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銀雷の魔術師  作者: 天城 誠
第七章:文化祭編
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第一話:このクラスは男子が二人多い…ッ!



「ちゃんと全員無事に学校に帰ってきたようでなによりだ! 学校生活で何か問題が起こったら私か相談室に相談にくるように! それでは各クラスでHRだ!」



 という感じで相変わらず短い学園長の話が終わり、夏休みを終えた俺たちは学校に戻ってきていた。

 寮生活なので次に家に帰れるのは冬休みだ(帰ろうと思えば日曜日に帰れるのだが)。それまでエリシアとイチャイチャするのもおあずけと。残念だ。





 いや、実は女子寮も出入り自由だったりするので会えるのだが。

 なんでだよって感じだが、これには色々理由がある。



 特に大きい理由は優秀な魔術師同士の子どもは優秀な魔術師になる傾向があるから、そーゆう感じになっていいというかむしろなってくれって感じか。

 最重要戦力だからな、魔術師は。優秀な魔術師が多ければ強国と。

 こっちだと貴族の子どもなら15歳で結婚とか普通だしな。



 その代わり女子の部屋には学校側が用意する強力なセキュリティ魔法があるので、許可されてない人は入れない上に各自カスタマイズ可能。

 ちなみにエリシアの部屋に入ろうとするとドラゴンに襲われるらしい。




 以前俺も試しにドラゴンに襲われてみようとしたら普通に部屋に入れて着替え中のエリシアと遭遇したのはいい思い出。


「アルが来るなら緊急の要件だと思ったんです…」

とはエリシアの談。俺とリリーとローラとフィリアは出入り自由だったらしい。

 リック兄さんは……お察しください。




 その時は結局平謝りして、次の日曜日に皇都を二人で散策する約束をして許してもらったが。今思うとデートだったな…。全く気づかなかったけど。


 というか、今でもエリシアの部屋に侵入できるのだろうか?

 いや、入りたかったらアポとるけど。





 そんなことを考えながら歩いていると教室に着いた。

 結局一学期は席替えがなかったので一番前の窓際の席に座る。エリシアも俺の後ろに座り、何か話したそうだったが担任のアリス先生が教室に入ってきたので諦めた模様。



「みなさん、お久しぶりですっ! 元気でしたか~~?」


「「「はーい…」」」


 この先生は返事しないと終わらせてくれないので皆仕方なく返事をする。

 先生は若干不満そうだったが続けてくれた。




「こほん、それじゃあ話し合いです!」



 何の? という感じの空気に教室が包まれるが、アリス先生はニコニコしながらもったいぶってから口を開いた。





「―――みなさんお待ちかね、文化祭ですよっ!」





……………



「メイド喫茶にしようぜ!」

「いや、メイドカフェだろ!」

「仕方ねぇな、メイドレストランで妥協してやるよ(キリッ」



 おかしいな、俺の目から水が…。



「ふざけすぎ、劇とか普通のにしてよ!」

「じゃあR15な劇とか、どうだ?」

「いいわけないでしょ!?」


「じゃあコスプレ喫茶」

「源じー物語とかは?」

「なにそれ…?」



 クラスでの話し合いは白熱していた。

 それだけなら素晴らしいことなのだが、変な方向に白熱しているのだ。




現在出ている案は~。


・コスプレ喫茶

・メイド&執事喫茶

・劇

・アクターズレストラン(客が注文したシチュエーションをやってくれるらしい)

・何か適当に展示でも




「なんか偏ってるよなぁ…」

 他になんかないんだっけかと俺が嘆息すると、エリシアが俺の背中をつっついてきた。



「アル…、アルは何がいいんです…?」


 これはアレか。俺がメイド服を着たエリシアが見たい! と言ったらメイド喫茶に手を上げてくれるのか。

 …劇は色々準備が大変そうだし、メイド服は家にある。ということはコスプレ喫茶か。



「よし、コスプレしたエリシアが見たい」

「……コ、コスプレです?」


 

