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2発目 警告

 メイドの葵が食堂の扉を開ける。奥には只者ではない雰囲気の男が座っており、僕の異世界生活の始まりを予感させる───。




 只者ではない雰囲気の男もそうだが、先ほどまでいた客間と比べてもかなり豪華な装飾に目を奪われる。天井に描かれた巨大な宗教画、職人の意匠が光る灯台、そして何よりエッチな石造!




 僕が家具に夢中になっていると、件の男が舞台俳優のように話しかけてくる。


「ようこそグランデバイドへ!歓迎しよう、異界からの転生者★」


歓迎してくれるのはありがたいが、その語り口に、なんなんだこいつは、と思ってしまう。変な奴は続ける。




 「おっと、挨拶が遅れたね。我こそは英雄の国が誇る四天王の一角・高島平(たかしまだいら)耀司(ようじ)ダ!以後お見知りおきを★」


仰々しい挨拶をした変な奴は高島平耀司という名前らしい。どうやら四天王という役職を貰っているみたいで、僕のゲームの知識から、彼は結構偉いことがうかがい知れる。


「僕は佐藤大輝です。よろしく。」


三年も社畜をやっていたので挨拶ぐらいはできる。セックスはできないけど。




 変な奴改め高島平耀司と握手をしたのち、僕は席に座るよう促されたので、座って食事が運ばれるのを待つ。


 食事を待ちながら、トップスタアにいくつかある疑問を投げかけてみる。


「四天王って偉いの?」


「もちろんだとも。オルタランド軍の中で、最も誉れ高い称号と言っても過言ではないだろうサ。ただワタシは、四天王の中で最弱との評判だけどネ★」


見立て通り、四天王は偉いらしい。そしてやっぱりと言うべきか、最初に出会う四天王はその中では最弱というのもテンプレ通り。


 「僕は何でこの世界に呼ばれたの?あと、帰る方法は?」


「ほう。自らの運命を知りたい、と。その答えはすぐに知ることだろう。ワタシの口からは答えんよ。帰る方法?知らないナ★」


僕がこの世界に来た理由は知っている口ぶりだ。だけど言うつもりはないらしい。そして、僕が一番知りたい帰る方法については、彼ほどの偉いニキであっても知らないらしい。





───





 食事が運ばれてくる。パンやシチューが多いと言っていたが、今日はパンの日らしい。僕らの世界ではフィリーチーズステーキと呼ばれる料理が運ばれてきた。いくら朝食は質素と言えど、庶民的すぎる気がする。中世風のこの世界では、肉やチーズが貴重なのだろうか?




 庶民派サンドにかぶりつく。見た目と同じく、味付けも僕らの世界と変わらない。


 一口食べると、故郷 -United States of America- への想いが止まらなくなる。薬物中毒者だらけのボデガ、盗まれるエアマックス、不十分な保険制度、学校内での銃乱射事件、そして何より無修正のポルノビデオ。行ったことないはずなのに何故か帰りたい、我が故郷・合衆国。


 嗚呼、ブライス・ハーパーは元気にしているだろうか。グエー死んだーガードしたハラデイは成仏してクレメンス。




「どうだね。ワタシ達の食事は気に入ってもらえたかネ?」


「おいしかったよ。食事に関しては僕のいた世界とはあまり差がないかな。」




───





 食事を終えた僕はと言うと、自室に戻っていた。しばらくしたら中庭に呼ばれるみたいだけど、時間になったら葵に呼びに行かせる休んでいてくれ★、と耀司に言われたためだ。ナルシスト全開で自分以外には興味がなさそうな風貌ではあるが、突然異世界送りにされた僕を気遣ってくれているのがよくわかる。




 気遣ってもらっておいて、こう言うのも何だが、僕は集合時間までやることがない。やることがないので見つからないとは思いつつも、再び携帯を探してみる。




「やっぱり無いか。」




 部屋の隅々まで探しても見つからないので、ふて寝しようとふかふかベッドにダイブした。




少しウトウトしてきたところで、ドアが叩かれる。




トントン。




葵かな?


「どうぞー。」


しかし、ノックの主は入ってこない。そもそも葵であれば返事を待たずして入って来るような気もするが。


 向こうからドアを開ける気配がないので、僕はベッドから降り、ノブに手をかける。




「開ける必要は無い。」


ドア越しに女性の声がする。葵の声ではない落ち着いた低い声だ。




「異界人。貴様はこれから先、厚遇を受けるだろう。だが、貴様グランデバイドには手を貸すな。これは警告だ。」


気になる内容だった。僕は思わず聞き返した。


「何を知っているんだ!僕は何もしていないぞ!」


慌てて聞き返すが返事はない。


 廊下に出ると、声の主の姿は消えていた。




 どういうことだろうか、ドアの向こうの彼女は僕がもてなしを受けているのを知っている口ぶりだった。そして、まだ何もしていない僕がこの後グランデバイドに手を貸すことを確信しているからこその警告。グランデバイドの内情を知る立場にありながら、手を貸さないよう求めてくる、声の主の狙いがわからないことが、彼女の不気味さをより際立たせ、僕を焦らせる。




トントン。


再びのノック。


「ヒィッ!」


さっきのことがあったため、僕は裏返った声で情けない反応をしてしまう。


 僕がドアへと目をやると、そこにはやっぱり返事を待たずして入ってきた葵が立っていた。


 さっきの女かと思ったけど、葵で助かった。彼女のピンク髪に癒される。





───





 葵に連れられ中庭に向かう。するとそこには兵がずらっと並んでおり、彼らの視線の先には、耀司ともう一人の男が立っていた。

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