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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
帝国侵攻編 Ⅱ
141/155

第三話:黒の魔術師

お久しぶりです……。

無性に完全新作が書きくなったのですが、やっぱり先にこっち終わらせないとなぁということで久々に投稿させて頂きます。




「―――<ゾディアック・スコルピオン>!」


『『『<カタストロフ>!』』』




 黒いローブから凶悪なレベルの魔力が込められた黒い光線が放たれ、同じく黒い光を纏って突進する俺に殺到する。

 <スコルピオン>は連続攻撃の突進技だ。



 俺は殺到する光線を一撃目、<天照>で迎え撃ち―――。

 凄まじい衝撃と共にガラスが砕けるような音を立てて<天照>が砕け散った。

 その影響で完全には攻撃を防ぎきれず、俺の右手が灼熱するような痛みを放つが歯を食いしばって堪える。




「うぉぉぉぉぉ……ッ!」




 最初に俺の攻撃を邪魔した大柄な黒ローブに肉薄し、眩い黒光を放つ<シルフィード>で一閃。


 しかし、凄まじいスパーク音と共に黒ローブの剣に受け止められる。

 鍔迫り合い。しかし俺のほうが力が弱く、黒ローブの男がニヤリと笑ったような気がした――――。




「まだだ……! ――――エリシアっ!」




 叫びつつ、刀身が砕け散ったはずの<天照>で黒ローブに切りつけ―――。



『……なにっ…』



 砕け散ったはずの刀身は、眩い銀の光を放ちつつ再生。

 黒ローブの胸を貫いた。



 即座に左右にいた残り二人の黒ローブが突っ込んでくる。

 俺は<天照>を引き抜きつつそれを迎撃する。




『『<カタストロフ>!』』


「<ゾディアック・サジタリウス>!」




 再び黒ローブが光線を放ち、俺も二本の光線を放つ<サジタリウス>で迎撃する。

 激突する黒い光線同士は、軋むようなような音を立てて大爆発を引き起こし、その爆炎の中、俺は一気に右側の黒ローブに突撃する。



『―――くっ!?』

「<ゾディアック・レオ>!」



 二本束ねて持った双剣が爆発的な光を放ち、剣で受け止めようとした黒ローブを弾丸のように地面に叩き落す。



 そしてそのまま振り向きざまに後ろに肉薄していた黒ローブに切りつける。

 が、黒ローブの斬撃の人間離れした威力と俺の無茶な戦いに耐え切れず、今度は俺の右腕の骨が砕け散った。




「―――ぐぅぅっ!?」



 その凄まじい痛みに耐え切れずに顔をしかめると、好機と見たのか黒ローブが連続で斬撃を放ってくる。どれも必殺の威力が込められた凄まじい斬撃の嵐を、俺は受け流すことでなんとか耐えしのぎ―――。

 後ろから殺気を感じた。



『……よくもやってくれたな』

「―――っ!?」



 後ろにいたのは、確かに心臓を貫いたハズの大柄な黒ローブ。

 振り下ろされたその剣を体を捻って無理矢理左手で受けた俺は、凄まじい衝撃と数十メートル落下し、地面に叩きつけられた。





 全身が痛い。

 内臓までやられたかもしれない。

 偶然空き地……土の上に落ちたからよかったものの、石畳に落ちていたら死んでいたかもしれなかった。




 朦朧とする思考で空を見上げると、2人の黒ローブが俺が死んだか確認するために降りてくるのが見える。




「……くそっ……こんな、ところで……」



『……ほう、まだ生きているか』




 大柄な黒ローブが、油断なくゆっくりと近づいてくる。

 しかし俺の右腕はもう動かず、そもそも立ち上がるのもままならない。



 黒ローブは俺の前に立つと、剣を振り上げ――――。




「……魔族か」

『――――なっ!?』




 突如として息苦しくなるほどの魔力が放たれ、大柄な黒ローブの首がズレ落ち、血を噴出する。


 俺は崩れ落ちる黒ローブの体と、その後ろに立っている20代半ばくらいの不機嫌そうな黒髪黒目の男をただ見ていることしかできなかった。



『―――貴様っ、よくもガイアを!』



 どうやら、大柄な黒ローブはガイアという名前だったらしい。

 流石に首を切られれば死ぬようで、怒り狂った残りの黒ローブ……いや、魔族二人が切り掛かってくるものの、ガイアを一撃で切り捨てた謎の男は鼻で笑った。




「その程度で俺に挑むとは……愚かだな」



 普段の俺だったら、コイツ馬鹿か? と思うようなセリフ。しかしこの男の気配が……放たれる強大な魔力がそうでないことを証明していた。



『『<カタストロフ>!』』



 魔族の二人が同時に黒い光線を放ち、男は心底面倒くさそうに両手で魔族に狙いをつけ、何事も無いかのように呟いた。



「<イーヴィル・フレア>」



 バシュッという軽い音と共に、男の手から“何か”が放たれる。

 それは今の俺にも殆ど見ることができず、わずかに黒い光が一直線に走るのが見えた気がしただけで―――。


 それだけで放たれていた魔法ごと魔族二人を一瞬で消し飛ばした。




「……嘘だろ」



 展開が突然すぎてついていけない。

 なんでこんなとんでもない男が現れたのか、そもそも味方なのか敵なのか。


 そして、地面に這いつくばったまま呆然と男を見ていた俺は、何気なくこちらを見た男とガッツリ目が合ってしまった。

 しかも、ゆっくりこちらに向かって歩いてくる。無言で。



 あ、ヤバイ。これは殺されるかもな。

 そう思いつつ、なんとか逃げられないか考えるものの、どうやら暴れ過ぎて魔力がからっきしのようだ。



(……エリシアにほとんど魔力渡してきたからなぁ)



