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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第八章:帝国侵攻編 Ⅰ
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第六話:真紅の竜姫

「――――喰らえっ! <イフリート・フレア>!」



 振り向きざま右手から超高温の炎を放ち、更にバックジャンプで塔から飛び降りる。

 そしてそのまま竜翼を展開して一気に大空に舞い上がった。


 そして見たのは、あっけなく消し飛ばされる炎と、不敵に笑うフードの男の口元。

 そして揺らぐ空間だった。



『フハハハ―――ッ、その翼、正しく我が獲物! その魂、頂く!』



 フードの男の前の歪みはバラバラに移動し始め、その全てを追うことはできない。



(―――くっ、なんて面倒な!)



『――――さぁ、楽しませてもらおうか…ッ!』


「――――くっ!」




 ゾワリと、背筋を嫌な感覚が走る。

 咄嗟に急上昇すると、右足を激痛が襲った。



「うぐぅぅっ!?」

『ハハハハッ、逃げろ逃げろッ!』




 僅かに空間が、そして魔力が歪むのは感じ取れるものの、それだけを頼りにして避けるのは―――。



「――――ならっ、追いつけない速度で飛んでやるっ!」

『――――やれるものなら、やってみるがいい!』




 一気に急上昇。

 しかし、途端に頭上で魔力の揺らぎを感知した。



「――――あぐぅぅぅっ!?」



 なんとか直撃は避けたものの、『何か』が左肩を直撃して骨が砕かれるのを感じた。



(―――まさか、既に囲まれてる…!?)



『さぁ、足掻け、足掻いて惨めに這い蹲って死ぬがいい!』

『――上等。やってやるわよっ!』





――――手加減はいらない。魔力を、全開に…ッ!




 私の体は真紅の光に包まれ、即座に全身が竜鱗に包まれる。

 これなら、多少のダメージは関係ない。




『ブチ抜きなさい! 《ローズレッド・バレット》!』



 フード男目掛けて全力で深紅の弾丸を放つ。

 膨大な魔力を詰め込んだ魔法炎でできた巨大な弾丸は、見えない空間の揺らぎごと焼き払いつつ城ごと男を焼き払おうと――――。



(し、しまった! 城のこと忘れてた!)




