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呪いVS祝福 最強無敵、天使で聖女様ヒロイン!? 天ノ川 天子ちゃん(でも実はストーカーだけど推し活だからいいよね♪)登場2

「……ち、ちがっ……そ、その……えっと……そ、その子が……」


 緋影の腕に鎮座し、物凄い形相(無表情で)でこちらを睨んでいるりんねちゃんの方を、すがるような目で見てそう言う天子なのである。


「……あ、ああ……りんねちゃん!?」


 コクコクっと激しく同意する天子に、ちょっと残念に思う緋影なのである。


(……危ない……危うく黒歴史が増えるところだった……それは……そうか……あの、天ノ川さんが……オレなんか好きになるわけないか……)


 勘違いして告白の返事なんてしなくてよかったと安心する緋影だが、少し落ち込むのである。


「えっと……そ、その人形ドール……わ、わたくし……好きです!!!」


 必死に誤魔化す天子なのである。人生最大のピンチ。天子はこれまでの人生で、これほどまでにテンパったことはなかった。消えてなくなりたくなるほど恥ずかしくなり、顔はゆでダコのように真っ赤になる。


 だが、天子は嘘を言っていないのである。彼女は、この呪いの人形ドールを本気で可愛いと思っており、好意を抱いているのは確かなのである。


「……あ、ありがとう……りんねちゃんって名前なん……ですけど……」

(存じ上げておりますーーーー!! SNSで毎日チェックしてますーーーー!!!)


 あまりの神々しさと愛らしさに、なぜかかしこまってしまう緋影は、視線を逸らして頬を掻きながら人形ドールの名前を告げる。しかし、天子はすでにその名前を知っていた。心の中で絶叫する天子だが、ここで「お名前は存じ上げております」などと言えば、こっそりSNSを監視していることがバレてしまう。


「そそそそそ、そうなのですね! か、可愛らしいお名前ですね!!」


 咄嗟に嘘をついてしまう。天子にとっては、社交辞令や形式的な言葉を除けば、人生で初めての嘘であった。心の中で神に懺悔しまくる天子なのである。


(なんか……思ってたより可愛らしい子なんだな)


 あわあわしている目の前の天子の姿は、たまに学校で見かける凛とした姿とは正反対で、可愛らしいものであった。周囲の評価や自身の中にあったイメージとの乖離に驚くと同時に、少し親しみが持てるような気がした緋影なのである。


 そんな緋影の心の中を知ってか知らずか、緋影の右腕に鎮座しているりんねちゃんは、怒り心頭のご様子である。


 目の前の聖女で小動物的な美少女に対し、嫉妬心をあらわにし、とっとと排除してやろうとするりんねちゃん。そこら辺に転がっていた空き缶に気づくと、これでも飛ばして怖がらせてやろうと考え、『ポルターガイスト発動』天子に向かって地面に転がっていた空きスチールを飛ばす。


 しかし、なぜか、あわあわと真っ赤になって俯いている天子から軌道が逸れ、ありえない角度で空き缶がりんねちゃんの方へ向かってきた。


 軌道修正不可能のまま、呪いの人形ドールりんねちゃんの無表情ドールフェイスに空きスチールがクリティカルヒットした。


「り、りんねちゃん!? だ、大丈夫か!? なんで空き缶が急に飛んできたんだ? 服とか汚れてないか!?」

「あわわわわ、だ、大丈夫でしょうか!?」


 驚く緋影と天子は周囲をキョロキョロするも、人の気配はない。ぐぬぬぬぬ、となっているりんねちゃんを心配する緋影と天子なのである。物凄い恨めしそうに、天子をじーっと無表情で睨みつける逆恨みも甚だしいりんねちゃんであった。


 自分の攻撃を何故か幸運にも回避した天子に対して、ムカムカムカッと怒りマークを浮かべまくり、無表情で怒りをあらわにしているりんねちゃんなのである。


「あ、あの~……そ、その人形ドール……と、とても可愛い……ですね……あ!? それにわたくしたちの学校の制服を着ているのですね……とてもお似合いですよ」

「……そうだろ……りんねちゃんは世界一可愛いだよな……やっぱり……わかる人にはわかるもんなんだな」


 今まで周囲に「怖い」「不気味」「呪いの人形ドール」「勝手に動いている」などと散々言われてきた緋影(すべて事実なのだが)は、初めてりんねちゃんを褒められ、感極まったあまり天子の手を握り、感謝の意を示す。


 しかも両手で――右前腕に鎮座していたりんねちゃんは、バランスを崩してずり落ちた。だが、いつの間にか右上腕に、干されている布団のごとく宙ぶらりん状態となっていたのである。


