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19発目 特別なる任務


──────約2ヶ月前 グランデバイド城・特別会議室


 先日の仮面の女騒動を聞き、私は王宮の特別会議に招集されていた。

 参加者は私のほか、同じく四天王である高島平耀司、国王補佐大臣・東武練馬太郎左衛門、そしてグランデバイド国王の4名であった。こういった会議は基本的に四天王は全員呼ばれるのが通例だが、今回はそうではなかった。

 任務で外している水道橋達斗が参加しないのは仕方がないとして、剣王厚木穂乃果が呼ばれていないことには疑問が残った。


 国王が会議を始めるよう、東武練馬太郎左衛門に合図を出す。

「集まってもらったのは他でもない、そなたらも察しているとは思うが、仮面の女が城内に侵入した件じゃ。」

仮面の女の件は、佐藤大輝をはじめとした当事者と限られた者にしか知らされていない。しかし、城まであと一歩のところまで侵入されたのだから、こういった会議が開かれるのも、当然と言えよう。

国王補佐大臣は続ける。

「この件について、儂は内通者がいると考えておる。故に、儂の信用に足らぬ者は今回の会議には出席させておらぬ。」

すると、高島平耀司が疑問を口にする。

「そうなると、私達は疑われていない、となりますが。剣王厚木穂乃果、水道橋達斗は私達と同じ四天王ではあるものの、信用できない、ということでしょうか?」

私も疑問に思っていたことを問う。

「端的に言えばそうだ。しかし、水道橋達斗に関しては異世界人ということもある。パイプのない彼が内通者とは考えにくい。」

東武練馬が耀司の疑問に答える。しかし、穂乃果についての言及がない。私が穂乃果について訊ねようとすると、それよりも前に東武練馬が話し始めた。


 「隠さずに言おう。儂は、剣王厚木穂乃果が内通者ではないか、と疑っておる。」

悪い予感が的中した。

「何故ですか、彼女の働きぶりは大臣もご存じの筈です!」

彼女が疑われている事実が、私は受け入れ難くつい声を荒らげてしまう。

「これは機密事項だったんじゃが、以前にも仮面の女に遭遇した者がいてな。その者が言うには、その女は剣王流・厚木派の使い手だったそうな。」

彼の言葉に、私は言葉を失う。剣王流・厚木派の使い手で女とあれば、穂乃果以外は考えられない。そして、目撃情報もあるという。

「そんな・・・。」

私は信じたくなかった。彼女のおかげで、やっと剣王流は和解出来たというのに、再び彼女を憎むべき敵として考えなければいけないと思うと、胸が苦しくなる。

「その情報は誰からのものですか?」

信じたくない私は、誰かがイタズラで噂を流しているのではないか、と最後の望みを賭ける。

「鈴木じゃよ。今では行方知れずで確認する術もないが、確かに報告に上がったのじゃ。」

鈴木の人柄を鑑みれば、イタズラではなさそうだった。


 『鈴木』は嘘を付くような人間ではない。それに、報告に上げるということは、彼女には、その仮面の女が剣王流・厚木派の使い手、穂乃果である確信があったということになる。


 それでも、私はこの話を聞いてもなお、穂乃果を疑う気にはなれなかった。



──────



 「大輝。一つ、特別任務を頼まれてくれないか?」

担架で運ばれる私は大輝に問いかける。

「え?また特別任務?」

素っ頓狂な声で大輝が返す。

「そうだ。これは機密事項が含まれる。詳細は今は話せないが、手伝ってはくれないか?」

ここは大勢の兵がいて、話すことはできない。なのに、先ほどの仮面の女が、彼女が言っていた女なのだろうか、と疑問に思う気持ちが先走り過ぎて、つい任務のことを口走ってしまった。

「さっきの仮面の件?剣王流厚木派みたいな構えだったもんね。穂乃果が何か知ってるかもしれないね。」

全部言っちゃった。


「大輝さん、機密って言われたそばから何してるんですか?」

「え?僕なんかやっちゃいました?」

やったから言われているんだろう。

「全くです。大輝さまもですが、春香さまも春香さまです。こんなところで機密が含まれる話をするなんて。」

こっちにも飛んできた。



──────



 数日後、私は自身が入院する病室に大輝らを呼び出した。

「だいぶ回復してるみたいだね。」

「春香さま、具合はいかがですか?リンゴ剝きましょうか?」

「あのぅ、僕もまだ入院してるんですが・・・。」

「剣王鶴ヶ島穂乃果ほどの者が、こうなるとはな★」

この前の担架のメンバーに、耀司を加えた4人だ。私を運んでいた坂戸(さかと)日高(ひだか)には、待機要員として考えている旨を既に伝達済みだ。


 私はわざとらしく咳払いをして、4人に任務を言い渡す。

「ごほん。そなたらに任務を言い渡す。これは極秘任務だ。心してかかれよ。」

ゴクリ、と唾をのむ音が聞こえる。

「正体を隠し、剣王流厚木穂乃果と交戦してほしい。」

やはりと言うべきか、内容を聞いた彼らの表情が曇る。

「春香、穂乃果のことをそこまで疑っているの?」

最初に口を開いたのは大輝だった。

「私も信じたくなかったが、以前にも穂乃果が怪しいという情報があった。」

私は理由を説明しなければならない。

「城に仮面の女が現れた際、緊急で会議が開かれた。その際にも、剣王流厚木派の使い手が仮面の勢力にいるという情報はあったんだ。だが、私は穂乃果を疑いたくなかった。その一心だけで、ここまで何も行動せずにいた。」

耀司が話を遮る。

「私も話なら知っている★しかし、穂乃果と交戦しろ、というのは早計なのではないか?」

彼の指摘はごもっともだ。

「だからこそなんだ。彼女と戦い、その疑いを早く晴らしてほしいのだ。大輝は仮面の女の太刀筋を見ている。大輝中心に彼女と戦ってほしい。斬り合えばわかるはずだ。」

大輝の表情が、なるほど、という感じにかわる。

「それで、万が一のことを避けるために、話を知っている僕以外の人も招集したわけだ。」


これで皆にも任務の意図が伝わったはずだ。

「なるほどな★大輝が死んでしまえば元も子もない★合点がいったナ★」

「そういうことなのですね。ですが、メイドの私がお役に立てるでしょうか?」

「あのぅ、入院中の僕は何でここに呼ばれたんですか?」

翔太のことを完全に失念していた。


「すまない、流れで招集してしまった。翔太は私、坂戸、日高と共に待機だ。」

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