第一話:白き雷魔法
拙い作品ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
―1―
ある日、学校の帰り道にそれは起こった。
歩道に、俺のいる場所に突っ込んでくるトラック。
直撃コース。
避けられたハズだ、反射神経には自信があった。
でも、俺の隣に少女がいた。
勝手に体が動いていた。
――目が覚めた。
体がほとんど動かない。
病院かと思ったが、なにか違う。
そう、これは――
俺は死んだらしい。
俺の体は赤ん坊になっていた。
―2―
『――ごめんね』
いつか誰かが、俺に言った言葉。
死んだショックからか、記憶が少し曖昧になっていた。
こっちの世界で聞いたかもしれないし、前の世界かもしれない。
死んだハズの俺は、何故か多少の記憶を持って転生していた。
天城 誠司が俺の名前だった。
今の俺は、アルネア・フォーラスブルグ・・・
なんと、貴族である。外見も前世とは違う。
金髪で緑の眼である。
家族からはアルって呼ばれる。
仲の良い父と母、1つ上の兄のリック、そして俺と双子の妹のリリー。
リックもリリーも愛称で、本名はリベルクとリリネアである。
ちなみにリリーと俺は似てない。
双子なのに。
むしろ兄と妹のほうが似てると思う。
まあ、多分俺は祖父母にでも似たんだろう。
会ったことないけど。
何はともあれ、今、俺は5歳になった。
せっかく転生したんだから、なにかしないと損である。
まあ、生まれた頃から俺は天才ぶりを発揮していたのだが――
(何を隠そう、この世界の法則は一部除いて前世とほぼ同じ!しかも、なんと言語が日本語という、ステキ仕様だったのだ!)
そう、せっかくだから最強を目指したりとか楽しそう。
―3―
――この世界には秘儀がある――
そう、さっき言った一部の例外――魔法である。
魔法がある世界で最強を目指すなら、是非覚えたい。
「ちちうえー、まほうってなんですか!?」
俺は父さんに可愛くねだってみた。
子どもは大人より力が弱い。
これは仕方の無い事だ。
だが、幼い子どもには、可愛さという最強の武器がある――!
「よし、わかった、この父上に任せなさい!」
速攻で了承する父さん。
うん、楽勝だった。
まあ、いいよね?
「いいかい、アル。魔法を使うには魔力が必要なんだ。」
と、父さんが説明を始める。
まあ、よくあるね。
ちなみに俺の愛称がアルなだけで、べつにエセ中国人お父様では無いので悪しからず。
「ただし、魔力がなくても、魔法が使える魔法剣もあるんだ。
逆に魔力が無いと使えない魔法剣もあるんだけどね」
父さん、魔法剣くわしいな。
魔法剣・・・やばい、すごい欲しいよ。
きっと聖剣とか魔剣とかあるに違いない!
「ちちうえ、まほうけんって、めずらしいものなのですか?」
気になった俺は聞いてみた。
「そうだね・・・今はこの国に大体300本くらいかなぁ・・・
もっとあるかもしれないけれど」
―4―
――この国というのは、ラルハイト皇国のことである。
ラルハイト皇国は最上位に皇がいて、その下に十二貴族と呼ばれる準王族。
その下に普通の貴族。その下に下級貴族。その下に平民となっている。
魔法剣というのはただの剣にあらず。
前世ではありえない効果を魔法で実現する。
有名どころで、超軽量化、超重量化や、刀身が伸びたり、光ったりするらしい。
さらに魔法剣の上に、精霊剣と呼ばれるものまであるらしい。
なんでも、剣に精霊が宿っていて、意思の疎通まで可能だとか。
この国の皇と十二貴族は、結構精霊剣を持っているのだとか。
言い忘れていたが、この父上、親バカだが、十二貴族の一人である。
まあ、十二貴族の中でも発言力はないほうらしいのだが。
精霊剣は長男のリック兄さんが受け継ぐ。
でも別に悔しくない。だって、リック兄さんはすごい良い人なのだ。
我が家のしきたりとして、5歳になったら外出がある程度自由というものがある。
んで、リック兄さんは出かけるたびに、俺とリリーにお土産を持って帰ってきてくれたり、
暇な俺に本を貸してくれたり、暇な俺の話し相手になってくれたり、
俺の苦手なトマト――のような物体――を代わりに食べてくれたり、
偉ぶらないし、他の人にも優しいしetc・・・
そんなわけで他に精霊剣入手法について父さんに聞いてみたが、
「精霊剣には強力な精霊が必要だからそんなに本数はないんだよなぁ・・・
お、そうだ。魔法剣の基本能力として、魔力をチャージしておいて、いざという時に使える
っていうのがあるんだ。そして、魔力を一定量以上溜めた魔法剣に、
精霊が宿って精霊剣になることがあるらしい。見たことないけどね」
別にいいけど、5歳に話すには難しい話な気がする・・・
でもとりあえず、魔力がいかに大事かわかった。
「ちちうえ、ありがとうございました!」
俺はとりあえず父さんにお礼を言う。
魔法剣はある程度の良い剣に魔力を込めればできるらしい。
よって一番の課題は、俺の魔力量である。
んで、この国の貴族は一様に高い魔力を保有し、さらに十二貴族はトップクラスである。
って本で読んだ俺の行動は既に決まっている――!