 『とても迷惑極まりない』と、りんねちゃんの怒りマークはますます増えていく。


 手を握られ、真っ赤になって驚いている天子の目の前にりんねちゃんの顔があり、じーっと見ていた。


 もちろん、物凄く近距離でガン見である。それは、物凄い形相(無表情で)でじーっと睨むりんねちゃんなのだが、天子は全く気にしていない様子であった。


「あ、ああああああ、あの……手……手ぇ~」

「あ……ご、ごめんな……勢いで……す、すまない!!」


 慌てて手を放して離れる緋影と同時に、りんねちゃんの顔も天子から遠ざかる。だが、天子はりんねちゃんの恐ろしい形相から逃れたことに気づきもしない。


 そんなことよりも、想い人(推し)に手を握られたことのほうに思考回路がすべて持っていかれており、もはやショート寸前なのである。


「いいいいい、いえ~!! む、むしろ……ご、ご褒美…………といいますか……」

「……え?」


 なので、こんな不用意な発言をしてしまい、またまた失敗したと天子は超テンパるのであった。


「ななななな、なんでもありません」

「そ……そうか」


 なんだかいい雰囲気になっている二人に、怒ったりんねちゃんはプッチンプリン、怒髪衝天、呪いの人形ドールの本領発揮で、まさにホラー。


 だが、いい雰囲気の二人は完全にスルー。こうして、青春ラブコメと恐怖のホラーが混在するカオスな空間が、住宅街の生活道路に顕現していた。


 もはや我慢の限界を迎えた呪いの人形ドールりんねちゃんなのである。ホラーが青春に負けるわけにはいかないのだ。怒りに任せて、道路の端にある鉄のグレーチングを天子に向かって飛ばす。


 しかし、またしても、なぜか急に軌道を変え、緋影りんねちゃんの方へ物凄い勢いで加速し、飛んできた。


 『げっ!』と無表情で驚くりんねちゃん。軌道修正は間に合わない――。


「あわわわわ!!」


 天子の慌てる声が響くも、刹那、上体を逸らし、物凄い速度で向かってきたグレーチングを神回避してみせる緋影――だったのだが、右前腕に鎮座していたりんねちゃんが宙に舞った。


「りんねちゃん」


 しまったと思った緋影は、りんねちゃんを地面に落とさないよう、刹那で体勢を整え、必死にりんねちゃんを凝視する。そして、なんとか地面に落ちる前に、りんねちゃんの右足を掴むことに成功したのであった。


 りんねちゃんは、緋影に右足を掴まれたまま、逆さまに宙吊り状態になっていた。宙吊りということは、もちろん服というものは重力に逆らえない。セクシーで可愛らしい黒のおパンツが丸出しになり、さらに可愛らしいおへそも露わになっていた。


 これには、りんねちゃんも絶叫ものなのである。もちろん、呪いの人形ドールの悲鳴など聞こえるはずもなく、周囲は静寂に包まれていた。


「あと少しで地面に落とすところだった……間一髪だったな」


 やれやれ、やりきったぜという無表情の緋影に、感心した天子はささやかな拍手を送っていた。


 宙吊りでセクシードール状態のりんねちゃんは、『間に合ってない!!』と呪いのオーラを溢れさせ怒りをあらわにするも、鈍感な緋影に通じるわけもない。


 そもそも、緋影に見られていなければ回避できたりんねちゃんなのである。今も緋影に掴まれていなければ何事もなく、緋影の腕に鎮座できるのである。


 緋影を恨むりんねちゃんは、未だに逆さの宙吊り状態で動けずにいた。次第に恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になっていっているようにも見える。だが、もちろん、人形ドールなので表情は変わらないし、肌の色に変化が起きるわけもないのである。


 そんな、早く元に戻してと必死に訴えるりんねちゃんの様子に気づいたのか、天子がモジモジとしながら、言いにくそうに緋影に何かを伝えようとしていた。


「……あ、あの……そ、そろそろ……その子を……」

「……え? なに?」


 遠回しな言い方では超絶鈍感な緋影には通じない。しかし、おパンツが丸見え状態だと直接言うのは、天子にとっては恥ずかしいようであった。


「……シ、ショーツが……その……ですね……えっと~……」

「……え?」


 緋影のスキル『難聴』発動(このスキルは大事なシーンでなぜか耳が遠くなってしまうスキルである)により、真っ赤になりながらも小声でりんねちゃんの状態を教えようとした天子の声が聞こえなかったようである。


