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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第七章:文化祭編
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第八話:祭りに必要なのは、ノリだと思うんだッ!

「…お待たせいたしました、オムライスです。ケチャップをおかけいたしましょうか?」

「んー…いや、遠慮しておく。そうだ、さっきの魔法ジュースお持ち帰り二人分で」



 正直、ちょっとローラのかけるケチャップに興味が無いでもなかったが諦める。

 ほら、エリシアにならいつでもかけてもらえるだろ?



「…ほんとに頼むの?」

「ローラが薦めてくれただろ? もちろん頼むさ」



「…うん、分かった」

「ああ、よろしくな」



 何故かローラの顔が嬉しいような申し訳ないような感じに見えたんだが…。

 きっとあれだな、そこそこ値の張る魔法ジュースを買わせた感じになったからだな。

 というか、エリシアがどことなく寂しそうなんだが。


「どうしたエリシア?」

「…やっぱりアルはアルです…」



「……悪い、意味がよく分からないんだが」

「そうですよね…」



「……というかエリシア、ケチャップをかけてくれないのか?」

「―――あっ、そうです!」



 エリシアの顔がパット明るくなり、テーブルの脇に置いてあったケチャップを手に取る。

 そして緊張した面持ちでキャップを開き、俺のオムライスに向けて構える。


「い、いきます…!」

「ああ」



 そして完成したのが――――。


「お、ハートマークだ」

「え、えっと……はい…」



はにかんで頬を赤らめつつも、エリシアはかなり嬉しそうだった。


「よし、それじゃあ俺もエリシアのに書いてやろう」

「はい! お願いします!」





と、いうわけで―――。




「た、食べられないです…!」


 エリシアのオムライスは綺麗にハート型に残った。

 ハートの形を崩すのが何故か怖いんだとか。


「落ち着けエリシア。形を崩してるんじゃなく体に取り込んでるんだ」

「…あっ、そういう考え方もあるんですね…!」



 それでも嫌なのか、なるべく一口で食べようとするがエリシアの口は小さいので、なかなか食べきれない。なんとか押し込んで頬張るが、口の周りがケチャップまみれになった。



「……エリシア、口の周りが大変だぞ」

「―――んくっ、ほんとですか…!?」



 俺は周囲を見渡すが、残念ながら紙が無い。

 仕方ないので手で拭ってやった。


「あぅ……ありがとうです……」


 真っ赤になったエリシアに、俺の手もケチャップで真っ赤。

 仕方ないのでそのまま舐めてみた。



「…うん、ケチャップだな」

「―――アル!? な、なにしたんです…!?」



「ん、ケチャップを舐めただけだぞ?」

「で、でもそれ…!?」



「エリシアの口の周りについてたケチャップだな」

「あぅ……汚くないです…?」



「大丈夫だ、エリシアの頬と俺の手なら間違いなく俺の手が汚い」

「……最近アルがおかしいです…」




 というわけで、フィリア特製オムライスは美味しかった。

 そして、ローラから魔法ジュースを受け取って店を出た。



…………



 午後2時ごろ。俺はエリシアと二人で中庭を歩いていた。

 そこで、エリシアが若干緊張した面持ちで口を開いた。



「アル、もうすぐ時間です…!」

「……何の?」



「忘れられてます!? カップルコンテストです!」

「……ん? ああ~~! あったなそんなの!」



「……特訓だって言ってアルにすごく弄られたのに…」

「悪い、あれは嘘」



「……えっ!?」

「エリシアを可愛がりたかっただけだ。ごめんな」



「…なにかおかしいとは思ったんです…」

「必死なエリシアが可愛かったから、つい」



「うぅ~~! ひどいです…!」


 拗ねたエリシアが頬を若干膨らませつつ睨んでくる。

 残念ながら全く怖くないが、とりあえず言い訳しておこう。


「でもな、エリシアが好きじゃなかったらそんなことしないぞ?」

「……あぅ」



 途端にエリシアが真っ赤になって大人しくなった。

 よし、やっぱりエリシアは恥ずかしい本音攻撃に弱いな。



「そう、エリシアが可愛くて仕方がないんだよ」

「……もうアルが別人です…」



「ん、嫌なら止めるけど?」

「………嫌じゃないです…」




 ふっ、勝った。

 そんなことをやりつつ会場の劇場に向かうと――――。





「―――待っていたぞ、お前たち!」



 学園長が劇場の前で仁王立ちしていた。

 めちゃくちゃこっち見てるけど、学園長に待ち伏せされる覚えはない。



「エリシアー、今日の晩御飯どうする?」

「あ、今朝シチューを作って冷蔵庫に入れておきました。明日でも食べられますけど…」



「よし、今晩はシチューと魔法ジュースだな」

「はい!」



 というわけで素通りしようとしたのだが、学園長にヘッドロックを決められてしまった。

 しかも手加減無し。



「アルネア、私を無視するとはいい度胸だ……!」

「うががが、ヘルプ、ヘルプ!」

「アルを離してください…!」



 どうやら俺達に用があったらしい。

 最初から名前で呼んでくれないと分からないと思うんだよ。

 あと、学園長を睨みつけるエリシアが若干本気で怒ってる気がして怖い。

 慌てて学園長が技を緩めつつエリシアを宥めにかかる。

  


「おっと、これくらいなんともないのはエリシア嬢も知ってるだろう?