「ちちうえ、まほうをおしえてください!」
そして、俺は魔法を教えてくれるように、父さんに頼んだ。
そう、俺も十二貴族の次男なのだから、魔力もすごいに違いないのだ!
「う~ん、アルにはちょっと早い気がするんだけど・・・
まあ、母さんに相談してみるよ」
難しい顔の父さん。
「ちちうえ、まほうがつかいたいです・・・」
俺はさらに畳み掛けるが――。
父さんはとても困っている。ものすごく珍しい。(いつもすぐOKする)というか初めて見た。
もしかすると、早期に魔力を使うと悪影響――とかの話があるのかと思ったので一旦撤退。
―5―
俺は書斎に侵入して初心者向けの魔法に関する本を探す――
――『上級魔法大全』、違う、さすがに無理だろ。
――『火魔法応用!おいしいパンの焼き方』、魔法のイメージが庶民的に・・・。
――『モテる!魅力魔法』、・・・これ、まさか父さんは使ってないだろうな・・・
――『ダイエットの魔術!一日30分で劇的変身!』、魔法なのか!?なんか違うだろ!
――『魔法を使う生物とその歴史』
なんか気になって手に取った。
『魔法を扱う生物、その代表格は人間、エルフ、ドワーフ、竜人、獣人等の人型種族、
そして言わずと知れた精霊、そしてドラゴンである。』
そう、この世界にはエルフやドワーフ、果てはドラゴンまでいたのだ。
さて、今回は前世の記憶が災いしたらしい。
いままで読んだ本、歴史について書いてあった本とかに、ドラゴンやエルフがたびたび
登場していたのだが、子ども向けなんだろうと思って気にしなかった。
その割りに内容が難しいなーと思っていたのだが、どうやら子ども向けじゃなく、立派な歴史書だったらしい。
つい先入観がね~・・・
『ここで大切なのが、人間は大陸の大部分に国を作り、領土を広げているが、
人間は魔術的には強い種族ではない。身体能力も同様である。
ただ数が多く、また、ほかの種族が領土を広げることに拘らない為である。
これはアイリア暦300年のラーベルグ防衛戦以外、他種族との大規模戦闘がないことから言える』
ラーベルグ防衛戦・・・
これは御伽噺の本――だと思っていた歴史書で読んだ。
ラーベルグはこの大陸――アイリア大陸の北東に位置する国である。
ちなみに俺のいるラルハイト皇国は大陸北にあり、ラーベルグから西にある――
のだが、その間にはティルグリム山脈という超がつく難所があり、死の森とかもあるので、
ダイレクトにくるのは不可能と言っていい。
そのラーベルグに突如、<グリディア>という黒いドラゴンが襲来し、ものすごい被害が出たらしい。
なぜ突然襲撃されたかは謎だが、
英雄ラーベルグと、その仲間たちが<ティルヴィンケ>を筆頭とした精霊剣10本で撃退したらしい。
なんでも、ドラゴンの炎で草原は一瞬で灰になり、城壁は蒸発したとか、
<ティルヴィンケ>が氷の壁を出して、その極悪な炎を防いだとか、なかなかに信じがたい。
まあ、黒竜にはほとんどダメージを与えられず、黒竜が飽きたために撃退できたんだとか。
しかも、ラーベルグは死んでしまったらしいが、それでもドラゴンの撃退はすさまじい事らしい。
そのあと、本来の目的を思い出した俺は、『初めての魔法』なる本を発見した。
―6―
「う~ん、ない。まったく問題ない・・・」
俺は悩んでいた。
『初めての魔法』を読んだのだが、小さい子どもが魔法を習っても全く問題なさそう。
というか5歳くらいから教えることもけっこうあるとか。
なんで困ってるかというと、問題無いなら、あの親馬鹿父上が教えてくれないのは、
なぜかってことである。
でもまあ、手はあるんだが。
「にいさーん!」
俺はリック兄さんの部屋へ行った。
「ん?なんだ、アル。どうかしたのか?」
本を読んでいた手を止めて、こちらを見る兄さん。
「にいさん、まほうっておそわった?」
俺は、一応確認を取る。答えは知ってるが。
「ああ、すこしだけな」
兄さんの答えは予想通り!
