29発目 僕の地獄に快楽は絶えない
息を切らしながら僕は走る。大輝さんの意図はわからないけれど、耀司さんとあの女はどうやら協力関係にあって、それは僕らにとっては都合が悪いみたいだ。
「はあっ・・・、はあっ・・・。」
息も絶え絶えになるが、もう少しで集団墓地を抜け、人通りのあるところにたどり着きそうだ。このまま進んで人込みに紛れる。そして情報を春香さんに伝える。あと少しだ!
「み~つけた。あとちょっとで人込みに紛れ込めたのにね、ざんね~んみたいな。」
あと少しのところだったのに、さっきの女が僕の前に立ちはだかる。
「くそぅ・・・。」
墓地の中で対峙する僕と女。どう考えても勝ち目はない。それでも戦うべきか?自分に問いかける。
だけど、答えは簡単だ。大輝さんは勝ち目がなくても戦った。だから、僕も戦う!
大輝さんが言っていた。
「人は戦うことをやめた時 初めて敗北する」
「戦い続ける限りは まだ 負けてない」
絶対に誰かの受け売りだと思うけど、僕もそう思うから!
覚悟を決め、剣を構える!
──────
「うおおおおお!!!!!」
すかっ・・・。
空を切る音が静かな墓地に響く。僕の単純な技術では、女に攻撃を当てることは出来なかった。だけど諦めない!
大輝さんは他にも言っていたんだ。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ・・・?」
これも受け売り臭いけど、言葉の通りだ!だから僕は剣を手放さない!
「くそっ、どこに隠れたんだ!出てこい!」
なけなしの勇気を振り絞って叫ぶ。
僕は持てる技術すべてを用いて、周囲を見渡す。しかし女は見つからない。
「うしろだよ~。」
どれだけ探しても見つからなかったはずの声が、耳元で囁かれる。得も言われぬ恐怖に押しつぶされそうになる。だけど、勇気を振り絞る。
大輝さんが言っていた。
「逃げれば一つ、進めば二つ。だから止まるんじゃねえぞ。」
その言葉を胸に、僕は振り返りざまに剣を振るう。しかし、そこに女の姿はなかった。
「だから、うしろだってば~。」
再び耳元から囁きかけられる。僕は再び振り返ろうとしたが、首元に手刀を食らってしまう。
「ううう・・・。」
トン、と軽く叩かれただけのはずなのに、僕の意識が遠のいていく──────。
──────
目を覚ますと、そこは見覚えのない場所だった。牢獄のように見えるが、ここはどこだろうか?そう思って歩こうとするが、拘束具がつけられている。さながら十字架で、身動きが取れない。
「あはは~。お目覚め~?」
先ほどの女が笑いかける。どういうわけか僕に敵意はなさそうだ。先ほど言っていた、じじばばとほーちゃん以外には本当に興味がない、そういうことなのだろうか?
