23発目 第二回仮面対策特別会議
5日振りの発散で眠気に襲われる僕、そんな僕を妖艶に見つめ、汚れてしまった指を舐める穂乃果──────。
そして、そんな二人を見つめるリハビリから帰ってきた翔太。
「・・・。」
「・・・。」
「何も見てないですよ。」
苦笑いしてるし、見ちゃったときに言うセリフじゃん。
「翔太くん、他の人には黙っていてくれないか?」
20歳の青年に情けないお願いをする。
「あーしからも頼むよ。病院でこんなことしたって知られたら今度こそハルに斬られちゃう。」
ギャルというのは大胆だと思っていたが、流石にギャル界でもさっきのはご法度らしい。
「それで、誰に黙っていればいいんだ?それとも知られたからには斬られる方が良いのか?」
なんと、翔太の後ろには春香もいたみたいだ。僕と穂乃果は目を合わせ、言い訳を考えるが思いつかない。
「はぁ・・・。私がもっと良い策を練られなかったのが原因とはいえ、病院でこんなことをされるのは予想外だ。」
春香は頭を抱え、変態を見るかのような目線をこちらへ送ってくる。そう思われてしまっても仕方ないけど、生理現象なのだからそういう目線は勘弁してほしい。
「まぁ、なんだ、その、とりあえず、それをしまってくれないか?」
なるほど。合点がいった。
──────
僕はガウンを着直し、穂乃果は指をティッシュで拭く。僕らが子供に見せても教育上問題ない姿になると、春香がここに来た要件を告げる。
「大輝、次回の会議に出席してくれないか?穂乃果の疑念が晴れたことを王や大臣達にも説明してほしい。」
春香の頼みはわかりやすいものだった。
しかし、言葉にするとなるとそう簡単ではない。それに、疑念が晴れたというのは僕が主観的に判断したことに過ぎない。感覚以外では説明できないが、絶対に他人であると言い切れる。
「わかった。必ずみんなを納得させてみせるよ──────。」
──────
会議当日になり、僕は特別会議室というところに呼ばれた。今日の会議は国王、国王補佐大臣、四天王のほか、仮面騒動とはあまり関係がない省庁の大臣も出席していた。
国王が東武練馬太郎左衛門に合図を出す。そして東武練馬が会議の開会を告げる。
「それでは、第二回仮面対策特別会議を開始とする。」
開会の言葉を告げられると、さっそく剣王流厚木派を使いこなす仮面の女が穂乃果なのではないか、という疑惑が議題にあがった。
「大輝、説明を頼む。」
春香に促された僕は、檀上に立ち仮面の女と交戦したこと、耀司の変化の剣を借り、正体を隠しながら穂乃果と交戦したことを伝える。
「つまり、仮面の女とホノカとでは、剣王流厚木派の練度が雲泥の差、ということだナ★」
耀司が僕の言いたいことを簡潔にまとめてくれる。言いすぎな気もするけど、彼は仮面の女とは遭遇していないが、穂乃果と僕の戦いは目の前で見ていた。
「ほな、Fランな攻撃っちゅうことやねんか?」
「バカタレ!」
教育大臣が疑問を口にし、教育副大臣が口を慎むよう注意する。
穂乃果の名誉を傷つけることはしたくないけど、彼らを納得させるために二人の実力差について、思ったことをすべて述べる。
苦虫をかみつぶしたような表情になる穂乃果に目線で謝る。許しのウインクをもらったので、もう少しディスらせていただく。
「安田教育大臣、仰る通りです。ギャルのする単純な攻撃、その通りです。」
「ヤメロオマエ。」
僕も言い過ぎたのか、副大臣からツッコミを入れられる。あと、穂乃果が少し泣きそう。
「この議題は変えた方が良いと思います。だからこそ、議題を変える必要があると思います。」
環境大臣に釘を刺される。僕と教育大臣たちはふざけすぎてしまったみたいだ。
「では、次の議題に入る。剣王流厚木派の使い手以外にも、現時点で3人の仮面の女が見つかっておる、その件じゃ。」
威光放つ男の一声で議題が変わる。穂乃果はこれ以上の追及も罵りも受けなくなったことにほっとしたのか、引きつっていた表情がいつものにこやかなものに戻っていた。
僕の出番はもう終わったが、その後も会議は続く──────。
──────
会議が終わり、各々が普段の執務室に戻る。僕も四天王の面々と共に軍の控室に向かう。
「あーあ、あんなにみんなからディスられるとか、疑われてるとしてもイミフ的な?」
穂乃果が今回の会議について愚痴を垂れる。仮面の女だと疑われているためとはいえ、あそこまで技術をコケにされれば、誰だって傷つくはずだ。まして、穂乃果は剣術を幼いころから叩き込まれていたわけで、その実力を否定することは、彼女の半生をも否定することになりかねない。
「まあそう言わないでくれ。主観に過ぎないという結論にはなったが、一回目の仮面対策会議は呼ばれていなかったんだ。疑念は晴れつつあると思う。」
春香が穂乃果に、疑念は少しずつではあるが薄れていることを伝える。
「だがよぉ、穂乃果よりも剣王流厚木派をうまく使える女がいるってのは、俺様はにわかには信じられないぜ?」
達斗が皆も思っているであろう疑問を口にする。
剣王流厚木派の神髄、厚木派に限らず鶴ヶ島派も含め、剣王流の奥義というのは、一子相伝と聞く。しかし仮面の女は、家督を継ぐ者にしか継承されない筈の技術を持っていた。単純な技術だから盗めた、奴はそう言っていたが、本当にそうなのだろうか?
僕の考え事をよそに、しばらくの間を置いてから、穂乃果がポツリとつぶやいた。
「あーし、仮面の女に心当たりがあるんだ。」
「ど、どういう意味なんだ☆ソレは?」
耀司が驚いて声を上げる。ほかの面々も話についていけていないのか、ポカンとしている。
「きっと、仮面の女は、あーしのおねーちゃんだと思う。今まで黙っててごめんね。でも、わざとじゃないんだ。捨てられて、そのまま死んじゃったと思ってたから・・・。」




