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8発目 会議

 カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!


木剣での稽古の音が昼下がりの中庭に響く。カンカンカン太郎こと僕は、朝から続けていた訓練に音を上げ、芝生に倒れこんだ。

「おいおい、この程度の稽古で息を切らしているようでは、この先が思いやられるな★」

僕の稽古相手を務めてくれるナルシスト・高島平耀司は、僕の才能のなさを嘆く。僕は息を切らしているが、耀司はというと、バラを咥えながら木剣を振り回していたというのに、まったく普段通りの様子だった。


「まあ、昼休みもとらずにずっとだったのもあるか。遅くなったが、今から休憩にしよう★」


───


 中庭を後にし、食堂へ向かう僕ら。その間にすれ違う城の者たちは、昨日の話をしている者もいた。

「聞いたかよ。この前逃げ出した異世界人、捕まる前に抵抗したから国家反逆罪で終身刑になったんだってよ。」

「気の毒だな。急に異世界に連れてこられたら、誰だって混乱するのに、情状酌量がないなんて。」

「何言ってるんだよ、厚遇されまくりの異世界人のくせして逃げ出して、あまつさえ四天王と戦ったんだぜ?俺達みたいな一般人がそうするのとはわけが違うって。」

彼らの中には、秋葉に同情するものもいれば、当然の結末と考えるものもいた。


 「秋葉ってどんなやつだったの?」

耀司も詳しくは知らないとは思うが、気の毒な同胞のことが気になる僕は聞いてみる。

「強力な剣に選ばれた異世界人でな、太郎左衛門様も戦力としてたいそう期待していたと聞くが、剣の持つ力を過信して独立などと考えてしまったのだろう。彼のことを良く知らぬ、私の推論も多分に含まれているがね★」

耀司も僕と同じく、詳しいことは知らなかったようだが、秋葉が授かった剣や国王補佐大臣の期待はうかがい知れた。


 また、耀司の口ぶりから、異世界人が手にする剣にランクがあることを知る。僕が渡された『真実の剣』は強力な代物なのだろうか?集会の時のハプニングは剣の効果ではない、と太郎左衛門から言われているし、素振りの時も何かが起こる気配すら感じられなかった。



───



 食堂に到着し、席に着く。15時ということもあってか、人は僕らだけだ。耀司は自分で料理するつもりだったそうだが、当番らしい葵が善意で料理を運んできてくれる。


 食卓に置かれたのは、僕らの世界でいうところのタコスだった。タコスといっても、本場メキシコのような、揚げ焼きにした肉と細かく砕いた野菜のソースを用いるものではなく、ひき肉とチーズを挟んだいわゆるアメリカ流、テクスメクスのタコスに近かった。

 「なんで今日はコース料理じゃないの?」

僕は異世界生活5日目にして、少し調子に乗っているのか、これまでよりしょぼい昼食に不満を漏らす。

「3時まで来ないからですよ。作ってあげただけでも感謝してほしいぐらいです。これで掃除がやり直しなんですからね。」

ごめんなさい、てっきりいつでも料理を作れるように待機しているのかと思ってたけど、掃除当番だったんですね。

葵の気遣いに感謝しつつ、僕はありがた~いタコスをいただく。



 ───ひと口食べればここは西海岸!燦燦と照り付ける日差しにド派手なペイントを施された旧車が映える、ヤシの木の下で吸うWeed、国境沿いの高い壁、少額であれば許される万引き、そして何より無修正のポルノビデオ!

