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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第一章:魔法学校合宿編
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第三話:譲れないもの

俺の剣―――<アリアティル>が碧色みどりいろの軌跡を描き、

巨大な蜂――<キラービー>が青緑の体液を噴出しつつ、地面に落ちる。


後ろから接近する気配。5つか?

右斜め後ろから3つ。


俺は、後ろに振り返り、アリアティルに魔力を込めた。


「切り裂け!<ソニックブレード!>」


アリアティルから緑の真空波が飛び出し、後ろにいた4匹のキラービーを撃破。

が、キラービーの速度は速い。

4匹に接近されてしまう。


俺は慌てず、アリアティルを左手に持ち替え、右手で<アウロラ>を抜いた。


「はぁ、雷使えないのはきついなぁ」

俺はぼやきつつ、2本の魔法剣に魔力を込めた。


2匹のキラービーが針を突き出しつつ突進。

残り2匹は背後に回りこむようだ。


キラービーの針には毒がある。すごい危ない。

囲まれたら面倒だと判断した俺は、

2本の魔法剣の刀身を包む魔力の範囲を拡張。(刀身を伸ばしたのと同じ効果が得られる)


「いくぞ!<風車!>」


俺は、回転しつつ剣の魔力を風魔力に変更。

カマイタチを巻き起こして、一気に周囲の木ごとキラービーを微塵切り。


「むぅ、結局森林破壊してしまった・・・」

無残に切り取られた俺の半径5メートルの木々に心の中で謝る。


さて、そろそろ説明しておこう。

魔法は詠唱なしで使うのは困難だ。

戦闘中にブレずに、火の玉を作り出すのをイメージするのは難しい。


そこで生まれたのが、<剣技>だ。

剣に魔力を込めて振れば、剣が切り裂くイメージに乗っかることで真空波を放てる。

あの、<ソニック・ブレード>が代表的な剣技である。

魔法剣ならば、その剣の属性に応じて補助が得られる。

<アリアティル>は風属性。<アウロラ>は・・・風以外アリアティルより強いな。無属性?


まあ、剣技には剣と動きが連動する必要があるため、

対人戦で動きを読まれやすいというデメリットがある。

また、魔法剣によって使える剣技の魔力量が決まっており、

剣技より魔術のほうが時間はかかるが高い威力を出せる。


まあ、臨機応変に使い分けられるのが一番いいな。


昨日俺が使った<雷鳴剣>、<疾風剣>、さっきの<風車>は俺のオリジナルだ。



さて、かれこれ14匹ほど倒したキラービーの針を回収。


「う~ん、一回帰るかなぁ」

そろそろ荷物が限界だ。

今日の獲物はヘルスネーク1匹に、キラービー14匹。

あと、肉が美味しい、ジャイアント・ラビット3匹だ。

ジャイアント・ラビットは、ウサギとしてはヤバイ大きさだが、

せいぜい1,5メートルくらいだ。


まあ、日頃から鍛えてる(転生してからだが)俺には軽い。

なぜか俺はムキムキにならない。一見筋肉なさそうに見えるくらいだ。謎だ。

まあ、無さそうに見えるだけで相当パワーはある。(と思う)


「アルネア、いきま~す!<ウイング!>」

なんかとっさに浮かんだフレーズで俺は空に舞い上がる。


「あー、風が気持ちいいな~。」

空を飛ぶのはいいよなぁ。

と、ほんわかしていた俺だが、戦闘中らしき魔力を感知。


「む、ちょっと大物魔物と誰かぶつかったのか?」

一応、見に行ってみる。もし困ってるなら助けないとなー。


で、少し飛ぶと、木々が薙ぎ倒されていくのが見えた。

なんかどっかで見た光景である。

うん、昨日見た。

さらに速度を上げて接近。


「あ~、やっぱりか」

そう、やっぱり<ビッグ・ボア>だった。

んで、追われてるのは・・・

えっと、昨日肉を焦がして絶叫してた・・・誰だっけな?


と、その追われてる人物は、横に飛んでビッグボアの突進を回避。

「俺は、ガルシア、ハイラス、ブルグだ!」


おお、そうそう、ガルシアだった!また声に出してたか。

息も絶え絶えだが、ビッグボアは急には止まれない。

戻ってくるまでに若干の余裕はあるだろう。


「って、フォーラスブルグ!?貴様、飛んでいるのか!?」

あ、そうだ。飛行魔法って高難度だった。ガルシアは唖然としてるが・・・


「まあな。で、戻ってくるぞ?ビッグボア。」

俺は一応警告することに。

ふむ、ビッグボアは荷が重いんじゃないか?

