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思い出せない

作者: 絵空雅貴

それは1年前のことだった

ちょうど今日のように暖かな

そろそろ桜が咲きそうな頃に


ボクは手紙を書いたんだ


大切な人へ

想いを込めた

今も手元に残る

その手紙を


そっと、手に取った


しみじみと

心が温かくなるのを感じる


桜が散るように儚くて

怒涛のように走り去って消えた銀河鉄道に乗っていた

最期のお別れが

あんなに辛かったのに


なんだか

不思議な気分なんだ


若葉が繁り

デネブが夜空に輝いて

稲穂が風を受け

雪が舞い降りる


幾日も時が過ぎゆく


それでも

大切なことに変わりないのに


ボクは、思い出せない

幸せだったこと

忘れてしまったみたい


悲しいよ

亡くなったときよりも

ずっと、ずっと


今のほうが

虚しくて

心に穴があるはずなのに


思い出せないから

しっくりこないんだ


こんなんで、いいのかなって


そう思っていたボクに

父は言った


ここで過ごした日々は

ありふれていたけど

特別でかけがえのない

大切なもの

もう、何もいらない

ここに

今も

こうしていられる

それが、すべてじゃないか


だから

手紙を見てボクは思った


生きられること

思い出せなくても

変わらないこと


これからも

大切なことを思い出せなくたって

生きること


おばあちゃんとの思い出が

色褪せて

何も感じられなくなっても

消えることなんてないってこと


この手紙がある限り

ボクは

しっかりと

今を生きていくよ


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