「……ううううう~、ぱ、ぱ、ぱぱぱ、パンツが丸見えだと……人形ドールでも流石に可哀想だと思います!」


 真っ赤になって、そう大きな声で発言する天子は、どうやら『ショーツ』という単語が緋影に通じなかったと勘違いしているようで、恥ずかしそうにしながら『パンツ』と大声で発言したのであった。もはや、羞恥心の極まり、恋心と相まって心臓は破裂寸前、顔は完全に真っ赤で耳まで赤くなっている天子であった。


「……確かに、すぐに戻してあげるべきだった……すまない……りんねちゃん」


 オレとしたことがと無表情で後悔の念を見せ、すぐにりんねちゃんを右前腕に鎮座させ直す緋影であった。まさか、攻撃した相手に助けられるとは、一生の不覚と落ち込むりんねちゃんなのである。


 まだ、りんねちゃんの顔が赤いような気がする――のだが、やはり人形ドールなので無表情なりんねちゃんなのである。


「教えてくれてありがとう……天ノ川さん」

「い、いえ……そんな……」


 好意を抱く相手(推し)に褒められ、感極まった天子はまたしても昇天しそうになり、天に祈りを捧げ始めた。


(天ノ川さん……それ……癖なのかな?)


 度々、神々しく祈りを捧げるポーズを取る天子を見て、緋影はじっとその姿を見つめる。


 そんな旦那(旦那ではない)の行動が気に入らない呪いの人形ドールりんねちゃん。天子に対して『こいつ絶対殺す』と殺意を向ける。呪いの人形ドールの強力無慈悲な呪いが祈りを捧げる天子に襲いかかる。


 しかし、天子には効果がないようである。どうやら、緋影と同様に呪いの攻撃が天子には効いていないようであった。


 それどころか、りんねちゃんは人形ドールなのに、なぜか急にお腹が痛くなったようで、無表情のままにもかかわらず、痛みを感じているように見える無表情を浮かべ、いつの間にか両手でお腹を押さえていた。


 『こいつ、呪いを跳ね返してきた!?』と怒りの表情で天子を睨むが、視線が合った天子は満面の笑顔を浮かべ、「可愛いなぁ」と心の中で思い、友好的な態度を崩さなかった。


 お腹の痛みで冷や汗ダラダラ(気の所為)のりんねちゃんに対して、真の天使の微笑みを見せる天子を見て、緋影はある提案をしようと考えた。


「……抱っこしてみ…ますか?」


 緋影の突然の発言に、『絶対に嫌だ』といつの間にか緋影の方を見て視線で訴えるりんねちゃんだが、鈍感な緋影に通じるわけもない。なので、今度は天子の方をいつの間にか向いて、『断れ』と呪いの圧を放つ。だが、なぜかその呪いはきれいに浄化され、天子にはまったく通じる様子がなかった。


「……よ、よろしいのでしょうか?」


 モジモジと嬉しそうな表情を浮かべる天子に、りんねちゃんの怒りの怒号が響く――わけもない。なぜなら、りんねちゃんは人形ドールなのだから。


 『やめろ』『来るな』と心の中で絶叫するりんねちゃん。まさか、自分がホラー展開に巻き込まれるとは夢にも思っていなかったのである。いつの間にか緋影にしがみつき、『絶対に離れない』と全身で訴えるりんねちゃん。


 しかし、そんな必死の抵抗も虚しく、緋影に抱きかかえられ、あっさりと引き離されてしまう。


 そして――両手を差し出す聖女様のような天子に、呪いの人形ドールりんねちゃんは捧げられるのだった。これは呪いの人形ドールにとって、まさに恐怖体験そのもの。


 聖なるオーラを全身から放つ天子の腕に収まった瞬間、りんねちゃんは絶叫した。しかし、当然ながら無音である。


 そのまま、ぎゅっとりんねちゃんを抱きしめる天子。幸せそうな笑顔を浮かべる彼女とは対照的に、抱きしめられているりんねちゃんの表情は無。


 呪いのオーラがみるみる浄化されていく中、『こいつは絶対に殺す』という殺意を秘めた無表情で、されるがまま抱きしめられる呪いの人形ドールりんねちゃんなのであった。


「とても、お可愛らしいですね」

「りんねちゃん……可愛いだって……よかったな」


 『よくない!!』と怒るりんねちゃん。早く解放してほしいと目線で緋影に訴えるが、もちろん通じるわけもない。むしろ緋影はスマホを取り出し、写真撮影を始めてしまうのだった。もはや、呪いの人形ドールにはなすすべもない。


 そのまま、天子が満足するまで抱きしめられるりんねちゃん。


 そして、これが最強ヒロインの天ノアマノガワ 天子テンコと、最強鈍感主人公の人形ヒトカタ 緋影ヒカゲの運命的な出会いであった。


 だが、りんねちゃんにとっては、緋影と同等、否、緋影以上にヤバい人物との邂逅でもあったのである。

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