【漫才】キョンシー女子大生の木枯らし対策
ボケ担当…台湾人女性のキョンシー。日本の大学に留学生としてやってきた。本名は王美竜。
ツッコミ担当…日本人の女子大生。本名は蒲生希望。キョンシーとはゼミ友。
ボケ「どうも!人間の女子大生とキョンシーのコンビでやらせて頂いてます!」
ツッコミ「私が人間で、この娘がキョンシー。だけど至って人畜無害なキョンシーですから、どうか怖がらないであげて下さいね。」
ボケ「どうも!留学生として台湾から来日致しました。日本と台湾、人間とキョンシー。そんな垣根は飛び越えていきたいと思います。こんな風にピョンピョンとね。」
ツッコミ「いやいや、両手突き出して飛び跳ねなくて良いから!」
ボケ「それはそうとさ、蒲生さん。急な話で悪いんだけど、ここ最近になって一気に涼しくなったと思わない?」
ツッコミ「これまた急に話題が変わったね。確かに残暑もすっかり鳴りを潜めたから、私なんかこうして衣替えしたんだよ。どう、この秋冬物。足元だって寒くないよう編み上げ式のブーツだし。」
ボケ「奇遇だね、蒲生さん。私もついこないだ、秋冬物に衣替えしたんだよ。」
ツッコミ「衣替えって…貴女は年がら年中そのキョンシースタイルじゃないの!」
ボケ「やだなあ、蒲生さんったら…これでも私達なりに季節感はあるんだよ。だって夏場は通気性の高い薄手の生地だし、裏地もメッシュ素材なんだから。」
ツッコミ「それ、言われなきゃ九分九厘で分からないわよ…まあ涼しくなったのは良いけど、そうなると今度は木枯らしが吹いてくるから厄介なんだよね。」
ボケ「そうだよね…日本だとユーラシア大陸の寒風が木枯らしになっちゃうもんね。」
ツッコミ「そういえば貴女は台湾から留学してきたんだっけ。そりゃ木枯らしにあまり馴染みがないのも無理はないわ。」
ボケ「急に強い風が吹いてくる訳だから、お年寄りみたいに足腰に自信のない人はシッカリ杖をついた方が良さそうだね。自動車もスリップしないようにタイヤをチェックしないと。」
ツッコミ「足腰なら貴女もそうでしょ?手足の関節がピーンッと硬直しちゃっていたら、急な突風に対応出来るの?」
ボケ「私達キョンシーの人間離れしたフィジカルを甘く見ないで欲しいね。倒れても起き上がり小法師みたいに体勢を直せるのが、私達の強みなんだから。」
ツッコミ「人間離れどころか、人間やめちゃってるよ!」
ボケ「それに急な風が来るから、庭とかベランダとか屋外にある物には気をつけないとね。」
ツッコミ「急に真面目にならないで、驚くから!でも確かにその通りだね。鉢植えとか洗濯物のシャツとか、吹き飛ばされやすい物はシッカリ固定するか屋内に片付けなくちゃ。他所の通行人や自動車に当たったり、信号機や踏切みたいな公共物に悪さをしないとも限らないよ。」
ボケ「そうなんだよ!私もつい最近、それでえらい目に遭っちゃってさ…」
ツッコミ「それはまた災難だったね。差し支え無ければ詳しく教えてよ。」
ボケ「あれは先の祝日の15時頃、近所の公園で開催されていた『市民健康週間・太極拳の集い』を終えた直後だったかな。」
ツッコミ「これはまた、随分とローカルなイベントに参加していたのね。」
ボケ「大勢で太極拳をやるのは楽しいからね。すると私の携帯電話に着信が来たんだ。」
ツッコミ「貴女の事だから、相変わらずその暖帽の中にスマホ入れてるんでしょ?ハンドバッグ代わりに。」
ボケ「ここだと邪魔にならないんだよ。それで何の着信かと思えば、スポットバイトの確認連絡だったの。」
ツッコミ「そりゃ重要な連絡じゃない。差し支え無ければ、どんな現場のバイトか教えてくれない?」
ボケ「まあ、そんな変わったバイトじゃないけどね。よくある結婚式場の補充要員だよ。」
ツッコミ「死者であるキョンシーが結婚式って慶事を手伝うのを『よくある』とは言わないよ!確かに貴女の服装は神父様とか聖歌隊に色合いは似てるけど…」
ボケ「私も流石にそんな重要な役割はやらないって。私がやったのはあくまで参列者のゲスト代行だよ。」
ツッコミ「物凄く重要じゃないの!それって親戚や友達が少なかったり参列者数を新郎新婦でバランス取る時とかに呼ばれる、数合わせのサクラみたいな人でしょ?」
ボケ「うん、私がやったのは新婦側の学生時代の友達って役どころだったね。」
