11発目 奔走
あーしがダイ吉への取り調べ(?)を終えたタイミングで、ヨジヨジとあおいっちも守衛への取り調べ(?)が終わって守衛を縛り終えたぽく、こっちに向かってくる。
ちょーどダイ吉を縛り終えたころ、二人がダイ吉から離れてこっちにくるよう手招きする。
「とんだ下衆野郎だ!かのような奴が同じグランデバイドの民だと思うと虫唾が走る!」
ヨジヨジはめっちゃご立腹である。
「どんなこと言ってたん?」
ダイ吉から大体のことは聞いてるけど、ヨジヨジがご立腹な理由と守衛の言い分も気になるんで質問してみた的な。
「形骸化した通行証制度の話を持ち出したり、賄賂を慣例以上に受け取ろうとした上、女性を凌辱しようとしたことが許せないみたいです。」
あおいっちが答える。ダイ吉が言ってたこととほとんど一緒だけど、ヨジヨジは倫理以外にも、廃れたルールや相手の弱みに付け込んでさらに利益を得ようとしたところが特に気に入らないっぽい。
あーしらは3人でお互いが聞いたことを共有する。
「なるほど、ダイキも守衛も嘘はついていないということだな★」
「あちゃー、こーゆー感じだと、先に殴ったダイ吉が罪重め的な。」
「客観的に見れば見るほど大輝さまが不利です。守衛の方はルールにも、金額はともかくとして賄賂という慣例にも則っていますからね。倫理的にはどうかと思いますが、そのどちらも果たせない女性に対して代替案を与えたという考え方もできますね。それに、女性が魔族であることを考慮すれば、裁判官は守衛が『魔族にも情けをかける優しい男』と捉えるでしょう。」
あおいっちすげえ。弁護士なのかな?
状況をまとめ終わったところで3人の意見はモチのロンで一致した。そう、何とかしてダイ吉の罪を軽くすること!あーしとあおいっちは女だし、ヨジヨジはフェミニストだから、どーてーなのに男を見せたダイ吉を放っておくわけにはいかないのですよ。
だけど、どう考えても良い方法が思いつかない。それはフェミニスト・ヨジヨジも同じっぽい。
「しかしどうする?このままいけば、ダイキは重罪人だ、場合によっては国家反逆罪が適用され、死刑もあり得るぞ。」
書類上は、新人兵士が上司を殴っているわけで、そのうえ通行証を持たない魔族を町に入れているから、国家反逆罪じゃなくても厳罰確定。
どーしたものか、うーん。
「いったい、どうすれば良いのでしょう?」
冷静に状況をまとめたあおいっちでも解決策は思いつかないみたい。
・・・・・・・・・。
みんなが無言になってしばらくしたタイミングで次期プロフェッサーのあーしはひらめきました。
「あ!解決策思いついた!」
一番大事なことを忘れていた!けど、思い出せたあーしは天才かもしれない!
だけど、疑うような目で二人からは見られちゃう。
「おいおい、それは本当なのだろうな?君の四天王としての働きぶりは認めるが、頭の方は信じがたい★」
「はい、こういうときの穂乃果さまは大したこと言わないですから。」
えーひどくない。そんな風に思ってたんだ。ですが、なんとあーし、大したこと言っちゃいます。
「魔族の女の人、見つければ万事解決!的な。」
二人が目を丸くするかと思ったけど、二人の目は冷めたまま。あれれ?恥ず。
「それは現実的ではないだろう。王都には30万もの人々がいるのだぞ?」
「それに、もう帰ってしまっているかもしれませんし、魔族の方の証言をまともにとりあってもらえるかどうか・・・。」
正論パンチが帰ってくる。だけどこれに関しては正直あーしもそう思う。でも、出来る出来ないじゃない、そういう話だと思う。
ダイ吉から事の顛末を聞いたあーしは絶対に彼をなんとかしなきゃと思った。初対面の魔族の女に男を見せたどーてー君がすべてを失うのを指を咥えてみているのは、女-ギャル-が廃るから!
「そんなに言うならいいもん!一人でやるし!」
「おい待て、誰も手伝わないとは───。」
ヨジヨジがなんか言ってるけどもう知らない!
───
何をするかというと!なんと!聞き込みです!
・・・。
まあ、こういうときは基本に立ち返るのが一番大事ってことで。
「あのぅ、すみません。」
四天王として顔が知られているためか、みんな親切に答えてくれる。
「身分証ですね。持ってますよ。」
「あ、すみません。今持ってなくて。え?身分証不携帯?」
「はぁ?任意だろ?」
中には協力的じゃない人もいるけど・・・。
あ゛ーーーーー!職質したいわけじゃないのに!!!
そうか!最初に職質じゃないって言えばいいんだ!
「すみません!アンケートへのご協力をお願いできないでしょうか?」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
全員に無視される。まあ詐欺っぽいもんね。
───
日が暮れる直前まで頑張ってはみたけど、聞き込みではもう完全に手詰まりかぁ。どーしよー。そもそもダイ吉が守衛に殴りかかる前にあーしが気づいていれば、もっと穏便に済ませてたのに。そう思うと自分に腹が立つ。
自分に腹が立つと同時に、諦めかけている自分がいることに気づいた。あーしは自分に絶望してしまった。
どうやって謝ろう。どうやって償おう。こうなってしまえばダメだった時のことしか考えられない。《《私》》は元来こういう人間なんだとまざまざと思い知らされる。
───
諦めかけて立ち尽くす私は泣きそうになって嗚咽を漏らしてしまう。
「なんて声、出してやがる。」
一人の男が声をかけてきた。
「だって、だってぇ。」
泣きそうになりながら返事をする。振り返ると、声の主はヨジヨジだった。
「やれやれ、人の話は最後まできいてほしいものだナ★」
「例の女性、わかりましたよ!」
隣にはあおいっちもいる。二人の言葉を聞いた私はあーしに戻る。
「ホント・・・!?」
「ああ。まだ会えたわけではないがな★」
ヨジヨジ達は役所に行って、魔族の養子がいる家庭を探し出して、その家々を廻ってきたところだったみたい。例の家もわかったけど、養子の人はお義父さんの最期を見届けたら、魔族の自分が葬儀に出るわけにはいかない、て言って城下町をあとにしてしまったみたい。だけど、幸いその人はここからそう遠くないところに住んでいるみたい。
「こちらにも事情があるとはいえ、葬儀を執り行っているお宅にお邪魔してしまい、大変申し訳ないことをしてしまいました。」
「あの家庭には今度、しっかりと謝罪をせねばな。」
何も考えていなかったあーしとは違って、二人はちゃんと考えていた。あーしは何もできなかったけど、二人のお陰でなんとかなりそうだから、少し安心する。
「うわ~ん(泣)ありがと~う(泣)」
まだ自分に絶望してはいるけど、あーしはうれし泣きする。二人には感謝してもしきれない。
「おい、鼻水垂らしながら抱き着くな。私はダイキじゃないからこういうのはうれしくないぞ★」
「穂乃果さま、お胸で顔がふさがって苦しいです・・・。」
二人の言葉で舞い上がりすぎてたあーしは少し冷静にもどる。
「めんごめんご。」
ヨジヨジの肩パットで鼻水を拭いて気を取り直す。
「ううぇぇぇぇ☆」
これで準備は整った。あとは該当する条文を読み込み、判例を研究し、該当する法律が無ければ似た事例や海外でのケースなどを研究して、当日魔族の女の人と法廷に向かうのみ───。
全然のみじゃないのは置いといて───、次回!ギャル弁護士参上!的な!




