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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第七章:文化祭編
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第四話:俺達は忍ぶことを強いられているんだッ!

『―――こちらホワイト。聞こえますか? おーばー?』

『―――こちらシルバー。それではミッションを開始する!』



『アル、おーばーって言わないんです?』

『…コードネームで呼べよ。あと魔声での会話にオーバーは必要ないだろ』



『あれです、同時に喋ってしまって気まずいのが防止できます!』

『あー、なるほど。それじゃあミッション開始するぞ。オーバー』



『はい、気をつけてください! おーばー』



 俺は学校の天井裏に来ていた。

 この学校の天井裏には無数のセキュリティ魔法がかかっているが、それを掻い潜ってある場所を目指す。


 ちなみに久々なので解説しておくと、俺はエリシアと魔声―――魔力による遠隔通話だと思ってくれればOK―――で会話している。



『アル、現在1-Gの上です。警報魔法に気をつけてください、おーばー』

『了解。警報魔法を解除します、どうぞー』



『…アル、おーばーじゃないんです…?』

『ん、意味同じだろ?』



『そうですけど…。それだとスパイじゃなくて駐車場の前に立ってる人みたいです…』

『…そうだな。でもスパイじゃなくてただの暇人だろ。オーバー』



『でも、向こうからすればスパイです。油断しないでください。おーばー』

『せいぜい気をつけるよ。オーバー』




 という感じで、フィリアとローラのクラスである1-Bの上に到着。

 天井のパネルを魔法をつかってずらすことで中の様子を窺うはずだったのだが―――。


 なんと先客がいた。



「…なにやってるんですか学園長」

「ん、アルネアか。私はしっかり準備しているか偵察している。やはり見られてないと思っているときに見なければ偵察の意味がないからな」



「確かにそうですが、何故天井裏?」

「知らないのか。忍者の基本だぞ」


 何故か自信満々にのたまう学園長だが、あんたは忍者ではないだろう。

 この人はやろうとすること自体は意外とマトモなのに、方法がかなり残念な気がする。

 


「ところでアルネア、お前はどうした。覗きはよくないぞ?」

「……先に思いっきり覗いてた人に言われたくないんですが」



「ふむ、私は女だしな。あと着替えが覗きたいならここはオススメしないぞ」


「…何の店か知りたいけど普通に見に行っても面白くないよなーということでエリシアとスパイごっこのようなものをしているだけですから。あと着替えを覗くならエリシアの着替えを覗きます」



『ア、アル…!?』


 通話状態を維持していたのでエリシアにも聞こえていた。

 …実は分かっていてやってるんだけどな。

 でもとりあえず今は学園長と話してるのでスルー。

 


「ハハハッ、変わったな。お前たちの子どもなら是非教えてみたいぞ」

『あぅ…!?』

「……子どもは気が早いでしょう。というか学園長の授業とかあるんですか?」



「ある。修学旅行は私の管轄だ。楽しみにしてるといい…」

「……いやな予感しかしないんですが」



「うむ、いい勘をしているな」

「否定してくれないんですか!?」



「フフフッ、そろそろ私は行くが、覗く相手は気をつけろよ」

「ですから覗きじゃないですって」



「甘い。ローラ嬢に問答無用でカチコチにされる可能性があるぞ」

「…なるほど」



 確かにローラなら視線に気づいて反射的に攻撃とかしそうで怖い。

 こう、ピキュィィン! って感じの効果音つきで。



「おっと、もうすぐ面談がある。さらばだッ!」



 というわけで学園長は匍匐全身で学園長室のほうへ向かっていった。

 ……学園長って父さんと同い年らしいが、結婚とかしてるのだろうか。



『ア、アル…今まで覗きとか……』

『ないぞ。見たかったら堂々と見る』



『…それって喜んでいいんです…?』

『さあ? エリシアが俺に見られたいかどうかによるんじゃないか?』



 エリシアが黙り込んだので、俺は学園長がずらしたらしいパネルの隙間から下の1-B教室を覗いてみた。そして見えたのは――――。





「…これはない」

「でも似合っていますよ?」



 メイド服を着て不満そうな顔のローラと同じくメイド服だが若干楽しそうなフィリアだった。……あからさまに不満そうなローラなんて珍しい。いつもなら無表情なのに。


「…ヒラヒラしすぎてる」

「でも、重たいドレスよりいいと思うのですけど…」



 どうやら皇女様は重たいドレスがお嫌いな模様です…。

 いっつも着てるから飽きてるのかもしれないな。皇女って大変そうだし。



「確かにドレスよりいいけれど、私は普通の服がいい」

「そうですね…。でもたまにはオシャレもいいんじゃないでしょうか?」



「…メイド服ってオシャレ?」

「た、たぶん…?」



 自信なさげなフィリアの答えでは納得できなかったのか、ローラはしばらく考えてから何気なく言った。


「…アルはどう思う?」

「ええっ!? アルがどう思うかってことですか!?」



「違う。アルに聞いてる」


 何を思ったか大慌てするフィリアだが、ローラは微妙にこっちを見て言った。

 …バレてる?

