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彼が学校に来なかった理由2

 就寝時間、呑気に(呪いの人形ドール的に)ベッドで仰向けに寝ている緋影の胸辺りに鎮座し、彼の寝顔を見下ろす呪いの人形ドールの左の深紅の瞳には殺意が込められていた。怒りからなのか、先程パッツンおかっぱヘアーに切られた髪がどんどん伸びていくのである。


 すぐに前の長さまで髪が伸びた呪いの人形ドールは、寝ていては抵抗はできないだろうとニヤリ(無表情)と勝利を確信し、ぐっすり睡眠中の緋影の首に呪いの人形ドールの黒く長い髪がまとわりつく――――――絞め殺そうということなのであろう。


 しかし、その瞬間、寝ていた緋影の両手が胸の辺りに鎮座していた呪いの人形ドールを襲うのである。ぎゅっと抱きしめられる呪いの人形ドールなのであった。


 慌てふためく呪いの人形ドールは緋影の無意識の拘束からは抜け出せないのである。だが、緋影は寝ている。つまり、このまま自慢の黒髪で絞め殺せば呪いの人形ドールの勝ちである。


 そう、勝利を確信した呪いの人形ドールだった――――――はずだったのだが、時は流れチュンチュンと鳥のさえずりが聞こえ、窓からカーテン越しに朝日が差し込む。


 呪いの人形ドールはいわゆる朝チュンとやらを経験してしまった。まぁ、性的にどうこうなどなくただ、呪いの人形ドールが一晩中抱きしめられていただけなのだが――――――呪いの人形ドール的には朝チュンなのである。


 呪いの人形ドールは必死に言い訳を心の中でする。


 べ、別に久しぶりに人のぬくもりを感じたとか、ちょっと抱きしめられて嬉しくなったとか、この人間に好意をすこーしだけ抱いたとかそういうことではない……と、意外とチョロ呪いの人形ドールなのである。


 もう少し、このままでいいかな。否、早く殺さなければを繰り返し続けた結果、朝を迎えたということなのであった。最強無敵の呪いの人形ドールは愛情に飢えていたところもあったのかもしれない。


 だが、彼女は呪いの人形ドールなのである。たかが、人間にほだされては呪いの人形ドールとしてのプライドが許さないのである。


 ありとあらゆる言い訳を考えた結果、最終的に意識がある時に恐怖を味わわせないと気がすまないだけだという結論(言い訳)に至った。


 そして、いつまでも緋影の頼もしい胸板に身体を預けていた呪いの人形ドールは、緋影が起きたことに気がついたのであるが、ときはすでに遅し――――――移動することができなかった。


「あれ……抱っこしたまま寝てしまった……のか?」


 起きた緋影はいつの間にか横向きで寝て人形ドールを抱きしめていたことに気がつき、上半身を起こし、人形ドールを抱きかかえ持ち上げる。


 よく見ると、人形ドールの髪が伸びまくっており自分に纏わりついてる上、ベッドから床にまで髪が伸びている。


「ああ……そういえば、植毛の人形は髪が伸びるとか聞いたことあるな……なるほど、確かにそれを知らなければホラーなのかもな」


 緋影はうんうんと一人納得するが、一晩でここまで髪が生える訳ないというのは普通ならわかるはずなのだが、それが、わからないのが人形ヒトカタ 緋影ヒカゲという人物なのである。流石の呪いの人形ドールの無表情な人形フェイスからも呆れている感じが伝わってくる。


「しょうがない……ほら、また切ってあげるからな」


 そうニッコリと寝起きの笑顔で緋影に言われ、瞬時に絶望の表情(無表情)になる呪いの人形ドールなのであった。


 やはり、昨夜殺っておくべきだったと早々に後悔する呪いの人形ドールは、寝起きの緋影に無心で伸ばしたばかりのキレイな黒髪を切られるのであった。






 今度はセミロングくらいの長さだが、全てがぱっつんなのである。怒りと諦めが半々といった複雑そうな無表情でされるがままの人形ドールに対して、緋影は相変わらずやりきった表情なのである。納得がいかないと言った様子の呪いの人形ドールをまたしても、テーブルに仰向けで置く緋影は、洗面所に向かうのであった。


 刹那の瞬間、玄関の姿見の前にいつの間にか鎮座し自分の姿を確認する呪いの人形ドールは、こいつぱっつんにしか切れないのっと怒りの無表情なのである。今晩にでもまた髪を伸ばそうと決意した呪いの人形ドールは、またしても、いつの間にかシャワーを浴び、歯を磨き、髪をセットし脱衣所から出てきた緋影に後ろから抱き抱えられる。


「うん……我ながら可愛く切れたな……可愛い、可愛い」


 緋影はくるりと自分の方に呪いの人形ドール向けて、うんうんと自画自賛しており、複雑そうな無表情を浮かべている人形ドールなのである。またしても、仰向けでテーブルに置かれる呪いの人形ドールは今度はスッポンポンではない緋影に対してちょっと残念に思うのであった。


 そんな呪いの人形ドールの複雑な気持ちなど理解している訳もなく、緋影はテレビをつけ朝の情報番組にチャンネルを合わせ、朝食の準備をしにキッチンへと向かっていった。そんな緋影に気がつかれることなく、いつの間にかテーブルの端に移動して、ちょこんと座ってついたテレビをジーッと見る呪いの人形ドールなのであった。






 テレビを呑気に見ていた呪いの人形ドールは、いつの間にか朝食用意しテーブルで食べ終え、食器を片した後の緋影にジッと見られていることに気がつくも、無視してテレビを見続けていた。しばらくして、緋影がおもむろに呪いの人形ドールを手に取り、テーブルに仰向けに置く。


 呪いの人形ドール突然のことに、困惑する間もなく、いきなり真っ赤な着物を剥ぎ取られる。これには呪いの人形ドールも心のなかで悲鳴をあげる。スッポンポンにされた呪いの人形ドールは羞恥心と怒りの顔(無表情)で緋影を睨むも、睨まれている方は人形ドールと視線あってるなくらいしか思っていない。緋影はおもむろにメジャーを取り出し、呪いの人形ドールを採寸し始め、欠損や破損箇所を調べ始める。


 呪いの人形ドールはもちろん暴れた。ポルターガイスト現象を起こしまくり、呪いを巻きちらし、抵抗を試みるも、緋影には全く通じない。そのまま、なすすべもなく敗北し、全てが終わり、すっぽんぽんのまま、テーブルに置かれた呪いの人形ドールは穢されたと、しくしくと無表情のドールフェイスが悲しそうに見えるのであった。


 すっぽんぽんの呪いの人形ドールにフェイスタオルをかけてあげ、緋影はどこかに出かけていくのである。悲しみにくれる呪いの人形ドールは緋影の裸を見て、朝ちゅんを迎え、自分の裸も見られ、なんとも言えない気持ちになっていた。そんな時に昨日見たドラマを思い出す。


 男は狼であり、獣だということを――――――。


 そして、責任を取ってもらうというシーンを思い出し、責任……つまり、殺せということね。と呪いの人形ドール勝手に解釈し一人答えを出す。少しだけ?絆された呪いの人形ドールだったが、再度心に強く殺意を抱くのであった。

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