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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第七章:文化祭編
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第十七話:それぞれの想い

今回は、私のキャラクターの感情把握、そして感情描写の拙さからご不快に思われる読者様もいらっしゃるかもしれません。

先んじてこの場をお借りして、深くお詫び申し上げます…。




「俺は……取り返しのつかないことをしてしまった……」

「アル…ごめんなさい、私が気づいて止めてれば……」



「いや、エリシアも俺とキスしたせいで酔ってたんだ…」

「あぅ……で、でも、私は気にしないです…!」



「そうだな…気にしても仕方ないもんな…!」

「はい、そうです…!」



 表彰式の途中くらいから、なんとなく気持ちが落ち着いてきて、ミスコンからの自分の振る舞いが急にとてつもなく恥ずかしくなってきた。

 そして妙だと思ったら、いつもより魔力が活性化してることに気づき、よくよく考えたらメイド喫茶で食べたオムライスに魔法ジュースか何か入ってたのかもしれない。


 

 なんか口移しもどきとかもした気がするのだが、蕩けてたエリシアは覚えていないようだ。思い出させないであげよう。




 ミスターコンの優勝賞品として、学園長から魔法剣<イグナフレア>を貰った。

 ちなみに属性は火で、素材はミスリルではないが鋼でもない謎素材らしい。

 迷宮で昔拾ったんだとか。



 ちなみに秘密だったカップルコンの優勝賞品は、これまた迷宮で拾ったらしい魔法の宝石だった。ちなみに2つ。魔力を大量に貯蔵できるらしい。

 エリシアは「私の体もほとんど空っぽなのに…」とぼやいていた。

 なんでも、まだ1割くらいしか魔力が溜まってないらしい。

 

 ただ、この宝石には空気中の魔力を集める効果もあるらしく、せっかくなので粉々にして結婚指輪に魔法でくっつけた。

 一応弁明しておくと、そうしないと上手くくっつかなかったのだ。


 ちゃんと学園長にも許可はとった。

 そうすると、「そのほうが吸収効率があがりそうだしいいだろう。後で私もやる」と言っていた。どうやら学園長は他にも同じ宝石を持ってるらしい。






 というわけで表彰式も終わり、体育館は魔法で飾り付けられてダンス会場になっていた。まぁ、エリシアとずっと踊ってればいいだろうと思ったのだが…。



「…アル、私は踊る相手がいないからエリーの次に一緒に踊って…?」

「ず、ずるいですよっ、私もお願いします、アル…!」

「え、何この流れ。それじゃあ私もー!」



 ローラとフィリアとリリーにせがまれた。

 実は学園長の命令で、必ず一人一回は踊らないといけない。

 ……しかも学園長が監視してるとか。

 あの人ならやりかねなくてちょっと怖い。


 ちらりとエリシアを見ると、エリシアはにっこり微笑んだ。


「アル、私はだいじょうぶです! とりあえずみんなと一緒にいますから」



 というわけで、一人が俺と踊ってる間は残りのメンバーで一緒にいて誘われないように互いにガードし合うらしい。

 ……ツッコミを入れたほうがいいか迷ったが、ドツボに嵌りそうなので止めた。




 というわけで、順番は申し出た順になった。

 エリシア→ローラ→フィリア→リリーだ。



 というわけでダンスパーティが始まる。

 エリシアがハイヒールなのに、急に普通に歩けるようになっていた。

 よく見ると足が微妙に宙に浮いている。

 

 ……どうやら、ヒールで歩くより高度な飛行魔法のほうがエリシアには楽だったらしい。ちなみに、エリシアはハイヒールが苦手なだけでダンスはできる。

 俺もエリシアも貴族の嗜みとして父さんと母さんに教わったのだ。

 