 まぁ、ちゃんと離すから落ち着け。そうしないと危なくて離せない」


「落ち着けエリシア、お前が怒ると洒落にならない!」

「うぅ……危険物扱いです…」



 がっくりとエリシアが項垂れ、俺も解放される。

 悪いとは思うんだが、エリシアとローラとフィリアは怒らせると本気で危ないと思う。

 いや、リリーも手段を選ばないからヤバイなぁ…。

 シルフが怒ると……怒ったことないけど相当に危ないだろうな。


 …俺の周囲って、実はかなり危ないのではないだろうか。




 とりあえず、落ち込んだエリシアの頭を撫でつつ学園長に話しかける。



「で、いきなり何なんですか学園長。あと呼ぶなら名前を呼んでくれないと他人の振りがしたくなる―――ではなく、自分が呼ばれているのか分かりません」


「ふむ、一理あるが。『おーい、アルネア。こっち、こっち~』とか言ってたら威厳が保てないと思わないか? デートの待ち合わせじゃあるまいし」



「学園長、『そこのアルネア! 貴様だ! そこを動くな!』とかでいいんじゃないですか」

「む、なかなかいい案だ。採用させてもらおう」

「……呼び止められたくないです…」



 絶対、呼び止められた人は「ええっ、俺何かしたっけ!?」となるだろうな。

 ふっふっふ、面白そうだ。


「で、何の用なんですか学園長?」

「うむ、お前たちにミスターコンとミスコンにも参加してもらう」



「…はぁ? 嫌です」

「……お断りします」


 カップルコンだってあんまり出たくないけどエリシアに頼まれて出る――同じクラス目当てだが――のに、ミスターコンなんて冗談じゃない。

 俺はものすごく嫌そうな顔になりつつ断り、エリシアも無表情で拒否する。

 が、学園長は溜息をつきつつ続けた。





「何故か知らんが、この学園の綺麗どころ―――フィリア嬢とかローラ嬢とかエリシア嬢とか全員参加しないから大変なんだぞ。ミスターコンもこのままだと灰色の空気に包まれそうだし。だから強制参加にすることにした」