 エリシアは自分がコスプレした姿を想像しようとしているのか、すごく複雑そうな顔になった。一体どんなコスプレを想像しているのやら。



「よっしゃーー、多数決とるぞ!」



 俺の隣の席のお祭り男・カイルが前に出て仕切り始めた。

 そして、仁義なき多数決が始まるのだった。




…………




「――――というわけで、コスプレ喫茶に決定! よっしゃ、このまま誰が何のコスプレするかも決めちまおうぜ! 5分後から名前順だ!」


「「「よっしゃーー!!」」」




 と、右後ろの席の男クラスメイトから何やら手紙が回ってきた。

 とりあえず覗き見する気はないらしいエリシアが後ろの女子と話し出し、誰からも覗かれてないのを確認してから手紙を開いてみる。



<男で一致団結して女子に面白い服を着せようぜ! byカイル>



 俺は無言で<エリシアに変態な服をきせようとしたら抹殺するのでよろしく>と書き足してから、俺が端の席なので逆回転で手紙を回す。

 手紙が戻ってきたクラスメイトは不思議そうに手紙を開き、そしてまた手紙を回す。


 


……そんなこんなで5分経過。




「んじゃ、まず苗字がAだから…サリア・アーカナイトからだな。意見ある人~?」

「メイド服!」

「小悪魔!」

「スクール水着!」



 ……次々ととんでもない意見が出てきた。

 メイドはともかく、小悪魔とか水着ってなんだよ。

 当然ながら、女子からは大ブーイングである。



「ふざけんなー!」

「サリアちゃんが可哀想でしょ!」

「下劣ですわ!」


 

 が、カイルは平然とした顔で受け流す。


「これから多数決で一番似合いそうなのを決めるんだぜ。これはあくまで意見だよ」

 


 いいつつカイルは邪悪な笑みを浮かべる。

 ちなみにこのクラスは男子16人、女子14人だ。

 この差が命運を分けるというかなんというか。


 女子が一致団結しても男子も団結している限り勝ち目はないという悲しい現実。

 ……誰か寝返れば形勢逆転だけどな。

 

 というか誰かまともな意見に賛同する奴がいてもいいと思うのだが、このクラスの男子は欲望に正直だったようだ。ご愁傷様です。

 ちなみに俺は面白いコスプレと面白くないコスプレなら面白いコスプレを選ぶ。

 こういうのは決まってしまえば当日とかは意外と普通に着れるものだと思うんだよ。




 ちなみにエリシアの顔色を窺うと、自分が変な服を着せられるのを想像したのか硬直してしまっていた。

 が、硬直している間にも一人目の犠牲者が確定する。



「はい、小悪魔に決定!」


「男子ふざけるなー!」

「多数決なんだから別にいいだろ!」



 ……どうやら文化祭は相当に荒れそうだった。

 が、ここで教室のドアが勢いよく開いた。




「―――――話は聞かせてもらったぞ! トウッ!」

「が、学園長!?」



 突然教室に駆け込んできた学園長にカイルが驚きの声をあげるが、学園長は無視して何故か教壇の上に飛び乗り、高らかに宣言した。



「人数差を利用した多数決は駄目だ! 不平等だからな!」



 この宣言に女子たちから「おぉ~~!」と歓声が起こるが、学園長はニヤリと笑った。



「―――だが! 普通のコスプレでは面白くないのも事実だ! よって、男子は女子のコスプレ、女子は男子のコスプレを決めること! ただし、公序良俗に反した場合は私が阻止しに再び現れるからそのつもりでな! では、さらばだっ! セイッ!」



 

 台風のように現れた学園長は台風のように去っていった…。

 どうやら、文化祭はさらに荒れそうだった。


 