 ただ、無理にハイヒールを履くことないんじゃないか? ということで、エリシアの靴はいつも低めのヒールだったのだ。


 今日はハイヒール指定だったから大変だったが。




 で、いつも遠慮がちなエリシアだが、今日はなんだか積極的だった。

 二人でステップを刻みつつ話しかけてみる。



「エリシア、今日は積極的だな?」

「…えっと、私はいつもアルに可愛がってもらってばかりです。だから、私からもアルに甘えてみようかなぁって……。嫌…でしたか…?」



「嫌なわけあるか、凄く嬉しいよ。……ありがとうな」

「…はい!」



 その後は無言で踊り、ただ踊りを楽しんだ。

 エリシアはちょっとだけ名残惜しそうだったが、フィリアたちのところに走っていって、入れ替わりにローラがやってくる。


 ローラは綺麗に一礼して言った。



「アル、一曲踊ってくれませんか…?」

「ああ、よろしくな」




 というわけで、ローラと踊る。

 ローラはハイヒールにも慣れているのか、余裕で踊って―――。



「…あっ!?」

「…っと、大丈夫か?」



 ローラがこけそうになり、慌てて支える。

 するとローラはいつもとは違う―――灯と同じ無邪気な笑みを浮かべて言った。



「ありがと、アル。……アルは紳士だね」

「ローラだって淑女だぞ。似合ってるよ、ドレス」



 ローラのドレスは綺麗な空色で、いつもよりローラが明るい印象を受けた。

 嬉しそうに微笑んだローラは、しかしまた無表情になって聞いてきた。



「……ねぇアル? アルは私のこと……どう思ってる?」

「……へ?」



 我ながらかなり間抜けな声が出て、ローラはちょっぴり不満そうに頬を膨らませた。



「……私はね、好きだよ。アルのこと。男の子として。……誠司だからっていうのもあるけど、アルが好き。……でも、アルが私のことを何とも思わないなら、身を引くから…」



「ちょ、ちょっと待った。……あんまり何も言わないから、てっきりあの後恋人でもできたのかなぁ~と思ってたんだけど…?」




 俺は、迂闊にも本音を言ってしまった。

 でもそうだろ、俺だって灯のお陰でけっこう早く立ち直れたんだし、灯だって…。

 それに、俺の中では灯のほうが俺より精神的にずっと強いとか思ってたし。



 結果、ローラにものすごく悲しそうな顔をされてしまった。



「……私にはアルを好きだった記憶しかないもん…」

「…いや、ほんとごめん…」



「…うん、でも確かに何も言わなかった私も悪い。ごめんね」

「いやいや、こちらこそ…」




 というわけで許してもらうと、真剣な瞳でじっと見つめられる。

 そしてその瞳が、「答えて欲しい」と語りかけてくる。



 ……正直に言えば、間違いなく嫌いじゃない。

 好きか? と聞かれればYesだ。

 愛してるか? と、聞かれると…。



 ここでNoだと答えたほうが、きっとローラのためには良いはずだ。

 そうすれば、いつかは本当に愛し合える人を見つけられる……かもしれない。


 ただ、ローラに『なんとも思っていない』と答えることがいかにローラを悲しませるか、そしてこういう時に嘘を吐くのは良くないことだと……。



 俺は誠実に、真剣に、必死で考え……。



「うぐぐぅぅぅぅ~~~」

「……アル、大丈夫?」



 妙な唸り声を上げてローラに心配された。

 だ、駄目だ。答えが出ない…。


 エリシアがいるのに浮気するなど最低だと思う。

 しかし同時に、俺はユキが死んでしまった後は灯を好きになったのも事実で…。

 灯はそんな俺を前世からずっと好きでいてくれて……。


 そんな灯を、嘘をついてまで『好きじゃない』と突き放していいのだろうか?




 ……というのは綺麗事で、結局俺は、エリシアもローラも独占したいと、他の男に渡したくないと考えているのではないだろうか。



 でも勿論そんなことをしたらエリシアもローラも幸せにはなれない……ハズ…。



 なれないだろうか? 本当に?



