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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第八章:帝国侵攻編 Ⅰ
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第三話:成田君は掃除大臣?

 というわけで、再びローラの部屋に来た。

 ローラは何故俺がエリシアを背負ってるのか察したらしい、幻滅されるかと思いきや、羨ましそうな目で見てるのは気のせいだよな…?

 ローラは俺が凝視してるのに気がついたのか、ほんの一瞬だけ焦った顔になったが、すぐにいつもの無表情で言った。



「……アル、エリー、それじゃあ入って」

「ああ、邪魔するな」

「お、お邪魔します…!」



 というわけでローラの部屋に入ると……なんと、普通に可愛らしい部屋だった……。

 いや、灯と同じでピンクを基調とした可愛らしいものが多かったのだが、ローラのイメージとのギャップは凄まじかった。

 なんか、ベッドに可愛らしい熊のぬいぐるみとか置いてあるんだが……。


 ついでに、フィリアがそのぬいぐるみを抱きしめて幸せそうにしてるし。

 で、思わず数秒ほど3人でフィリアを凝視していると、フィリアが気がついて慌てて背中に隠した。

 けっこう大きいので思いっきり見えてるのだが、フィリアは完璧な皇女スマイルで挨拶してきた。



「こんにちは、アル、エリー。それで、お話というのは……?」



 多分フィリアも話の内容はわかってるのだろうが、恐らく俺が話しやすいように聞いてくれた気がする。

 …だから、熊のぬいぐるみについては触れないであげよう。

 俺は、とりあえず椅子が3つあるのを確認してからローラに聞いた。



「ローラ、椅子借りていいか?」

「うん、どうぞ」



 とりあえずエリシアを椅子に下ろし、ローラと目で意思疎通してから二人で同時に椅子に座る。フィリアもベッドに座っているので、これで全員座ったことになる。



 そして、俺は姿勢を正してから話し始めた――――。




「―――ローラは俺の指輪で大体分かってるかもしれないけど、俺はエリシアが好きで、結婚の約束をしてる」



 フィリアは少し動揺した気がするが、ローラは前世で結婚指輪の概念を知っているので、ゆっくりと頷いた。エリシアは珍しく完璧に無表情だった。



「―――それでも、こないだフィリアにも言われたけど、一夫多妻制だから側室ってものもある」



 途端に、フィリアが縋るような目で見てきて俺の心が痛むが、ここで話を終わらせるわけにはいかない。しっかりと問題点を挙げておく必要がある。

 ローラは無言で頷いて先を促し、エリシアは黙っている。



「でも、一夫多妻なんてやったら二人きりでいられる時間は少なくなるだろ。俺はローラもフィリアも好きだし、一緒にいたいと思う。でも、それだけで片付けていい問題じゃないと思う。……まぁ、ひとまず二人がどう思ってるか知りたいんだけど」



 俺はそう言って、まずフィリアを見つめる。

 フィリアはこの上なく真剣な表情で大きく息を吐いてから言った。



「私は、アルがご迷惑でないなら……エリーには…間違いなく迷惑だと思いますけど、もしも許してもらえるのなら、私もアルの傍にいたいです……」



 そう言ってフィリアが俺を見つめてくるが、それには答えずに今度はローラと目を合わせる。ローラはいつもの無表情ではなく、どこか弱々しい声で言った。



「……私も、アルに少しでも好きだと思ってもらえるなら一緒にいたい。……傍にいられるだけで、何もいらないから…」



 俺はそれにも答えず、最後にエリシアを見た。

 エリシアはゆっくりと頷いて、俺はがっくりと肩を落として呟く。



「……なぁ、俺ってそんな好かれるようなことしたか?」


「何もかもです」

「素敵な学園生活と最高の友達、そして笑顔を頂きました」

「…命と、友達と、幸せ?」



 3人で即答して、俺を残して3人で笑いあった。

 なんだろう、俺だけ仲間はずれみたいになってる。

 