 しかし、その心配は残念なことに杞憂に終わった。

 男が不敵に笑って右手を掲げると、男の前に暗い空間が口を開け、一瞬で《ローズレッド・バレット》を飲み込んだのだ。



『―――――んなっ!?』

『ほほぅ、威力と速度重視か。燃費は悪いが、まぁ使えんことも無いな。《ローズレッド・バレット》!』




 男の右手から、《ローズレッド・バレット》の色を薄くしただけのような奇妙な術が放たれる。

 私も即座に魔力を再構築して2発目を放つ。



『こんのっ、モノマネなんて! 《ローズレッド・バレット》!』

『……ふん、甘いな』





 空中で二つの弾丸が激突し、爆音と共に空気が灼熱する。

 そして私が見たのは、眼前に迫る亡霊の如き弾丸だった。




『――――そんなっ!?』

『――――死ね』





「――――ミリアッ! <秘剣・黒鷺>!」






――――――――――――――――――――――




 間一髪だった。

 僕はミリアの前に割り込むと、<エレボス>で空間を闇魔力で侵食する剣技・黒鷺を放った。

 敵の放った魔法も闇属性なのか空間侵食を弾き返したものの、なんとか軌道を逸らすことに成功。

 弾丸は空高く舞い上がって行った。



 ミリアは無事か気になって視線を向けると、ミリアは目をそむけつつ言った。



「ギ、ギニアスっ!? べ、別にこれくらい平気だったんだからね!?」

「うん、分かってるよ。それより―――」





 フードの男は、不機嫌そうにこちらを見て呟いた。

 遠くにいるはずなのに、まるですぐ傍にいるかのように聞こえる。




『……邪魔をするな。ソイツは俺の獲物だ』

「……悪いけど、彼女は僕の保護下にある。用があるなら手続きを踏んでもらおうか」



『……ほう、どのような?』

「そうだな、先にこの僕を倒してもらおうか」




『クハハハ…ッ! たかが人間の分際で、笑わせてくれる! いいだろう! 貴様は特別に粉微塵にしてやろう!』


「――――なら、僕は貴様を闇に葬ろう! <精霊憑依ユニゾン>!」





 <エレボス>と僕の体が黒い光に包まれ、僕の体に力が満ちる―――。

 半分エレボスとなった僕は、凶悪に微笑んで叫んだ。




「いくぞ、何様だか知らないが俺の闇に喰われて失せるがいいッ!」

「ギ、ギニアス!?」




 ミリアが驚いているのを目の端に捉えつつ、剣を握り締める。

 夏休み中必死で特訓したおかげで、遂に精霊憑依をある程度使いこなせるようになってきたのだ。

 この状態は言動とかその他諸々がかなり恥ずかしいのだが、ミリアを守るためなら仕方ない―――。




「いきなり決めさせてもらうぜ…ッ! 《グングニル》ッ!」




 放たれるのは闇の力を凝縮した無数の黒き槍。

 フードの男の能力が術を飲み込んで吐き出すことだとしても、この数ならば…!

 なおかつ、闇魔法同士では飲み込めない。




 だがフードの男は余裕を崩さず、ただ右手を掲げて叫んだ。



『《ローズレッド・バレット》!』



 闇の槍は、圧倒的な火力の弾丸の前に一気に焼き払われる。

 火力が圧倒的すぎるのだ。




「――――ちっ、それなら…!」

「――――ギニアス、危ないっ!」




 突然背後からミリアに突き飛ばされ、その直後、背中を嫌な感覚が通り抜けた。

 慌てて振りかえった俺が見たのは、右腕を押さえるミリアの姿だった。





「――――ミリアっ!?」

「だ、大丈夫よ……。それより、あっち!」



 《グングニル》によって確実に速度が落ちているものの、《ローズレッド・バレット》はゆっくりと、確実にこちらに接近してきている。

 しかし、あの見えない攻撃はどうにもならない。




「くっ、どうすれば……っ!?」

「ギニアスっ! 私が見えない攻撃をある程度食い止める! そっちはパクリ攻撃をなんとかして…っ!」



「……わかった! <黒曜・村雨!>」

「……うっとおしいのよ! 《スカーレット・バラージ》!」




『―――――さぁ、足掻くがいい。貴様らの苦しみが、俺の……俺たちの喜びとなる! まだまだ行くぞっ! 《ローズレッド・バレット》!』





……………






「きゃぁぁぁっ!?」

「ミリア―――ッ! ぐぁぁぁぁっ!?」




 フードの男は一歩たりとも動いてないのに。

 繰り返される攻撃。


 幾度と無く放たれる《ローズレッド・バレット》。

 なんとか防ぎきれるものの、その隙に放たれる見えない攻撃で確実に俺とミリアの体力は削られていく。



 ミリアは見えない攻撃に対して、可能な限り全方位に炎の弾幕を張ることで対応しようとするものの、それでも防ぎきれない。



 俺とミリアは、体力も、魔力も、精神力を確実に削られていた。

 敵の攻撃の一瞬の空白を窺って、ミリアが俺の背後について呟いた。




「……ギニアス、逃げて。……って言っても無駄なのよね」

「……当たり前だ。逃げるならお前が逃げろよ」



「……じゃあ、私が突っ込むから援護お願い。ありがとね、色々」




 ミリアは、今までみせたことが無いほど素直に微笑むと、一気に急降下した。

 俺は手を伸ばしたものの届かず、せめて援護の為に、残った魔力の大半をつぎ込んで魔法を発動する。




「――――くそっ! 《グングニル》……ッ!」

「さぁっ! そのクソ生意気なフードごと噛み砕いてやる……ッ!」




 ミリアの体内の魔力が爆発し、凄まじい光と共に現れたのは真紅の竜。

 俺は慌ててミリアに当たらないように《グングニル》の軌道を修正。




『――――待っていたぞ! 喰われるのは貴様だ……ッ!