精霊剣じゃなくて魔法剣みたいだしな。

でも、貴族って助けられるの嫌だろうし・・・


とりあえず・・・

「なぁ、協力しないか?」


「なんだと!?ヤツは俺の、ッ獲物だ!」

横っ飛びで突進を回避しつつ言うガルシア。器用だな。


とりあえず上空3メートルくらいに滞空してる俺には余裕があるが。

お、今度はビッグボアもあんまり行き過ぎなかったな。

大体5メートル向こうで急停止。反転する。


「だけどなぁ、ビッグボアの魔力装甲はとんでもないぜ?」

そう、ビッグボアみたいな単調な突進しかしない魔獣がランクBにまでなる理由は一つ。

とにかく硬いのだ!チェーンソーでガリガリやっても効果がなさそう。

しかも、そんな硬くてデカくて、重たい物に突進されたら、ひとたまりもない。


「ぐぅっ、確かに、そうだが・・・貴様はアレを倒せるのか?」

悔しそうな顔でこちらをみるガルシア。


う~ん、そうだな・・・

「周囲への被害を考えなければ。森が燃える」

さすがに雷以外だとかなり面倒だ。


「・・・わかった。そっちは俺がなんとかしよう」

お、なんか意外と理解のあるガルシア。

と、ビッグボアが突っ込んでくる。


「はぁっ!」

華麗にガルシアが回避した。

ビッグボアはまたしても通り過ぎ、4メートルほど向こうで止まった。


俺は、<アウロラ>を右手で引き抜き、ダーツを投げるモーション。


「白き雷よ、我が剣に集いて虚空を切り裂く刃となれ!<鳴雷!>」






――――ズガァァァン!

「――――グガァァァァ!?」


ちょうど振り返ろうとしていたビッグボアに<雷鳴剣>強化版の<鳴雷>が直撃。

空中から放ったので、<アウロラ>はビッグボアの腹を貫通し、少し先の地面に着弾。

雷を撒き散らす。


「な、<雷>属性だと!?」

ガルシアが驚いている。そっか、火属性かと思ったんだな。

ウチって火魔法の家系だしな。俺は森が燃えるとしか言ってない。


ん、森が燃え・・・?

「燃えてる!おい、ガルシア早く消すぞ!」


「!?わ、わかった!」



―――数分後。


「はぁ、やっと終わった・・・」

俺は、倒すことより、倒した後のほうが疲れた。

エリシアぐらいの焔使いなら、火を一箇所に集める方法で即鎮火できるのだが・・・

まぁ、それでも燃えるものは燃えるし、全力でやると焦土と化すだろうが。



「まさか、こんなに消火が大変とは・・・」

ガルシアも疲れている。


まあ、つかれたし帰るか。

「よし、じゃあ、ビッグボアは半分もらうな~」


「な、ほとんどお前が倒しただろ!?」

驚くガルシアは放っておいて、魔力装甲の消えたビッグボアを<アウロラ>で真っ二つ。

ひょいっと抱えて、俺は帰る。


「んじゃ、またな~。お空を自由にとびたいな~<ウィング!>」


「なんてヤツだ・・・」

ガルシアはしばらくその場に立ち尽くした。









さて、空から帰ってくると学園長がお出迎え。

そういえば、なんで学園長なんだ?学校長じゃないのか?


「なんだ、そんなことも知らんのか?