「ここに連れて行くのには反対だったんだがな。」
やれやれといった感じの耀司さんだ。
「え~、いいじゃ~ん。だけど、元はと言えば、あんたが変身しながら寝るからみたいな?」
二人の間には意見の相違があるようだ。
「まあいい。だが、誰のせいで変身しながら寝ていると・・・。」
耀司さんは呆れたような表情をするが、少しバツが悪そうにも見える。
二人の会話の意図はわからないが、ここがどこかの目途はついた。ここはきっと、彼らのアジトだろう。僕はとんでもないところにつれていかれてしまったみたいだ。どうやって帰ろうか?そもそも解放してもらえるのか?諦めなければなんとやらだけど、流石に拘束までされていてもう無理そうで、かなり滅入ってしまう。
嗚呼、誰か助けに来てよ・・・。
──────
何時間ぐらい経過しただろうか。僕はすっかり意気消沈して、逃げることはとっくに諦めてしまった。
部屋の隙間から月明りが差し込んでいるのを見るに、半日は経過したみたいだ。今日は色々あり過ぎた、拘束されたままで不本意な体制だけど、疲れからかうとうとしてしまう──────。
──────
もう少しで眠りにつきそうになったタイミングで、鉄格子が開けられた。
「やっほ~。あれ、もう寝るとこだった?でも、夜はこっからみたいな?」
鍵を開けたのは例の女だった。
「な、何の用だ?」
僕は強がり、屈服していない態度で返事をする。
「あはは~、強がんなくていいって~。痛めつけたりとか、悪いようにはしないしさ~。」
女はニヤニヤしながらこちらへ近づいてくる。痛めつけないと言ってはいるが、その手には剣が・・・。
「じゃ、じゃあその手にもってるのは・・・なんでしょう・・・?」
流石に拘束された状態で武具を持った人間と向き合ってしまえば、これ以上強がることはできない。
「そんなに気になるの~?じゃあ、教えてあげる~。」
そういうと、女は僕のズボンに手を伸ばす。そして、それを脱がす。
「はぅあっ!?」
僕は突然すぎる出来事に戸惑い、裏返った声を上げてしまう。そして、小さな巨人が丸出しになったことに気づき、赤面する。
僕の反応を見て、不気味ににこりと笑った女は、自らの衣服を脱ぎ始めた。
「な、な、な、何をしてまして・・・!?」
しかし、女は質問に答えない。女の美しい裸体を見て、小さかったはずの巨人は、巨人と呼ばれるのにふさわしい姿に生まれ変わる。
「耀司の奴が今日も女に変身しながら寝やがるからさ~。申し訳ないけど、付き合ってもらうみたいな?」
女の言葉の意味が分からない。しかし、巨人が僕にこの状況を楽しむよう説き伏せてくる。
「へぇ~。丸眼鏡のチビにしてはご立派じゃ~ん。」
女に褒められて、僕の巨人はさらに巨大になる。こんなんで反応してしまう自分が情けないけど、彼女の裸体は恐ろしいほどに艶やかでCHERRY BOYには魅力的すぎる。
巨人が独りでに進撃しそうになったところで、女が再び剣を手に取った。それを見て巨人は元の姿に戻る。
片手に剣を持ち、女は膝を地面につきながら身体を絡ませるようにして、僕の方に近づいてくる。
再び立ち上がった女は僕と目線を合わせ、そして密着する。初めて触れる女性の生の乳房。しかし、彼女の手には恐ろしいもの!そういうわけで、僕は柔らかな脂肪についての感想どころではなかった。
ピタリ
女が手に持った金属の塊を、すっかりしおらしくなった僕の巨人に軽く触れさせる。てっきり切り落とされると思っていた僕は少し拍子抜けした。いったい何をしたいのだろうか?
「これはね、『封印の剣』って言うの。これで触れたものは、モノに限らず概念とかであっても、どんなものでも封印できる。剣王厚木家に伝わる秘宝なの。」
恍惚とした表情で女が説明する。
「さっきので、あなたの発射、封印しちゃった♡これで一晩中遊べるね♡」
色っぽい声でそう言うと、女は剣をぽいと放り投げ、僕に抱き着いてくる。
この状況で発射封印!やる気まんまんの色っぽいお姉さんに迫れらながら、発射禁止!僕みたいな女性免疫ゼロ男が耐えられるわけがない!