 フィリアは周囲を見渡して不思議そうな顔になる。


「ローラ、アルは見当たらないですけれど…」

「上にいる」



 や、やっぱりバレてるし…。

 一体どんな感覚してるのだろうか。

俺は仕方ないので飛び降りてローラの横に着地して言った。


 

「たまにはいいんじゃないかと俺は思うぞ」

「…そう。じゃあ諦める」

「ど、どこにいたんですか!?」



 愕然とするフィリアと対照的にローラは冷静に俺が出てきたところのパネルを元に戻して魔法で塞いだ。気づいてたのだから落ち着いてるのは当然かもしれないが。



「というかローラ、学園長がいたのも気づいてたのか?」

「…侵入者かと思ってうっかり攻撃しちゃった。防がれたけど」



「…なるほど、それで警告されたのか」

「…予想外だった」

「えっ、えっ!?」



「まぁ、覗いてたら攻撃されても文句は言えないけどな」

「…そう、だからアルも覗くなら気づかれないようにしたほうがいい」

「つまり、アルが覗きをしていたということなのでしょうか…?」



「違う、偵察だ。スパイだから覗きとは目的が違う」

「…うん、確かにここだと着替えはしない」

「…私にも分かるように説明してくださいませんか…?」




 というわけで、フィリアにスパイアクションの面白さについて熱く語ってから暇だったのでスパイ遊びに興じていたことを説明した。

 で、フィリアは一言。


「普通に遊びに来てくださってもよかったのに…。いつでも大歓迎ですよ?」

「ん、普通じゃなく遊びに来たときも歓迎してくれると嬉しいな」

「アル、それは無茶」



 フィリアは苦笑してから笑顔になり、その場で一回転して聞いてきた。


「アル、どうですか? 似合っていますか?」


 言われて、じっくりフィリアのメイド姿を見てみる。

 ……完璧にメイドさんだった。ただ―――。



「胸がキツそうだな」



 うっかり声に出してしまった。

 フィリアは真っ赤になって両腕で胸を隠す。

 で、ローラが一言。



「…フィリアの胸にサイズの合うメイド服がなかった」

「ア、アルに教えないでください!?」

「大丈夫だフィリア、お腹が出てるわけじゃないんだから全く問題ないと思うぞ」



 俺としては慰めたつもりだったのだが、フィリアはがっくりと項垂れてしまった。


「そういう問題じゃないと思います……」


 俺とローラは顔を見合わせた。

 が、特にフィリアを慰めるいいアイデアは浮かばなかった。



『…アル、とりあえず似合ってるか聞かれた感想を言ってあげてください。おーばー』



 すっかり忘れてたエリシアから通信が入った。

 …そういえば似合ってるかどうか聞かれてたんだった。



「そうだ。とりあえずよく似合ってるぞ、フィリア」

「本当ですか…!?」



「俺は基本的に嘘は言わないぞ」

「…私もフィリアは似合ってると思う」

「ありがとうございます!」



 なにはともあれ、フィリアは笑顔になってくれた。

 …俺の失言が原因だけどな。



…………



「そういえば、アルのクラスはどんな出し物なんですか?」

「…こっちはコスプレ喫茶だ」



「それでは、アルはどんなコスプレをするのですか?」



 無邪気に聞いてくるフィリアに俺は困った。

 できれば女装させられることは言いたくない…。

 バレずに乗り切れる可能性もあるわけだし。



「…秘密ということで」

「ふふっ、それじゃあ当日までのお楽しみですね!」

「フィリア、一緒にアルを見に行こう」



 俺が女装させられることを知っているローラが、かなり楽しそうな笑みを浮かべつつフィリアを誘った。



「はい、一緒にいきましょう!」

「私も楽しみ」

「……ははは、俺も忙しくて出られないかもしれないけどその時はごめんな」



 俺は一応予防線を張ったのだが、残念ながらフィリアはとても楽しみにしているようで、効果があったかどうかはかなり怪しい。





♪~チャラッラ~ララ~


??「話をしよう。あれは今から…3日前。いや、一昨日だったか。まぁいい。私にとってはつい昨日の出来事だが…。君たちにとっては多分、明日の出来事だ」


エリシア「はい。次回は明日の正午に更新です!」

??「…エリシア、後でたっぷり可愛がってやるからちょっと静かにしてくれ。それかサービスボイスを入れてくれてもいいぞ」


エリシア「え、えっと…サービス、サービスぅ~♪」

??「…神は言っている…。次回、『そんな料理で大丈夫か?』」


エリシア「コッペパンを要求します!」

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