正式名称は、皇立ラルハイト魔術士養成魔法学園だ。

面倒なためにラルハイト魔法学校と呼ばれる。」

また声に出てたらしく、学園長が説明してくれた。


「なるほど、ありがとうございます。ところで常に学園長が帰りを待ってるんですか?」

俺はなんとなく気になって聞いてみた。


「もちろんだ。全て私が点をつけねば、採点者の違いで点が変わったら一大事だ。」

・・・この学園長は、とんでもないだけじゃなくてやる気もあるらしい。すごいな。


とりあえず獲物をみせて採点してもらう。



「ふむ、キラービーの針が14匹分・・・巣にでも突っ込んだのか?」

学園長に若干あきれられてしまった。


「いえ、ヘル・スネークを倒した時に、<ソニック・ブレード>が巣に当たりまして。」

うっかり当てた巣から一斉に小型犬サイズの蜂が出てきた。

いやー、怖かったなー。思わず走って逃げてしまった。


「まったく、とんでもない数だ。こんなのが村にでたら凄まじい被害だぞ」

そう、学園長の言うとおりで、キラービーは人里を襲ったりするのでかなり危ない。


「いやー。肝が冷えました」

俺も、もうあんなのは御免である。


「で、またビッグボアか?」

学園長に、どんなエンカウント率だ?って目で見られた。


「今回は偶然あった人と協力しました」


「それでも凄いがな・・・合計で60点。キラービーの群れを撃滅ボーナス。

 大型魔物連続撃破ボーナス。さらに協力ボーナスが入っている。

 アルネア、お前の合計点は83点だ」

と、学園長。まさか、全員の点を覚えているのだろうか・・・


「ところで、83点って多いんですか?」

気になったので聞いてみた。


「うむ、今のところ1位だな。現在の2位は50点でローラ・フィリスタイン。

 3位は49点でエリシア・フォーラスブルグだな。

 キラービーの巣を突いて、しかも殲滅する阿呆はいまのところお前だけだ」

と、言われてしまった。

が、あのエリシアが3位?ローラって誰だ?


っと、エリシアは森林破壊の危険があるから全力は出せないんだった。


というか、どれだけエンカウントするかも大事だな。







とりあえず俺は学園長に別れを告げ、ちょっと休憩することに。


と、湖のほとりに銀色の髪が見えた。

昨日の肉焼きの時の女の子だ。


「・・・なにしてるんだろ?」

けっこう気になった俺は、そっちに歩いて行ってみた。


「なあ、何してるの?」

とりあえず話しかけてみる。


「・・・なにもしてない」

少女は振り返らずに答えた。

まあ、そっけない反応だが、これはいきなり用もないのに声をかけた俺が悪い。


「そっか、ごめんな邪魔して」

謝って別の場所へ移動することに。


「・・・じゃまじゃないけど。何か用なの?」

そう言って少女はこちらを見た。


「いや、なにしてるのか気になっただけなんだ。悪いな」

俺は、そういって立ち去ろうとした。


「・・・何もしていないけど、湖を見てたの」

少女はそう言った。


「ん、湖を見ていたのは何かをしていた中には入らないのか?」

まあ、なんか気になるよな。


「なにをするともなく、ただなんとなく見てたから」

ん~、わかるような、わからないような。


「そっか、いい景色だもんな。それじゃ、またな」

俺はそう言って立ち去った。





さて、とりあえず俺は明日以降の食料を確保するため、

今日手に入れたジャイアント・ラビットの肉を干し肉にする。魔法で。

ジャイアント・ラビットは逃げ足は速いが危険性は皆無なので、

食料としては高得点だが、魔獣討伐の点は入らない。

が、明日からサバイバルらしいので、食料を優先した。








それが終わる頃、ちょうど日が暮れ始めた。

日が暮れると危ないので、みんな帰ってきた。


そして俺は、いつものメンバーと集まっていた。



「いやー、今日は大変だったぜ・・・」

俺は、大量のキラービーを思い出して遠い目をしつつ言った。


「むぅ、アルはどうやって83点も稼いだんです?」

エリシアが何してたんだよって目で見てきた。


「そうだよお兄ちゃん!私なんてまだ26点だよ。私の3倍以上だよ!?」

なんて兄だ!って目で見られた。リリーの術は攻撃向きじゃないからな。


「リリー、僕なんて12点だよ・・・」

ジョンはがっくり肩を落としている。ジョンに50ダメージ!


「えっと、ジョンさん。大丈夫ですよ。12点でも十分ご立派です」

落ち込むジョンを慰めるエリス。そういえばエリシアと名前似てるよな。

エリシアに名前付けたの俺だが。

ジョンは40回復した!



「エリスさんは何点なんですか?」

おっと、エリシア。それはまずいんじゃないか?


「えっと・・・25点です」

気まずそうに言うエリス。




ジョンに つーこんのいちげき! 200ダメージ!

ジョンは たおれた。


♪~~デレレレレ~ン!

ジョンは めのまえが まっくらになった。



エリスも十二家だから強いんだよな。まあ、攻撃向きじゃないが。

ジョンも攻撃向きじゃないから気にしなくてもいいと思うんだがなぁ・・・

いや、ジョンはエリスに惚れてる!(多分)



「やっぱり男には譲れない何かがあるんだよな」

俺はとりあえずまとめにかかる。


「お兄ちゃんの譲れないのは寝坊でしょ」

「アルが譲れないのは寝坊です」


いや、事実だけどさ・・・


序章が長すぎることに気づきました。

・・・一章のほうが序章より短かかったら悪夢だ!


えーと、突発的・不規則・不定期更新です。

こんな作品を読んで下さった方。ありがとうございます!


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