「あ、あの・・・。発射封印とは?」
怖くなった僕は質問する。
「そのままの意味、あたしが封印を解くまで出せないの♡」
そう言いながら、お姉さんは僕の拘束を手際よく外していく。
──────
お姉さんに手を引かれるがまま、僕と巨人は彼女の部屋へと連れていかれる。お姉さんはベッドにごろんと寝ころび、僕らを手招きする。さっきまで恐怖に震えていた筈の僕は、彼女の促しに簡単に従ってしまう。
「ほら、こっち来て。」
お姉さんに言われるがまま、僕もベッドに寝ころぶ。こんなシチュエーションなのに、僕の鼓動は今までにないぐらいに早く高鳴り、巨人も過去最高の大きさを更新していた。
「あ、あの、僕はどうしたら・・・?」
答えはわかっているけど、僕は質問せざるを得なかった。
お姉さんははぁ、と小さくため息をつき、
「じゃあ最初はあたしが動いてあげるから、仰向けになれみたいな。」
と言って、横向きの僕を強引に仰向けにする。
──────
「あ、あのう。お姉さん。僕、出てはないけど、もう果ててるといいますかぁ・・・。」
彼女の部屋で、ことを進めてからいったいどれくらいの時間が経過しただろうか。それでもお姉さんの動きは止まらず、促されるだけの僕と巨人は、限界に達していた。
「だからぁ、お姉さんじゃなくて、千歌って呼んでってば!」
そう言いながら、彼女はまた激しく身体を上下させる。
「それにっ、まだっ、終わるにはっ、早すぎっ、みたいな。」
お姉さん、もとい千歌さんはまだ終わらせる気はないみたいだ。
「あ゛あ゛~、疲れた。ポジション交代。今度はそっちから動いてみなよ♡」
千歌さんは物足りないらしく、体勢を変えてまだまだ楽しむつもりのようだ。
「あの、僕やったことないからわからな・・・・。」
ここにきて情けない告白をする。
「はぁ~?誰だって最初はそうだし。思うがままにやってみればよくね?痛かったら言うみたいな?」
不覚にもかけられた、彼女のその優しい言葉。それに反応して、僕と巨人──────否、僕とミスターは王になった。パーフェクトとは言えないムーブで、見果てぬ先まで、思うが儘、豪胆に豪傑に、彼女に僕の総ての底知れぬ覇気をぶつられただろう。
しかし、体力の限界というのもあるもので、しばらくは彼女を突き上げたが、流石にこれ以上は動けなくなってしまった。それに、胸の奥で熱く滾る想いをすべて出し切りたくなってきた。
「はぁ、はぁ、あの、もう限界で・・・。どうか封印を解いてもらえないですか?」
僕は千歌さんに懇願する。
「えぇ~。まあでも、はじめてにしては上手だったし、解いてあげてもいいけど。でもな~、あたしはまだ物足りないみたいな。」
君よただ征かせてくれとただ願う、それなのにまだ物足りないなんて、逞しく咲き誇りすぎなんじゃないか?
「じゃあ、発射の封印は解く代わりに、あたし達の仲間になるなら良いよ?」
凛々しき強者がとんでもない提案をしてくる。
「えええええ。釣り合ってないですよ。」
当然、リターンに対して失うモノが多すぎる。
「じゃあ、もうやめた。帰っていいよ。封印は解かないけど。」
そう言って、千歌さんは僕の腹を蹴り行為から離脱する。いじわるすぎる。こんなことをされたら返事が決まってしまうじゃないか。そして、それを見越したかのようないたずらっぽい笑み。
「そんなぁ、ここまでしておいて殺生な・・・。」
僕は覚悟を決めた。もう国とかどうでもいい。僕の心を揺さぶる彼女に弥栄へと導いてもらおう。
「わかりました。貴女たちの味方になります。」
此れが合言葉だ。そう告げると彼女は再び剣を持ち、僕のミスターに軽く触れさせる。
ぽた・・・。
剣が触れたその刹那、今までせき止められていた何かが垂れた。目の覚める一滴が、僕を怯ませる。
「え・・・?」
覚悟を決め、勇み立つつもりだったのに。絶対中で終わる流れだと思っていたのに。呆気なく終わってしまった。
「あはは~。でも、約束は約束だからね♡」
分かっててやりやがったなこの女。
「そんなぁ、こんな、終わり方って・・・?」
僕は絶望する。大人の階を登ったのもつかの間、轟砲は不発に終わってしまった。
「あ~。お腹痛いwwwその顔が見たかった〜www」
千歌さんは満足げな大爆笑だ。まさかここまで遊ばれているなんて。真っ白になる僕。そんな僕に近づき、千歌さんは再び剣を先ほどまで王だった犬にピタっと触れさせる。
「じゃ、明日もよろしくね~。」
明日もこれをしなきゃいけないらしい。このアマ、いばいたる。
僕は目先の快楽を追い求め、祖国を裏切ることになってしまった──────。