 俺は溜息をついて天井を仰ぎ見つつ言った。



「……はぁ、俺も3人とも好きだし……覚悟を決めるか」


「はい…」

「よろしいんですか…?」

「……いいの?」




 エリシアが笑顔で頷き、二人がかなり嬉しそうな目で見てくる。

 もうこうなったら、なるようになるだろう……。



「―――ああ。……それじゃあ、とりあえずお付き合いから…かな?」

「「「……えっ?」」」



 3人がキョトンとした目で見てきて、俺もちょっと焦る。



「…へ、普通お付き合いだよな? 何かその前にあるのか?」


「ビックリです……」

「……ハーレムなら大人のお付き合いじゃないの?」

「お付き合いからなんですか!?」




 なんだか知らないが、俺と3人の間で考えの相違があったらしい。



「というか、ハーレムじゃなくて一夫多妻だからな?」


「えっと……何か違うんです?」

「……同じじゃないの?」

「同じ意味に思えますけど…」




 なんか、この3人仲いいな!?

 さっきから俺だけ仲間はずれなんだが。



「ハーレムってさ、別に結婚してるわけじゃない気がするんだが。別にそれでもいいなら俺は別に構わない―――」


「「一夫多妻でお願いします!」」

「さすがアルです……!」



 ローラとフィリアは即答。何故かエリシアに感心された。

 ちなみに、ハーレムの本来の意味は親族以外の男性が入れない、女性がくつろげる場所という感じらしい。日本だとすっかり別の意味になってたが。


 まぁ、とりあえず話を戻そう。

 とりあえずローラとフィリアとはお付き合いから。

 それでうまくいくのか確かめてみたほうがいいだろう。

 

 もしローラとフィリアの気が変わった時に取り返しのつかない状況だとまずいし。

 エリシアも心配だし。



「というか、何でエリシアに感心されたのか分からないんだが…?」


「えっと、アルが色々気にしてくれてるからです?」

「……愛人かと思ったら側室でビックリ」

「これなら家出しなくても大丈夫かもしれないですね…!」



 フィリアが嬉しそうな顔でサラッと恐ろしいことを言ってるんだが。

 家出されたら俺は皇女誘拐犯になるんじゃね?

 気持ちは嬉しいんだが、とりあえず皇様を全力で説得する必要があることに今初めて気がついた俺だった。


 確か、歴史書でもこんな前例はなかったハズだし。

 庶民と結婚した例はあったけども、もちろん正妻だし。

 十二貴族だから身分上は文句無しなんだけど、側室って……。



 エリシアの白竜族皇女というかなり意味不明な肩書きを公表すればあるいは…。

 とか思わないでもないが周辺国との関係が激震しそうだし、一応エリシアも追放された身だから目立たないほうがいい。




「というか、ローラも身分高かったりしないよな?」

「…大丈夫、ただの議長の娘だから」


「えっと……もしかしてまずいです?」

「エルフの議長ってどれくらいの存在なんでしょうか?」




 なんとなく嫌な雰囲気の中、ローラは少し目を逸らしつつ言った。


「……まぁ、灰エルフ限定の内閣総理大臣みたいな感じ」


「ぶっ!?」

「す、すごいです!?」

「成田君掃除大臣ですか…?」




 知らないフィリアにも分かるように説明すると、議会で一番力があって、しかも軍隊の指揮権も持っているとのこと。

 ローラに言わせると持ってる権限は似てるけど規模はかなり小さいよ? とのことだが、規模が小さくてもエルフの軍隊って……。





…………




 というわけで、ローラとフィリアとお付き合いすることになった。

 今はローラの部屋でお昼の用意をしつつトランプで遊んでいる。



「――――喰らえっ、フルハウス!」

「……ストレートフレッシュ」



 俺としてはなかなかの手札だったのだが、ローラがちょっと自慢げにカードを出す。

 