 うがぁぁぁぁ……駄目だ、俺の頭が残念すぎる……。 

 


 仕方ない、こういうときは素直に答えるしかない……。



「灯……じゃなくてローラ」

「……うん」



「……ごめん。好きだけど、エリシアの方が好きだから……」

「……アル、この世界って一夫多妻制だったよね?」



 ……いきなり何を言うのだろうか。

 いやな汗をかきつつ、一応肯定する。



「…そういう風習はあるみたいだけどな、やっぱりそういう―――」

「……やだ」


 ローラは俯いて、いつもとは違う弱気な声で拒否した。

 その声が震えているのを感じて、俺はそれ以上言えなくなってしまう。



「ロー…ラ…?」


「…嫌だよ…。……こんな我侭言っちゃダメだって分かってるけど、アルの優しさに甘えてるだけだって、分かってるけど……」




 そっと顔をあげたローラの瞳から涙が零れ落ちる。

 いつの間にか俺とローラは踊りを止めて立ち尽くし、しかし周囲の人々は構うことなく踊り続ける。




「……ごめんね、アル。困らせて…。でも……大好きだよ、アル……」




 ローラはそっと自分で涙を拭うと、エリシアたちのところに走っていった。

 俺は、何か言わないといけないと思った。



 ……でも、何も言えなかった。



 本当にこれでいいのだろうか…?

 どんなに悩んでも答えは出なくて、状況だけが進んでいく。



 呆然と立ち尽くす俺のところに交代でフィリアがやってきたのだ。

 ラルハイトの国の色でもある白と蒼のドレスを着たフィリアは、優雅に一礼し、そして輝くような笑顔で言った。



「アル、私と一曲踊ってくださいませんか?」

「……はっ!? こ、こちらこそよろしく」



 茫然自失としていた俺だが、フィリアにまで迷惑をかけるわけにはいかない。

 慌てて一礼し、フィリアの手を取って踊りだす。



 フィリアがターンするたびに、輝く金髪が流れる。

 眩い宝石を集めたよりも豪華な輝きに少し圧倒されていると、フィリアが呟いた。



「……アル、ミスコンでは勝手に名前を出してごめんなさい…」



 …ま、また恋愛話…!?

 ちょっと動揺しつつ、俺は首を横に振った。



「大丈夫だよ、学園長が政治的な問題は処理してくれるらしいし…」

「……そういうことじゃないんですけれど…」



 うん、そうだろうな…。

 でも俺にはもう誤魔化すしか選択肢が残ってないんだよ…。


 いや、それは真剣に向き合って傷つける以上に酷いのではないだろうか。

 ……うん、そうかもな…。


 俺は真剣に向き合ってなんとかしようと口を開いた。



「ごめんな、フィリア…」

「……アルを好きなのは私の気持ちですから、謝らないでください…」



「いや、答えられないのは俺のせいだし…」

「でも、それでも諦められないのは私のせいですよね…」



「いや、そもそも俺が最初からしっかり断っておけば…」

「……そんな悲しいことを言わないでください…」



 一度フィリアに告白されて、付き合うことも断ることもしなかった事を言うと、フィリアも流石に耐えられなくて俯いてしまった。

 フィリアは肩を震わせと鼻をすすり……どうやら泣いてしまっている。



 ……俺は一体どれだけ馬鹿なのだろうか。

 泣きながらも、フィリアは見事にダンスを踊り続ける。


 さりげなくフィリアの涙を拭うと、フィリアは泣き笑いになった。




「ふふっ……ぐすっ…本当に、アルは優しいですね……」

「……そんなことないだろ、優しかったらもっと……」



 自分で言いつつ、もっと優しかったらどうなるのか考えてみる。


 もっと優しかったら、もっとバッサリ切り捨てるだろうか。

 …それも優しさだと思うが、俺はあまり真似したくない優しさだ。


 なら、切り捨てずに全部幸せにしようとすればいいのだろうか。

 ……とりあえず俺とは優しさの定義が違う気がする。




 俺の考えが分かったのか、フィリアは今度こそ微笑んだ。

 もう泣いていない。



「アルは優しいですよ。だからみんなアルが好きなんだと思います」

「……いや、俺の周囲の人はみんな優しいぞ?」



 苦し紛れに言ってみるが、フィリアに苦笑される。



「ふふっ、そうかもしれません。

 それでアル……1つだけ、正直に答えていただきたいことがあるんです……」



 フィリアは真剣な目で俺を見つめ、蒼い瞳が俺の顔を映しているのが見えた。

 な、なんだか物凄くデジャヴな感じがするんだが…!?