 我ながら無茶するもんだ。焦りとか怒りとか超越したのか、やけに冷静になった頭で考える。俺が死んだらどうなるかなぁ……。

 ローラもフィリアもきっと悲しむだろう。

 エリシアは……不安だ。俺が死んだら何するか不安すぎる。



(……生き残るしか、ないか)



 とにかく目くらまし。その後全力で逃走。

 そう考えつつ、こっちに歩いてくる男のどんな動きも見過ごすまいと目を凝らし―――そして思い出した。アウロラが何か言ってなかったか。




「……もしかして、アンタがサイラス?」

「……ほぅ」



 なんとなく呟き、興味なさげだった男の目が「なぜそれを知っている?」という感じに変わる。というか、更に危機的状況レベルが上がった気がする。



「……サイラス、懐かしい名前だ。そしてお前のその“気配”。色々と話を聞かせてもらおうか」



(アウロラァァーー!? 更に危険度上がったぞ! どうしてくれんだ!)




 心の中で絶叫するが、アウロラからの返答は無い。

 少なくとも即殺されることはなさそうだが、見逃される確率が0になった。

 そして、こんな見るからに怖そうなヤツに尋問されるとか嫌な予感が止まらない。


 なんとか逃げようと必死に活路を探すが、サイラスは全く隙が無い。

 もう駄目かと思ったその時―――。




「<スモーク・ボム>!」




 突如として俺の目の前に白い魔力弾が撃ち込まれ、爆発。

 しかし放たれたのは熱ではなく目くらましの白煙。


 俺は一体何が起こっているのか分からなかったのだが、とにかくサイラスから逃れようと一瞬で起き上がってサイラスのいない方向に駆け出す。


 すると数歩走ったところで何者かに手を掴まれてギョッとするが、俺の手を掴んでいるのはサイラスではなく、先ほど助けた青い髪の少女だった。



「隠れる場所に心当たりがあります、ついてきてください!」

「―――わかった!」



 先ほど帝国兵に捕まっていたことを考えて、この少女は帝国側の人間ではないだろう。そしてサイラスの知り合いでもなさそう。それだけ考えて、俺は即座に少女についていくことを決めた。……それだけ、サイラスから感じる底知れない魔力が恐ろしかったのかもしれない。





 大騒ぎになっている帝国の首都の裏路地をこれでもかと走り回り、兵隊に見つからないように細心の注意を払い、少女の知り合いらしき民家に一時的に隠れたり、屋根の上を飛んで移動したりと数十分間移動し、とある民家の裏口で少女が立ち止まった。


 なんの変哲もない裏口に見えるが、意識を集中すると結界が張ってあるのが分かる。少女はそのドアをリズム良く5回ノックした。

 すると、年老いた男の声で返答があった。



「……誰だ?」

「私です」



 おいおい、そんな詐欺っぽい返答で開くか? という俺の思いとは裏腹に、あっけなく扉が開く。そして素早く家の中に入った少女に俺も慌てて続く。


 家の中は、まるで酒場のように大きなテーブルがいくつか置いてあった。

 そして、鍛えられている感じの男たちが地図などを見ながら何事か話し合っていたのだが、入って来た少女を見ると一斉に立ち上がって敬礼をする。



「構わずに続けて下さい」



 少女が良く通る声で言うと、男たちは再び話し合いを始める。

 ……あー、なんか展開が読めたかもしれん。

 するとまぁこれも定番というべきか、特に真面目そうな男が話し合いに戻らずに少女のほうに歩いていくと、一礼してから話しかけた。



「姫様、そこの者は一体どうなさったのですか?」

「私の命の恩人です。危機的状況にありましたので、同行してもらいました」



 やっぱりというか何というか、少女は重要人物だった。

 なんで姫様が街中うろついてたんだよとかのツッコミはあるが、恐らくここがレジスタンスなんだろうなぁと予測を立てる俺。

 すると、真面目そうな男はなんとも言えない顔で言った。



「……姫様、そこの者の身分確認をしてもよろしいですか?」



 すると少女は、俺のほうを振り返りつつ言った。



「というわけですので、よろしければ名乗っていただけないでしょうか? ですが、不都合があるようでしたら拒否なさっても構いません。私の恩人ですので、その場合も決して貴方を害したりはいたしません」




 おおぅ、なんて寛大な。

 でも姫様、後ろで真面目そうな人がめっちゃ困ってるからな!

 ……まぁ、名乗っても多分大丈夫だとは思うのだが。


 というか、玄武使いが俺の名前をめっちゃ呼んでたよな。

 だから姫様は俺の正体を知ってる。遠慮なく偽名を使おう。



「……えーと、ラルハイト魔術学園のアルネア・フィリスタインです。ということでお願いします」



 言いつつ、ラルハイト魔術学園(正式名称は非常に面倒なので割愛する)の生徒手帳を取り出して、指で苗字が隠れるように持ちつつ見せる。

 だって家に迷惑かかると嫌だし、ローラの苗字を勝手に借りたのは悪いと思うけど実家がエルフの里だから問題ないだろうし、咄嗟に思いついたのはフィリアとローラの苗字だけだったし。



 真面目そうな男は不満そうだったが、姫様がにっこり微笑んで圧力をかけると開きかけた口を閉ざした。そして、姫様は俺に手を差し出しつつ言うのだった。



「私は旧グランディール王国の王女、サティナ・グランディールです。今はレジスタンスの旗印兼飾り物ですね。アルネアさん、助けていただきありがとうございました」







戦闘って、難しいですね……。

噂のサイラス君が登場ですが、アウロラとサイラスの関係やいかに!


次回は皇国と帝国の国境攻防戦でも入れようかな……とか思ってますが、気が向かなかったらアル視点だけで他はカットかもです。

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