「にいさん、ぼくにもまほうをおしえて!」
兄さん!俺の純真な目を喰らえ!(俺主観)
「なんだよ、しょうがないなぁ・・・父さんが教えてくれなかったのか?
ま、それなら仕方ない、父さんには内緒だぜ?」
やっぱり兄さんは頼りになるぜ!
そんな訳で、俺と兄さんは庭に来ていた。
二人で周囲を確認。
庭は広く、剣術等の練習用の、木に囲まれた広場があるのでそこを使う。
「よし、オッケー。それじゃあ、魔法の使い方・初心者コースな」
兄さんの授業開始!
「よろしくおねがいします!」
挨拶は大事なので、俺は元気よく挨拶。
「まず、手のひらを前に出す。そして、手に魔力を集中する。
そして、どんなことを起こしたいのか明確にイメージして力を解放する。それだけ」
「にいさん・・・」
すごい曖昧だった!
というか呪文は!?いらないのか?
「あ、そうそう、よりイメージしやすくする為に呪文がある。
単に補助するだけだから、本当は要らないハズなんだけど、みんな使うな。あ、俺も使うぜ?」
俺が読んだ本だと、普通は呪文がないと無理って書いてあったよ、兄さん。
「へー、そうなんだ・・・」
一応、驚いておく。
「そうなのさ、んで、我が家流のファイヤーボールの呪文が・・・
『炎の弾丸よ!<ファイヤーボール!>』って感じだ」
兄さんの手から真紅の弾丸が4つ出てきて的用に置いてあった岩に激突。
岩が焦げた。なかなかの迫力。強火並みである。
「さすが兄さん!」
とりあえず兄さんは褒めるに限る。
「ふふー。おっと、そうだ。人によって得意な魔法属性があるらしい。
ちなみに俺は<炎>な」
もちろん、こんなの見たらやるっきゃない。
「よーし・・・『炎の弾丸よ!<ファイヤーボール!>』」
俺は、何か不思議な、水のような何がが手に集まるのを感じた。
そして、一瞬それが熱くなったような気がして、俺の手から火の弾丸が飛び出した。
それは、2つしかなく、兄さんのより速度も遅く、小さかったけど確かに火だった。
でも、不思議なことに、その火は白い色をしていた―――。
なんというか、白い炎ってすごい変な感じだね・・・
あと、兄さんより明らかに火が弱いのがなんか悔しい。
「やるじゃないか、アル」
兄さんはそう言うが・・・
「むぅ・・・兄さんのほうが、火が強いし数が多いし、速いし大きいじゃんか」
当然不満な俺である。
「いや、アルは得意属性が違うかもしれないぞ?
それに白い炎ってカッコイイじゃん?」
うん、たしかにこの珍しそうな色は若干嬉しい。
でも、ポケ○ンとかだと、色違いでも能力に差はないのだ・・・
で、得意属性は読んで字の如く。得意属性なら強力になるらしい。
と、そこに思わぬ来客。
「はぁ、やはりアルがリックに魔法を習っていたか」
お父様登場である。
「あ、父さん。まずかった?」
しまったな~という感じの兄さん
「とうさんー、まほうつかえたよー!」
純真無垢に(俺としては)ごまかす俺。
あと、父上ってなんか堅苦しいから、兄さんに倣って父さんにしてみる。
「おおっ、流石アルだ、そしてリックも、もう教えられるようになったのか、すごいな!」
なんか父さんが若干ホッとしている気がする。
どうやら心配されていたようだ。
「まあ、アルはほとんど教える手間がかかりませんからね。」
6歳なのに謙遜を忘れない兄さんは大人だと俺は思った。
―7―
そんなわけで、俺の得意属性探しが始まった。
「水の弾丸!<ウォーターボール!>」
「切り裂く疾風の刃!<ウインドカッター!>」
「大地の弾丸よ!<ロックブラスト!>」
どれも代わり映えしない気がする・・・
兄さんみたいな迫力が無いのだ。
得意属性が無いのかなぁ、と思ったのだが、父さん曰く
「魔力がある以上、それは無い」
とのことで、3人で唸っていたのだが――
「どうしたの、3人揃って」
母さん登場。
「おお、クリス。実はアルの得意属性を探しているんだが、四大属性ではなさそうなんだ」
