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3発目 真実

 葵に連れられ中庭に到着する。ずらっと並んだ兵。彼らの視線の先には、耀司ともう一人。見たところ老齢であるように思えるが、衰えを感じさせない強者の佇まいを放つ男。


 彼がどんな人か気になった僕は、葵に聞いてみる。

「耀司の隣にいるのは誰?どんな人なの?」

「あのお方は、国王の次の地位にあたる国王補佐大臣・東武練馬(とうぶねりま)太郎左衛門(たろうざえもん)様でございます。太郎左衛門様は城で働く者全員の名前を記憶していて、私達のような一介のメイドにも気遣いを欠かさない素晴らしいお方ですよ。」

東武練馬太郎左衛門、名前からして強そう。葵の話だと全く名前負けしていない好評価。


 耀司の時も彼を只者ではないと評価したが訂正させてほしい。彼を見た後に耀司と出会っていれば、耀司は只者という評価になっていただろう。東武練馬太郎左衛門が放つ(TSUWAMONO)威光(IKOH)はすさまじいものがあった。


 「国王補佐大臣ていうのはどういう役職なの?」

国王補佐大臣、役職名が抽象的すぎるあまり、訊ねてしまった。

「そうですね。特に決まった役割はないのです。その時々で臨機応変に対応する、最高位の役職といいますか。う~ん、説明が難しいですね。要するに、国王の次に偉い、と思っていただければ、大輝さまには十分かと。」

(お客さまから大輝さまに昇格!葵ちゃん大好き!)ゲフンゲフン。

 役職の名前だけでなく、内容も抽象的である。そうなるとまた気になることが出てくる。

「じゃあもし、戦いになったら四天王よりも偉いの?」

「もちろんでございます。あらゆる場面において国王の次に優先的な決定権を持つのが国王補佐大臣です。」


 名称からして名誉職かなんかだと勝手に解釈していたが、どうやらめちゃくちゃ偉いらしい。あれだけの威光(IKOH)を放つ男であるのも納得だ。これは後から聞いた話だが、東武練馬太郎左衛門はグランデバイド250年の歴史の中で最も優れた国王補佐大臣で、巷ではプロフェッサーと呼ばれているらしい。



───



 葵との会話で東武練馬太郎左衛門のことが少しわかったところで、耀司と目が合い、こっちに来るように促される。

僕は促されるまま、耀司と太郎左衛門の間に立つ。25歳になっても童貞な冴えない僕は人前に立つのは柄ではない。周りが男ばかりであってもこれはキツイ。

「よく聞くのだ、諸君!」

プロフェッサーは兵らに語りかける。

「我々の戦いは最終局面を迎えている!」

「ここで一気に攻め落とし、我々の勝利を確実のものとする!」

「状況を打破するためには根性だけではどうにもならない!」

「そう、『チカラ』が必要なのである!」

大戦を終え、平和な時代が続いていると聞いていたが、小規模な戦闘はあるのか?演説の雰囲気に兵の士気を高めるような演説をする。

「そして!我々に心強い味方が加わる!佐藤大輝殿だ!」


「!?」


 「ちょっと待ってくださいよ!俺、何も聞いてないですよ!昨日この世界に来たばかりだし!」

本当に何も知らないので威光放つ男に聞いてみる。

国王補佐大臣の返事を待たずして、兵たちが沸く。


「昨日来たばっかっていうことは異世界人か!」

「あんたがいれば百人力だ!」

「頼もしスギィ!」

「ほう、異世界人ですか。やりますねぇ。」

皆が口々に感想を述べる。


??????????


全く状況が呑み込めないで棒立ちしてしまう。


 すると、僕の目の前に台車が運ばれてくる。台車にはベルベット調の布がかぶされており、中身を見ることはできない。

 すると太郎左衛門が宣言する。

「我らが同志・佐藤大輝には、真実の剣を授ける!」

僕を差し置いて話が進む。宣言されると台車を運んできた従者が布を取り払い、『真実の剣』とやらがあらわになる。

 真実の剣は、剣先から柄までがほとんど透明に近い色合いを持ち、美しさと儚さは感じられるが、武器としての力強さや迫力は一切感じられない。


 「彼の者に真実の剣を与えることに異議はあるか!」

「「「異議なーし!」」」

やはり僕は置いてけぼりだが、株主総会のように儀式は滞りなく進む。

再び僕が棒立ちしていると、それに気づいた耀司が耳打ちする。

「君は選ばれたのサ。その剣を手に持ち、母なる天に掲げたまえ★」

選ばれた、という言葉の意味は解らなかった。だが、ラノベやゲームでは転生者に特殊能力があるのはよくあることだと言い聞かせ、無理やりに自分を納得させる。僕は言われたように剣を手に取り、それを空に掲げた。


───その刹那、天が一瞬強烈な光を放ったかと思えば、爆発音が周囲にこだまする!!!


 爆発音が聞こえるとものすごい爆風が吹き荒れた。兵の中には吹き飛ばされ城壁に叩きつけられる者までいる始末だ。この爆発はいったいどういうことなのだろうか?

「おい!この爆発は君が引き起こしたのカ?」

耀司がつかみかかりながら聞いてくる。

「し、知らないよ!」

本当に心当たりがない僕は当然知らないと伝える。


「耀司よ。焦るな、彼の仕業ではない。敵襲じゃ。」

太郎左衛門の声に耀司はハッとする。

「そ、そうでしたか。し、しかし奴らがまさかここまで来ているとは・・・!」

僕を置いてけぼりにして二人は納得した様子だ。


「どういうことだ!大戦以降は平和と聞いていたのに!城が攻撃されるなんて!」

たまらず食って掛かるが冷静さを取り戻した耀司は答えてくれない。

「すまないが説明は後ダ!我々は君も戦力として考えている、初陣がこんな形になって申し訳ないが、戦ってくれ!」

戦う?僕が?昨日までサラリーマンだったのに?


他の兵たちも気づいたのか、声をあげる。

「敵襲だ!備えろー!」

また爆風が吹き荒れる!運が悪かった兵士は城壁に叩きつけられ、先ほどの兵に折り重なる。

 演説台にいた僕も吹き飛ばされ、風に舞いあげられ、城の外へと追い出された。



───



 僕が墜落したのは運が悪いことに警備の薄い城の裏口だった。グランデバイド兵は中庭の騒ぎを聞きつけ援護に入ったのか、ここにはいなかった。

 そこに、襲撃者らしき仮面の女が立っていた。人の手を模した不気味な仮面が目元だけを隠している。

 「グランデバイドに与するつもりか?」

声を聞いて気づく、この女はさっきドア越しに話した女だ。


 女が手に持った剣を持って斬りかかる。

僕はギリギリのところで避ける。

「警告したはずだ。」

再び振りかぶる。

僕は一歩下がりまた躱す。だが、壁際に追い込まれ次の攻撃は避けられないと悟る。どうやら僕の異世界生活は1日目で終わってしまうらしい。

 仮面の女が再びモーションに入る。僕は死を覚悟して目を瞑る。


───僕は恐る恐る目を開く。


 だが、痛みは来なかった。痛覚を感じないほどの一撃を食らった可能性も考えたが、目を開ければ視界はこれまで通りで、攻撃を受けなかったようだ。

 誰かが助けに入った気配もなければ、僕自身が剣を振るった感覚もなかった。何が起きたかを考える余裕もなく放心状態で座り込むことしかできない。


そこへ、僕を探しに来たらしい葵がやって来る。

「大輝さま!」

腰が抜けた僕を担ぎ、客間へ運び込む───。

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