表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無作法な異世界にSWAT流の鉄槌を ―弾丸一発一千円、女神と契約した俺たちの戦術防衛記―』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/16

EP 6

「鉄と火薬のハイブリッド――予算削減のための技術革新」

 カンッ、カンッ、カンッ!

 ポポロ村の一角にある鍛冶場から、リズミカルな金属音が響いている。

 炉の熱気が充満する作業場で、俺は腰のホルスターから愛用のサバイバルナイフを抜き放ち、作業台の上に置いた。

「……ガンツ。頼みがある」

「あぁ? なんだい、この奇妙な形の短剣は」

 すすだらけの顔をしたドワーフの鍛冶師、ガンツが太い眉をひそめた。

 俺が差し出したのは、前世から愛用している『ストライダー・ナイフ』。極厚のブレードを持つ、頑丈一点張りの無骨な刃物だ。

「俺たちの『筒(銃)』は強力だが、コストがかかりすぎる。雑魚相手に毎回撃っていては、来月の飯が食えなくなる」

「世知辛い話だねぇ、神の使い様よ」

「そこでだ。このナイフを、着脱式の『槍』に改造してほしい」

 俺はナイフの柄を指さした。

 銃剣バヨネットのように、必要に応じて長い柄の先に取り付けられれば、弾を使わずにリーチのある近接戦闘が可能になる。

「……ふん、なるほどな」

 ガンツは無愛想にナイフを手に取り、ルーペを目に当てて刃先を覗き込んだ。

 次の瞬間、ドワーフの目が驚愕に見開かれた。

「な、なんだコリャアアアッ!?」

 ガンツが大声を上げ、ナイフを舐めるように凝視し始めた。

「ミスリルじゃねぇ……オリハルコンでもねぇ! なんだこの均一な組織は!? 不純物が一切ねぇぞ! それにこの硬度……こいつぁ『神鉄ヒヒイロカネ』の類か!?」

「ただの特殊ステンレス鋼だ。錆びにくく、硬いだけが取り柄だがな」

「錆びねぇ鉄だと!? そんなふざけた金属があってたまるか!」

 興奮して鼻息を荒くするガンツ。

 この世界の鍛冶技術は高いが、現代科学が生み出した合金の品質は、彼らにとってはオーパーツ(ロストテクノロジー)に等しいらしい。

「気に入った! こんなすげぇ刃物をいじれるたぁ、鍛冶師冥利に尽きるわい!

 シャフトには、鉄より硬くて軽い『アイアンウッド』を使ってやる。接続部はガタつき一つねぇ最高精度で仕上げてやるからな!」

「頼む。……それと、もう一つ注文がある」

 俺はニコラスに目配せをした。

 ニコラスが「へいへい」と言いながら、紙に書いた簡単な設計図を差し出す。

「……なんだいこりゃ。靴か?」

「あぁ。『安全靴セーフティ・シューズ』だ」

 俺は答えた。

 村長のキャルルは、戦闘時に裸足にサンダル履きのような軽装で戦っている。獣人の身体能力が高いとはいえ、あれでは足先に物が落ちてきただけで怪我をする。

 労働災害ロウサイを防ぐのも、管理者の義務だ。

「村長の足を守るための靴だ。つま先に鉄板スチール・トゥを仕込んで、衝撃から指先を保護してやってくれ」

「村長の……足を……守る……」

 ガンツが設計図を見つめ、低い声で呟く。

 その目つきが、先ほどのナイフを見た時以上に鋭く、真剣なものに変わっていく。

「……そうか。あの嬢ちゃんは、いっつも無茶な蹴り技ばかり使いやがるからな。いつか足を砕くんじゃねぇかとヒヤヒヤしてたとこだ」

「だろう? だから頑丈なヤツを頼む」

「分かった。……任せときな。わしの秘蔵の素材を使う時が来たようだ」

 ガンツは作業場の奥にある、重厚な鎖で封印された木箱を開けた。

 中から取り出したのは、紫色の雷光を帯びてバチバチと音を立てる、拳大の奇妙な石だった。

「おい、なんだそれは。放射能でも出てるんじゃないだろうな」

「馬鹿言え。こいつぁ『雷竜石サンダー・ドラゴン・ストーン』だ。昔、俺のじい様がドレイクの巣から命懸けで拾ってきた代物でな」

 ガンツはニヤリと笑い、その危険そうな石を愛おしそうに撫でた。

「衝撃を与えると、強力な雷と反発力を生む。こいつを靴底とつま先に埋め込めば、嬢ちゃんの足は『最強の盾』になる……!」

(……いや、俺は単に、タンスの角に小指をぶつけても痛くない靴を頼んだだけなんだが)

 若干の認識のズレを感じたが、ガンツの職人魂に火がついている今、口を挟むのは野暮だろう。

 それに、キャルルの安全が確保されるなら文句はない。

「……コストは大丈夫なのか? 俺たちは金がないぞ」

「かまわねぇ! 嬢ちゃんのためだ、素材費はサービスしてやらぁ! その代わり、そのナイフの削りカスが出たら、全部俺にくれ!」

「商談成立だ」

 こうして、俺たちの「弾薬節約作戦」は動き出した。

 最強の槍と、最強の安全靴。

 

 だがこの時の俺はまだ知らなかった。

 ガンツの作った「安全靴」が、労働災害を防ぐどころか、災害級の破壊力を生み出す兵器になることを。

「へっ、槍働きかよ。SWATの面目丸潰れだな」

 隣でニコラスがぼやく。

「諦めろ。一突き0円だ。……浮いた金で、来月はコーヒー豆が買えるぞ」

「マジっすか! よっしゃ、穂先磨いときます!」

 鉄と火薬、そして魔法素材。

 無作法な異世界の技術が混ざり合い、PMCシャークの装備は着実に強化されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