二:風精霊の悩み
キャラ別視点シリーズ第二弾です。
なんだか面倒になってきたので、もう7章をはじめようかなーと思ってきました。
「むぐぐぅ……」
風の四大精霊のシルフィードことシルフは、鏡に映る自分の姿と睨めっこしていた。
そう、色々あって数百年ぶり(?)に肉体があるのだ。しかしそれが問題だった。
緑がかった黒髪や顔はほぼ100%再現されている。
だが、だが…。
「どうして、どうして……ぺったんこなんですか!?」
割り当ててもらった部屋の鏡に向かって思わず聞いてしまうが当然返事はない。
そう、肉体の形成に必要な魔力・マナが不足していたために幼い感じになってしまったのである。外見年齢およそ13歳。どことは言わないがぺったんこだった。
(エリーより小さいというかフェミルさんといい勝負になりそうですね…)
せっかく妙なテンションのお姉さんキャラ(自分的には)だったのに、これじゃあお転婆な少女がせいぜいではないか。
……本当にどうしたものか。
そうだ、試しにお転婆少女で生活してみよう。
…………
お転婆生活一日目
「キーーーン!」
シルフは帽子をかぶって家の中を走り回ってみた。
両手を広げて飛行機のポーズ。
「―――アホかっ!?」
「んぎゅ!?」
突如として足を引っ掛けられ、シルフは見事に転んで絨毯にヘッドスライディングしてしまった。が、速攻で立ち上がって一言。
「こんちゃ!」
「馬鹿かお前は!?」
「むぐっ!?」
容赦なく鳩尾にパンチをもらい、お腹を押さえてうずくまる羽目になった。
が、気合で捨てゼリフを吐く。
「…さらにデキるようになったな…ガンダ――――むぐぐぐ!?」
「とりあえずそのよく分からないネタは禁止な」
「うぅ~、ひどいですよご主人様…。こんないたいけな少女に…」
「何歳だお前は」
「見ての通り、少女です♪」
「嘘つけ。少なくとも俺より年上だろうが」
「レディに歳を聞くもんじゃないぜ…」
「とりあえずそのよく分からないキャラを止めろ」
「えー、ダンディじゃないですか?」
「それはない」
「だ、断言しなくても…」
ガックリと項垂れてからチラッとご主人様の顔色をうかがうが、まだ全く容赦ない目で見ていた。どうやらそこまで落ち込んでないのは看破されているらしい。若干落ち込んでるのは本当だが。
ご主人様は深い溜息をついてから口を開いた。
「で、どうしたんだよ。まさか理由もなくやってたわけじゃないんだろ?」
「……ぺったんこです」
「…は?」
「こんなぺったんこだとお姉さんキャラは無理だと思いませんか…」
「…それだけか?」
「そ、それだけだなんて!? 気になるんですよ、小さくなったんですよ!?」
「いや、ダイエットすると最初にそこの脂肪がなくなるらしいぞ?」
「むぐぐ、私だって大きいのがいいとか贅沢はいいません。でもせめて人並みくらい…」
「大丈夫、ぺったんこでも需要はあるぞー…」
「そんな棒読みしないでください!?」
「はぁ…。シルフ、試しに普通に過ごしてみろよ。人は見た目じゃなくて中身だ」
「…そうでしょうか……?」
というわけで、普通に過ごしてみることになった。
……………
朝目が覚めて、私は窓を開けて新鮮な風を胸いっぱいに吸い込んで一言。
「今日もいい御天気ね~」
「誰だぁぁ――――っ!?」
「あ、おはようございますご主人様♪」
下でご主人様が剣の修行をしていたらしい。
誰だとは心外だ。日頃ふざけているからアレかもしれないが、私の成長は死んでしまった17歳で止まってしまっている。
ついでにファンタジーな世界で生まれ育つと比較的ぽわ~っとした性格になるのだ。
ちなみに精霊は時空間を超越した存在なので別世界のことも知っている。
とりあえずタオルを持ってご主人様のところに行ってみた。
「はい、タオルをどうぞ」
「……ああ、ありがとな」
ご主人様の顔がものすごく疑心暗鬼だ。
私をなんだと思っているのだろう。
「ヘンテコ精霊?」
「酷過ぎですよ!? というか顔に出てましたか!?」
「いや、なんとなくな。というかなんで普段はあんな感じなんだよ」
「色々あったんですよ…。精霊になって別世界にいけるようになって、秋葉原に行って二次元に夢中に…」
「…別世界に行けるのか!?」
「今は無理ですよ、肉体がありますから。アウロラさんなら可能だと思いますけど…」
「ということは灯とか父さんとか母さんのことも…」
「…時間の流れが違いますから、多分無理だと思いますけど……」
「そっかぁ…」
「…というか秋葉原のくだりは無視ですか!?」
「え、意外と予想通りじゃないか?」
「なんでですか、冗談ですよ!」
「嘘だー」
「嘘じゃない―――じゃなくて嘘だったんです!」
「はははっ、悪い悪い。とりあえずヘンなネタを封印したほうが色々いいと思うぞー」
「……!?」
ご主人様はそう言ってニヤリと笑うと軽くジャンプして2階の自分の部屋の窓に入った。
……そんなにヘンなネタはまずかっただろうか。
そういうわけで、私は夏休み中色々と挑戦してみることになった。