 嗚呼我が故郷、合衆国。ショウヘイ・オオタニは元気にしているだろうか?どうか満票で殿堂入りしていることを願いたい。



 僕がタコスの味に感銘を受けている間、MY BROTHERの方はというと、タコスに文句をつけることはなく、手を汚しながら普通に食べ進めている。僕の視線に気づいたのか、耀司が聞いてくる。

「ん?私の顔に何かついているのかな?★」

「いや、そうじゃなくて、耀司は宮廷料理を食べてるときより、ジャンキーなのを食べてる時の方がおいしそうにしてるというか。」

フッ、と笑ってからキザ男は僕の疑問に答える。

「それは私が平民だからに過ぎないからさ。どうもああいった堅苦しいマナーが強いられる雰囲気での食事は苦手でね★」

こんな感じだが、彼は平民らしい。カッコつけすぎな感じの振る舞いや、大げさな身振り手振り、俳優のような語り口、それらは平民である彼が王宮で生きるために身に着けたある種の技術なのだろう。

ここで一つ疑問がわいてくる。

「じゃあこの前の平民がとか、童貞がとか、っていうのは?」

「ああ、あれは私なりのジョークのつもりだったのだが、童貞には伝わらなかったか★」

童貞イジリの方はジョークじゃないらしい・・・。



───



 食事を終え食堂を後にし、稽古に戻ろうとすると、くっころこと剣王鶴ヶ島春香に呼び止められる。

「おい、もう会議は始まっているとうのに・・・。お前たちは悠長に何をしているのだ。良いご身分だな。」

どうやら会議があるらしい。僕はそんなこと聞いていないが。耀司はどうなのだろうか?

「おっと、私としたことが。失念していたよ★でも最後のセリフは聞き捨てならないな★平民への当てつけかな?」

「遅刻どころか会議自体を忘れた身分の者が、何か言ったか?」

「いいえなにも。」

忘れていただけらしい。

 四天王の中で一番弱いだけのことはある。春香にすごまれた耀司は言い返すことをやめた。



───



 会議室に着くと、当然と言えば当然だが議長に注意された。

「高島平さんに佐藤さん、遅刻とは感心しませんな。以後、注意するように。しかし、人間だれしもうっかりはありますので、みなさんも彼らを必要以上に責めないように、的な。」

どの口が言っているのだろう。最後の注意喚起は自分も遅刻するからだろうけど。

「すみませんでした。」

と、言っても僕らは謝ることしかできない。

「よろしい。座りなさい。」

昨日あれだけ遅刻しておいてよくこんなことが出来るな、と僕が冷めた視線で穂乃果を見ると、彼女は一瞬だけ舌をだして、冗談っぽく許してほしそうな視線を送り返してきた。許します。


 大遅刻をかました人物とは思えないほど、てへぺろ議長はしっかりと会議をとりまとめている。普段はちゃらんぽらんなギャルでも、根は名家のお嬢様ということだろう。

「さて、次は最後の議題です。こちらの件に関しましては、私からではなく、剣王鶴ヶ島さんからの説明となります。では、よろしくお願いいたします、的な。」

そういって穂乃果は黒板前のポジションを春香に譲り、普段のギャルモードに戻る。

「真面目モードはもう当分無理ぽ。ガレージに置きっぱの機械を急に動かすのはやめといた方が良い的な。」

議長職に疲れたのか、ぺたりと机に突っ伏して寝てしまった。


 「おい寝るな。まあいい、穂乃果には先ほど伝えてあるからな。」

コホン、と咳払いをしてから、春香が最後の議題について話し出す。

「全員に緊急任務を言い渡す!秋葉琢郎が持っていた剣が行方不明だ!至急、探し出せ!あの剣は異世界人向けの剣の中でも特に強力だ!単独行動は避け、何者かの手にわたっている場合は慎重にことをすすめてくれ。」

「はっ!」

春香の命令に、兵たちは勢いよく返事。

訓練の成果か、各自が部隊を組み、城内や町へ駆けていく。


 秋葉琢郎の持っていた剣が見つからない。昨日のことを思い出してみる。僕が秋葉の喉元に剣をかざしたあと、どうしたっけ?思い出せない。

「どどどどどどどどどどどどどどどどどどうしよう!?」

大きな音を立てて席を立ち、急いで外へ向かう。

「おい、どうしたんだ!佐藤大輝、単独行動はよせと言ったばかりだろう!」

僕は動転していて、この時は春香の呼びかけに気づくことができなかった。



 焦った僕は全速力で城下町を走り回り、昨日のスラムへと向かった───。

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