「エリシアはともかく、俺は別にいらないでしょう」

「アルはカッコイイです!」


 即座にエリシアが真剣に抗議してくるが、頼むから出たくない俺の気持ちも汲んでくれ。

 エリシア的には譲りたくないところなのかもしれないが。



「残念ながら俺はエリシアが俺を客観的に評価できるとは思ってないから。俺もエリシアを客観的には見れないし」


「…うぅ~、私だっていらないです…。スタイル悪いですし、フィリアとローラに勝てる気がしないです……」




「いや、エリシアは可愛さなら一番だぞ」

「…アルだってカッコイイんです。アルの周りにアルよりカッコイイ人はいますか…?」



 言われ、考えてみる。

 えーと、カッコイイやつカッコイイやつ…。



「ケイネス」

「嫌です」



 即答だった。

 カッコイイか否かの問答だったのに「嫌です」と返された。

 せっかくツッコミどころ満載なのに…。

 というか、エリシアに全否定されるのって珍しいかもしれん。



「えーと、リック兄さん」

「アルのほうがカッコイイです」

「お前の兄ならば、既に参加してもらっているぞ」



「…兄さんいるなら十分でしょう。兄さんに勝ってもらいましょう」

「アルネア、一人勝ちというのはあまり盛り上がらないんだぞ」



 なんだよまったく。

 別に俺じゃなくても誰かいるだろう…。



「えーと、ギニアス」

「アルのほうがいいです」

「他国の王子が来れるわけなかろう」



 学園長が真面目な顔でツッコンできた。

 ならケイネスにもツッコンでやれよ。かわいそうだぞ。



「というかエリシア、俺と比較するのを止めろ。エリシアの中に俺よりカッコイイやつが存在しているのか最近不安なんだが」


「だいじょうぶです。アルが一番です!」



 そうじゃなくて、俺よりカッコイイやつがいるのに妙な補正がかかってるんじゃないのかと言いたいんだが…。

 ここで学園長が真面目な顔で言った。



「結局いい案はないようだし参加してもらうぞ。逃走した場合は私の全権力を使ってお前たちがイチャイチャできないようにする」


「…学園長、意味が分からないですよ」

「そ、そんな…!?」



 おー、エリシアが悲しそうだ。ちょっと嬉しい。

 これで喜ばれたら泣きたくなるところだったぞ。

 そして、学園長は肩を竦めつつ答えた。



「こうでも言わないと逃げるだろう。諦めて参加してくれ」

「というか、権力つかってイチャイチャできなくするってどうやるんですか?」



「ふむ。イチャイチャしたら男を罰する校則でも作ればいいだろう」

「…いや、それくらい平気ですが」



「平気じゃない者もいるようだぞ?」

「…はい?」

「アルが罰せられるなんてダメです…!」




 ……というわけで、エリシアが折れたので俺も参加させられる羽目になった。




…………




『さぁーーて、始まりましたミス・ラルハイトコンテストォォォッ!』

「「「イェェ―――イ!」」」



 ラルハイト学園の劇場はとっても広いのだが、今は満員だった。

 ついでに異様な熱気に包まれている。

 未だにコスプレとかしている人もかなり多いしな。



『あとついでにミスターコンとカップルコンもな! 今日の司会は俺。ミスターお祭りこと3-Dのジョージだ! よろしくなぁぁぁッ!』


「いいぞー、ジョージ!」

「今日も頼むぜー!」

「きゃーー! ジョージさ~ん!」



『今日の予定は、まずミスコン! 次ミスター! 最後にカップルだ! そして全て終わった後には体育館でダンスパーティをするぜっ! 彼女いない男ども、今日はチャンスだぜ! 毎年何組もカップルができるパーティだ! 俺には出来ねえけどな!』


「負けんなジョージ! 俺も彼女いねぇぞーー!」

「お前も今年はいけるーーー!」

「ジョージさん! 付き合ってーー!」




『……今叫んでくれた子、後で一緒に踊ろうぜ!』


「ジョージてめぇ!」

「羨ましいぞコラー!」

「仕事しろ、ジョージ!」




『えー、オホンオホン。それじゃあ一応1年の少年少女達のために説明しよう!

 ミスコンは教養、美貌、魔術の3つに分かれており、それぞれ課題に挑戦してもらう。

 そして、最も総合得点が高かったものが優勝だ!』




『えーと、皆さんの手元にあるスイッチを押していただければ自動的に得点が集計される仕組みです。なお、特別解説員として交流戦に出た人に実況席に来てもらってます!』



「「「ひゅーひゅー!」」」




『まずは、交流戦・個人の部で1年生ながら優勝し、チーム戦でも大活躍だったアルネア・フォーラスブルグ君です!』



 …そう、なんで俺はこんなところでマイクを渡されているのだろうか。

 学園長に連れてこられ、エリシアに頼まれては断れない。

 まあ、女装よりはマシかと開き直った俺はテンションを無理に上げて頑張ることにした。



『よっしゃーー! 盛り上がっていきましょう!』


「「「きゃあぁぁぁ!」」」

「「爆発しろー!」」



 …何か嫌われるようなことをしただろうか。

 ちょっと心が傷ついた俺だった。



『そして二人目! アルネア君の兄にして燃える熱血漢! リックことリベルク・フォーラスブルグ!』


『えー、祭りと聞いたので俺も……盛り上がってるぜぇぇぇッ! 弟と妹をよろしくな!』


「妹さんをくれー!」

「いいぞー、リック!」

「なんで兄弟そろってモテるんだよー!」



 かなり歓声がカオスだったが、やっぱり兄さんも皆から愛されて(?)いるようだ。

 



『というわけで、次はミスコンの参加者を紹介するぜ――――ッ』



『まず最初は言わずとしれた、この国のアイドル! フィリア・ラルハイト!』


「「「「うおぉぉぉぉ――――ッ!」」」」

「好きだーー! 付き合ってくれーーー!」

「「きゃー! フィリア様――!」」



 男女を問わぬ大歓声の中、なんとフィリアは綺麗なドレス姿で登場。

 にこやかに微笑んで手を振ると、さらに客席の歓声が大きくなった。



 …あれ、エリシアって何か用意してたっけ?

 若干不安になる俺を構うことなく、紹介は続いていった――――。





次回予告!


アル  「ついに始まったミスコン…まずは教養? 何するんだ?」

ジョージ「第一問! このにんじんの切り方をなんというでしょうか!?」

エリシア「はい! 銀杏切りです!」


ジョージ「正解! エリシア選手5点獲得!」

アル  「…ただのクイズ番組じゃねぇか!?」



アル 「というわけで、クイズに出す問題を募集します!

(現在は締め切らせていただきました。ありがとうございました!)」


エリシア「えっと、次回更新は未定ですが、

     できれば今日の23時を目指したいと思っています」


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