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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第八章:帝国侵攻編 Ⅰ
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第五話:情報

 さて、飛び立ったもののエリシアを襲った犯人には何の心当たりもない。

 ……手段を選ばないのであれば、こういうのに詳しい人間に聞くのが一番か。


 俺が任された魔力はエリシアに半分譲渡した上での3割。

 全体の15%という量だが、特に不満はない。



 俺は【影】であると同時に本体でもあるわけだから、不満も何もないのだが。

 とりあえずエリシアの安全第一。


 ……まさか、ローラとフィリアは襲われないだろうな?

 不安になった俺は、とりあえず一度寮に戻ることにした。





……………




「……アル、エリーは?」

「あっ、おかえりなさい!」



 それなのに、帰ってくると『昨晩はお楽しみでしたね』みたいな生暖かい目で見られるとは。なんだこの不条理は。



「……エリシアが襲われたから救助してきたんだよ」


「――――ええっ!? エリーは大丈夫だよね!?」

「そ、そんな……」




 余程驚いたのか、ローラが素に戻ってる…。

 フィリアも愕然としているし。



「まぁ、命に別状はない―――」




――――バシッ!




 いきなりローラに平手打ちされた。

 驚いていると、ローラがキレた。



「―――アルのバカっ! アル以外に襲われたりしたらエリーなら早まったことをしちゃうかもしれないのに、どうしてこんなところに―――!」


「……へ?」




 俺以外に襲われる?

 そして、凄まじい誤解があることに気がついた。



「――――っ、違うぞ! エリシアの被害は全身粉砕骨折と体内の魔力異常だけだ! フェミルの診断だから間違いない」

「……え?」




 ローラが今までみせたことがないような唖然とした顔になり、それから傍目に見ても冷や汗をダラダラ流して動揺していた。



「ついでに言っとくと、俺は分身だからな。本体はエリシアの横にいる」

「……な、なにその魔法…?」

「ロ、ローラ、早く謝ったほうが……」




「……ごめんなさい」

「…まぁ、今回は俺の説明不足もあるからな」




 シュンと項垂れるローラに苦笑いしつつ、俺は細かい状況説明を始めた。

 エリシアは魔力異常になってしまって命の危険があること。

 原因は不明なものの、状況からして襲撃犯が怪しいこと。





…………




「―――ということは、私たちも襲撃に気をつけてくれということですね?」

「ああ、犯人の目的が分からないからな」




 フィリアと犯人の目的について話していると、ローラがいつの間にか<アストライオス>を準備して戻ってきていた。



「……アル、私も手伝う」

「………」



 ローラが手伝ってくれるなら、今望める戦力としてはこれ以上無い。

 エルフだし、その強さは俺もよく知っている。

 それでも、ローラを危険に晒したくもない。



「……ローラ、俺は分身だから死んでも全く問題ない。それに、相手はエリシアが勝てないようなヤツなんだ。だから――――」


「……じゃあ何のために犯人を捜すの? それに……私だって怒ってる」


「私も行きますよ。皇女として、何よりエリーの親友として見過ごせません」




 どうやって二人を止めようか考えたが、二人の目を見て諦めた。




「………ありがとな」

「……うん、任せて」

「絶対にエリーを助けましょう!」








――――――――――――――――――――――――――





「――――ハズレ?」

「……はい、後『紛らわしい魔力の自分を恨め』って……」




 夕方。

 俺は、目を覚まして少し落ち着いたエリシアから話を聞いていた。

 本当はこんなことはしたくなかったが、エリシアを助ける手がかりになるのなら、仕方がない。



 あと、エリシアには襲撃犯を探していることは言っていない。

 ついでに魔力異常についても。


 エリシアが気づかないハズはないと思うが、フェミルによると『恐らく凄まじい倦怠感と気持ち悪さがあるハズ』とのことなので、怪我が原因ということにしておこうとフェミルと決めた。

 命の危険があるなんて知らせたくはない。



「……で、犯人は竜族を狙ってる可能性がある?」

「……はい…」



「でも、それならエリシアがハズレってのはどういうことだ?」

「……えっと、今の私は半分アルのマナで構成されてるんです…」



 逆に、俺も半分はエリシアのマナで構成されてるらしい。

 ……なかなかに信じがたいし、実感もないのだが。

 とにかく、それで『竜族……っぽいけどなんか違うな』って感じらしい。



 それにしても、竜族を狙ってる可能性がある?