クリスって母さんの名前ね。ああ、そうそう。
俺の家族はみんな金髪で緑の眼をしている。
あ、父さんの名前はアルベルクね。
「そうですか、では、他のも試してみましょうか」
母さん曰く、四大属性以外の使い手はほとんどいないが、一応あるとのこと。
でも、問題がある。
「クリス、呪文はどうする?」
難しそうな顔の父さん。
曰く、四大属性は相性に関わらず一応使える(威力等はおちる)が、
それ以外は相性が悪いと発動すらしないそうで、呪文が広まらないとのこと。
四大以外の属性の有名どころは、<光>、<闇>、<氷>、<雷>、<治癒>とのこと。
十二貴族でも稀にしか四大以外――特殊属性持ちは現れないらしい。
あと、今5歳の皇女様が<光>属性なんだとか。
とりあえず、呪文を考えてみることに。
(確か、明確なイメージを持てればいい。だったかな)
「アル、どうする?父さんも考えるのを手伝おうか?」
確かに手伝ってもらったほうが効率はいい。
でも、その前に――。
「とうさん、いっかいだけ、ひとりでやってみていい?」
「ふっ、アルも男の子だなぁ・・・頑張れ~応援してるぞ」
なんだか面白そうな父さん。
「アル、兄ちゃんも応援してるからな!」
相変わらずの兄さん。
「うふふっ。アル、頑張ってね」
楽しそうな母さん。
――よし、やるぞー!
一番の問題はどの属性を試すのか。
でも、なんとなく決まってる気がした。
「――空を切り裂く天の雷よ――我が手に集え!<サンダーボルト!>」
目の前が一瞬、真っ白になった。
すさまじい轟音が響き渡り、的だった岩は跡形もなかった。
―8―
<サンダーボルト>には致命的な欠陥があった。
というか、<雷>属性が俺にとって問題だった。
修正しようにも練習すら問題だった。
別に威力うんぬんではない。消費魔力が多すぎるのも・・・
まあ、いい。<ファイアボール>が軽く見積もって10発は撃てると思う。
音が大きいのは原因の一つだが。
―― 一番の問題は・・・
「おにいちゃん、こわい・・・ぴかってひかって、すごいおおきなおとがしたの・・・かみなり?」
妹のリリーが怖がるのだ
・・・色々意見はあると思うけど、妹は(まだ)純真無垢に育ってるんだ!
もし妹が<サンダーボルト>のせいで荒んだらすごい嫌だ。
というか、最悪、リリーに嫌われるかもしれん・・・
そう、<サンダーボルト>は手から雷を出す技であり、子どもは雷を怖がることも多い。
で、この世界に防音なんて技術はない。
そして、雷の音は相当遠くまで聞こえるのである・・・
これは困った。
が、問題はあっさり解決した。
というのも、母さんが、
「ちゃんと音を小さくってイメージすれば大丈夫なのよ?」
っておしえてくれたのだ。
実は、母さんは昔、城の騎士団の魔術隊に所属していて、『水幻の歌姫』とか呼ばれていたらしい。
父さんに出会ったのも騎士団だったとか。ちなみに父さんは『紅蓮の悪魔』だったとか。
父さんはカッコイイから、悪魔には見えないって言ったら、父さんが母さんに笑われていた。
一体何をしてたんだ、父さん・・・
兎に角、さっそく実践。
呪文なら色々思いつくし!
――あ、厨二病じゃないんだからな!そういう世界なんだ!
げふん、げふん。えーと、音は小さく。電気・・・<ファイアボール>みたいなのでいいか。
なら<サンターボール>だな。
――魔力を右手に集める。右手が薄く白い輝きを持ち――
「雷の弾丸よ!<サンダーボール!>」
――バシュッ
――バチバチ
(おおっ、音小さい!なんかバチバチしてるけどこれなら大丈夫だ!)
「おにいちゃん、なにしてるの?」
リリーに見つかった。
――俺は、とっさの言い訳は思いつかなかった。
「え、えっと、まじゅつのれんしゅう?」
どうすんのよ、俺!?
――次回予告――
「そんなっ、おにいちゃんのどこにそんなちからが!?」
「負けないぞリリー!あと5分・・・あと5分だけでもッ!」
次回、銀雷の魔術師第二話:戦いの刻