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新たな扉が開いた日

3月に入った最初の土曜日。


カフェ・エスポワールに咲耶、佐織、勇太が集まっていた。


窓の外に見える街路樹には新芽がつき、新緑の季節を待っている。

吹く風は思ったよりも強く、時々吹き付ける風に歩道には身をすくめながら歩く人たちが見えた。


「皆、揃ってどうしたの?」

隼人が驚いたように3人を見ていた。


「うん。まぁ、俺たちを気にしないでそのまま仕事してて。」

勇太が隼人に声をかける。


「勇太君、何か頼まないと……。」

佐織が心配して勇太に声をかける。


「そうだな……。じゃあ、俺は今日はアイスコーヒーで。」


佐織と咲耶は、ホットのブレンドコーヒーを頼んだ。


隼人がカウンターで珈琲を淹れ始めた。

豊かな香りが店内に流れる。


隼人に近づいた勇太が、スマホで隼人の姿を何枚か写真に撮った後、動画も撮り始める。


黙って珈琲を淹れていた隼人だが、しばらくすると勇太に近づいてきて、文句を言った。


「さっきから勇太は、何やってるんだよ。」


「あっ、ごめんな。説明もなく……。

いやぁ、お前はやっぱイケメンだわ。

良い写真が撮れたよ。」

勇太は、自分が撮った隼人の写真をほれぼれとして眺めている。


勇太の代わりに咲耶が隼人にこの一件について説明しようと話を切り出した。


「隼人、このカフェのInstagram作らない?」


「Instagram?」


「うん。

お店の宣伝にもなるし……バレンタインにチョコをくれた女子高生に連絡がつくかもよ。」


「えっ、何でチョコのこと、咲耶が知ってるの?」


「あっ、ごめんな。俺が喋った。」 

勇太がペロッと舌を出す。


「昔っから口が軽いんだな、勇太は。」

隼人が勇太を軽く睨んだ。


「でも……私、咲耶からお店のInstagramを作ればいいんじゃないかって言われた時に良いアイディアだと思ったんだよね。」

佐織が笑顔で隼人を見た。


「俺……Instagramなんてやったことないからなぁ。

でも、最近ではそうやってお店の宣伝をするのは、当たり前か。」

隼人も納得し始めた。


「そうそう、その通りだよ。

多分、結衣ちゃんもこのカフェのインスタに気がついてフォローしてくるよ。

そうしたらさ、隼人も結衣ちゃんにメッセージが送れるしさ。」


「メッセージ?」


「うん。インスタグラムには、メッセージ機能もあるんだよ。」


「へぇ……。」

隼人が感心したような顔で勇太を見た。


「お前、結衣ちゃんにホワイトデーにお返しをしたいんだろ?」


「まぁ……そう。」


「じゃあ、何かお返しを用意したら、彼女に店に来てもらわなきゃ。」


「なるほど。」 


「隼人、きっとその……結衣ちゃん?

隼人からメッセージもらったらカフェに来るから。

そうしたら、お返しを渡せるよ。」

咲耶が隼人を励ますように言った。


「そう……だな。

でも、何でこのカフェのInstagramに俺の写真載せるの?

店の内装とか、珈琲やケーキの写真だけで良いんじゃ……」


「まぁ、見ててよ。

お前の写真載せた方が反響があるからさ。

ちょっと隼人のスマホ貸して。」


「えぇ、反響があるって?

本当かな?何か恥ずかしいよ、俺。」

そう言いながら、隼人は勇太にスマホを渡した。


「アカウント名は@cafe_espoir_officialと……」


それから、数分後にはカフェ・エスポワールのInstagramが出来た。


「やったぁ、出来たぞっ!」


「どれどれ……。」

勇太の声に皆がスマホを覗いた。


「あっ、本当だ。

なかなか良い感じ。勇太君、センス良いね。」

咲耶が勇太をベタ褒めする。


「そうだろう?まっ、俺にかかればこんなもんよ。」

勇太が満更でもないという顔をしている。


「私、早速フォローしようっと。」

佐織も嬉しそうに自分のスマホをバッグから取り出した。


「今、少なくとも私たち、三人がフォローしたから。」

咲耶が隼人に言う。


「ありがとう。」

隼人はあっという間に出来たInstagramにまだ実感が湧かないようだった。


「それにしても、このカフェの店長、イケメンだなぁ。」

勇太がまたイケメンを連呼している。


「やめろよ、勇太。他のお客さんに聞こえるだろ?」

隼人は恥ずかしそうに周りを見回している。


「ねぇっ、何か凄い速さでフォロワーが増えてない?」


佐織の声にスマホを見た咲耶も

「えっ、本当だっ!」と驚きの声をあげた。


隼人の写真の投稿には、コメントもつき始めた。


『店長、イケメンすぎる!』

『俳優ですか?』

『このカフェ、行ってみたい。』


「やっぱりなぁ。そうなると思った。」

勇太がニヤニヤしている。


「わぁ~っ、ケーキも美味しそうだって。

由紀叔母様、喜びそう。」

咲耶も嬉しそうだ。


「何だか……俺は不安しかないよ。」

隼人の表情は複雑そうだった。


「このカフェは、皆の居場所としてあるんだから、その辺りのことも隼人自身がちゃんと書いたら良いよ。

そうしたら、このカフェを本当に必要としている人たちが来てくれるようになるかも。」


咲耶の言葉に隼人も頷いた。

「そうだな。俺も自分の言葉で書いてみるよ。

咲耶、手伝ってくれる?」


「勿論!」


その後、咲耶はスマホを手に取り、インスタを見ながら、投稿の仕方を隼人に丁寧に教え始めた。


その二人を見ながら、佐織は

「あの二人……本当に仲が良いよね。」と勇太に話しかけた。


「うん。だから、二人は誰も必要としないんだよな。」


「そうなのよ。勇太君もそう思ってたんだね。」


「うん。

結衣ちゃんは、隼人の心を掴めるのかなぁ。」


「さぁねぇ。どうだろう?」


勇太と佐織の存在を忘れたかのように咲耶と隼人は頭をくっつけそうになりながら、スマホを見て時々笑い声を立てていた。



その頃……

森咲結衣は、自分の部屋のベッドに寝転んでインスタを眺めていた。


「ん?新しい投稿がある……。」

おすすめに上がってきた投稿を見て、ガバッと起き上がった。


「カフェ・エスポワール?これって……隼人さん?」


「え~っ!やだっ、これじゃ隼人さんが皆にみつかっちゃうよ。」


急いでカフェ・エスポワールをフォローした結衣だった。


「この動画……最高。」

何度も何度も隼人が珈琲を淹れている動画を観る結衣。


咲耶の狙いはうまく当たったようである。


ただ、あまりにフォロワーが増えたため、結衣がフォローしたことを隼人が知るには少し時間を要することになったーー。












































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