            《ディストーション・フェンリル》ッ!』




 フードの男の魔力も一気に膨れ上がり、男の前に目に見えるほどの空間の歪みが生じる。そして現れる巨大な牙、爪。

 真紅の竜に匹敵する巨大な狼は、その眼を黒く輝かせで咆哮した。




『オオオオォォォォォ――――――ン!』

『負けるか…っ! 《ローズレッド・ブラスター》……ッ!』




 真紅の竜は口から紅蓮の炎を吐き出し、フェンリルは真っ向から飛び掛る。

 そして――――。


 紅蓮の炎はフェンリルの体を半分ほど消し飛ばしたものの、瞬く間に再生。

 そしてフェンリルは竜の首に喰らいついた。

 《グングニル》がフェンリルに殺到するものの、意に介さない。



『うぐ……っ、ああぁぁぁっ!』

「ミリア――――ッ!」





 必死で急降下するものの、ここからではミリアに当たるために術が放てない。

 その間にも、ミリアが歪みに飲み込まれていくのが見える。




『今のうちに……逃げて……ギニアス……』

「待ってろ、今助けて―――ッ!」



『……ごめん、いつも素直になれなくて。大好きだったよ、ギニアス―――』

「ミリア……ッ! ミリア―――――ッ!」




 伸ばした手の先、殆ど歪みに飲み込まれたミリアの手だけが見えた。

 必死でそれを掴もうとするものの、その寸前で完全に飲む込まれ、消えた。




 伸ばした手は空を切り、そのまま倒れこむように塔の頂上に降り立った。

 



『クックック、ここから俺の復讐は始まる……。忌々しい竜族どもを根絶やしにしてやる……!』


「………返せよ…」





『ふん、何をだ?』


「ミリアを……返せって言ってんだ!

      盟約の精霊、我に力を……ッ! 《精霊融合ユニオン》!」





 全ての魔力を、<エレボス>に……ッ!




「うおぉぉぉぉぉぉッ!」




 剣の柄が俺の体と一体化する。

 魔力が許容量を超えて爆発し、体が悲鳴をあげる。

 皮膚が黒く染まり、背中に漆黒の翼が生える。





『ほぉ、それなりの隠し玉だな。ではこちらも、早速実戦投入といこうか。

                 《ディストーション・ミネルウァ》!』





 再び、男の前に巨大な歪みが現れる。

 巨大な翼、爪、牙。

 亡霊のように色が変わっていても、それは紛れも無い―――。




『グガァァァァァッ!』

「――――ミリ…ア……」





 目の前にいるのは紛れも無く真紅の竜。ミリアだった。

 それなのに、それなのに危機感は一向に薄れない―――。




 そしてその口が開かれ、視界が紅蓮の炎に包まれた。









次回『乱入者』


エリシア「……えっと、アル…?」

アル  「んー、何だ?」


エリシア「……その、本編が大変なのにこんなこと……」

アル  「先に始めたのはエリシアだよな?」


エリシア「あぅ……」

アル  「というわけで、勝手に後書きで妙な話をしたエリシアの罰ゲームを募集します。ただ、会話だけで状況描写は入らないので、それでも問題ないorそれを利用したものをお願いします」



エリシア「……恥ずかしいのは嫌です……」

アル  「……はぁ、まあ言い出したのはローラだし、あんまり重いのは俺が削っとくけどさ……」


エリシア「……アル…っ!」

アル  「……まぁ、もし何も読者さんから提案が無かったらエリシアの自己紹介でもやってもらうか」



エリシア「……キャラ紹介ってありますよね?」

アル  「いや、だって思いつかないから募集してるんだし」

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