31発目 消えた記憶と覚醒(?)した剣
メイドの葵が食堂の扉を開ける。奥には只者ではない雰囲気の女が座っており、僕の一日の始まりを予感させる───。
只者ではない雰囲気の女──────春香はすでに食事をしており、僕に気づくと安心したような表情を見せてくれた。
「大輝、目を覚ましてくれたようで安心したよ。」
そんな言葉をかけてくるぐらいの様子だったと思われるのに、当の本人である僕には、一切の記憶がない。
「心配かけたみたいでごめん。7日前のことは覚えてないけど、体調は大丈夫だよ。」
心配をかけてしまったみたいなので、僕は記憶以外は平気であることを伝える。
「そうか。調子が良いのなら問題はない。しかし、覚えていないというのはどういうことだ?」
春香が疑問に思うのも当然だ。彼女の疑問にこたえるべく、僕は例の日の記憶が朝からごっそりなくなっていることを彼女に伝える。
「そうだったのか・・・。墓地の記憶だけでなくその日の朝から記憶がなく、今日まで7日も経っているという感覚もないのだな・・・。だが、目覚めてくれただけで、今は良しとしよう。」
彼女からしても、僕の記憶の抜け落ち方は不自然なようだ。
どうしたものか、という表情になる春香。僕もどうすべきかわからないため、手詰まりのような感じだ。しかし、不意に背後から真に迫ることを言う声がした。
「それって、『真実の剣』の覚醒的な?」
振り返ると、そこには寝起きと思しい眉毛のないギャル──────穂乃果が立っていた。
「ふああ~。まぢ寝起き~。まあでもさすがに覚醒とかはないかぁ~。ダイ吉ってばほとんど剣触ってないもんねぇ~。」
真に迫るようなことを言ってはいたが、それは思い違いっぽいと思ったのか、あくびをしながら椅子に腰かける。
「覚醒・・・。いや、ありえるかもしれないな。まだ適合しきっていないが故の記憶の欠落。そんなことは考えにくいが、なにせ『真実の剣』だ。それくらいのことは考えられる──────。」
根拠に欠けるとは思いつつも、もしかしたらそうなのかもしれない、と春香も思うようだ。
──────
というわけで、食事を終えた僕は春香に呼び出され、剣を持って中庭へとやってきていた。
「う~ん。あーしが余計なこと言っちゃったかな?」
「いいえ。そんなことないと思いますよ。手がかりがないわけですから、試す価値はあると思います。」
互いに剣を構える。
「いくぞッ!」
「来い」
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
穂乃果と葵が見つめる中、僕は春香に斬りかかる。本気で来い、と言われてはいるものの、そううまく本気では斬りかかれない。
「どうしたんだ大輝?そんな躊躇したような太刀筋では、本来出る効果も出ないぞ。覚醒しているか、試しようがない。」
──────
「まぁ、敵意がない相手に本気で斬りかかるのは難しい的な?」
その後も僕は春香に何度も向かっていったが、結局は躊躇するばかりで終ぞ本気で斬りかかることはできなかった。
「気にするな。誰だって真剣を用いて敵ではない人間に攻撃することは難しい。そもそもダメ元で行っているわけだしな。」
春香が僕を慰めてくれる。誰だってそうだ、と言ってもらっても、やはり僕としては泡を吹いていたという状況などから、出来ればあの日のことを思い出したかった。それに、春香達だって、翔太の行方や戻ってこない耀司の手がかりになれば、と思ってのことだろう。
そう考えると自分に腹が立つ。そして、剣を鞘に納めようとしたとき、バチっと電流が走ったような気がして、一瞬意識が飛びそうになる。
「どうかされましたか?大輝さま。」
僕の様子を見て、葵が気に掛ける。
「自分に腹が立って、一瞬感情が昂ぶったんだ。そうしたら電流が走ったような気がして、一瞬何かが見えたような気がして、それで・・・。」
僕は起こったことを説明しようとするが、電流が走ったのは一瞬だったのもあって、うまく言葉にできない。
「もしかすると、これはもしかするかもしれませんね。」
「ほう、覚醒していたということか?」
「根拠なしでも仮説は言ってみるモノ的な?」
3人の見解は一致していて、『真実の剣』は覚醒しているのではないか、ということだった──────。