………




 というわけで、男子は教室の前、女子は後ろに集合。

 こっちはカイルが中心になって再び話し合いが始まる。

 で、カイルが口を開く。



「少々作戦が狂ったが、俺たちが着せられる服なんてせいぜい執事とかその程度だろ。だが、女子にはバニーガールとか巫女とかメイドとか水着とか色々あるッ!」


「「「おおーーー!!!」」」



 俺としては、この世界にもバニーガールがあるのを初めて知った。

 というか、男にももっと変な衣装がありそうで怖いな…。俺には思いつかないが。

 で、カイルはノリノリで続ける。



「そんじゃ、エリシアちゃんにはスク水とか――――ガハッ!?」

「カ、カイル!?」

「大丈夫か!?」



 突然カイルが白目を剥いて倒れた。

 周囲の視線が俺に向けられるが、俺はにっこり微笑んで返してやる。



「サリアさんが小悪魔ならエリシアは天使にでもしておけば色々面白いんじゃないか?」

「そ、そうだな!」

「よ、よし決定!」



 というわけで俺の妨害工作(?)によりエリシアは天使コスプレになった。

 お察しの通りカイルは俺が気絶させた。


 周囲から「マジで殺りやがった…」とか「容赦ないな…」とか聞こえるが無視。

 ちなみに天使なことに意味は無い。その前の犠牲者が小悪魔にさせられてたからだ。


 別にメイドとか巫女とかなら構わないんだぞ?

 ただスク水って…色々アウトだろ。前世の常識的には。




 ついでに補足しておくと、この世界における天使は服を着ているのが一般的だ。

 天使は精霊の一種だとかいう話もある。


 んで、シルフとか見ても分かるように精霊は服っぽいものを着ているように見える。

 伝承とかを見ても天使はきっと服を着ているんだろうなーというのが現在最有力な説なのである。


 天使が服を着ているかについて真面目に学者たちが議論したこともあったそうな。

 ご苦労様です。



 

 なにはともあれ、その後は概ね平和に決まっていった。

 ちなみにカイルは俺が治療したので元気に犠牲者を増やした。


 そして運命の発表会である。




 男子女子、それぞれ決定したものを纏めた紙を黒板に磁石でペタっと。

 みんなで群がって悲鳴をあげる。



「忍者…だと…?」

「バニーガールって何ですの!?」

「海パンってアリかよ!?」

「私だって水着よ!?」


「豚の着ぐるみって…」

「この私がメイドなど…」

「ゾンビ!?」

「ゴ、ゴスロリ!?」




 黒板の前はまさしく死屍累々。

 一体どんな店になるんだろうかと若干不安になりつつ、俺も自分の名前を探す。

 えーと……。



「――――んな!?」


 

 …なんだかとんでもないものが書いてあった。

 あまりのショックに自分の机に戻って突っ伏すと、再びアリス先生が教卓の前に立って話し出す。





「はい、次はミスコンです!」





 なんでも、ミスコン、ミスターコン、カップルコンをやるらしい。

 ミスコンは女子の人気投票、ミスターコンは男子。

 そして何故かカップルコンテスト。そんなにカップル奨励したいのか。



 それぞれ優勝すると豪華景品・特典があるらしい。

 プリントが配布されたので軽く読んでみよう。




――――――――――――――――――――――――――――


☆ミスコン、ミスターコン、カップルコンについて☆



参加は本学の生徒なら自由で、優秀な成績を収めると景品や特典がある!

今回の景品・特典はこれだっ!



ミス   優勝:学園長秘蔵の美容魔法具

   入賞以上:一年間食堂無料


ミスター 優勝:学園長秘蔵の武器 (長剣)

   入賞以上:一年間食堂無料


カップル 優勝:秘密

   入賞以上:参加したカップルを来年度同じクラスに。

   *今年卒業して騎士団に入る場合は同じ部隊に配属するように根回しする。



――――――――――――――――――――――――――――





「同じクラスねぇ……」

「……アル、参加したいです!」



 珍しくエリシアが積極的だった。机からこっちに身を乗り出して目がキラキラしている。

 以前なら参加したそうな目で見てくるだけだったから、これは大きな進歩だな。


 だが―――…。



「……また今度考えるよ」

「…えっ!?」



 エリシアが悲しそうな顔になるが、正直今は何も考えたくない…。

 結局、俺は午前中ずっと憂鬱な気分で過ごした。







次回予告!


アル「男たちの欲望が絡み合う場、文化祭…! 果てしなく続く因果の死闘の果てに、一体俺たちは何を見るのだろうか…!?」


エリシア「次回! 『似合ってる』は褒め言葉とは限らない。です!」


アル「戦火の学園に、立て! ガン○ム!」

エリシア「次回の更新は今日の午後6時です!」

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