ツッコミ「流石に無理があるんじゃないの?だって貴女、生まれも育ちも台湾でしょ?しかも貴女、現役の大学生じゃない。」
ボケ「そこは大丈夫、新婦の人は帰国子女でインターナショナルスクールにも通っていたから。国籍も文化も異なる者同士で手を取り合い、色鮮やかな虹色の学生生活を送りましょう。そんな素敵な校是が定められていたみたいだよ。」
ツッコミ「ええ、そうなの?まあ国籍は良いにしても、キョンシーになっちゃっている事はどう説明したのよ?」
ボケ「そこはまあ、多様性への配慮って事で。だって新婦の人は帰国子女なんだよ。色んな文化園の人達と接してきたんだから、キョンシーなんて誤差の範囲内だよ。」
ツッコミ「帰国子女の懐の深さって凄いわね…」
ボケ「それに新郎も鎌倉出身で関西には土地勘のない人だから、新婦側に知らない人が混ざっていても全く気づかれなかったよ。」
ツッコミ「でも話を合わせるのは大変だったでしょ?」
ボケ「まあ、あんまり詳しく突っ込まれたら困るからね。待合室とかテーブル席とかではビールやウイスキーをグイグイ飲んで、笑い上戸な新郎側の親戚のおじさんと居酒屋談義に没頭して誤魔化したけど。」
ツッコミ「それにしても、貴女が木枯らしで遭った『えらい目』って何よ?さっきから結婚式場での話しかしてないけど…」
ボケ「おっと、いけない!話が随分と脱線しちゃったから巻き戻さないとね。それじゃ変な折り目がつかないよう慎重に…」
ツッコミ「コラコラ、額の御札を巻こうとするのは止めなさい!」
ボケ「良し、巻き戻し完了っと…どうも!留学生として台湾から来日致しました。日本と台湾、人間とキョンシー。そんな垣根は飛び越えていきたいと思います。こんな風にね。」
ツッコミ「いやいや、両手突き出して飛び跳ねなくて良いから!って、最初の掴みの所まで巻き戻してどうすんのよ!」
ボケ「それで、バイト先の人から当日の詳細を電話で聞いていた時にね…」
ツッコミ「だからって何事もなかったかのように再開しないで!それで、電話で聞いていた時に何があったの?」
ボケ「間髪入れずに強烈な木枯らしが吹いちゃってね。慌てて額の御札が剥がれないよう、空いている手で押さえたんだ。」
ツッコミ「キョンシーだとそういう事にも気配りしないといけないんだね。」
ボケ「ところが急な木枯らしで迷惑を被ったのは私だけじゃなかったの。きっと図工の宿題をしていたんだろうね、風景画を描いていた小学生達の画材が吹っ飛ばされちゃったんだ!それも私の方には絵筆とか色鉛筆とかが雨あられと。」
ツッコミ「うわっ!小学生の子達、可哀想!」
ボケ「私の方も心配して!」
ツッコミ「だって貴女達キョンシーって、大抵の事じゃビクともしなさそうじゃない。」
ボケ「大抵の事ならね。だけどあの時は例外。その子が使っていた色鉛筆は木の質感が剥き出しだったんだ。まるで木の枝みたいな感じだったの。」
ツッコミ「ああ、生成りって奴ね。でも、それが何で例外なの?」
ボケ「利き手でスマホを使い、もう片方の手で額の御札を押さえていた。そうして視界も狭められて注意力散漫になった私の目には、飛んできた生成りの色鉛筆が咄嗟に桃の木の枝に見えちゃったんだ。」
ツッコミ「そっか、貴女達キョンシーは桃の木の剣だと物理ダメージが入っちゃうからね。」
ボケ「だから思わず叫んじゃったよ、『危ない、死ぬ!』ってね。」
ツッコミ「もう死んでるって!」
ボケ「死んでても痛いのは嫌なの!だから木枯らしにも負けない冷気の風を口から思いっ切り吹き出して、絵筆も色鉛筆も別方向に吹き飛ばしてやったんだ。」
ツッコミ「前々から思っていたけど、本当に便利な身体してるわね…」
ボケ「だけど、そのせいで口の中の水分が持っていかれちゃってね。島之内の姐さんから貰った喉飴と自販機のお茶がなかったら、危うくミイラか即身仏になる所だったよ。」
ツッコミ「即身仏だと仏教だから宗派が違うじゃないの。キョンシーって道教の管轄でしょ?その額の御札だって道教の呪文が書いてあるんじゃないの?」
ボケ「そう!この額の御札は道教の有り難い呪文の書かれた、とっても大切な物なんだ。木枯らしに剥がされて失くしたら色々と困っちゃう。だから私なりに対策をしているんだ。」
ツッコミ「木枯らし対策にも色々とある物ね…じゃあ、貴女が試みている木枯らし対策は何なの?」
ボケ「しっかりと貼り付けても剥がれる時は剥がれるし、木枯らしに吹き飛ばされた御札を追っていたら事故の原因ともなりかねないでしょ?」