「ば、馬鹿な!?」

「…ふふん」



 が、そこでフィリアとエリシアもカードを出す。

 フィリアもちょっと得意げに。



「はい、私はロイヤルストレートフラッシュですね」

「あ、私もです…!」



「い、意味が分からん……」

「……アル、私たち呪われてるかも」



 さっきから俺もローラもかなりいい手札なのだが、フィリアがロイヤルとかフラッシュとか自分に縁のある役を揃えまくるのでさっぱり勝てない。

 エリシアも意味不明な運のよさでフィリアと互角の戦いだし。

 魔法とかイカサマとか疑おうにも、エリシアとフィリアだしなぁ……。



「―――くそっ、なら違うカードだ! 『ウーノ』をやるぞ!」

「あ、楽しそうです…!」

「ふふっ、受けて立ちます!」

「……負けない…!」




…………




「――オレのターン! <ドローフォー>を発動する! 喰らえ、フィリア!」

「はい、私も<ドローフォー>で返しますね。ごめんなさいね、エリー」

「まだです…! 私も<ドローフォー>です!」

「……じゃあ私も」



 ……もう俺の手札にはドローフォーが残って…ない。

 手札が4+16で20枚とか……本気で凹むんだが。


 



「………オシ○スの天空竜を召還したら攻撃力2万になるな」

「ド、ドンマイっ、ですね?」

「アルならきっと逆転できます…!」

「……まだ次の勝負がある」



 誰も『ゲームが違うだろ』とツッコまない優しさが逆に痛かった。



……………




 そんなこんなで、お昼の時間が近づいてきた。

 つまり、フィリアが用事で抜ける時間だな。

 ローラも気づいたのか、チラリと時計を見て言った。



「……フィリア、そろそろ時間?」

「あっ、そうですね。それじゃあサボっちゃいましょう」



「ああ、それじゃあまた後でな」

「……ちゃんとフィリアが帰ってくるまで待ってる」

「えっと、いつごろ終わるんです?」




「「「「………あれ?」」」」



 なんだろう、フィリアが行くものだと思って話してたが、なんかサボるとか聞こえたような……。

 3人でフィリアを見つめると、フィリアは拗ねて頬を少しだけ膨らませた。



「どうせお見合いも兼ねた舞踏会の準備ですよ? 行きたくありません……」


「むぅ……」

「……行かなくていいと思う」

「でも、ドタバタキャンセルは良くないです……」

 


 ……いや、きっとエリシアはドタキャンは良くないって言いたいんだろう。

 どっちかって言うと土壇場キャンセルのような気もするが、通じてるからいいだろ。




「というか、舞踏会って夜にあるものじゃないのか?」


「それが……ドレスとかお化粧とか物凄く時間がかかるんですよ……。それに毎回同じドレスだと威信にかかわるとか、そういって毎回ドレスのサイズが合わなかったり…」




「……それ、胸の成長が早いフィリアが悪いと思う」

「う、羨ましいです…!?」

「…まぁ、エリシアは一昨年のドレスだって着れるもんな」



 うっかり口がすべり、エリシアが泣きそうな顔で睨みつけてくる。

 と思ったのもつかの間、急ににっこり微笑んだ。

 な、なんだ!? 物凄く嫌な予感が―――。



「……アル、揉むとおっきくなるらしいです……っ!」


「―――はぁ!?」

「ええっ!?」

「……えっ!?」



 や、やばい、エリシアが壊れた!

 というか恐らく昨日の夜に誓わせた『甘えたくなったら甘えること~』が発動した気がするが、何故にこのタイミングで!?


 フィリアとローラも唖然としてる中、俺に抱きついたエリシアが濡れた瞳で俺を見上げて―――。



「……アル、私、アルの好きな大きさになってみせます……だから……」


「……と、とりあえず落ち着け。俺は今のままのエリシアが好きだからな。大きくも小さくもならなくていい! あー、でももうちょっと髪が長いエリシアも見てみたい気はするけどな!」