 とんでもなく襲撃犯だな。

 ……ということは、ギニアスにも連絡を入れるべきか。






―――――――――――――――――――――――




 同時刻、学園の俺の部屋にて。




「手がかり入ったぞ」

「……えっ!?」

「ど、どうやってですか…?」




 とりあえず学園長や先生がたに妙な固有魔法について聞き込みをしたものの、成果はまるでなく。仕方なく俺の部屋で色々と戦闘準備をしているところだった。

 ローラとフィリアは探しに行かないことが不満なようだったが、闇雲に探しても時間の無駄にしかならない。




「犯人は竜族を狙ってる可能性があるらしい。フィリア、確か皇族用の遠距離通話魔法具とかあったよな。使えるか?」


「はい、すぐに準備します! お城の私の部屋に来てください!」




 フィリアは即座に荷物を纏め、魔法を使って窓から飛び出した。



「……アル、ひょっとして本体から?」

「ああ、エリシアが起きたってさ」



「……よかった」



 俺はホッと息をつくローラの肩に手を置いて言った。



「……後は犯人を捕まえれば、きっと何とかなる。俺たちも行こう」

「……うん!」





……………





『―――やぁ、アル。急にどうしたんだい?』

「ギニアス、ミリアってそこにいるか?」



 魔法通信機は、いかにも電話ぽかった。すごく古いヤツ。

 で、予想通りミリアもいたらしい。不機嫌そうなミリアに代わった。



『……なによ、なんか用?』

「エリシアが襲撃されて大怪我をした」



『…………んなっ!?』

「犯人は竜族を狙ってる可能性があるらしい。そっちも気をつけてくれ。あと、相手の魔法はエリシアでも正体不明」



『……ちょっと、エルは大丈夫なんでしょうね!?』

「そうじゃなきゃ俺もこんな余裕はない。ただ、エリシアが魔力異常を起こしてて命の危険がある。原因が分からないんだが、状況的に襲撃犯が何か知ってる可能性もある」



『……そう』

「こっちでも探してる。互いに何かあったら情報交換するってことでいいか?」



『……わかったわよ』

「ああ、頼む……で、悪いけどギニアスに代わってもらってもいいか?」



 というわけで、再びギニアスに代わる。

 ちなみにこの通信機、周囲にも話が聞こえるのでギニアスも聞こえていたハズ。



『…アル、大丈夫かい?』

「ああ、大丈夫だ」



『……無理はしないでくれよ』

「……ありがとな。で、さっき言ったとおりミリアが襲撃される危険がかなりあるんだが、エリシアで無理ならミリアも危ない。気をつけてくれ」



『ああ、分かっ―――』

『なめんじゃないわよ、コラーー! 私のほうがエルより強いわよっ!』

「……あー、そうだなー」



『まずアンタがムカツクわ……! エルをもっとちゃんと守りなさいよっ!』

「……じゃあな、そっちも気をつけてくれ」



 答える気になれなかったので、一方的に通信を終了した。

 俺がエリシアを守れなかったのは事実だしな。




「……それじゃ、オーランド王国に行くぞ」

「ん、了解」

「えっ、行くんですか?」




「ああ、竜族狙いならティルグリムかミリアくらいだろ。わざわざエリシアを狙ってきたってことは外に出てる竜族を狙ってる可能性が高い。そのほうが確実だしな」


「……問題は犯人がオーランドまで魔力探知する方法があるか、ミリアのことを知ってないと竜族を探して放浪する、あるいはティルグリムに行く可能性があること」


「……そうですね。でも、もし知っているなら確実にミリアさんを狙いますね」




 ただでさえ戦闘力の高い竜族。

 確実に倒したいなら単体でいる個体を狙うべきだし、もっと言うなら子どものほうが狙いやすい。


 そうでないならエリシアを狙う必要はなく、ティルグリムに特攻すればいいというだけの話だ。

 だから、ミリアが狙われる可能性は極めて高い。





 ―――絶対に捕まえてみせる。






――――――――――――――――――――――――――






 僅かに出掛かった月を見ると、エルのことを思い出す。



「………竜族を狙ってるですって? いい度胸だわ、来るなら来なさい!」



 

