。




「……やはり、雑魚は雑魚か」




 サイラスは呟くと、城内を目指して歩き始めた。





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