第十二話:俺達の出会いは餌付けだった?
今更というか、いつものことですが、私の無計画を深くお詫び申し上げます…。
気がついたら、私は逃げていた。
その時はわけも分からず、ただ逃げなくてはとだけ考えていた。
ディグリスおじさんに会ったら、山を出るように言われた。
そして、追いつかれた。あの黒い竜に。
『困るな、姫。勝手に逃げ出してもらっては』
怖かった。必死で逃げた。
その間に脅されたような気もするし、挑発された気もするが、よく覚えていない。
結局、私は従う気が全く無いと判断されたのだろう。
追放を宣告され、攻撃された。
防ごうとしたが、瞬く間に魔力が枯渇し、全身に傷を負った。
致命傷だった。
地面に堕ち、止めを差されるかと思ったがそれはなく、かすむ視界に銀の雷が見えた。
………
どうしてこうなったのだろう?
目の前で鞄から色々取り出す少年は、どうやら竜族ではなさそうだった。
魔力の雰囲気がなんとなく違う。
そして、金色の髪だ。
竜族の髪色はその竜の色と同じになるから、赤、青、黄、緑、白、黒、もしくはそれらのうちの2色が混じった色になる。
だから、金の竜が存在しない(らしい)以上、金髪の竜は存在しないはずだ。
そして、髪色を変える魔法もあるにはあるが、竜族は己の色に誇りを持っている。
例え髪色を変えないことで不便があっても、変えないのが一般的というか常識だ。
……あ、そうだ。一応お礼を言っておかないと。
助けられてお礼も言えないのは情けない。
『……助けてくれて、ありがとうございます』
少年は少し驚いたようだったが、優しく微笑んだ。
「うん、どういたしまして。大丈夫? 痛いところはない?」
『はい、大丈夫です…』
そう言うと、少年は心底嬉しそうに微笑んだ。
「はぁ~、よかった」
……どうして助けたのだろうか。
意識が飛んでいたので何があったのかよく分からないが、グリディアの気配はどんどん離れていく。
もしかして、この少年はものすごく強いのだろうか。
…でも、とてもそうは見えない。
優しそうな感じはするけれど……あれ? どこかで会ったことがあるような…?
…でも、とりあえず聞いてみないことには始まらない。
『どうして、助けてくれたんですか…?』
「助けたかったから」
…即答だった。
助けたい? 見ず知らずの竜を? お金になるから売り飛ばしたいといわれたほうがまだ納得できる。
「いや、助けたかっただけだから全く気にしなくてオッケーだよ?」
『…そんなことを言われたら、よけいに気になります!』
…ついうっかり、普通に話をしてしまった。
もっと警戒するべきだと思うのだが、何故か気が緩む。
少年は難しそうな顔をしたあと、再び笑いかけてきた。
「なら、名前を教えて欲しいな。俺はアルネア。アルって呼んで」
名前くらいなら別にいいだろう。
私はエルシフィア―――と言おうとして、先ほど追放されたことを思い出した。
追放された者に名前を持つ資格はない。
『…名前は、ないんです…』
思わず苦しそうな声が出てしまうと、アルも何か感じたのか苦しそうな顔になり…。
「よし、それじゃあ俺が名前をあげるよ」
『ほ、ほんとですか?』
うっかり嬉しそうに言ってから愕然とする。
私は一体何をしているのだろうか?
名は体を表す。名前とは自分そのもの。そんな気軽につけていいものではない。
「おう! 君の名前は―――エリシアだ!」
あれ? なんだか意外としっくりくるような…?
悪くない……かも。
元の名前ともちょっと似てるし…。
そんな風に悶々としていると、アルは火を熾して肉を焼こうとしていた。
「エリシアー、生肉と焼肉どっちがいい?」
これはまさか、ご飯をくれるという意味で言っているのだろうか?
実力主義の竜族としてはご飯をもらう相手は親のみ。それ以外の相手からご飯をもらうなど最低の屈辱であると同時に降伏勧告、隷属するという証だったりする。
……まさか、私を隷属させるのが狙いで―――!?