 とりあえず話の方向を逸らす作戦に出てみた。

 狙い通りエリシアは既に十分長い髪の毛の先を持って何やら考え始めた。


 ふぅ、なんとか乗り切ったか……。

 とか思ってると一難去ってまた一難。

 今度は負けじとローラとフィリアが抱きついてきた。



「アル、私も……も、揉んでください……っ!」

「……私も」


「……とりあえず落ち着け」




……………




「―――というわけで、フィリアもローラも今ぐらいがちょうどいいと思うぞ。というか俺にそういった拘りは一切ないから気にする必要はない!」


「確かに、私はこれ以上大きいと大変ですね……」

「……うん、フィリアはかなりいい大きさだと思う」



 説得すること十数分。

 なんとかフィリアとローラも諦めてくれ―――。

 と思った瞬間、ローラが笑顔で俺の腕に抱きついて言った。



「……アル、それじゃあ使ってみる……?」


「――――何をだよ!? いや、言うな! 言わなくていいっ!」



 と、そこでエリシアがふと思いついたように呟いた。



「えっと、そういえば舞踏会、行かなくていいんです…?」

「――――そうだ、フィリアが舞踏会の準備があるんだろ!」



「う~、分かりました…。行ってきますね……」

「ああ、しっかりな~」




 というわけでフィリアが渋々出発。

 ふぅ、これでなんとか―――。

 と思っていると、エリシアが髪を弄るのを止めて言った。



「アル、今日の晩御飯はどうしますか?」



「……えーと、シチューとか?」

「はい、了解です!」



 エリシアはにっこり微笑んで、パタパタと走り去った。

 ……もう回復してるとは。

 さっきまでグロッキーだったとは思えないな。



「……えいっ」

「うおっ、なんだよいきなり!?」



 油断した隙にローラが背後から抱きついてきやがった。

 いや、一応恋人だからきやがったというのは違う気がするが、嫌な予感が…。



「……アル、やっと二人きりになれたね…?」

「……ローラ、キャラ違うぞ」



 思わず冷静にツッコむと、ローラは不機嫌そうに唸った。



「……う~、酷い。精一杯誘ってるのに」

「む、まだデートすらしてないのにおかしくないか?」



「……アルも誠司も妙なところに拘る」

「うっさい。取り返しがつくことと、つかない事があるだろ」



 俺としても考え方が妙な自覚はあるので目を逸らしつつ言うと、ローラはくすりと笑って言った。



「……私は、最初から戻れないよ?」

「むぐっ…、俺だって戻るつもりはないぞ」



 エリシアも、ローラも、フィリアも誰かに渡すつもりは全くない。

 酷いヤツだと思う。

 でも、そうしたいと思ってしまった。



「……恋って、どうにもなんないよな」

「……アル、キャラ違う」




 なんとなく可笑しくなって、二人で顔を見合わせ、笑った。

 そう、俺は俺の守りたいものを守るって決めたんだ。

 



「でも、節度は守るけどな」

「……可愛い女の子に囲まれてるのに節度とかあるの?」



「嫌いになるか?」

「ううん。アル、大好きだよ」




 微笑むローラの体温が温かくて、俺は気恥ずかしくなって顔を逸らした。

 



8章は毎日19時更新予定です!


次回、第四話『避けられない運命』



エリシア「フ~フ~フ~ンフフフ~ンフフ~ン♪」


エリシア「~~~貴方が好きです♪ キラッ☆」



アル  「……エ、エリシア…?」

エリシア「ひゃぁ!? ア、アル、何かご用です…?」


アル  「……いや、次回予告を……」

エリシア「あっ!? そ、そうです! やりましょう!」


アル  「……まぁ、なんというか……可愛かったぞ?」

エリシア「あぅ……」




ローラ 「……アル、抱きしめて。次元の果てまで……!」

アル  「……悪い、やり方が分からない。次元さんの向こう側まで抱きしめて移動すればいいか?」


ローラ 「……またつまらんものを切ってしまった」

アル  「それ違う。ゴエゴエさんだから」


エリシア「アルは大変なものを盗んで行きました♪」

アル  「ゴエゴエさんにツッコミは!?」


エリシア「……えっと、可愛いです…っ!」

アル  「……やばい、なんか物凄く恥ずかしいんだが。

     とりあえず、後書きのネタを大募集中です!」


エリシア「本編ではできないようなものも後書きならいけます……!」

リリー 「もちろん、限度はあるけどね?」


 どうでもいい小ネタとかでいいので、エリシアとかリリーとかに言わせたいセリフがあったら是非送ってください。ただし、キャラが崩壊するようなのは載せられませんので悪しからずです。



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