ツッコミ「そりゃまあ、そうかも知れないけど…」
ボケ「それなら出先で剥がれて失くしても大丈夫なように、事前に予備をストックして持ち歩けば良いだけだよ。」
ツッコミ「ストック?そんな伝線した時の為の予備のストッキングとか、花粉シーズン時にポケットへ忍ばせた二袋目のポケットティッシュみたいに言って良いの?」
ボケ「チッチッチ…甘いね、蒲生さんも。昔から『転ばぬ先の杖』って言うじゃない?」
ツッコミ「言うかも知れないけど!じゃあ聞くけど、貴女達キョンシーは木枯らしの吹き始める時期になると、道教の偉い道士が書いた御札を何枚も持ち歩くって言うの?」
ボケ「それは市販品だね。高名な道士の直筆だと高くつくよ。だけど今こうして私が付けている御札みたいに、各自でハンドメイドする場合もあるよ。」
ツッコミ「ハンドメイドって何よ、手芸じゃないんだから!そもそも問題ないの?キョンシーが自分の額に貼る御札を手作りなんかしても…」
ボケ「あれ?キョンシーが自分の額に貼る御札を禁じた法律なんてあったっけ?」
ツッコミ「ある訳ないでしょ、そんな法律!憲法にも刑法にも民法にも!何なら何処の自治体の条例にもないわよ!」
ボケ「そう!法律で禁止されてない限り、私達には公序良俗の許す限り自由が認められている。これこそ民主国家の主権者である国民の権利だね!」
ツッコミ「キョンシーの額の御札で民主主義と国民の権利の話になるとは思わなかったわ…」
ボケ「という訳で表現の自由を行使する形で私が毛筆で書き上げた御札なんだけど、蒲生さんとしてはどう思うかな?」
ツッコミ「そんなジックリ鑑賞した事ないから適切な評価が出来るか分からないけど…うん、上手く書けているんじゃないの?」
ボケ「それは良かった!今度の全日本キョンシー総会の寄り合いで優秀作品を貼り出すんだけど、これで応募しようかな〜?」
ツッコミ「習字大会じゃないんだから!じゃあさ、寄り合いの会場の後ろの壁にズラッと貼り出している訳?」
ボケ「うん。それで友達や身内のキョンシーに『これがそうか…』って見て貰うの。元町の御隠居様や島之内の姐さんに褒めて貰うのが楽しみだよ。何しろ御隠居様には定期的に書き方の指導をして貰っているからね。」
ツッコミ「完全に授業参観日の親御さんじゃないの!私も小学校の時にはお母さんから『貴女が水彩画で描いた自画像は表情が固いわね。』って言われたけど…」
ボケ「応募作品として提出出来るのは一枚限りだけど、良い感じに書けたのは寄り合いの時に交換し合うんだ。隅っこに落款と署名も入れてあるから、初対面同士だと『どうも、こういう者です。』って渡すと自己紹介に便利なんだ。」
ツッコミ「それじゃサラリーマンの名刺交換じゃないの!」
ボケ「そうして集まった御札はバインダーに収納してキチンと整理しているんだ。集まれば集まる程に交友関係が広くなった実感が得られて嬉しくなるよ。」
ツッコミ「アドレスカードや写真シールじゃないんだから!私も小中学生の時に集めたけど…」
ボケ「それで交換して貰った御札や偉い道士の直筆の御札は、勿体なくて貼れないからね。結局また自分でチマチマと書く羽目になっちゃって…」
ツッコミ「あっ、これってもうキリがないヤツだ!」
二人「どうも、ありがとう御座いました〜!」
武 頼庵様御主催の「木枯らしの風景企画」の企画キーワードの使用状況は下記のとおりです。
【結婚式場】…スポットバイトの派遣先として登場。
【ビール(他のお酒でも可)】…待合室や結婚式場で飲んだ酒として登場。
【自動車(種類は何でも)】…タイヤのスリップ防止で言及。
【杖】…老人の転倒対策として言及。
【鉢植え(鉢だけでも可)】…吹き飛ばされやすい物として登場。
【ブーツ(靴でも可)】…防寒対策用の編み上げブーツとして登場。
【鎌】…新郎の出身地である鎌倉として登場。
【虹】…インターナショナルスクールの「色鮮やかな虹色の学生生活」という校是として言及。
【15時】…「市民健康週間・太極拳の集い」終了時。
【電話(スマホ・ケータイも可)】…スポットバイトの連絡時に登場。
【信号機】…公共物として言及。
【シャツ(種類は何でも可)】…吹き飛ばされやすい物として言及。
【色鉛筆】…風景画の写生をしていた小学生の画材として登場。