 


「……アルは、私のことをどう思っていらっしゃいますか…?」




 ……ま、またこの質問…。

 まさか『嫌い』だと嘘をつくわけにはいかない。

 それはきっと、少なくとも友達だと信じてるフィリアを裏切ることになる。



 けれど、好きだと言うのは色々とまずいし……。

 なら、『友達として好き』? これが一番無難だろうか。



 でも、今までにフィリアの輝くような笑顔や、誰にでも優しく接するその態度に、憧れみたいな気持ちを抱いたことがないと否定していいのだろうか……?



 ……って、論点ずれてる!

 とりあえずどう思ってるのか言えばいいんだ!



 というわけで俺は口を開こうとしたのだが、その寸前で曲が終わってしまった。

 そして、フィリアは泣きそうな顔で囁いた。



「ごめんなさい……ミスコンのときに、応援するって言ったのに……。

 それでも私……諦められなくて……、醜いですよね……ごめんなさい…っ」



 フィリアはそのまま俯いてエリシアたちのところに走り去ってしまい、俺はまた呼び止めることができなかった……。



 ……もう、俺は一体どうすればいいのだろうか。

 もう何も考えたくない……が、リリーが残っている。


 まさかリリーに告白されることは……ない…よな?

 普段の俺なら自意識過剰だと笑い飛ばすような思考だが、かなり精神的に参っていて疑心暗鬼だった。




 ハイヒールでちょっと歩きにくそうなリリーが歩いてきて、元気よく言った。


「お兄ちゃ~ん、踊ろう!」

「…ああ、分かったよ」



 というわけで、リリーと踊る。

 リリーは意外と上手くて少し驚いた。



「……意外とやるな、リリー」

「ふふっ、以前の私とは違うんだよっ!」



 瞳の色と同じ、グリーンのドレスを着たリリーはなかなかに可愛かった。

 まぁ、周囲が綺麗どころ過ぎてあんまり目立たないのだが。



「なかなか可愛いぞー、リリー」

「……ふふん、お兄ちゃんとしてはどう? 心配?」



「まぁ、心配ではあるがあの3人と一緒なら平気なんじゃね?」

「……むぐぐ、デリカシーの無いお兄ちゃん…」



 そう、いつも一緒にいるのがエリシア、フィリア、ローラだからな…。

 リリーが恨めしそうに睨んでくるが、俺は軽く受け流す。



「……というかお兄ちゃん、さっきからお兄ちゃんと踊る人は泣くって伝説ができてるよ?」

「…げ、マジでか……」



「ということは私も泣くのかな?」

「いや、ないだろ」



 即座に否定すると、リリーは笑い飛ばすかと思ったら無表情になった。

 


「……はぁ…」

「…なんだ、その心底可哀想な人を見る目と溜息は!?」



「……とりあえずお兄ちゃん、大丈夫だと思うけど適当に済ませそうとしたり、適当な気持ちで遊んだりしたらダメだからね」


「……ああ」





 そのままリリーとは他愛もない話をしてダンスパーティは終わり、エリシアのところに行くと、ローラとフィリアは後片付けがあるから先に戻ると言っていたらしい。




 というわけで、俺とエリシアも教室に戻るとカップルコン優勝についてみんなから称えられ、ついでに罵られつつ片付けをした。



……………





そして、夕食を終えて俺の部屋。


エリシアが物凄く真剣そうな顔でベッドに正座をした。

 色々悩んだみたいだったが、洋室なので床は止めたらしい。



「……エリシア?」


「……アル、お話があるんです……座ってくれませんか…?」





 え、まさかお説教?