「生肉~♪ 贅肉~♪ 焼肉~♪ やっほう♪」
……それはなさそうだった。
というか、人間がそんなことを知ってるのかかなり怪しい。
ついでに私の魔力は枯渇していて、もう人型にならないと生命活動の維持も危ういし、人型では食料の確保は無理。魔力切れした私は、ただの小さな少女だから。
というわけで、私にはプライドを捨てるか命を捨てるかしか残っていなかった。
……お腹も空いたし。
そして、何故か『この人ならいっか』という気分になっていた。
『…焼肉がいいです』
「おっけー、んじゃ、適当に棒に刺して、焼くっと」
するとアルは慣れた手つきで肉を焼き始め、周囲に美味しそうな匂いが立ち込める。
今思うと、アルと夢の男の子 (誠司)がなんとなく似ているのは気づいていたのかもしれない。もう完全に私は気を抜いていて、人型に戻っていた。
結局その後、アルに連れて帰られて家族の一員になるわけだが…。
いつからアルを好きだったのかと考えても答えは出ない。
ある意味前世から好きだったし、ある意味夢を見たころから好きだった。
でも、エリシアとアルの出会いというのなら、やっぱりあの焼肉なわけで…。
――――――――――――――――――――――――――――
『……というわけで、私はあの人に貰ったお肉の味は今でも覚えています。……皆さんみたいに感動的なお話とかはないですけど、私が今ここに生きていられるのは、幸せだと思えるのは、ぜんぶ彼のお陰です……ありがとうございます』
エリシアは、俺を見て恥ずかしそうに微笑んでから深く一礼し、話を終えた。
途中、なんだか上の空な感じがしたが無事に話し終えた。
で、今回は俺だと名言されなかったので罵声は飛んでこなかった。
ジョージさんが口を開く。
『で、結局アルネア君なんですか? 真偽のほどをアルネア君、どうぞ!』
『……まぁ、そうですが…』
「爆発しろー!」
「爆ぜろ!」
「俺にも焼肉の仕方を教えてくれーー!」
『いやー、大変ですね。それでは次、ローラさんお願いします!』
『……わかりました。それじゃあ話しますね』
あれ? なんか話し方が違う?
ローラは酔っ払っているのか、真っ赤な顔で話し始めた。
『私がその人に会ったのはここじゃない学校の始業式で、
転校して来たばかりの私は、ちょっと怖い人に絡まれていたんです。
そうしたらその人が助けてくれて……といっても、カッコよく助けてくれたわけじゃなくて、
私の手を引いて逃げてくれただけなんですけれど。
あと、その人はとっても大きなワンちゃんと仲良しで…。
ソーセージで召還して怖い人をやっつけてくれました!』
……あれ? なんかものすご~~く聞いたことある話だな。
というか、この声にあの顔…。
そして普段のあの独特の話し方…。
『名前がグルちゃんって言うんですよ。可愛いですよね~?』
……灯じゃん!?
この何の脈絡もない突然の真実に、俺も正直どう反応していいか分からなかった。
…………
『――――というわけでぇっ、女の子にモテたい男の子には困ってる女の子がいたら助けてあげてくださいね~って言いたいですよっ?』
……というわけで、完全に酔っ払いのローラ……いや、灯?
ちょっと呂律がまわってないのだが、愛想を振りまくローラがかなり衝撃的な可愛さだったため、話が終わると大きな歓声に包まれた。
『はい! みなさんありがとうございました! 尺が本気でやばいのでドンドン巻きでいきます!』
『次の問題! 異性からされるとドキッとするシュチュエーションは?
これもハイボルトさんに頂きました! ありがとうございます!』
というわけで、即座に次の問題が始まる。
なお、フィリアは復帰した。
『それでは解答、どうぞ!』
エリシア『えっと、ぎゅっと抱きしめてもらうと…』
フィリア『気さくに話しかけてもらえると…でしょうか』
レイラ 『レアな魔法生物を持ってきたら文句なしね』
ローラ 『……落とした消しゴムを拾ってくれたとき』
アイナ 『唐突に筋肉について語られるとドキッとします』
えーと、とりあえずエリシアは解答の方向性が間違ってる。
あとアイナさんも何か間違ってる気が……それ、驚く方のドキッじゃね?