 ジッとしてるのが嫌になり、私は王城の一番高い塔に来ていた。

 自分でも驚くほどに腹が立っていた。

 ……きっと、エルは私の初めて友達だったから。


 今のエルが私をどう思ってるのかは分からないけれど、私としては好敵手であり、目標だったから。



 あんな竜族屈指の平和主義者を襲うヤツがいるなんて……。

 我侭で、近い歳に私と張り合える実力者がいなくて一人ぼっちだった私に話しかけてくれたエルのことを、私は忘れてない。


 ついでに、初めて同年代の仲間で不意打ち以外の対応をしてきたエルを思わず吹き飛ばそうとしたら難なく防がれたのも忘れてない。




 ………そういえば、なんで竜族の子どもは不意打ち合戦なんて面倒なことをやるのだろうか? 序列決めだっけ?


 そういえば、一度も攻撃しないけどどんな攻撃も防いでみせるエルの序列をどうするか盛大に揉めたっけ。




 エルは『手加減が面倒です』とか言ってたが。

 思えば、あの頃のエルは平和主義のくせに辛辣だったっけ。


 今だとすっかり腑抜けた……というか毒気を抜かれてついでに牙とか爪とか色々無くしてるんじゃないかって感じがするけれど。

 昔より幼くなってる気すらするし。





「……で、人が思い出に浸ってるときに背後から狙うとか無粋よね」

『………クックク、どうやら今度はアタリのようだな』



 背後から怪しげな声と共に感じる、爆発的な魔力の奔流。

 普段なら怯んでしまったかもしれないけれど――――。



「……ええ、アタリもアタリ。大当たりよ。で、戦う前に一つだけ聞いときたいんだけど」

『ほう? いいだろう、冥土の土産に一つだけ答えてやろう』



「アンタ、魔力異常を起こす能力とか持ってる? 私は持ってないけど」

『ふむ。そんな力があったら是非ほしいが、残念ながら私が持っているのは復讐のためのこの力だけだな』




 その言葉と共に、背後の空気内魔力が不規則に揺らぐ。

 確かに妙な魔法だ。

 ……でも、情報間違ってるじゃない。嘘の可能性もあるけど。



「……そう、じゃあ私もアンタに一つだけ用があるわ」

『……ほう? 奇遇だな。私の用も一つだけだ』




「――――報復よっ!」

『――――復讐だッ!』







次回『真紅の竜姫』


ローラ 「……それで、アルを落とすにはどうすればいいと思う?」

エリシア「えっと……アルは意外と恥ずかしがり屋さんです…!」

フィリア「そ、それじゃあ多少押したほうがいいんでしょうか?」


ローラ 「……うん、じゃあ実際にアルが落ちた一例をどうぞ」


エリシア「え、えっと、その……アル、おかえりなさい! お風呂とご飯、どっちを先にしますか? そ、それとも……わたし…です?」


フィリア「だ、大胆ですね…!?」

ローラ 「……エリーって意外と策士?」

エリシア「こ、これはその……シルフィーから伝授されました……」


ローラ 「……よし、私も使ってみる」

フィリア「そ、それじゃあ私も…っ!」

エリシア「……あれ? ―――んぅ!?」



ローラ 「……あれ? エリーは?」

フィリア「……さっきまでここにいましたよね?」


…………



アル  「エーリーシーアー……?」

エリシア「あぅっ……そ、その……ごめんなさい……」


続く……かなぁ?

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