 正座というスタイルは、どうもそういうのを彷彿させられる。

 そして俺には、怒られる心当たりがありすぎた。




 でもとにかく、怒られるなら大人しく怒られねば……。

 俺は素直に正座し、エリシアの瞳を見つめ――――。



 そのままエリシアの顔が歪み、泣き出してしまった。



「うおっ、エリシア!? 落ち着け、浮気する気はない!」

「ご、ごめんなさい……そうじゃないんです…」



「……へ?」


「こんなのは筋違いというか……上から目線のひどい意見だって、分かってるんです…。それでも、フィリアもローラも……すごくつらいのがわかって、でも、やっぱり私もアルに好きでいてもらいたいんです…っ」



「お、落ち着けエリシア! とりあえず深呼吸な、深呼吸」

「はっ、はいっ…!」




…………




 それから数十分、エリシアを宥めたり落ち着かせたりしつつ話を聞いた。



「つまり、エリシアも俺が大好きだから、フィリアとローラの気持ちもよく分かると」

「…はい」



「で、エリシアなら耐えられないし、二人とも大切な友達だから、なんとかしてあげてほしいと?」

「………はい…」



「でもやっぱり自分のことも忘れてほしくなくて、こんな筋違いで我侭で傲慢なお願いを俺にするから、エリシアが土下座するための正座だったと?」



 なお、これはエリシアのセリフを継ぎ接ぎしただけなので、俺が我侭で傲慢で筋違いとか思ってるわけじゃない。



「……はい、そうです……ごめんなさい…」



 言葉どおり、エリシアは深々と土下座した。

 そして、それは想像以上に堪えた。


 俺だって悩んでるときに……。みたいな思いがあったから、あらかじめ止めたりしなかったのだが、涙を堪えているのか肩が震え、それでもぴったりと額をベッドにつけるエリシアを見るととてつもない罪悪感に襲われた。


 八つ当たりはもうしないと俺は心に誓った。




「エリシア、とりあえず土下座は止めてくれ……俺に精神的ダメージが入る」

「は、はいっ…!」




 ちょっと涙声だったが土下座を止めたエリシアを俺はとりあえず優しく抱きしめた。



「アル……?」

「はぁ、なんかエリシアが少し俺から自立して寂しい……」



「……そんなこと…ないです。私は弱いです。ローラより、フィリアよりずっと…」

「……そうかもしれないけどさ、なんか新技使えるようになってるし…」



「あれは……攻撃の魔法じゃなくて、もっと私らしい魔法を……って考えて創ったんです。……アルを守れるような……そんな魔法が欲しいって思ったんです…」

「…え、ほしいと創れるのか?」



「……えっと、竜族の特技です。本当に心の底から願わないと駄目ですけど…」

「へぇ、いいなぁ」


「あぅ……ごめんなさい…」



 俺は凄いと思って言ったのだが、エリシアが申し訳なさそうになってしまった。



「いやいや、謝られると困るんだが……感心してるだけだぞ」

「でも……私だけなんだかズルしてるみたいです…」




「……いいんだよ、そんなの。それに、俺に勝てないだろ」




 俺はそのままエリシアをベッドに押し倒し、キスをした。

 エリシアが幸せそうに微笑み、そのままエリシアの制服のボタンを外そうと――。



「ア、アル、まだお風呂はいってないです…!」

「んー、大丈夫だって。エリシアはいつでも綺麗だぞ」



「私が嫌です…! アルに汗くさいって思われたりしたら……」

「大丈夫だって、エリシアの汗ならきっと甘いぞー」



「で、でも……アル…」


 エリシアは潤んだ瞳で俺を見つめ、俺は折れた。

 どうやら俺もエリシアには勝てないらしい。



「よし、それじゃあ隅々までピカッピカにしてやるからな~!」


 俺はエリシアを抱えて、そのまま部屋の風呂へ向かう。

 エリシアは真っ赤になって慌てるがもう遅い――――。



「ア、アル…!? 自分で洗えます…!」

「嫌だ。俺が洗いたい」



「アルが変態です…!? ……や、やさしくしてください…」

「……善処する」



「と、とてつもなく不安ですっ!?」


「果たして俺の本能が勝つか理性が勝つか……。いい戦いになりそうだな。開始5秒くらいは」



「早過ぎですっ!?」







 結局、俺の理性は3秒以内にKOされたとだけお伝えしておく。









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