ジョージも同じことを思ったのか、微妙な顔で口を開く。
『えーと、エリシアさん? 異性全般にされてドキッとする問題なんですが…?』
『……い、嫌ですっ!?』
『というわけですので、皆さん。いきなり抱きつくとアルネア君に殺されそうなので止めておいたほうがいいですよ~』
ジョージが冗談めかして場の空気を変えるが、残念ながらエリシアに抱きついたら俺じゃなくエリシアに抹殺されると思う。……ケイネスみたいに。
『はい次です! ミスラルハイトなら料理を作れるべし!
とりあえず私とアルネア君とリック君に食べさせる料理を作ってください!
なお、このアイデアは中尾あきお さんと、夢瑠さんからも頂きました!
ありがとうございます!』
♪~チャラッチャッチャ~、チャラッチャチャララ~~~
……3分経過。
『はい終了! それでは順番に発表していただきましょう!』
エリシア『えっと、今が巫女さんなので和食にしてみました。鯖の味噌煮です!』
ジョージ『おおーっと、これは美味しいですね…!』
アル 『3分で味噌煮とは流石エリシア…。というかどうやってるんだよ?』
リック 『おわー、これはアイナにも作ってもらいたいなぁ…』
フィリア『私はオムライスを作ってみました!』
ジョージ『おおーっと、これも美味しいぞ…!?』
アル 『うん、何故かレタスが大量に入ってるけど美味しいぞ』
リック 『うっほー、美味ぇ~…』
レイラ 『ふっ、新作・爆裂パウンドケーキよ…!』
ジョージ『ぎゃぁぁ、口が、クチガァアッァ』
アル 『……辛いだけで他の味が足りないかなぁ…』
リック 『オグォォォっぷ! なんでケーキが辛いんだよ!? 後さすがアルだな…』
俺はカレー好きなので辛いのには耐性があるのだ。
ローラ 『…フライドチキン。美味しいよ?』
ジョージ『おおっと!? なんだかものすごく癖になる味だぁっ!?』
アル 『…うまいけどさ、ケン○ッキーの味なんだが…』
リック 『うおー、コイツは毎日でも食べたいぜ…!』
アイナ 『クッキーを焼いてみたんですよ!』
ジョージ『…おっ、甘―――くない。微糖?』
アル 『…えーと、クッキー?』
リック 『…すまん、予想通りだ』
ピンポンパンポーン♪
学園長 『えー、尺が足りないのでカットして次で優勝を決めることとする!
決め方は単純、これまでこのコンテストを見てくれた諸君による投票だ!』
ジョージ『そして、優勝者には……何か特典があるらしいですね。学園長?』
学園長 『それはまだ機密事項だ。ノーコメント』
ジョージ「えー、というわけですので突然ですが読者の皆様にご投票をまたお願いしたい次第です。『ミスコンの話の中での振舞いで』投票していただきたく存じます!」
学園長「あと、作者のヤツの無計画でまたもこんな感じになってしまったことを深くお詫び申し上げる。まー、元々美貌のほうは投票してもらうつもりだったんだが」
ジョージ「まぁつまり、魔法だけカットってことですか?」
学園長 「本当は戦ってもらうつもりだったんだが、あの状態のフィリア嬢を戦わせるのはいくらなんでも酷じゃないか。と作者のヤツは言っていたぞ」
ジョージ「というか、俺らのセリフって全部作者の言葉ですよね?」
学園長 「残念ながら、この作品で作者に素直に従うヤツはいない。ローラ嬢が勝手に暴露したのも想定外だ。酔わせたのは失敗だったな」
ジョージ「ははぁ、あと俺のクチガァァアって叫びは何ですか?」
学園長 「ただのミスタイプだな」
ジョージ「…修正しろよ作者!」